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WES試験対策(1級) 問題と解説 No.41~45

WES試験対策(1級) 問題と解説 No.41~45

 このページの問題を一問一答形式の動画としてまとめました。復習用にご活用ください。通勤中や運動中に最適です。
【No 161~180】WES溶接管理技術者試験対策(基本)
WES溶接管理技術者試験勉強のための一問一答形式の音声教材です。初学者である自分向けに、音声には基本的な用語の説明も含めています。運動中や通勤中に聞き流しながら...

【No.41】 機械的性質

機械的性質に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)軟鋼は、延性が高く、降伏点が明確な材料で、明確な上降伏点と下降伏点が現れる。
(2)高張力鋼は、強度が高く、降伏点が不明瞭で、延性が低めで、明確な降伏点がなく、0.2%オフセット降伏点で定義されることが多い。
(3)0.2%オフセット法は、応力、ひずみ曲線上で、弾性域の傾き(ヤング率)と平行な直線を、0.2%ひずみの位置から引いたときの交点の応力である。
(4)JISで定義される一様伸びは、鋼材が降伏してから破断までの伸びのことを指す。
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誤っている選択肢は (4)

【解説】
(1)正しい。軟鋼は、延性が高く、降伏点が明確な材料で、明確な上降伏点と下降伏点が現れるのが特徴です。
(2)正しい。高張力鋼は、強度が高く、降伏点が不明瞭で、延性が低めで、明確な降伏点がなく、0.2%オフセット降伏点で定義されることが多いのが特徴です。
(3)正しい。0.2%オフセット法は、応力、ひずみ曲線上で、弾性域の傾き(ヤング率)と平行な直線を、0.2%ひずみの位置から引いたときの交点の応力です。
(4)誤り。JISで定義される一様伸びは、応力、ひずみ曲線で、鋼材が降伏してから最大応力点(引張強さ)までのひずみを指します。

【No.42】 機械的性質

機械的性質に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)降伏比とは、材料の降伏点と引張強さの比率で、高張力鋼よりも軟鋼のほうが降伏比は高い。
(2)厚さ20mmの厚板のマグ溶接は、I形開先が適している。
(3)厚さ1mmの薄板のティグ溶接は、I形開先が適している。
(4)溶接記号10×20△で表される凸形すみ肉溶接の脚長は20mmであり、強度計算に用いるのど厚は、10mmである。
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誤っている選択肢は (1)、(2)、(4)

【解説】
(1)誤り。降伏比とは、材料の降伏点と引張強さの比率で、材料が最大応力に達する前にどれだけ塑性変形を許容するかを示します。降伏後も大きな塑性変形が可能な軟鋼は降伏比が0.5~0.6程度です。降伏点に近い応力で破断に至る高張力鋼は降伏比が0.8以上程度であり、高張力鋼の方が降伏比は大きくなります。
(2)誤り。I形開先は、溶接部の端面が平らで、開先角がない形状のことを指します。板の端面同士をそのまま突き合わせるような構造です。I形開先は開先角がゼロで、溶接金属が母材の奥深くまで届きにくいため、完全溶込み溶接が困難になります。十分な溶け込みと構造強度を確保するためには、V形やX形開先が適しています。
(3)正しい。I形開先は、板厚が6mm以下程度の薄板に適用されることが多いです。開先加工が不要または最小限で済むため、製造コストが低いというメリットがあります。
(4)誤り。溶接記号10×20△で表される凸形すみ肉溶接の脚長は10mmであり、溶接長さが20mmです。強度計算に用いるのど厚は、10mmを√2で除して、約7mmとなります。

【No.43】 残留応力

残留応力に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)平板突合せ溶接継手における最大引張残留応力は、軟鋼継手では降伏応力程度である。
(2)平板突合せ溶接継手における最大引張残留応力は、高張力鋼継手では降伏応力より大きい。
(3)横収縮量に影響を及ぼす因子として、開先の断面積がある。
(4)横収縮量に影響を及ぼす因子として、母材の縦弾性係数がある。
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誤っている選択肢は (2)、(4)

