【No.116】
Aが所有する甲建物をBに対して賃貸する場合の賃貸借契約の条項に関する次の記述のうち,民法及び借地借家法の規定によれば,誤っているものはどれか。
(1)Aが所有する甲建物をBに対して賃貸する場合の賃貸借契約の条項に関し,AB間の賃貸借契約が借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約であるか否かにかかわらず,Bの造作買取請求権をあらかじめ放棄する旨の特約は有効に定めることができる。
(2)Aが所有する甲建物をBに対して賃貸する場合の賃貸借契約の条項に関し,AB間で公正証書等の書面によって借地借家法第38条に規定する定期建物賃貸借契約を契約期間を2年として締結する場合,契約の更新がなく期間満了により終了することを書面を交付してあらかじめBに説明すれば,期間満了前にAがBに改めて通知しなくても契約が終了する旨の特約を有効に定めることができる。
(3)Aが所有する甲建物をBに対して賃貸する場合の賃貸借契約の条項に関し,法令によって甲建物を2年後には取り壊すことが明らかである場合,取り壊し事由を記載した書面によって契約を締結するのであれば,建物を取り壊すこととなる2年後には更新なく賃貸借契約が終了する旨の特約を有効に定めることができる。
(4)Aが所有する甲建物をBに対して賃貸する場合の賃貸借契約の条項に関し,AE間の賃貸借契約が一時使用目的の賃貸借契約であって,賃貸借契約の期間を定めた場合には,Bが賃貸借契約を期間内に解約することができる旨の特約を定めていなければ,Bは賃貸借契約を中途解約することはできない。
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正解は(2)
【解説】
(1)○正しい。借家人に不利な特約を無効とする借地借家法37条は,造作買取請求権を規定する33条を対象としていないので,造作買取請求権をあらかじめ放棄する旨の特約は有効です。この特約は,建物賃貸借契約が定期建物賃貸借契約であるか否かを問わず,有効に定めることができます。
(2)×誤り。期間が1年以上の定期建物賃貸借契約においては,期間満了の1年前から6月前までの間に借家人に対する通知をしなければ,契約は終了しません。そして,これに反する特約で建物の賃借人に不利なものは,無効とされます。
(3)○正しい。取壊し予定建物については,建物を取り壊すべき事由を記載した書面によれば,建物を取り壊すこととなる時に賃貸借契約が終了する旨の特約を定めることができます。
(4)○正しい。一時使用目的の建物賃貸借契約は,民法のみが適用され,借地借家法は適用されません。民法では,期間を定めた賃貸借契約については,期間内に解約する権利を留保しなければ,各当事者は解約の申入れをすることができません。
【No.117】
AはBと,B所有の甲建物につき,居住を目的として,期間3年,賃料月額20万円と定めて賃貸借契約を締結した。この場合における次の記述のうち,借地借家法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)AはBと,B所有の甲建物につき,居住を目的として,期間3年,賃料月額20万円と定めて賃貸借契約を締結した。AもBも相手方に対し,本件契約の期間満了前に何らの通知もしなかった場合,従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされるが,その期間は定めがないものとなる。
(2)AはBと,B所有の甲建物につき,居住を目的として,期間3年,賃料月額20万円と定めて賃貸借契約を締結した。BがAに対し,本件契約の解約を申し入れる場合,甲建物の明け渡しの条件として,一定額以上の財産上の給付を申し出たときは,Bの解約の申入れに正当事由があるとみなされる。
(3)AはBと,B所有の甲建物につき,居住を目的として,期間3年,賃料月額20万円と定めて賃貸借契約を締結した。甲建物の適法な転借人であるCが,Bの同意を得て甲建物に造作を付加した場合,期間満了により本件契約が終了するときは,CはBに対してその造作を時価で買い取るよう請求することができる。
(4)AはBと,B所有の甲建物につき,居住を目的として,期間3年,賃料月額20万円と定めて賃貸借契約を締結した。本件契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借で,契約の更新がない旨を定めた場合でも,BはAに対し,同条所定の通知期間内に,期間満了により本件契約が終了する旨の通知をしなければ,期間3年での終了をAに対抗することができない。
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正解は(2)
【解説】
(1)○正しい。期間の定めがある建物賃貸借において,当事者が期間の満了の1年前から6ヵ月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは,従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなされますが,その期間は定めがないものとされます。
