【No.86】
AがBに対して負う1000万円の債務について,C及びDが連帯保証人となった場合(CD間に特約はないものとする)に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)AがBに対して負う1000万円の債務について,C及びDが連帯保証人となった場合,Bは1000万円の請求を,A,C,Dの3人のうちのいずれに対しても,その全額について行うことができる。
(2)AがBに対して負う1000万円の債務について,C及びDが連帯保証人となった場合,CがBから1000万円の請求を受けた場合,Cは,Bに対し,Dに500万円を請求するよう求めることができる。
(3)AがBに対して負う1000万円の債務について,C及びDが連帯保証人となった場合,CがBから請求を受けた場合,CがAに執行の容易な財産があることを証明すれば,Bは,まずAに請求しなければならない。
(4)AがBに対して負う1000万円の債務について,C及びDが連帯保証人となった場合,Cが1000万円をBに弁済した場合,Cは,Aに対して求償することができるが,Dに対して求償することはできない。
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正解は(1)
【解説】
(1)○正しい。保証人が複数いる場合,特約がない限り,それぞれの保証人は,全体の債務額を保証人の頭数で割った部分しか責任を負わないのが原則です。しかし,連帯保証人には,分別の利益が認められていありません。Aだけでなく,C,Dも,1000万円全額につき債務を負います。
(2)×誤り。連帯保証人Cには分別の利益はありません。連帯保証人には分別の利益が認められていないから,Cは,1000万円について債務を負っています。Dに500万円を請求するようBに求めることはできません。
(3)×誤り。連帯保証人Cには検索の抗弁権はありません。保証人は,催告の抗弁権,検索の抗弁権を有しますが,連帯保証人は,これらを有しません。
(4)×誤り。CはAのみならすDにも求償することができます。保証人が複数いる場合に,1人の保証人が自己の負担部分を超えて弁済したときには,弁済をした保証人は,主たる債務者に対してはもちろん,他の保証人に対しても内部的に求償することができます。
【No.87】
AからBとCとが負担部分2分の1として連帯して1000万円を借り入れる場合と,DからEが1000万円を借り入れ,Fがその借入金返済債務についてEと連帯して保証する場合とに関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。
(1)AからBとCとが負担部分2分の1として連帯して1000万円を借り入れる場合と,DからEが1000万円を借り入れ,Fがその借入金返済債務についてEと連帯して保証する場合とに関し,Aが,Bに対して債務を免除した場合にはCが,Cに対して債務を免除した場合にはBが,それぞれ500万円分の債務を免れる。Dが,Eに対して偵務を免除した場合にはFが,Fに対して債務を免除した場合にはEが,それぞれ全額の債務を免れる。
(2)AからBとCとが負担部分2分の1として連帯して1000万円を借り入れる場合と,DからEが1000万円を借り入れ,Fがその借入金返済債務についてEと連帯して保証する場合とに関し,Aが,Bに対して履行を請求しか効果はCに及び,Cに対して履行を請求した効果はBに及ぶ。Dが,Eに対して履行を請求した効果はFに及び,Fに対して履行を請求した効果はEに及ぶ。
(3)AからBとCとが負担部分2分の1として連帯して1000万円を借り入れる場合と,DからEが1000万円を借り入れ,Fがその借入金返済債務についてEと連帯して保証する場合とに関し,Bについて時効が完成した場合にはCが,Cについて時効が完成した場合にはBが,それぞれ500万円分の債務を免れる。Eについて時効が完成した場合にはFが,Fについて時効が完成した場合にはEが,それぞれ全額の債務を免れる。
(4)AからBとCとが負担部分2分の1として連帯して1000万円を借り入れる場合と,DからEが1000万円を借り入れ,Fがその借入金返済債務についてEと連帯して保証する場合とに関し,AB間の契約が無効であった場合にはCが,AC間の契約が無効であった場合にはBが,それぞれ1000万円の債務を負う。DE間の契約が無効であった場合はFが,DF間の契約が無効であった場合はEが,それぞれ1000万円の債務を負う。
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正解は(2)
【解説】
