WES試験対策(1級) 問題と解説 No.16~20
このページの問題を一問一答形式の動画としてまとめました。復習用にご活用ください。通勤中や運動中に最適です。
【No.16】 ステンレス鋼
ステンレス鋼に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)SUS304は、オーステナイト系ステンレス鋼である。
(2)SLA430は、フェライト系ステンレス鋼である。
(3)SUS329J4Lは、フェライト系ステンレス鋼である。
(4)SUS430は、フェライト系ステンレス鋼である。
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誤っている選択肢は (2)、(3)
【解説】
(1)正しい。オーステナイトは、原子が面心立方格子構造をとる状態です。この構造は、原子間のずれに対する抵抗力が大きく、塑性変形しやすいため、材料の靭性や延性を高めます。SUS304は、オーステナイト系ステンレス鋼です。
(2)誤り。フェライトとは、酸化鉄を主成分とする金属酸化物で、磁性を持つセラミックスの一種です。電気を通しにくい性質を持ちます。SLA 材とはスチール、ロウテンパチャー アルミキルドの略で、 アルミキルド鋼とは、アルミニウムを使って鋼中の酸素を除去した鋼材のことです。SLA材は低温環境、たとえば−45℃以下で使用される鋼材で、アルミキルド処理によって低温でも靱性を保つように設計されています。
(3)誤り。SUS329J4Lは、オーステナイトとフェライトの組織を併せ持つ「二相系ステンレス鋼」の一種です。 SUS329J4Lは、耐局部腐食性に優れた材料で、サビやすい塩化物を含む環境下に適しています。 二相系ステンレス鋼は、共通して高強度かつ高耐食性を有しています。
(4)正しい。SUSは大きく分けると200番台、300番台、400番台があり、材料が含む元素の種類が変わります。200番台のSUSはオーステナイト系のステンレスで、クロム、ニッケル、マンガンを含んでいます。300番台のSUSは、オーステナイト系で、クロムとニッケルを含んでいます。400番台のSUSはフェライト系、マルテンサイト系のステンレスです。SUS430はクロム18%を含むフェライト系のステンレスで、400番台の代表的な素材です。SUS430はステンレスのなかでは耐食性が劣りますが、加工性に優れておりコストも安いので、さまざまな製品に使われます。
【No.17】 ステンレス鋼
ステンレス鋼に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)オーステナイト系ステンレス鋼を溶接した場合、溶接熱影響部で粒界腐食が生じることがある。その対策として、低炭素ステンレス鋼の使用が挙げられる。
(2)オーステナイト系ステンレス鋼を溶接した場合、溶接熱影響部で粒界腐食が生じることがある。その対策として、安定化ステンレス鋼の使用が挙げられる。
(3)オーステナイト系ステンレス鋼を溶接した場合、溶接熱影響部で粒界腐食が生じることがある。その対策として、鋭敏化温度域での急冷が挙げられる。
(4)オーステナイト系ステンレス鋼を溶接した場合、溶接熱影響部で粒界腐食が生じることがある。その対策として、入熱の低減が挙げられる。
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誤っている選択肢は 無し
【解説】
(1)正しい。ステンレス鋼は、溶接の高温により、結晶粒界にクロムが炭素と結合して析出します。 その結果、粒界周辺のクロム含有量が低下し、耐食性が失われクロム炭化物の析出により粒界腐食が生じます。SUS304LやSUS316L炭素含有量の少ない材質を選ぶことで炭化物の生成を抑えることが対策となります。
(2)正しい。ステンレス鋼の溶接による粒界腐食対策として、チタンやニオブを添加したステンレス鋼を使用し、溶接による熱で炭素と結合してクロムではなく、安定化元素が炭化物を形成するようにします。
(3)正しい。オーステナイト系ステンレス鋼を溶接した場合、溶接熱影響部で粒界腐食が生じることがあります。その対策として、鋭敏化温度域での急冷が挙げられます。急冷することで、クロム炭化物の析出を抑制し、耐食性の低下を防ぐことができます。
