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【一級建築士過去問H30_Ⅳ_構造】一日5問!詳しく解説No.2

【一級建築士過去問_Ⅳ_構造】一日5問!詳しく解説

構造_H30_No.13

鉄筋コンクリート構造の許容応力度計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.開口を有する耐力壁において、許容せん断力だけでなく、せん断剛性についても、開口の大きさに応じた低減率を考慮して構造計算を行った。
2.両側スラブ付き梁部材の曲げ剛性として、スラブの協力幅を考慮したT形断面部材の値を用いた。
3.柱の断面算定において、コンクリートに対する鉄筋のヤング係数比nは、コンクリートの設計基準強度が高くなるほど大きな値とした。
4.純ラーメン架構の梁端部の断面算定において、水平荷重による設計用曲げモーメントとして、フェイスモーメント(柱面位置での曲げモーメント)を用いた。
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【正解(3)】

1.〇です。開口部を設けた壁は、開口周比を求めます。この開口周比に応じて、耐力壁の剛性及び耐力を低減したうえで構造計算を行います。なお、開口周比が0.4を超える場合は、その壁を耐力壁として扱うことはできません。
2.○です。両側スラブ付き梁部材の曲げ剛性として、スラブの協力幅を考慮したT形断面部材の値を用います。
3.×です。コンクリートに対する鉄筋のヤング係数比は、分母にコンクリートのヤング係数を取ります。コンクリートの設計基準強度が高くなるほど、コンクリートのヤング係数は大きくなります。つまり、分母の値が大きくなるので、コンクリートに対する鉄筋のヤング係数比nは、コンクリートの設計基準強度が高くなるほど小さな値となります。
4.○です。純ラーメン架構の梁端部の断面算定において、水平荷重による設計用曲げモーメントとして、フェイスモーメント(柱面位置での曲げモーメント)を用いることができます。

構造_H30_No.14

鉄筋コンクリート構造の保有水平耐力計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.柱の塑性変形能力を確保するため、引張鉄筋比Ptを大きくした。
2.梁の塑性変形能力を確保するため、崩壊形に達したときの梁の断面に生じる平均せん断応力度を小さくした。
3.耐力壁の塑性変形能力を確保するため、崩壊形に達したときの耐力壁の断面に生じる平均せん断応力度を小さくした。
4.ラーメン架構と耐力壁を併用した建築物の構造特性係数Dsを小さくするため、保有水平耐力に対する耐力壁の水平耐力の和の比率βuを小さくした。
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【正解(1)】

1.×です。引張鉄筋比Ptは、引張鉄筋の断面積の合計を梁の有効断面積、または、柱の全断面積で割った数値のことを言います。梁の引張鉄筋比Ptの最小値は0.4%と規定されています。ここで、引張鉄筋比Ptを大きくするために、鉄筋の本数を増やしたり、コーナー部の鉄筋を太くすると、脆性的な破壊形式である、付着割裂破壊が生じやすくなります。そのため、塑性変形能力は低下します
2.○です。平均せん断応力度を小さくする場合、つまり、せん断応力度を小さくする場合、曲げ降伏後にせん断破壊を生じる可能性が低くなります。すなわち、梁の塑性変形能力が高くなります。
3.○です。崩壊形に達したときの耐力壁の断面に生じる平均せん断応力度を小さくすると、耐力壁がせん断破壊する可能性が低くなるため、耐力壁の塑性変形能力が高くなります。
4.○です。保有水平耐力に対する耐力壁の水平耐力の和の比率βuを小さくすると、耐力型ではなく、靭性型の建物となるため、ラーメン架構と耐力壁を併用した建築物の構造特性係数Dsを小さくすることができます。

構造_H30_No.15

鉄骨構造の溶接接合に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.溶接金属の機械的性質は溶接施工条件の影響を受けることから、溶接に当たっては、溶接部の強度を低下させないために、パス間温度が規定値より小さくなるように管理する。
2.溶接継目ののど断面に対する長期許容せん断応力度は、溶接継目の形式が「完全溶込み溶接の場合」と「すみ肉溶接の場合」とで同じである。
3.柱梁接合部の梁端部フランジの溶接接合においては、梁ウェブにスカラップを設けないノンスカラップ工法を用いることにより、塑性変形能力の向上が期待できる。
4.組立溶接において、シュートビード(ビードの長さが短い溶接)は、冷却時間が短いことから、塑性変形能力が低下する危険性や低温割れが生じる危険性が小さくなる。
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【正解(4)】