(1)×誤り。Fの連帯保証債務を免除しても,Eは債務を免れません。連帯債務者の1人に対してその債務を免除した場合,その債務者の負担部分について他の債務者も債務を免れます。また,主たる債務者の債務を免除すれば,保証債務も消滅します。これに対し,連帯保証人の債務を免除しても,主たる債務者の債務に影響を及ぼしません。
(2)○正しい。連帯債務の債権者がした履行の請求には,絶対効が認められます。また,債権者が主たる債務者に履行の請求をすると,連帯保証人にも効果は及びます。更に,債権者が連帯保証人に履行の請求をすると主たる債務者にも効果は及びます。
(3)×誤り。連帯保証人Fの時効が完成しても,Eは債務を免れません。消滅時効の完成によって,連帯債務者の1人の債務が消滅した場合には,その負担部分について絶対効が認められ,他の債務者の債務も消滅します。また,主たる偵務者の債務について時効が完成すると,連帯保証人も全額の債務を免れます。しかし,連帯保証人について消滅時効が完成しても,主たる債務者は債務を免れません。
(4)×誤り。Eの主債務が無効の場合,Fは連帯保証債務を負いません。連帯債務者の1人について契約の無効があっても,他の連帯債務者の偵務に影響を及ばさず,それぞれ1000万円の債務を負います。また,連帯保証契約が無効であっても,主たる債務者は1000万円の債務を負うことに変わりません。しかし,主たる債務が無効であった場合,連帯保証債務も無効となり,連帯保証債務を負わなくなります。
【No.88】
AとBとが共同で,Cから,C所有の土地を2000万円で購入し,代金を連帯して負担する連帯債務と定め,CはA,Bに登記,引渡しをしたのに,A,Bが支払いをしない場合の次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。
(1)AとBとが共同で,Cから,C所有の土地を2000万円で購入し,代金を連帯して負担する連帯債務と定め,CはA,Bに登記,引渡しをしたのに,A,Bが支払いをしない場合,Cは,Aに対して2000万円の請求をすると,それと同時には,Bに対しては,全く請求をすることができない。
(2)AとBとが共同で,Cから,C所有の土地を2000万円で購入し,代金を連帯して負担する連帯債務と定め,CはA,Bに登記,引渡しをしたのに,A,Bが支払いをしない場合,AとBとが,代金の負担部分を1000万円ずつと定めていた場合,AはCから2000万円請求されても,1000万円を支払いえばよい。
(3)AとBとが共同で,Cから,C所有の土地を2000万円で購入し,代金を連帯して負担する連帯債務と定め,CはA,Bに登記,引渡しをしたのに,A,Bが支払いをしない場合,BがCに2000万円支払った場合,Bは,Aの負担部分と定めていた1000万円及びその支払った日以後の法定利息をAに求償することができる。
(4)AとBとが共同で,Cから,C所有の土地を2000万円で購入し,代金を連帯して負担する連帯債務と定め,CはA,Bに登記,引渡しをしたのに,A,Bが支払いをしない場合,Cから請求を受けたBは,Aが,Cに対して有する1000万円の債権をもって相殺しない以上,Aの負担部分についてもBからこれをもって相殺することはできない。
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正解は(3)
【解説】
(1)×誤り。Cはそれぞれに2000万円を同時に全額請求できます。債権者は,連帯債務者全員に対して,債務の全部又は一部の履行を請求することができます。したがって,Cは,Aに対して2000万円の請求をしても,それと同時にBに対して2000万円の請求をすることができます。
(2)×誤り。Aは2000万円払う義務があります。債権者は,連帯債務者全員に対して,債務の全部又は一部の履行を請求することができます。これは,連帯債務者間で代金の負担部分を定めていても,同様です。したがって,Aは,Cから2000万円請求されれば,Cに2000万円を支払わなければなりません。
(3)○正しい。連帯債務者の1人が債務全額を弁済したときは,その債務者は,他の債務者に対して各自の負担部分について求償することができます。そして,この求償をする際,弁済その他,免責があった日以後の法定利息及び避けることができない費用,その他の損害の賠償も求めることができます。
(4)×誤り。Aの負担部分については相殺できます。連帯債務者の1人が債権者に対して債権を有する場合において,その債務者が相殺を援用しない間は,その債務者の負担部分について,他の債務者は相殺を援用することができます。
【No.89】
A及びBは,Cの所有地を買い受ける契約をCと締結し,連帯して代金を支払う債務を負担している。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。