(4)正しい。ステンレス鋼の溶接時、特にSUS304などのオーステナイト系ステンレス鋼では、溶接熱により結晶粒界にクロム炭化物が析出し、ステンレス中のクロム濃度が低下します。これにより、耐食性が低下し、粒界腐食が発生しやすくなります。特に、650℃付近の温度に長時間さらされると、この現象が起こりやすいため、入熱量を抑えることが重要です。
【No.18】 ステンレス鋼
ステンレス鋼に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)フェライト系ステンレス鋼を溶接した場合、熱サイクルで変態が生じる。
(2)フェライト系ステンレス鋼を溶接した場合、溶融境界線近傍の熱影響部のじん性が低下することがある。
(3)応力のSI単位はニュートンである。
(4)ヤング率はせん断応力とせん断ひずみを関係づける係数である。
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誤っている選択肢は (1)、(3)、(4)
【解説】
(1)誤り。フェライト系ステンレス鋼の金属組織の特長として,変態点をともなわないことが挙げられます。フェライト系ステンレスは体心立方格子構造を持ち、通常の溶接温度域でもオーステナイト構造に変態しません。
(2)正しい。フェライト系ステンレス鋼は熱サイクル過程で変態が生じず、溶融境界線近傍の熱影響部で結晶粒が粗大化するため、じん性が低下することがあります。結晶の粒が大きくなると、結晶の境界面が減り、塑性変形を分散させる力が弱まります。結果として局所的に応力が集中しやすく、破壊が進みやすくなります。
(3)誤り。応力は、物体内部に生じる単位面積あたりの力を表す量で、SI単位系(国際単位系)ではパスカルで表されます。
(4)誤り。ヤング率は、せん断応力ではなく、引張または圧縮応力とひずみの関係を示す比例定数です。せん断応力とせん断ひずみの比例係数は、せん断弾性係数またはせん断剛性率と呼ばれます。
【No.19】 材料力学
材料力学に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)ひずみに単位はない
(2)弾性域ではフックの法則が成立する。
(3)矩形断面の梁に曲げモーメントが作用するとき、曲げ応力は、断面二次モーメントに比例する。
(4)矩形断面の梁に曲げモーメントが作用するとき、曲げ応力の絶対値は、梁断面の高さ中央で最大となる。
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誤っている選択肢は (3)、(4)
【解説】
(1)正しい。ひずみに単位はありません。
(2)正しい。弾性域では、力の大きさが変形の量に比例することを示す、フックの法則が成立します。
(3)誤り。矩形断面の梁に曲げモーメントが作用するとき、曲げ応力は、断面二次モーメントに反比例します。
(4)誤り。矩形断面の梁に曲げモーメントが作用するとき、曲げ応力の絶対値は、梁断面の高さ中央ではなく、断面の最上端または最下端です。
【No.20】 材料力学
材料力学に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)矩形断面の梁に曲げモーメントが作用するとき、曲げ応力は、断面係数に比例する。
(2)矩形断面の梁の幅を一定として、高さを2倍にすると、曲げ応力の絶対値の最大値は、0.25倍になる。
(3)両端が閉じた内圧を受ける薄肉円筒容器に生じる軸方向応力は、円周方向応力の2倍である。
(4)応力集中係数は主に部材形状、寸法で決まる。
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誤っている選択肢は (3)
【解説】
(1)正しい。矩形断面の梁に曲げモーメントが作用するとき、曲げ応力は、断面係数に比例します。
(2)正しい。曲げ応力は、モーメントを断面係数で除した値で求めることができます。高さが2倍になると断面係数は4倍になるため、その逆数である曲げ応力は0.25倍になります。
(3)誤り。両端が閉じた内圧を受ける薄肉円筒容器に生じる軸方向応力は、円周方向応力の0.5倍です。
(4)正しい。応力集中係数は、理想的な一様応力と、形状や欠陥によって局所的に発生する最大応力との比です。例えば、引張荷重を受ける板に中央に穴がある場合は、応力集中係数はおよそ3となります。つまり、穴周辺の材料は、平均応力の約3倍の応力が作用するということです。