1.○です。溶接は、溶接棒を溶かして、金属同士を接合する方法です。溶接個所に複数回溶接棒を溶かして接合する場合、1回の溶接作業をパスと言います。一般に、溶接による入熱が大きくなるほど、溶接部の強度は低くなります。そのため、溶接に当たっては、溶接部の強度を低下させないために、パス間温度が規定値より小さくなるように管理します。鉄骨工事技術指針・工場製作編によると、鋼材が400N級の場合は、パス間温度350℃以下、鋼材が490N級の場合は、パス間温度250℃以下となっています。
2.○です。溶接継目ののど断面に対する長期許容せん断応力度は、溶接継目の形式が「完全溶込み溶接の場合」と「すみ肉溶接の場合」とで同じです。一方、圧縮・引張り・曲げに対する許容応力度は、完全溶込み溶接(突合せ以外のもの)ではF/1.5√3、すみ肉溶接(突合せ)ではF/1.5です。
3.○です。スカラップは、溶接線同士の接触を避けるために設けられる切り欠き部です。スカラップ部分に応力が集中し、母材が破断する可能性が高くなります。柱梁接合部の梁端部フランジの溶接接合においては、梁ウェブにスカラップを設けないノンスカラップ工法を用いることにより、塑性変形能力の向上が期待できます。
4.×です。シュートビード(ビードの長さが短い溶接)は、冷却時間が短いことから、塑性変形能力が低下する危険性や低温割れが生じる危険性が大きくなります。ショートビードとならない様、ビード長さは、溶接する部材の板厚が6mm以下の場合は30mm以上、板厚が6mmを超える場合は40mm以上とします。

構造_H30_No.16

鉄骨構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.骨組の塑性変形能力を確保するために定められているH形鋼の柱及び梁の幅厚比の上限値は、フランジよりウェブのほうが大きい。
2.柱及び梁に使用する鋼材の幅厚比の上限値は、建築構造用圧延鋼材SN400Bより建築構造用圧延鋼材SN490Bのほうが大きい。
3.梁の横座屈を防止するための横補剛材は、強度だけではなく、十分な剛性を有する必要がある。
4.梁の横座屈を防止するための横補剛には、「梁全長にわたって均等間隔で横補剛する方法」、「主として梁端部に近い部分を横補剛する方法」等がある。
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【正解(2)】

1.○です。幅厚比は、板の幅÷板の厚さです。つまり、幅厚比が大きいほど、板の幅に対して、厚さを薄くできます。フランジは曲げによって大きい圧縮力を受けるため、必要な板厚が厚くなります。骨組の塑性変形能力を確保するために定められているH形鋼の柱及び梁の幅厚比の上限値は、フランジよりウェブのほうが大きいです。
2.×です。柱及び梁に使用する鋼材の幅厚比の上限値は、建築構造用圧延鋼材SN400Bより建築構造用圧延鋼材SN490Bのほうが小さいです。これは、降伏点強度が高いSN490Bのほうが、降伏する前に座屈を起こさないように、幅厚比の制限が厳しくなります。幅厚比は、板の幅÷板の厚さであることから、厚さを厚くしなければなりません。
3.○です。梁の横座屈を防止するための横補剛材は、強度だけではなく、十分な剛性を有する必要があります。
4.○です。梁の横座屈を防止するための横補剛には、「梁全長にわたって均等間隔で横補剛する方法」、「主として梁端部に近い部分を横補剛する方法」等があります。梁全長にわたって均等間隔で横補剛する方法は、小梁を大梁の横補剛材として兼用することで、経済的な設計となります。また、地震時に正負逆対称の曲げを受ける大梁では、梁端部の曲げモーメントが大きくなるため、梁端部の横座屈を効果的に防ぐためには、梁端部に近い部分を横補剛します。

構造_H30_No.17

鉄骨構造において使用する高力ボルトに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
1.高力ボルト摩擦接合は、接合される部材間の摩擦力で応力を伝達する機構であり、部材とボルト軸部との間の支圧による応力の伝達を期待するものではない。
2.せん断力と引張力とを同時に受ける高力ボルトの許容せん断応力度は、引張応力度の大きさに応じて低減する。
3.高力ボルト摩擦接合と溶接接合とを併用する接合部においては、溶接を行った後に高力ボルトを締め付けた場合、両接合の許容力を加算することができる。
4.F10Tの高力ボルト摩擦接合において、2面摩擦の許容せん断応力度は、1面摩擦の場合の2倍である。
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【正解(3)】

1.○です。長期・短期の許容応力度設計においては、高力ボルト摩擦接合は、接合される部材間の摩擦力で応力を伝達する機構として設計します。ただし、終局時の破断耐力検討では、母材の支圧力とボルト軸部のせん断力で応力が伝達される状態を想定します。
2.○です。高力ボルト摩擦接合は、ボルト軸方向に引張られると、接合面の摩擦力が減少するため、すべり耐力が減少します。せん断力と引張力とを同時に受ける高力ボルトの許容せん断応力度は、引張応力度の大きさに応じて低減します。
3.×です。高力ボルト摩擦接合と溶接接合とを併用する接合部においては、高力ボルトを締め付けた後に溶接を行った場合、両接合の許容力を加算することができます。溶接後に高力ボルトを締め付ける場合、溶接による熱ひずみの影響で、摩擦面が平らではなくなります。この場合は、応力は分担させることはできず、溶接のみの許容耐力となります。
4.○です。高力ボルト摩擦接合において、2面摩擦の許容せん断応力度は、1面摩擦の場合の2倍です。摩擦面が1面から2面になるためです。
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