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【宅建過去問】権利関係ー時効No.11-15

【No2-3】聞き流し_宅建過去問_一問一答_権利関係
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【No.11】

Aは,Bに対し建物を賃貸し,月額10万円の賃料債権を有している。この賃料債権の消滅時効に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)Aは,Bに対し建物を賃貸し,月額10万円の賃料債権を有している。この賃料債権の消滅時効に関して,Aが,Bに対する賃料債権につき支払督促の申立てをし,さらに期間内に適法に仮執行の宣言の申立てをしたときは,消滅時効は中断する。
(2)Aは,Bに対し建物を賃貸し,月額10万円の賃料債権を有している。この賃料債権の消滅時効に関して,Bが,Aとの建物賃貸借契約締結時に,賃料債権につき消滅時効の利益はあらかじめ放棄する旨約定したとしても,その約定に法的効力は認められない。
(3)Aは,Bに対し建物を賃貸し,月額10万円の賃料債権を有している。この賃料債権の消滅時効に関して,Aが,Bに対する賃料債権につき内容証明郵便により支払を請求したときは,その請求により消滅時効は中断する。
(4)Aは,Bに対し建物を賃貸し,月額10万円の賃料債権を有している。この賃料債権の消滅時効に関して,Bが,賃料債権の消滅時効が完成した後にその賃料債権を承認したときは,消滅時効の完成を知らなかったときでも,その完成した消滅時効の援用をすることは許されない。
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正解は(3)

【解説】
(1)○正しい。支払督促は,債権者が弁済を求める裁判上の簡易な手続ですが,法定の期間内に適法に仮執行の宣言の申立てをしないことによってその効力を失った場合には,時効中断の効力は生じません。しかし,債権者Aによって適法に仮執行の宣言の申立てがなされているので,消滅時効は中断します。
(2)○正しい。時効を援用しないという意思の表明を時効の利益の放棄といいます。ただし,この時効の利益は,時効の完成前にあらかじめ放棄することはできません。
(3)×誤り。内容証明郵便により支払を請求しただけでは,消滅時効は中断しません。時効の中断事由としての「請求」とは,訴え提起による裁判上の請求などをいいます。裁判外の請求は,「催告」にすぎず,催告は,その後6ヵ月以内に裁判上の請求などをしない限り時効の中断は生じません。
(4)○正しい。時効が完成したのちに、偵務者が債務の承認をすれば,消滅時効の完成を知らなかったときでも,信義則上その完成した消滅時効を援用することは許されません。

【No.12】

A所有の土地の占有者がAからB,BからCと移った場合のCの取得時効に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)A所有の土地の占有者がAからB,BからCと移った場合のCの取得時効に関し、Bが平穏、公然、善意、無過失に所有の意思をもって8年間占有し,CがBから土地の譲渡を受けて2年間占有した場合,当該土地の真の所有者はBではなかったとCが知っていたとしてもCは10年の取得時効を主張できる。
(2)A所有の土地の占有者がAからB,BからCと移った場合のCの取得時効に関し、Bが所有の意思をもって5年間占有し,CがBから土地の譲渡を受けて平穏、公然に5年間占有した場合,Cが占有の開始時に善意、無過失であれば,Bの占有に瑕疵があるかどうかにかかわらず,Cは10年の取得時効を主張できる。
(3)A所有の土地の占有者がAからB,BからCと移った場合のCの取得時効に関し、Aから土地を借りていたBが死亡し,借地であることを知らない相続人Cがその土地を相続により取得したと考えて利用していたとしてもCはBの借地人の地位を相続するだけなので,土地の所有権を時効で取得することはない。
(4)A所有の土地の占有者がAからB,BからCと移った場合のCの取得時効に関し、Cが期間を定めずBから土地を借りて利用していた場合,Cの占有が20年を超えれば,Cは20年の取得時効を主張することができる。
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正解は(1)

