【No.61】
コンクリートの性質に関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)コンクリートのクリープ係数が大きいほど,乾燥収縮ひび割れが生じやすい。
(2)水セメント比が小さいコンクリートでは,湿潤状態においても自己収縮が生じる。
(3)AE剤を用いないコンクリートよりも,AEコンクリートの方が,水密性は低い。
(4)一般に,粗骨材の最大寸法が大きいほど,コンクリートの透水係数が増大する。
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正解は(2)と(4)
【解説】
(1)×誤り。クリープは持続荷重のもとで時間の経過とともにひずみが増大する現象です。よって,拘束の程度が同じ場合にはクリープの大きいコンクリートほど内部拘束力は小さくなり,乾燥収縮等によってひび割れが発生する可能性は小さくなります。
(2)○正しい。自己収縮とは,セメントの水和により凝結始発以後にマクロに生じる体積減少をいいます。自己収縮に影響を及ぼす因子としては結合材量,混和材料種類と置換率などが上げられます。水セメント比が小さい高強度コンクリートなどでは単位セメント量が多くなり結合材量が増加し,凝結始発以後の湿潤状態において自己収縮が生じます。
(3)×誤り。AE剤によって連行された空気,エントレインドエアは,独立した気泡であるため,通常の範囲内では水の通り道とはならず,水密性に影響を及ぼしません。
(4)○正しい。コンクリートの水密性に影響を及ぼす要因には,使用材料の種類,水セメント比,粗骨材最大寸法,養生方法などがあります。粗骨材の最大寸法が大きくなると,骨材下面の水隙が大きくなり,水の通り道が大きくなります。このため,透水係数が大きくなり水密性が低下します。
【No.62】
コンクリートの中性化に関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)大気中でコンクリートの中性化か進行する場合,中性化深さは経過時間の平方根にほぼ比例する。
(2)仕上げの無いコンクリートの壁の場合,屋内側の方が屋外側よりも中性化速度は小さい。
(3)水セメント比の大きなコンクリートほど,中性化速度は大きい。
(4)同一配(調)合のコンクリートでも,温度が高い環境で供用されている方が中性化速度は大きい。
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正解は(2)
【解説】
(1)○正しい。中性化深さとはコンクリート表面から中性化した位置までの深さを指します。中性化深さは,一般に中性化が進行している期間の平方根に比例します。
(2)×誤り。中性化は,一般に屋外側より屋内側のほうが中性化速度は大きくなります。これは,屋内環境では呼吸で排出されるCO2が含まれることが一因です。
(3)○正しい。中性化は,密実なコンクリートであるほど進行が遅くなります。水セメント比が大きいコンクリートは細孔組織が粗になるため,中性化の進行は速くなります。
(4)○正しい。中性化とは,空気中からコンクリート内に侵入した二酸化炭素が細孔溶液中に溶解して炭酸イオン等に変化し,溶解したイオンとコンクリートの水和生成物が反応することで,コンクリートのアルカリ性を低下させる現象です。温度が50~60%程度の環境で,中性化の進行は速くなります。
【No.63】
コンクリートの耐久性に関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)凍害を受けるおそれのある構造物では,日が当たらない部分より日が当たる部分の方が,劣化は生じにくい。
(2)アルカリシリカ反応による劣化は,コンクリートが気乾状態にあるより湿潤状態にある方が,進行が速くなる。
(3)コンクリートの中性化は,コンクリートが気乾状態にあるより湿潤状態にある方が,進行が遅くなる。
(4)下水に含まれる硫酸塩は,微生物の作用によって硫酸となり,下水処理場のコンクリートに著しい劣化を生じさせる。
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正解は(1)
【解説】
(1)×誤り。凍害は,コンクリート中の水分が凍結膨張してコンクリート組織を破壊する現象ですが,水分が凍結融解する繰返し回数が多くなるほど進行が著しくなります。日が当たる環境にあるコンクリートは,夜間に凍結し日中に融解する現象が生じるため,凍害が生じやすいです。
(2)○正しい。アルカリシリカ反応は,反応性骨材,水酸化アルカリ,水分の3つが同時に存在して発生します。発生条件の一つである水分が多い湿潤状態であるほど,アルカリシリカ反応の進行は速くなります。
