【No.26】
共に宅地建物取引業者であるAB間でA所有の土地について,令和2年9月1日に売買代金3000万円(うち,手付金200万円は同年9月1日に,残代金は同年10月31日に支払う。)とする売買契約を締結した場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)共に宅地建物取引業者であるAB間でA所有の土地について,令和2年9月1日に売買代金3000万円(うち,手付金200万円は同年9月1日に,残代金は同年10月31日に支払う。)とする売買契約を締結した場合に関して,本件売買契約に利害関係を有しないCは,同年10月31日を経過すれば,Bの意思に反しても残代金をAに対して支払うことができる。
(2)共に宅地建物取引業者であるAB間でA所有の土地について,令和2年9月1日に売買代金3000万円(うち,手付金200万円は同年9月1日に,残代金は同年10月31日に支払う。)とする売買契約を締結した場合に関して,同年10月31囗までにAが契約の履行に着手した場合には,手付が解約手付の性格を有していても,Bが履行に着手したかどうかにかかわらず,Aは,売買契約を解除できなくなる。
(3)共に宅地建物取引業者であるAB間でA所有の土地について,令和2年9月1日に売買代金3000万円(うち,手付金200万円は同年9月1日に,残代金は同年10月31日に支払う。)とする売買契約を締結した場合に関して,Bの債務不履行によりAが売買契約を解除する場合,手付金相当額を損害賠償の予定とする旨を売買契約で定めていた場合には,特約がない限り,Aの損害が200万円を超えていてもAは手付金相当額以上に損害賠償請求はできない。
(4)共に宅地建物取引業者であるAB間でA所有の土地について,令和2年9月1日に売買代金3000万円(うち,手付金200万円は同年9月1日に,残代金は同年10月31日に支払う。)とする売買契約を締結した場合に関して,Aが残代金の受領を拒絶することを明確にしている場合であってもBは同年10月31日には,2800万円をAに対して現実に提供しなければ,Bも履行遅滞の責任を負わなければならない。
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正解は(3)
【解説】
(1)×誤り。利害関係を有しない第三者は,債務者の意思に反して弁済をすることができません。利害関係を有しないCは,Bの意思に反して残代金をAに対して支払うことができません。
(2)×誤り。Bが履行に着手するまでは,Aは手付解除できます。売買において,自ら履行に着手した当事者であっても,相手方が履行に着手するまでは,手付解除をすることができます。Aが契約の履行に着手した場合であっても,Bが履行に着手するまでは,Aは売買契約を解除することができます。
(3)○正しい。当事者が,債務の不履行につき損害賠償額の予定をした場合,特約がない限り,債権者は,実損害が予定賠償額よりも多いことを理由として,予定額を超える損害の賠償請求をすることができません。手付金相当額を損害賠償の予定とする旨を定めていた場合,Aは,手付金相当額以上の損害賠償請求はできません。
(4)×誤り。Bは現実の提供をしなくても履行遅滞の責任を負いません。債務者は,履行の提供をすれば,その提供の時から債務不履行責任を免れることができます。履行の提供の方法は,現実の提供を原則としますが,債権者があらかじめ受領を拒んでいる場合などは,口頭の提供でも足ります。さらに,債権者が受領しない意思が明確であるときには,債務者は口頭の提供をしなくても債務不履行責任を免れます。
【No.27】
同時履行の抗弁権に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)マンションの賃貸借契約終了に伴う賃貸人の敷金返還債務と,賃借人の明け渡し債務は,特別の約定のない限り,同時履行の関係に立つ。
(2)マンションの売買契約がマンション引渡し後に債務不履行を理由に解除された場合,契約は遡及的に消滅するため,売主の代金返還債務と,買主の目的物返還債務は,同時履行の関係に立たない。
(3)マンションの売買契約に基づく買主の売買代金支払い債務と,売主の所有権移転登記に協力する債務は,特別の事情のない限り,同時履行の関係に立つ。
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正解は(3)
【解説】
(1)×誤り。敷金は賃貸借契約の締結から賃貸目的物の明け渡しまでに発生します。敷金は一切の賃借人の債務を担保するものであるから,敷金返還債務は賃貸目的物の明け渡し後に発生します。