(1)A及びBは,Cの所有地を買い受ける契約をCと締結し,連帯して代金を支払う債務を負担している。Aの債務が時効により消滅したときは,Bは,Aの負担部分について支払いを免れる。
(2)A及びBは,Cの所有地を買い受ける契約をCと締結し,連帯して代金を支払う債務を負担している。CがAに対して期限の猶予をしたときは,Bの債務についても,期限が猶予される。
(3)A及びBは,Cの所有地を買い受ける契約をCと締結し,連帯して代金を支払う債務を負担している。CがBに対して支払いを請求して,Cの代金債権の消滅時効が中断されたときは,Aの債務についても,中断される。
(4)A及びBは,Cの所有地を買い受ける契約をCと締結し,連帯して代金を支払う債務を負担している。Aが債務を承認して,Cの代金債権の消滅時効が中断されたときでも,Bの債務については,中断されない。
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正解は(2)
【解説】
(1)○正しい。消滅時効の完成によって,連帯債務者の1人の債務が消滅した場合には,その負担部分について絶対効が認められることから,その負担部分の範囲で他の連帯債務者も支払いを免れます。
(2)×誤り。期限の猶予は相対効です。Bの債務の期限は猶予されません。皿期限の猶予については,絶対効が認められていません。したがって,原則どおり相対効しか認められず,Bの債務に影響を及ぼしません。
(3)○正しい。連帯債務の債権者がした履行の請求には,絶対効が認められます。したがって,請求に基づく消滅時効の中断は,他の債務者の債務についても生じます。
(4)○正しい。債務の承認による時効中断には,相対効しか認められません。したがって,Aの債務について消滅時効が中断しても,その効果はBには及ばず,Bの債務については消滅時効は中断しません。よって,。
【No.90】
A,B,Cの3人がDに対して900万円の連帯債務を負っている場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。なおA,B,Cの負担部分は等しいものとする。
(1)A,B,Cの3人がDに対して900万円の連帯債務を負っている場合,DがAに対して履行の請求をした場合,B及びCがそのことを知らなければ,B及びCについては,その効力が生じない。
(2)A,B,Cの3人がDに対して900万円の連帯債務を負っている場合,Aが,Dに対する債務と,Dに対して有する200万円の債権を対当額で相殺する旨の意思表示をDにした場合,B及びCのDに対する連帯債務も200万円が消滅する。
(3)A,B,Cの3人がDに対して900万円の連帯債務を負っている場合,Bのために時効が完成した場合,A及びCのDに対する連帯債務も時効によって全部消滅する。
(4)A,B,Cの3人がDに対して900万円の連帯債務を負っている場合,CがDに対して100万円を弁済した場合は,Cの負担部分の範囲内であるから,Cは,A及びBに対して求償することはできない。
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正解は(2)
【解説】
(1)×誤り。請求は,他の連帯債務者に対しても効力を生じます。連帯債務者の一人に対する履行の請求は,他の連帯債務者に対してもその効力を生じます。他の連帯債務者が債権者による履行の請求があったことを知っていたかは影響しません。したがって,B及びCが知らなかったとしても,B及びCについて効力が生じます。
(2)○正しい。連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において,その連帯債務者が相殺を援用したときは,債権は,すべての連帯債務者の利益のために消滅します。したがって,Aが200万円で相殺すれば,B及びCの債務も200万円について消滅します。
(3)×誤り。時効完成の場合,他の連帯債務者の負担部分が消滅します。連帯債務者の一人のために時効が完成したとき,その連帯債務者の負担部分について,他の連帯債務者の債務も消滅します。したがって,Bのために時効が完成しても,A及びCの債務の全部が消滅するわけではありません。
(4)×誤り。求償することができます。連帯債務者の一人が弁済をしたときは,その連帯債務者は,他の連帯債務者に対し,各自の負担部分について求償権を有します。そして,弁済した額が負担部分以下であっても,弁済をした連帯債務者は,他の連帯債務者に対し,負担部分の割合に応じて求償することができます。したがって,CがDに負担部分の範囲内である100万円を弁済してもCはAとBに対し,負担部分の割合に応じ,100万円の3分の1ずつを求償することができます。