【解説】
(1)正しい。平板突合せ溶接継手における最大引張残留応力は、軟鋼継手では降伏応力程度です。溶接時の局所加熱により、溶接部周辺に大きな温度勾配が発生し、熱膨張、収縮によって塑性変形が起こります。この塑性変形が冷却後に残留応力として残り、特に引張側では材料の降伏応力に近いレベルまで達します。
(2)誤り。平板突合せ溶接継手における最大引張残留応力は、高張力鋼継手では降伏応力より小さい場合があります。
(3)正しい。横収縮は、溶接によって母材が溶接線に向かって収縮する現象で、特に突合せ継手では寸法精度や変形に大きく関わります。開先断面積が大きい場合、溶接金属量が増加するため、入熱量も増え、熱膨張・収縮の影響が大きくなり、横方向の収縮量が増加する傾向があります。開先断面積が小さい場合、熱による変形が抑えられ、横収縮量は比較的小さくなります。つまり、開先形状(V形、U形、I形など)や開先角度、ルート間隔などが断面積に影響し、それが横収縮量に影響します。
(4)誤り。縦弾性係数の横収縮量に対する影響は他の因子に比べて小さいです。

【No.44】 横収縮量

横収縮量に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)横収縮量に影響を及ぼす因子として、溶接金属の降伏応力がある。
(2)横収縮量に影響を及ぼす因子として、溶接入熱量がある。
(3)板厚の表面にビードを置くような溶接をした場合,溶接部近傍は加熱中に熱膨張するが,その変形が周りによって変形拘束され,圧縮の塑性変形が板厚の上部のみに生じ,冷却後板厚の上部に収縮変形が生じるために結果として角変形が生じる。
(4)項構造設計規準によると、すみ肉溶接のサイズSは、厚いほうの母材厚さ以下でなければならない。
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誤っている選択肢は (1)、(4)

【解説】
(1)誤り。降伏応力の横収縮量に対する影響は他の因子に比べて小さいです。
(2)正しい。入熱量が増加すると、溶接部と熱影響部が広範囲にわたり高温化し、溶融プールの体積や熱膨張、収縮の度合いが増大します。結果として、隣接部材の横方向への収縮量も増加する傾向があります。
(3)正しい。板厚の表面にビードを置くような溶接(ビードオンプレート溶接)をした場合,溶接部近傍は加熱中に熱膨張するが,その変形が周りによって変形拘束され,圧縮の塑性変形が板厚の上部のみに生じ,冷却後板厚の上部に収縮変形が生じるために、結果として角変形が生じます。
(4)誤り。すみ肉のサイズSは、薄いほうの母材厚さ以下でなければなりません。

【No.45】 設計

設計に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)項構造設計規準によると、すみ肉溶接の有効溶接長さは、実際の長さから両端の無効長さとして、板厚の2倍を引いて求める。
(2)低温(0℃)環境下で、アーク溶接作業を行う場合、低温割れが懸念される。
(3)強風(5m毎秒)環境下でアーク溶接作業を行う場合、ポロシティが懸念される。
(4)高温多湿環境下でアーク溶接作業を行う場合、低温割れやポロシティが懸念される。
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誤っている選択肢は (1)

【解説】
(1)誤り。項構造設計規準によると、すみ肉溶接の有効溶接長さは、実際の長さから両端の無効長さとして、のど厚の2倍を引いて求めます。
(2)正しい。アーク溶接時に母材温度が300℃以下に冷却されると、特に高強度鋼において低温割れ(コールドクラッキング)が発生しやすくなります。0℃の作業環境では前加熱が困難であったり、熱影響部(HAZ)が急速に冷却されるため、母材温度が常時低いままになります。このため冷却時の残留水素や応力集中が解消されにくく、低温割れのリスクが高まります。
(3)正しい。ポロシティは、溶接金属内に残留した小さな気孔(ガスポケット)を指します。これが多発すると、強度低下や疲労寿命の悪化、気密性、水密性の劣化を招きます。風速5 m毎秒では溶融池周辺のシールドガス(アルゴンや二酸化炭素)が飛散し、酸化や大気ガス(窒素・酸素・水蒸気)混入を許します。結果、気体が溶融金属に閉じ込められ、ポロシティが発生しやすくなります。
(4)正しい。高温多湿環境では、周囲の水分量が増えることで溶接プロセスに大きな影響が出ます。高温多湿条件では、電極被覆材やフラックス、母材表面に吸着した水分が増加します。アーク熱でこれらの水分が分解して生じた拡散性水素が溶融金属に取り込まれ、冷却時に以下の条件がそろうと低温割れが発生しやすくなります。また、湿度上昇で基材や消耗品に付着した水分は、アーク熱により即時に蒸発・分解し、水素や酸素、窒素などのガスを溶融池へ放出します。溶融金属が固化する際、ガスが逃げ切れずに気泡として閉じ込められるとポロシティが発生します。
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