(2)×誤り。解除に基づく原状回復義務は同時履行の関係に立ちます。判例は解除の効果により契約は遡及的に消滅するとしていますが,解除に基づく原状回復義務は同時履行の関係に立ちます。
(3)○正しい。売買契約の売主は売買契約の内容として登記移転の協力義務を負い,協力義務は買主の代金支払い義務と同時履行の関係に立ちます。
【No.28】
売主Aは,買主Bとの間で甲土地の売買契約を締結し,代金の3分の2の支払いと引換えに所有権移転登記手続きと引渡しを行った。その後,Bが残代金を支払わないので,Aは適法に甲土地の売買契約を解除した。この場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)売主Aは,買主Bとの間で甲土地の売買契約を締結し,代金の3分の2の支払いと引換えに所有権移転登記手続きと引渡しを行った。その後,Bが残代金を支払わないので,Aは適法に甲土地の売買契約を解除した。この場合,Aの解除前に,BがCに甲土地を売却し,BからCに対する所有権移転登記がなされているときは,BのAに対する代金債務につき不履行があることをCが知っていた場合においても,Aは解除に基づく甲土地の所有権をCに対して主張できない。
(2)売主Aは,買主Bとの間で甲土地の売買契約を締結し,代金の3分の2の支払いと引換えに所有権移転登記手続きと引渡しを行った。その後,Bが残代金を支払わないので,Aは適法に甲土地の売買契約を解除した。この場合,Bは,甲土地を現状有姿の状態でAに返還し,かつ,移転登記を抹消すれば,引渡しを受けていた間に甲土地を貸駐車場として収益を上げていたときでも,Aに対してその利益を償還すべき義務はない。
(3)売主Aは,買主Bとの間で甲土地の売買契約を締結し,代金の3分の2の支払いと引換えに所有権移転登記手続きと引渡しを行った。その後,Bが残代金を支払わないので,Aは適法に甲土地の売買契約を解除した。この場合,Bは,自らの債務不履行で解除されたので,Bの原状回復義務を先に履行しなければならず,Aの受領済み代金返還義務との同時履行の抗弁権を主張することはできない。
(4)売主Aは,買主Bとの間で甲土地の売買契約を締結し,代金の3分の2の支払いと引換えに所有権移転登記手続きと引渡しを行った。その後,Bが残代金を支払わないので,Aは適法に甲土地の売買契約を解除した。この場合,Aは,Bが契約解除後遅滞なく原状回復義務を履行すれば,契約締結後原状回復義務履行時までの間に甲土地の価格が下落して損害を被った場合でも,Bに対して損害賠償を請求することはできない。
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正解は(1)
【解説】
(1)○正しい。当事者の一方がその解除権を行使したときは,各当事者は,その相手方を原状に復させる義務を負いますが,第三者の権利を害することはできません。ここで,第三者が保護されるためには,第三者が対抗要件を備えていることが必要です。登記を備えているCは,登記移転の際にAB間の売買契約に解除原因があることを知っていたとしても保護されるから,Aは解除に基づく甲土地の所有権をCに対して主張できません。
(2)×誤り。Bは,Aに対してその利益を償還すべき義務があります。当事者の一方がその解除権を行使した場合,各当事者は互いに原状回復義務を負います。この原状回復には,解除されるまでの間,買主が所有者として物を使用収益したことによる利益も含まれます。
(3)×誤り。Bは,同時履行の抗弁権を主張することができます。当事者の一方がその解除権を行使した場合,各当事者は互いに原状回復義務を負います。そして,この場合の各当事者が負う原状回復義務は,同時履行の関係にあります。
(4)×誤り。Aは,Bに対して損害賠償を請求できます。債務者が債務の本旨に従った履行をしない場合,債権者は,解除及び損害賠償請求をすることができます。
【No.29】
債務不履行に基づく損害賠償請求権に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)AがBと契約を締結する前に,信義則上の説明義務に違反して契約締結の判断に重要な影響を与える情報をBに提供しなかった場合,Bが契約を締結したことにより被った損害につき,Aは,不法行為による賠償責任を負うことはあっても,債務不履行による賠償責任を負うことはない。
(2)AB間の利息付金銭消費貸借契約において,利率に関する定めがない場合,借主Bが債務不履行に陥ったことによりAがBに対して請求することができる遅延損害金は,法定利率により算出する。
(3)AB間でB所有の甲不動産の売買契約を締結した後,Bが甲不動産をCに二重譲渡してCが登記を具備した場合,AはBに対して債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができる。
