WES試験対策(1級) 問題と解説 No.116~120
このページの問題を一問一答形式の動画としてまとめました。復習用にご活用ください。通勤中や運動中に最適です。
【No 461~480】WES溶接管理技術者試験対策
WES溶接管理技術者試験勉強のための一問一答形式の音声教材です。初学者である自分向けに、音声には基本的な用語の説明も含めています。運動中や通勤中に聞き流しながら...
【No.116】 ロボット溶接
ロボット溶接に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)ワイヤタッチセンサは、溶接ワイヤが母材に接触したときの電圧の変化を検出する。
(2)溶接用ロボットは、アークを発生させずに母材や開先の位置情報を取得する。
(3)アークセンサは、溶接中に溶接トーチをウィービングさせ、その時に生じるワイヤ突き出し長さの変動に伴う溶接電流の変化を検出して、溶接線の検出を行う。
(4)視覚センサを用いると、継手の開先形状や、溶接中の溶融池形状を高精度に検出できる。
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誤っている選択肢は 無し
【解説】
(1)正しい。ワイヤタッチセンサは、溶接ワイヤが母材に接触したときの電圧の変化を検出します。
(2)正しい。溶接用ロボットは、アークを発生させずに母材や開先の位置情報を取得します。
(3)正しい。アークセンサは、溶接中に溶接トーチをウィービングさせ、その時に生じるワイヤ突き出し長さの変動に伴う溶接電流の変化を検出して、溶接線の検出を行います。
(4)正しい。視覚センサを用いると、継手の開先形状や、溶接中の溶融池形状を高精度に検出できます。
【No.117】 鋼材の特性
鋼材の特性に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)一般構造用圧延鋼材の特性で、引張強さは、ある温度以下で著しく低下する。
(2)一般構造用圧延鋼材の特性で、降伏点または耐力は、ある温度以下で著しく低下する。
(3)一般構造用圧延鋼材の特性で、硬さは、ある温度以下で著しく低下する。
(4)一般構造用圧延鋼材の特性で、シャルピー吸収エネルギーは、ある温度以下で著しく低下する。
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誤っている選択肢は (1)、(2)、(3)
【解説】
(1)誤り。引張強さは、常温から低温にかけて基本的には大きく低下しません。むしろ、低温になると引張強さはやや上昇する傾向があります。
(2)誤り。降伏点または耐力は、常温から低温にかけて基本的には大きく低下しません。むしろ、低温になると降伏点または耐力はやや上昇する傾向があります。
(3)誤り。硬さは、低温になっても著しく低下することはありません。むしろ、低温では原子の熱振動が減少し、塑性変形が起こりにくくなるため、材料は硬さがやや増す傾向を示します。
(4)正しい。「低温で硬さが低下する」と思われがちですが、実際に問題となるのは靭性・衝撃吸収能力の低下です。
【No.118】 鋼材の規定
鋼材の規定に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)建築構造用圧延鋼材(SN材)のC種において、板厚方向の絞り値が規定されている理由は、十分に塑性変形してから破断させるためである。
(2)建築構造用圧延鋼材(SN材)のC種において、板厚方向の絞り値が規定されている理由は、じん性を高めるためである。
(3)建築構造用圧延鋼材(SN材)のC種において、板厚方向の絞り値が規定されている理由は、ラメラテアを防止するためである。
(4)建築構造用圧延鋼材(SN材)のC種において、板厚方向の絞り値が規定されている理由は、低温割れを防止するためである。
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誤っている選択肢は (1)、(2)、(4)
【解説】
(1)誤り。「絞り値」とは、板厚方向引張試験で破断後の断面積減少率を示すものです。SN材C種の板厚方向の絞り値規定は、十分に塑性変形してから破断させるためではありません。
(2)誤り。「絞り値」とは、板厚方向引張試験で破断後の断面積減少率を示すものです。SN材C種の板厚方向の絞り値規定は、じん性を高めるためではありません。
(3)正しい。ラメラテアとは、鋼板の板厚方向に発生する「層状の剥離割れ」で、溶接部に強い拘束応力が作用した際に起こる重大な溶接欠陥です。板厚方向の絞り値が規定されている理由は、ラメラテアを防止するためです。
(4)誤り。SN材C種で板厚方向の絞り値が規定されている理由は「低温割れ防止」ではなく、主に ラメラテア(層状割れ)を防止するためです。低温割れは、溶接後、溶接部や熱影響部が300℃以下に冷えた後に発生する割れです。数時間〜数日後に出ることもあり「遅れ割れ」とも呼ばれます。低温割れの発生要因は、溶接熱影響部にマルテンサイトなど硬く脆い組織ができる(硬化組織)、溶接時に導入された水素が鋼中を拡散し、応力集中部に集積する(拡散性水素)、溶接部に残留する引張応力(残留応力)です。
【No.119】 熱影響部
熱影響部に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)炭素鋼溶接熱影響部の化学組成は、硬さに影響する。
(2)炭素鋼溶接熱影響部の溶接条件は、硬さに影響する。
(3)炭素鋼溶接熱影響部の拘束条件は、硬さに影響する。
(4)炭素鋼溶接熱影響部の水素量は、硬さに影響する。
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誤っている選択肢は (3)、(4)
【解説】
(1)正しい。炭素鋼溶接熱影響部(HAZ)の硬さは母材の化学組成に強く影響します。特に炭素量や合金元素の含有量が硬化の程度を左右し、炭素当量(Ceq)で表されます。
(2)正しい。炭素鋼溶接熱影響部(HAZ)の硬さは溶接条件によって大きく影響を受けます。特に入熱量と冷却速度が支配的要因です。入熱が小さい(高速溶接)と、冷却速度が速くなり、マルテンサイトやベイナイトが生成しやすく、硬さが上昇します。入熱が大きい(低速溶接)と、冷却速度が遅くなり、フェライトやパーライトが生成しやすく、硬さが低下します。
(3)誤り。炭素鋼溶接熱影響部の拘束条件は、硬さに影響しません。拘束条件は硬さよりも 低温割れ発生リスクに直結します。
(4)誤り。水素は金属組織を変化させる元素ではないため、硬さを直接上げ下げすることはありません。水素量が多いと、硬さそのものは変わらなくても、硬化組織の脆性を顕在化させ、低温割れを誘発します。
【No.120】 冷却速度
冷却速度に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)溶接入熱が大きくなると、冷却速度は大きくなる。
(2)予熱温度・パス間温度が高くなると、冷却速度は大きくなる。
(3)板厚が厚くなるほど、冷却速度は大きくなる。
(4)溶接部の冷却速度は、継手の形状に依存する。
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誤っている選択肢は (1)、(2)
【解説】
(1)誤り。溶接入熱が大きくなると冷却速度は「小さく」なります。つまり、入熱が増えるほど冷却は遅くなるのが基本的な熱伝導の理屈です。
(2)誤り。熱温度やパス間温度が高くなると、冷却速度は「小さく」なります。つまり、冷却は遅くなる方向に働きます。
(3)正しい。厚板は大きな「熱の逃げ場」になります。板厚が厚いと、母材全体の体積が大きく、熱容量(ヒートシンク効果)が増します。溶接部の熱が母材内部へ急速に拡散するため、冷却速度が速くなります。
(4)正しい。溶接部の冷却速度は継手の形状に依存します。継手の形状や拘束度によって熱の逃げ方(熱伝導経路)が変わるため、冷却速度に差が生じます。突合せ継手は、板厚方向に熱が広く逃げやすいため、冷却速度が比較的速いです。重ね継手は、板が重なっているため、熱の伝導経路が制限されます。
