WES試験対策(1級) 問題と解説 No.306~310
このページの問題を一問一答形式の動画としてまとめました。復習用にご活用ください。通勤中や運動中に最適です。
【No.306】 粒界腐食
粒界腐食に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)粒界腐食は、マルテンサイト系ステンレス鋼の溶接熱影響部で発生する。
(2)粒界腐食のメカニズムにおいて、溶接熱サイクルによって結晶粒界にクロム炭化物が析出する。
(3)粒界腐食は、結晶粒界が選択的に腐食される現象である。
(4)結晶粒界とは、金属材料の中で隣り合う結晶粒同士の境界部分のことである。
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誤っている選択肢は (1)
【解説】
(1)誤り。粒界腐食は主にオーステナイト系ステンレス鋼で発生します。ステンレス鋼には「オーステナイト系」「フェライト系」「マルテンサイト系」「二相系」などがあり、このうち粒界腐食の感受性が高いのはオーステナイト系です。
(2)正しい。溶接熱サイクルで約650~850℃に長く滞留すると、炭素が粒界に移動し、クロムと結びついてクロム炭化物が析出します。これは拡散速度が粒界で速いためです。
(3)正しい。クロム炭化物が粒界に析出すると、その周囲のクロムが奪われ、耐食性が低下します。この「クロム欠乏部」がアノードとなり、粒界だけが選択的に腐食されます。
(4)正しい。結晶粒とは、金属内部に存在する小さな結晶の集まりで、方位の異なる結晶が隣り合う境界が「粒界」です。粒界は拡散が速く、腐食や析出が起こりやすい特徴があります。
【No.307】 粒界腐食
粒界腐食に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)粒界腐食のメカニズムにおいて、クロム炭化物が析出したその近傍に、クロム濃度が上昇した領域が形成される。
(2)粒界腐食のメカニズムにおいて、クロム濃度が低下した領域が形成されることで耐食性が劣化する。
(3)クロム炭化物が粒界にできると、周囲のクロムが炭化物形成に使われてしまい、不働態皮膜が形成できず、粒界がアノード化して腐食が進む。
(4)粒界腐食が発生する場所は、クロム炭化物が析出しやすい温度域に長時間加熱された領域である。
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誤っている選択肢は (1)
【解説】
(1)誤り。クロム炭化物が形成されると、周囲のクロムが炭化物形成に使われるため、粒界近傍のクロム濃度は「低下」します。これがクロム欠乏部です。
(2)正しい。ステンレス鋼の耐食性はクロムが酸化して形成する「不働態皮膜」によって保たれます。クロム欠乏部では皮膜が形成できず、腐食が急速に進行します。
(3)正しい。不働態皮膜とは、クロムが酸化してできる非常に薄い保護膜です。クロム欠乏部では皮膜が形成できず、粒界がアノード(腐食される側)となり、粒内より先に腐食が進みます。
(4)正しい。「長時間」とは、数秒~数十秒程度でも十分です。溶接では熱影響部がこの温度域に滞留しやすく、鋭敏化が起こります。
【No.308】 粒界腐食
粒界腐食に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)クロム炭化物が析出しやすい温度域を鋭敏化温度域という。
(2)鋭敏化温度域は、約900℃~1200℃である。
(3)溶接熱サイクルとは、溶接時に母材が受ける温度変化の履歴のことである。
(4)粒界腐食が発生する場所は、溶接熱サイクルのピーク温度が約650℃~850℃の場所に相当し、溶接境界部となる。
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誤っている選択肢は (2)、(4)
【解説】
(1)正しい。鋭敏化とは、粒界が腐食に対して「敏感(鋭敏)」になることを意味します。650~850℃でクロム炭化物が析出しやすく、この温度域を鋭敏化温度域と呼びます。
(2)誤り。鋭敏化温度域は約650~850℃です。この温度域でクロム炭化物が最も析出しやすく、粒界腐食の原因となります。
(3)正しい。履歴とは、加熱→最高温度→冷却という時間と温度の変化の記録です。溶接部は位置によって温度履歴が異なり、組織変化や鋭敏化の有無が決まります。
(4)誤り。鋭敏化温度域に入るのは溶接境界から「やや離れた」熱影響部です。溶接線直近は高温になりすぎて炭化物が溶解し、鋭敏化しません。
【No.309】 粒界腐食
粒界腐食に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)粒界腐食の防止策として、低炭素系ステンレス鋼の使用が挙げられる。
(2)粒界腐食の防止策として、ニッケルを添加した安定化ステンレス鋼の使用が挙げられる。
(3)粒界腐食の防止策として、鋭敏化温度域の冷却速度を小さくすることが挙げられる。
(4)粒界腐食の防止策として、約1000℃~1100℃以上の固溶化熱処理の実施が挙げられる。
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誤っている選択肢は (2)、(3)
【解説】
(1)正しい。低炭素系ステンレス鋼(例:SUS304L)は炭素量が少なく、クロム炭化物が形成されにくいため、鋭敏化を防止できます。
(2)誤り。安定化ステンレス鋼とは、チタンi や ニオブ を添加し、炭素と優先的に結合させることでクロム炭化物の析出を防ぐ鋼です。安定化されるのは「クロムの自由度」です。
(3)誤り。冷却速度を「大きく」して鋭敏化温度域を素早く通過させることが重要です。水冷、低入熱溶接、パス間温度管理などが有効です。
(4)正しい。固溶化熱処理とは、炭化物を溶解させ、クロムを均一に固溶させる処理です。急冷することで炭化物の再析出を防ぎ、耐食性が回復します。
【No.310】 粒界腐食
粒界腐食に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)粒界腐食は、オーステナイト系ステンレス鋼の溶接熱影響部で発生する。
(2)SUS321やSUS347などの安定化ステンレス鋼を使用した場合、溶接熱サイクルにより約1200℃以上に加熱された、溶接線近傍の狭い領域が、再び鋭敏化温度域に加熱されたとき、粒界腐食を生じることがある。この粒界腐食をナイフラインアタックと呼ぶ。
(3)ナイフラインアタックの防止策として、再び炭化ニオブ(NbC)や炭化チタン(TiC)が形成されるように溶接後870℃~950℃で安定加熱処理を行う。
(4)ナイフラインアタックの防止策として、低炭素・窒素添加鋼、希土類元素添加鋼(ナイフラインアタック対策鋼)を使用する。
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誤っている選択肢は 無し
【解説】
(1)正しい。オーステナイト系ステンレス鋼は炭素固溶量が高く、クロム炭化物が析出しやすいため粒界腐食が問題になります。他にはフェライト系、マルテンサイト系、二相系があります。
(2)正しい。再加熱とは、多層盛り溶接や隣接部の溶接で再び熱が加わる状況です。1200℃以上で安定化炭化物が溶解し、再び鋭敏化温度域に入ると粒界腐食が発生します。
(3)正しい。870~950℃で加熱すると、炭化ニオブ や 炭化チタン が再析出し、炭素を安定化させてクロム炭化物の形成を防ぎます。これにより粒界腐食の感受性が低下します。
(4)正しい。窒素はオーステナイト安定化元素で、適量なら靭性向上に寄与します。希土類元素(セリウム、ランタン など)は介在物を制御し、粒界の安定化に寄与してナイフラインアタックを防ぎます。