(2)×誤り。期間定めがある建物賃貸借の更新拒絶は,正当事由がなければ認められません。このとき,賃貸人が建物の明け渡しの条件として,一定額以上の財産上の給付を申し出たとしても,当該申し出は,正当事由があるか否かの考慮要素の一つに過ぎず,当該申し出があれば,正当事由があるとみなされるわけではありません。
(3)○正しい。借地借家法が適用される建物賃貸借においては,賃借人に造作買取請求権が認められます。そして,適法に転貸借がなされている場合,転借人にも造作買取請求権が認められます。
(4)○正しい。定期建物賃貸借であっても,その期間が1年以上である場合には,建物の賃貸人は,期間の満了の1年前から6ヵ月前までの間に建物の賃借人に対し期間の満了により建物の賃貸借が終了する旨の通知をしなければ,その終了を建物の賃借人に対抗することができません。
【No.118】
AはBとの間で,令和2年4月に,BがCから借りている土地上のB所有の建物について期間2年の賃貸借契約を締結し引渡しを受け,債務不履行をすることなく占有使用を継続している。この場合に関する次の記述のうち,民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)AはBとの間で,令和2年4月に,BがCから借りている土地上のB所有の建物について期間2年の賃貸借契約を締結し引渡しを受け,債務不履行をすることなく占有使用を継続している。Bが,Cの承諾を得ることなくAに対して借地上の建物を賃貸し,それに伴い敷地であるその借地の利用を許容している場合でもCとの関係において,借地の無断転貸借とはならない。
(2)AはBとの間で,令和2年4月に,BがCから借りている土地上のB所有の建物について期間2年の賃貸借契約を締結し引渡しを受け,債務不履行をすることなく占有使用を継続している。借地権の期間満了に伴い,Bが建物買取請求権を適法に行使した場合,Aは,建物の賃貸借契約を建物の新たな所有者Cに対抗できる。
(3)AはBとの間で,令和2年4月に,BがCから借りている土地上のB所有の建物について期間2年の賃貸借契約を締結し引渡しを受け,債務不履行をすることなく占有使用を継続している。令和4年3月に,借地権がBの債務不履行により解除され,Aが建物を退去し土地を明け渡さなければならなくなったときは,Aが解除されることをその1年前までに知らなかった場合に限り,裁判所は,Aの請求により,Aがそれを知った日から1年を超えない範囲内において,土地の明け渡しにつき相当の期限を許与することができる。
(4)AはBとの間で,令和2年4月に,BがCから借りている土地上のB所有の建物について期間2年の賃貸借契約を締結し引渡しを受け,債務不履行をすることなく占有使用を継続している。令和3年3月に,借地権が存続期間の満了により終了し,Aが建物を退去し土地を明け渡さなければならなくなったときは,Aが借地権の存続期間が満了することをその1年前までに知らなかった場合に限り,裁判所は,Aの請求により,Aがそれを知った日から1年を超えない範囲内において,土地の明け渡しにつき相当の期限を許与することができる。
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正解は(3)
【解説】
(1)○正しい。土地の賃借人が借地上の建物を賃貸し,それに伴い敷地である借地の利用を許容している場合でも,土地の転貸借には当たらないので,借地権設定者Cの承諾は不要です。Cとの関係において,借地の無断転貸借とはなりません。
(2)○正しい。借地権の期間満了に伴い,Bが建物買取請求権を適法に行使すると,即時に売買契約締結に類似した効果が生じ,建物の所有権は借地権設定者Cに当然に移転します。しかし,Aは,引渡しを受けているので,その後,建物買取請求権の行使により建物の所有権を取得したCに対して,建物の賃借権を対抗することができます。
(3)×誤り。債務不履行解除の場合,相当の期限は許与されません。借地権の目的である土地の上の建物につき賃貸借がされている場合において,借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明け渡すべきときは,建物の賃借人が借地権の存続期間が満了することをその1年前までに知らなかった場合に限り,裁判所は,建物の賃借人の請求により,建物の賃借人がこれを知った日から1年を超えない範囲内において,土地の明け渡しにつき相当の期限を許与することができます。しかし,借地権者の債務不履行により解除された場合には,本条は適用されません。
(4)○正しい。借地権が期間満了により終了している場合,裁判所は,Aの請求により,Aがこれを知った日から1年を超えない範囲内において,土地の明け渡しにつき相当の期限を許与することができます。
【No.119】
AがBの所有地を賃借して,建物を建てその登記をしている場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)AがBの所有地を賃借して,建物を建てその登記をしている場合に関し,Bがその土地をCに譲渡する場合,賃貸人の義務の移転を伴うから,Bは,その譲渡についてAの承諾を必要とする。
(2)AがBの所有地を賃借して,建物を建てその登記をしている場合に関し,Aがその建物をDに譲渡する場合,特別の事情のない限り,Aは,Dに対する敷地の賃借権譲渡についてBの承諾を得る必要がある。
