構造分野では、せん断剛性Gは以下とされています。ちなみにGはドイツ語の「Gleitmodul」(=すべり係数)からという説が有力です。(真偽は分かりませんがラーメン構造の「Rahmen」(=額縁)もドイツ語ですね。)
$$G=\frac{E}{2(1+\nu)}$$
G:せん断剛性
E:ヤング係数
ν:ポアソン比
【せん断剛性Gの導出方法】
上図のように、材料(鉄など)のx軸方向に引張応力σxが作用した場合を考えます。
元々は正方形ですが、X方向に引っ張られることで、変形し、X方向は伸びる変形、Y方向は縮む変形となります。
せん断変形は、主応力(σx)の45°方向についてを考えます。図ではx’y’軸として表しています。
ここで、せん断応力\(\tau_{x’y’}=\tau_{y’x’}\)は共役(等しい)関係にあります。(\(\tau_{x’y’}=\tau_{y’x’}\))
※\(\tau_{x’y’}\)は、x’軸と平行な面はたらく、y’方向の応力という意味です。
<フックの法則>
ばねの復元力の公式(力=ばね係数×変形)より
$$\sigma_{x}=E\varepsilon_{x}$$
σ:主応力
E:主応力方向の剛性
ε:主応力方向のひずみ
$$\tau_{x’y’}=G\gamma_{x’y’}$$
τ:せん断応力
G:せん断応力方向の剛性
γ:せん断方向のひずみ
<応力の関係>
X方向の応力のつり合いを考えます。
$$\tau_{x’y’}=\tau_{y’x’}=\frac{\sigma_{x}}{2}$$
<ひずみの関係>
上図より、X方向のひずみを考えます。微小要素ABCDはA’B’C’D’に変形します。その時のX方向の伸びduは下の式で表されます。
$$du=A’C’-AC$$
ここで、X方向のひずみεx(元々の長さに対する変形量)は
$$\varepsilon_{x}=\frac{A’C’-AC}{AC}$$
です。式を変形すると
$$A’C’=AC(1+\varepsilon_{x})$$
Y方向のひずみはポアソン比νを使って下式のように表すことが出来ます。
$$\varepsilon_{y}=-\nu\varepsilon_{x}=\frac{B’D’-BD}{BD}$$
となります。式を変形すると
$$B’D’=BD(1-\nu\varepsilon_{x})$$
<変形前後の関係>
図より、A’C’とB’D’は下式のように表せられます。
$$A’C’=2A’B’\cos\left({\frac{\pi}{4}-\phi}\right)=\sqrt{2}A’B'(\cos{\phi}+\sin{\phi})$$
※三角関数の加法定理\(\cos{(A-B)}=\cos{A}\cos{B}+\sin{A}\sin{B}\)
※\(\sin{\frac{\pi}{4}}=\cos{\frac{\pi}{4}}=\frac{1}{\sqrt{2}}\)
$$A’C’=\sqrt{2}A’B’\cos{\phi}・(1+\tan{\phi})$$
※\(\tan{A}=\frac{\sin{A}}{\cos{A}}\)
同様に
$$B’D’=2A’B’\sin\left({\frac{\pi}{4}-\phi}\right)=\sqrt{2}A’B'(\cos{\phi}-\sin{\phi})$$
※三角関数の加法定理\(\sin{(A-B)}=\sin{A}\cos{B}-\cos{A}\sin{B}\)
※\(\sin{\frac{\pi}{4}}=\cos{\frac{\pi}{4}}=\frac{1}{\sqrt{2}}\)
$$B’D’=\sqrt{2}A’B’\cos{\phi}・(1-\tan{\phi})$$
<微小変形理論によるtan>
$$\tan{2\phi}=\frac{2\tan{\phi}}{(1-\tan^2\phi)}$$
微小変形時の\(tan{\phi}\)は非常に小さい値となるため、\({\tan^2\phi}\)は0と近似します。よって
$$\tau_{x’y’}=\tan{2\phi}=2\tan{\phi}$$
とおけます。よって
$$A’C’=\sqrt{2}A’B’\cos{\phi}・(1+\frac{\tau_{x’y’}}{2})$$
$$B’D’=\sqrt{2}A’B’\cos{\phi}・(1-\frac{\tau_{x’y’}}{2})$$
つまり
$$\frac{A’C’}{B’D’}=\frac{2+\tau_{x’y’}}{2-\tau_{x’y’}}=\frac{1+\varepsilon_{x}}{1-\nu\varepsilon_{x}}$$
$$\frac{2+\tau_{x’y’}}{2-\tau_{x’y’}}=\frac{1+\varepsilon_{x}}{1-\nu\varepsilon_{x}}$$
より
$$(2+\tau_{x’y’})(1-\nu\varepsilon_{x})-(2-\tau_{x’y’})((1+\nu)\varepsilon_{x})=0$$
$$2\tau_{x’y’}-2(1+\nu\varepsilon_{x})=0$$
となり
$$\gamma_{x’y’}=(1+\nu)\varepsilon_{x}$$
<フックの法則からせん断剛性とヤング係数の関係を導出>
\(\sigma_{x}=E\varepsilon_{x}、\tau_{x’y’}=G\gamma_{x’y’}\)より
$$\gamma_{x’y’}=\frac{\tau_{x’y’}}{G}=\frac{\sigma_{x}}{2G}$$
$$G=\frac{\sigma_{x}}{2\gamma_{x’y’}}$$
よって
$$G=\frac{E}{2(1+\nu)}$$
となります。
以上、せん断剛性の導出方法についてご紹介しました。
材料のポアソン比とヤング係数が分かればせん断剛性が分かるということですね!