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【硫酸塩による膨張劣化】硫酸による腐食との違い

硫酸塩による膨張劣化

硫酸塩とは、硫酸を中和してできる塩のことです。硫酸塩の代表的なものに硫酸ナトリウムがあります。硫酸ナトリウムの水溶液は中性です。

硫酸塩による膨張劣化は、硫酸ナトリウムなどの硫酸塩水溶液がコンクリートの内部に侵入し、コンクリート内部の水酸化カルシウムと反応して二水せっこう(CaSO4・2H2O)を生成し、さらに、セメント中のC3A(アルミン酸三カルシウム)と反応してエトリンガイトを生成し膨張を引き起こします。

エトリンガイトの化学式:3CaO・Al2O3・3CaSO4・32H2O

硫酸による腐食

一方の硫酸は強酸です。コンクリートと接すると表面からセメント水和物を溶解し,骨材の剥落などを伴いながらコンクリートの断面を減少させていきます。

セメント水和物と硫酸が反応すると二水せっこうが生じ、その二水せっこうが脱落、剥離し、骨材が露出します。

pHの違いにより劣化の種類が異なる

硫酸塩による膨張劣化が生じる場合と、硫酸による腐食が生じる場合では、そのpHが異なります。硫酸によるコンクリートの浸食劣化(腐食)がみられるのは、pH1.0以下の強酸環境であることが研究により報告されています。

【類似】石灰石を用いた場合の硫酸塩膨張劣化

コンクリート用骨材として石灰石を用いた場合、そのコンクリートが35度程度の環境下に長期間曝されると、タウマサイトの生成に伴う硫酸塩劣化が発生することがあります。

タウマサイトは、コンクリート中の水酸化カルシウムCa(OH)2が、硫酸イオンおよび骨材の主成分である炭酸カルシウムと反応することで生成され、これにより膨張が生じてコンクリートが劣化します。

【類似】炭酸塩による化学的腐食

硫酸以外の”酸”の塩によるコンクリートの腐食に炭酸塩による化学的腐食が挙げられます。これは、炭酸CO2と水酸化カルシウムCa(OH)2の反応により、難溶性の炭酸カルシウムCaCO3が生成されますが、濃度が高くなると炭酸水素カルシウムとなり水に溶解します。

CaCO3+CO2+H2O→Ca(HCO3)2

これによって水酸化カルシウムが容易に溶解し、炭酸化が促進されコンクリートの浸食が進行します。

診断士過去問2011年NO.9

塩類によるコンクリートの化学的腐食に関する記述中の(A)~(D)にあてはまる次の(1)~(4)の語句の組合せのうち、適当なものはどれか。

塩類によるコンクリートの化学的腐食として、硫酸塩とセメント水和物との反応によるものがある。これは、ナトリウムなどのアルカリ硫酸塩が、Ca(OH)2と反応して(A)を生成し、さらにカルシウムアルミネート水和物と反応して(B)を生成し、著しい膨張を引き起こすものである。

これに対して、浸食性炭酸による化学的腐食では、最初、炭酸とCa(OH)2が反応して、難溶性の(C)を生成するが、さらに(C)が(D)となって、溶解し、Ca(OH)2の分解が促進される。

(A) (B) (C) (D)
(1) 二水せっこう エトリンガイト CaCO3 Ca(HCO3)2
(2) エトリンガイト モノサルフェート水和物 CaCO3 Ca(HCO3)2
(3) CaCl2 エトリンガイト Ca(HCO3)2 CaCO3
(4) エトリンガイト モノサルフェート水和物 Ca(HCO3)2 CaCO3

正解(1)

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