(3)AがBの所有地を賃借して,建物を建てその登記をしている場合に関し,EがBからその土地の譲渡を受けた場合,Eは,登記を移転していなくても賃貸人たる地位の取得をAに対抗することができる。
(4)AがBの所有地を賃借して,建物を建てその登記をしている場合に関し,FがAからその建物を賃借する場合,特別の事情がない限り,Fは,その賃借についてBの承諾を得なければならない。
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正解は(2)
【解説】
(1)×誤り。賃貸人が土地を譲渡する場合,賃借人の承諾は不要です。Aは,借地上の建物の登記を備えていれば,土地の所有者がBからCへ変わっても,新所有者Cに賃借権の効力を主張して,そのまま土地を使用することができます。そのため,賃借人Aの承諾は不要とされています。
(2)○正しい。借地上の建物を第三者に譲渡した場合には,特別の事情がない限り,借地権の譲渡もあったものとみなされます。Aは,借地上の建物の譲渡についてBの承諾を必要とします。
(3)×誤り。Eは登記を移転していなければ,Aに対抗できません。Aの賃借権が対抗力を有する場合,Eが新賃貸人となります。しかし,Eが賃貸人の地位や権利を主張するためには,Eは所有権の登記を備えていることが必要です。
(4)×誤り。借地上の建物を賃貸する場合には,地主の承諾は不要です。地主から借りているものは土地であり,借地人が貸しているのは建物であるので,この場合には土地の転貸にあたりません。
【No.120】
借地人Aが,令和2年9月1日に甲地所有者Bと締結した建物所有を目的とする甲地賃貸借契約に基づいてAが甲地上に所有している建物と甲地の借地権とを第三者Cに譲渡した場合に関する次の記述のうち,民法及び借地借家法の規定によれば,正しいものはどれか。
(1)借地人Aが,令和2年9月1日に甲地所有者Bと締結した建物所有を目的とする甲地賃貸借契約に基づいてAが甲地上に所有している建物と甲地の借地権とを第三者Cに譲渡した場合に関し,甲地上のA所有の建物が登記されている場合には,AがCと当該建物を譲渡する旨の合意をすれば,Bの承諾の有無にかかわらず,CはBに対して甲地の借地権を主張できる。
(2)借地人Aが,令和2年9月1日に甲地所有者Bと締結した建物所有を目的とする甲地賃貸借契約に基づいてAが甲地上に所有している建物と甲地の借地権とを第三者Cに譲渡した場合に関し,Aが借地権をCに対して譲渡するに当たり,Bに不利になるおそれがないにもかかわらず,Bが借地権の譲渡を承諾しない場合には,AはBの承諾に代わる許可を与えるように裁判所に申し立てることができる。
(3)借地人Aが,令和2年9月1日に甲地所有者Bと締結した建物所有を目的とする甲地賃貸借契約に基づいてAが甲地上に所有している建物と甲地の借地権とを第三者Cに譲渡した場合に関し,Aが借地上の建物をDに賃貸している場合には,AはあらかじめDの同意を得ておかなければ,借地権を譲渡することはできない。
(4)借地人Aが,令和2年9月1日に甲地所有者Bと締結した建物所有を目的とする甲地賃貸借契約に基づいてAが甲地上に所有している建物と甲地の借地権とを第三者Cに譲渡した場合に関し,AB間の借地契約が専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし,かつ,存続期間を20年とする借地契約である場合には,AはBの承諾の有無にかかわらず,借地権をCに対して譲渡することができ,CはBに対して甲地の借地権を主張できる。
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正解は(2)
【解説】
(1)×誤り。借地上の建物の譲渡の場合,賃貸人の承諾が必要です。賃借人は,賃貸人の承諾を得なければ,その賃借権を譲り渡し,又は賃借物を転貸することができません。そして,借地上の建物を第三者に譲渡した場合は,特別の事情がない限り,借地権も譲渡されたことになります。したがって,Cは,Bの承諾がなければ,Bに甲地の借地権の取得を主張することができません。
(2)○正しい。借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者㎜閾に譲渡しようとする場合において,借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず,借地権設定者がその賃借権の譲渡を承諾しないときは,借地権者は,借地権設定者の承諾に代わる許可を与えるように,裁判所に申し立てることができます。
(3)×誤り。借地権の譲渡の場合,建物の賃借人の承諾は不要です。賃借人は,賃貸人の承諾を得なければ,その賃借権を譲り渡し,又は賃借物を転貸することができません。したがって,Aが借地権を譲渡するためには,あらかじめBの承諾を得る必要ですが,Dの承諾は必要ではありません。
(4)×誤り。事業用定期借地権の譲渡の場合でも,賃貸人の承諾が必要。賃借人は,賃貸人の承諾を得なければ,その賃借権を譲り渡し,又は賃借物を転貸することができません。このことは,事業用定期借地権であっても同様です。