(4)AB間の金銭消費貸借契約において,借主Bは当該契約に基づく金銭の返済をCからBに支払われる売掛代金で予定していたが,その入金がなかった。ただし,Bの責めに帰すべき事由はない。そのため,返済期限が経過してしまった場合,Bは債務不履行には陥らず,Aに対して遅延損害金の支払い義務を負わない。
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正解は(4)
【解説】
(1)○正しい。契約の一方当事者は,契約締結に先立ち,信義則上の説明義務に違反して,契約を締結するか否かに関する判断に影響を及ぼすべき情報を相手方に提供しなかった場合には,相手方が契約締結により被った損害について,不法行為責任を負うことはあっても,偵務不履行責任を負うことはありません。
(2)○正しい。利息付金銭消費貸借契約において,利率に関する定めがない場合,借主の債務不履行により貸主が借主に対して請求することができる遅延損害金は,法定利率により算出します。
(3)○正しい。不動産の売買契約においては,売主が不動産を第一の買主とは別に,第二の買主に二重に譲渡し,第二の買主への移転登記が終了した場合には,売主に帰責事由があるといえるので,第一の買主は売主に対して債務不履行に基づく損害賠償請求をすることができます。
(4)×誤り。金銭の給付を目的とする債務の不履行については,債務者は,不可抗力を抗弁とすることができません。したがって,AB圜の金銭消費貸借契約において,借主Bは当該契約に基づく金銭の返済をCからBに支払われる売掛債権で予定していたが,その入金がなかったため,返済期限が経過してしまった場合,Bは債務不履行に陥り,Aに対して遅延損害金の支払い義務を負います。
【No.30】
Aが,B所有の建物を代金8000万円で買い受け,即日3000万円を支払った場合で,残金は3ヵ月後,所有権移転登記及び引渡しと引換えに支払う旨の約定があるときに関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。
(1)Aが,B所有の建物を代金8000万円で買い受け,即日3000万円を支払った場合で,残金は3ヵ月後,所有権移転登記及び引渡しと引換えに支払う旨の約定があるときに関して,Aが履行期前でも,Bに残金を提供して建物の所有権移転登記及び引渡しを請求し,Bがこれに応じない場合,売買契約を解除することができる。
(2)Aが,B所有の建物を代金8000万円で買い受け,即日3000万円を支払った場合で,残金は3ヵ月後,所有権移転登記及び引渡しと引換えに支払う旨の約定があるときに関して,Bが,履行期に建物の所有権移転登記はしたが,引渡しをしない場合,特別の合意がない限り,Aは,少なくとも残金の半額2500万円を支払わなければならない。
(3)Aが,B所有の建物を代金8000万円で買い受け,即日3000万円を支払った場合で,残金は3ヵ月後,所有権移転登記及び引渡しと引換えに支払う旨の約定があるときに関して,Bが,Aの代金支払いの受領を拒否してはいないが,履行期になっても建物の所有権移転登記及び引渡しをしない場合,Aは,Bに催告するだけで売買契約を解除することができる。
(4)Aが,B所有の建物を代金8000万円で買い受け,即日3000万円を支払った場合で,残金は3ヵ月後,所有権移転登記及び引渡しと引換えに支払う旨の約定があるときに関して,Aが,履行期に残金を提供し,相当の期間を定めて建物の引渡しを請求したにもかかわらず,Bが建物の引渡しをしないので,AがCの建物を賃借せざるを得なかった場合,Aは,売買契約の解除のほかに,損害賠償をBに請求することができる。
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正解は(4)
【解説】
(1)×誤り。履行期前にBが履行に応じなくても,Aは解除できません。買主Aが履行期前に残金を提供したとしても,Bの履行期が到来していない以上,Bには期限の利益があります。
(2)×誤り。Bが引渡しをしない以上,Aは残金を払わなくてよいです。残金と登記,引渡しを同時履行とする約定がある場合,売主,買主は同時履行の抗弁権を有します。
(3)×誤り。催告するだけでは解除できません。売主が同時履行の抗弁権を有する場合,買主は履行の提供をすることなしに催告のみで契約を解除することはできません。
(4)○正しい。履行期に履行の提供をし,催告をしたにもかかわらず相手方が履行をしない場合,債務不履行を理由とする解除ができ,また,損害が発生していれば損害賠償を請求することができます。