(3)○正しい。中性化は,湿潤状態より乾燥状態であるコンクリートのほうが二酸化炭素の侵入が容易になるため,進行は速くなります。ただし,著しく乾燥したコンクリートは,中性化反応に必要な水分が少なくなるため,逆に中性化の進行は遅くなります。
(4)○正しい。家庭用や事業排水中には硫酸塩が含まれます。嫌気状態の下水中では硫酸塩還元細菌が硫酸イオンを還元して硫化水素を生成し,その硫化水素が気中部のコンクリート表面の結露水に生息する好気性細菌と接触して硫酸が生成されます。これにより,下水処理場のコンクリートでは著しい侵食が生じます。
【No.64】
コンクリートのひび割れの原因と特徴に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)コンクリートの沈下により,打ち込み後1~2時間で,床スラブの鉄筋上部にひび割れが発生した。
(2)打ち継ぎ処理の不良により,コンクリートの打ち継ぎ目にひび割れが発生した。
(3)乾燥収縮により,横長で開口部のない壁に,水平方向のひび割れが発生した。
(4)アルカリシリカ反応により,壁に亀甲状のひび割れが発生した。
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正解は(3)
【解説】
(1)○正しい。コンクリートが硬化する前の打ち込み後1~2時間程度の間では,ブリーディングによりコンクリート面が下がる現象が生じます。床スラブに配置された鉄筋がコンクリート面の沈下を抑えようとすると,鉄筋の上部のコンクリートを押し広げる力が作用し,鉄筋に沿ったひび割れが生じることがあります。
(2)○正しい。コンクリートの打ち継ぎ目は,硬化したコンクリートに接して新たなコンクリートを打ち込む際に形成され,構造的に一体化されにくいです。そのため,打ち継ぎ処理が不適切であると,打ち継ぎ目に沿ったひび割れが生じやすいです。
(3)×誤り。コンクリートは乾燥すると収縮しようとします。その収縮によるコンクリートの長さ変化量は部材の長手方向において大きくなりますが,通常の壁は柱や基礎などによってその変形が拘束されます。つまり,横長の壁では長手方向と直角の鉛直方向にひび割れが発生します。
(4)○正しい。アルカリシリカ反応によるひび割れは,膨張が拘束されない場合は亀甲状のひび割れが生じます。一方,鉄筋コンクリートで鉄筋量の多い部材では主鉄筋に沿ってひび割れが生じ,部材両端が強く拘束される部材では拘束されている面に直角にひび割れが生じます。壁の鉄筋量は,一般に少ないため,亀甲状のひび割れが発生することが多くなります。
【No.65】
コンクリート構造物の含水状態と耐久性との関係に関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)中性化は,コンクリートが湿潤状態にある場合のほうが気乾状態にある場合よりも進行しにくい。
(2)アルカリシリカ反応は,コンクリートが湿潤状態にある場合のほうが気乾状態にある場合よりも進行しにくい。
(3)凍害は,コンクリートが湿潤状態にある場合めほうが気乾状態にある場合よりも進行しやすい。
(4)疲労による劣化は,コンクリートが飽水状態にある場合のほうが気乾状態にある場合よりも進行しやすい。
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正解は(2)
【解説】
(1)○正しい。中性化とは,空気中からコンクリート内に侵入した二酸化炭素が細孔溶液中に溶解して炭酸イオン等に変化し,溶解したイオンとコンクリートの水和生成物が反応することで,コンクリートのアルカリ性を低下させる現象です。一般に,湿潤状態より乾燥状態であるコンクリートのほうが二酸化炭素の侵入が容易なため,中性化の進行は速くなります。ただし,著しくコンクリートが乾燥した場合には,炭酸化反応に必要な水分が少ないため,逆に中性化の進行は遅くなります。
(2)×誤り。アルカリシリカ反応は,反応性骨材,水酸化アルカリ,水分の3つが同時に存在して発生します。発生条件の一つである水分が少ない気乾状態であるほど,アルカリシリカ反応は進行しにくいです。
(3)○正しい。凍害は,コンクリート中の水分が凍結膨張して,コンクリート組織を破壊する現象です。したがって,コンクリートが湿潤状態であるほど,凍結膨張する水分が多くなるため,凍害は進行しやすくなります。
(4)○正しい。疲労による劣化は,繰返し荷重の作用によって生じたひび割れに雨水等が浸入すると(コンクリートが湿潤状態にあるほど),ひび割れ周辺のコンクリートが砂利化する現象が促進されることがあります。とくに,凍結防止剤を散布している場合はこの現象が顕著になります。