【解説】
(1)○正しい。時効期間中に占有の承継があった場合,占有の承継人は,自己の占有のみを主張することができ,また,前主の占有を併せて主張することもできます。前主の占有を併せて主張した場合には,善意、無過失の判断は,最初の占有者の占有開始の時点で判断すれば足ります。
(2)×誤り。Bの占有に瑕疵があれば,Cは当該時効を主張できません。占有の承継人が前主の占有を併せて主張する場合には,その瑕疵もまた承継します。
(3)×誤り。Cは自分自身の占有により土地を時効取得することができます。所有権を時効取得するためには,所有の意思をもって占有する必要がありますが,被相続人が所有の意思のない占有である場合であっても、新たに相続財産を事実上支配することによって占有を開始し,その占有に所有の意思があると認められるときには,相続人は,所有の意思をもって占有を始めたといえます。
(4)×誤り。Cは土地を借りていた以上,時効主張は認められません。四蒻所有権の時効取得には,所有の意思をもってする占有が必要ですが,占有における所有の意思の有無は,占有取得の原因たる事実によって外形的客観的に判断されます。

【No.13】

所有権及びそれ以外の財産権の取得時効に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)土地の賃借権は,物権ではなく,契約に基づく債権であるので,土地の継続的な用益という外形的かつ客観的事実が存在したとしても,時効によって取得することはできない。
(2)自己の所有と信じて占有している土地の一部に,隣接する他人の土地の筆の一部が含まれていても他の要件を満たせば,当該他人の土地の一部の所有権を時効によって取得することができる。
(3)時効期間は,時効の基礎たる事実が開始された時を起算点としなければならず,時効援用者において起算点を選択し,時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできない。
(4)通行地役権は,継続的に行使され,かつ,外形上認識することができるものに限り,時効によって取得することができる。
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正解はNone

【解説】
(1)×誤り。不動産賃借権も時効取得の対象となります。不動産賃借権等の所有権以外の権利も時効取得の対象となります。そして,土地の継続的な用益という外形的事実が存在し,かつ,それが賃借の意思に基づくことが客観的に表現されているときは,土地賃借権を時効取得することができます。
(2)○正しい。所有の意思をもって平穏かつ公然に占有を継続した者は,その所有権を取得します。そして,一筆の土地の一部についても,時効取得が認められます。
(3)○正しい。時効取得は,時効の基礎である事実の開始された時を起算点とすべきもので,時効援用者において起算点を選択し,時効完成の時期を早めたり遅らせたりすることはできません。
(4)○正しい。地役権は,継続的に行使され,かつ,外形上認識することができるものに限り,時効によって取得することができます。

【No.14】

AがBに対して有する100万円の貸金債権の消滅時効に関する記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)AがBに対して有する100万円の貸金債権の消滅時効に関して、Aが弁済期を定めないで貸し付けた場合,Aの債権は,いつまでも時効によって消滅することはない。
(2)AがBに対して有する100万円の貸金債権の消滅時効に関して、AB間に裁判上の和解が成立し,Bが1年後に100万円を支払うことになった場合,Aの債権の消滅時効期間は,和解成立の時から10年となる。
(3)AがBに対して有する100万円の貸金債権の消滅時効に関して、Cが自己所有の不動産にAの債権の担保として抵当権を設定(物上保証)している場合,Cは,Aの債権の消滅時効を援用してAに抵当権の抹消を求めることができる。
(4)AがBに対して有する100万円の貸金債権の消滅時効に関して、AがBの不動産に抵当権を有している場合に,Dがこの不動産に対して強制執行の手続を行ったときは,Aがその手続に債権の届出をしただけで,Aの債権の時効は中断する。
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正解は(1)

【解説】
(1)×誤り。期間の定めのない貸金債権も,時効により消滅します。消滅時効は,権利を行使できる時から進行します。弁済期の定めのない消費貸借の場合,債権者は相当の期間を定めて返還の催告をすることができるので,債権が成立してから相当の期間が経過した時から消滅時効が進行します。
(2)×誤り。和解成立後1年を経過したときから10年となります。裁判上の和解が成立した債権の消滅時効の期間は和解成立時から10年ですが,権利確定の当時いまだ弁済期が到来していない債権については,この原則は適用されません。本肢の場合,和解契約成立後1年後に100万円を支払うこととされており,和解成立時に弁済期は到来していません。したがって,期限の定めのある債権として,期限到来の時から消滅時効が進行するので,Aの債権の消滅時効期間は,和解成立後1年を経過した時から10年です。
(3)○正しい。時効の援用ができるのは「時効によって直接に利益を受ける者」に限られます。そして,物上保証人は,時効によって直接に利益を受ける者にあたり,被担保債権の消滅時効を援用できます。
(4)×誤り。債権の届出をしただけでは,時効は中断しません。民法上,時効の中断事由としては,①請求,②差し押さえ、仮差し押さえ、仮処分,③承認があります。他の債権者が行った強制執行手続に対して自らの債権を届け出たにすぎない場合には,これらの時効中断事由には該当しません。

【No.15】

A所有の甲土地を占有しているBによる権利の時効取得に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)A所有の甲土地を占有しているBによる権利の時効取得に関して、Bが父から甲土地についての賃借権を相続により、承継して賃料を払い続けている場合であっても,相続から20年間甲土地を占有したときは,Bは,時効によって甲土地の所有権を取得することができる。
(2)A所有の甲土地を占有しているBによる権利の時効取得に関して、Bの父が11年間所有の意思をもって平穏かつ公然に甲土地を占有した後,Bが相続により、その占有を承継し,引き続き9年間所有の意思をもって平穏かつ公然に占有していても,Bは,時効によって甲土地の所有権を取得することはできない。
(3)A所有の甲土地を占有しているBによる権利の時効取得に関して、Aから甲土地を買い受けたCが所有権の移転登記を備えた後に,Bについて甲土地所有権の取得時効が完成した場合,Bは,Cに対し,登記がなくても甲土地の所有者であることを主張することができる。
(4)A所有の甲土地を占有しているBによる権利の時効取得に関して、甲土地が農地である場合,BがAと甲土地につき賃貸借契約を締結して20年以上にわたって賃料を支払って継続的に耕作していても,農地法の許可がなければ,Bは,時効によって甲土地の賃借権を取得することはできない。
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正解は(3)

【解説】
(1)×誤り。賃借人には所有の意思が認められません。所有権の取得時効が成立するには,占有が所有の意思に基づくことが必要です。Bは相続によって賃借人としての地位を承継して甲土地の占有を開始しています。賃借人には所有の意思が認められないため,20年間占有しても取得時効により所有権を取得することはできません。
(2)×誤り。自己の占有と前の占有者の占有を併せて主張して時効取得できます。占有を承継した場合,前の占有者の占有を併せて主張することが可能です。Bの父は所有の意思をもって平穏、公然と甲土地を占有しています。Bの父の占有とBの占有を併せると,その期間は20年であるため,取得時効が成立します。
(3)○正しい。CがAから売買によって甲土地の所有権を取得した後,Bは時効取得によって甲土地の所有権を原始取得します。時効完成前の承継人Cは,時効取得者Bにとっては物権変動の当事者と評価できるため,Cは「第三者」に当たらず,Bは登記なくして甲土地の所有権をCに主張できます。
(4)×誤り。農地法の許可がなくても賃借権の時効取得はできます。農地法の許可のない賃貸借契約は効力を生じないため,農地法の許可がない場合は,原則として賃借権を取得することはできません。賃借権も一定の場合,時効取得できます。また,農地法が許可を求めた趣旨に反することがなければ,許可を受けていなくて糺賃借権の時効取得も認められます。Bは,賃借人が継続的に耕作しているため,農地法が許可を求めた趣旨に反することはありません。したがって,Bは農地法の許可がなくても賃借権を時効取得することができます。
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