コンクリート主任技士過去問 問題と解説
【平成23年度―問題1】
セメントの品質規格に関する次の記述のうち、JIS R 5210(ポルトランドセメント)の規定に照らして、正しいものはどれか。
(1)早強ポルトランドセメントでは、早期強度を高めるために、けい酸三カルシウム(C3S)の下限値が規定されている。
(2)中庸熱ポルトランドセメントでは、水和熱を低減するために、けい酸二カルシウム(C2S)の下限値が規定されている。
(3)低熱ポルトランドセメントでは、水和熱を抑制するために、けい酸三カルシウム(C3S)の上限値が規定されている。
(4)耐硫酸塩ポルトランドセメントでは、エトリンガイトの生成を抑制するために、アルミン酸三カルシウム(C3A)の上限値が規定されている。
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正解(4)
一覧表のとおりです。
(1)誤りです。早強ポルトランドセメントには、けい酸二カルシウム、けい酸三カルシウム、アルミン酸三カルシウム、に関する規定はありません。早強ポルトランドセメントには、セメントの比表面積についての規定があります。比表面積とは、同じ質量のセメントに対する、表面積の大きさで、大きいほど、水和反応が進みやすく、硬化速度が早くなります。早強は、比表面積が3300(cm2/g)以上、超早強は、4000(cm2/g)以上と規定されています。
(2)誤りです。中庸熱ポルトランドセメントは、水和熱を低減するため、けい酸三カルシウム、および、アルミン酸三カルシウム、の上限値が規定されています。けい酸三カルシウム、および、アルミン酸三カルシウムは、早期の強度発現に寄与します。中庸熱ポルトランドセメントでは、水和反応による、コンクリートの発熱を抑えるために、これらの上限値が規定されています。
(3)誤りです。低熱ポルトランドセメントは、けい酸二カルシウムの下限値と、アルミン酸三カルシウムの上限値が規定されていますが、けい酸三カルシウムの規定はありません。
(4)問題の通りです。エトリンガイトは、硫酸塩と、アルミン酸三カルシウムが反応することで生成します。そのため、アルミン酸三カルシウム、C3Aの上限値が規定されています。
【平成23年度―問題2】
JIS R 5201(セメントの物理試験方法)に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか。
(1)セメントの密度試験では、ルシャトリエフラスコと完全に脱水した鉱油を用いて一定質量の試料の体積を測定し、試料の質量を体積で除してセメントの密度を求める。
(2)セメントの凝結試験では、断面積が12.5mm2の貫入針を用いて標準軟度のペーストの貫入抵抗値を測定し、所定の貫入抵抗値を示した時間から始発および終結時間を得る。
(3)セメントの安定性試験では、パット法、ルシャトリエ法のいずれかの試験方法により、異常膨張の有無の測定結果に基づき、セメントの安定性を判定する。
(4)セメントの圧縮強さは、曲げ試験によって切断された6個の供試体の折片について圧縮試験を行って求める。
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正解(2)
(1)問題の通りです。セメントの密度試験は、ルシャトリエフラスコと完全に脱水した鉱油を用います。セメントが水和反応を起こさないように、脱水した鉱油を使用します。
(2)誤りです。セメントの凝結試験で用いる針は、始発用、終結用ともに、直径 1.13mmの針を用います。断面積が12.5、25、50、100mm2の貫入針を用いるのは、コンクリートの凝結試験です。
(3)問題の通りです。セメントの圧縮強さ試験は、切断された6個の供試体の切片、または、3本の供試体の両端で行います。
(4)問題の通りです。バット法は、ガラス板上に、パット状のセメントペーストを、24時間養生した後、90分間煮沸し、膨張性ひび割れ、あるいは、そりの有無を検査し、判定する方法です。
ルシャトリエ法は、セメントペーストを、指示針の付いた、円筒形の試験器具に詰めて、2枚のガラス板で挟み、24時間養生後に、ガラス板を外し、3時間煮沸し、煮沸前後の、指示針間の距離を比較して、安定性の尺度とする方法です。
ルシャトリエ法は、セメントペーストを、指示針の付いた、円筒形の試験器具に詰めて、2枚のガラス板で挟み、24時間養生後に、ガラス板を外し、3時間煮沸し、煮沸前後の、指示針間の距離を比較して、安定性の尺度とする方法です。
【平成23年度―問題3】
下表に示す粗骨材Aおよび粗骨材Bを質量割合で50%ずつ混合した場合に得られる粗粒率として、適当なものはどれか。
(1)6.29
(2)7.29
(3)7.58
(4)7.97
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正解(2)
40mm~0.15mmまで1/2間隔の寸法のふるいにとどまった百分率を合計し、100で除します。問題はAとBの粗骨材を半分ずつ混ぜますので、その場合は、両方を合計し、200で除します。
$$粗粒率=\frac{766+692}{200}=7.29$$
【平成23年度―問題4】
各種混和材を用いたコンクリートの性質に関する次の記述のうち、適当なものはどれか。
(1)フライアッシュを用いたコンクリートでは、セメントに対するフライアッシュの置換率を15%とした場合、無置換の場合と比較してアルカリシリカ反応を抑制する効果が高くなる。
(2)高炉スラグ微粉末を用いたコンクリートでは、セメントに対する高炉スラグ微粉末の置換率を40%とした場合、無置換の場合と比較して硫酸塩や海水に対する耐久性が向上するが、アルカリシリカ反応に対する抑制効果は期待できない。
(3)シリカフュームを用いたコンクリートでは、セメントに対するシリカフュームの置換率を10%以上としても、アルカリシリカ反応の抑制効果が期待できない。
(4)シリカフュームを用いた低水結合材比のコンクリートでは、セメントに対するシリカフュームの置換率を10%とした場合、無置換の場合と比較して自己収縮および乾燥収縮とも小さくなる。
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正解(1)
(1)問題の通りです。フライアッシュセメントの分量が、15%以上の場合、骨材のアルカリシリカ反応を抑制する効果があります。
(2)誤りです。高炉スラグ微粉末を用いたコンクリートは、硫酸塩や、海水に対する耐久性が向上します。また、潜在硬化性を有し、コンクリート中の水酸化カルシウムと反応し、アルカリ分を消費するため、アルカリシリカ反応に対する抑制効果を期待できます。アルカリシリカ反応を抑制するためには、セメント中の高炉スラグの分量を、40%以上とします。詳しくはこちらの記事を参照ください。
(3)誤りです。シリカフュームは、ポゾラン反応性を有します。ポゾラン反応により、コンクリート中の水酸化カルシウムと反応し、アルカリ分を消費するため、アルカリシリカ反応に対する抑制効果を期待できます。
(4)誤りです。高強度コンクリートなど、低水結合材比であるコンクリートは自己収縮ひずみが大きくなります。
【平成23年度―問題5】
コンクリート用化学混和剤に関する次の一般的な記述のうち、不適当なものはどれか
(1)高性能減水剤を用いたコンクリートでは、高性能減水剤の使用量の増加に伴い、連行される空気量が増大し、凝結が遅延する。
(2)高性能AE減水剤は、空気連行性能、高い減水性能と優れたスランプ保持性能を有しており、一般の強度のコンクリートから高強度コンクリートまで幅広く利用されている。
(3)流動化剤は、あらかじめ練り混ぜられたコンクリートに後から添加することで、セメントの分散効果を増大させ、コンクリートの単位水量を増すことなくスランプを大きくすることができる。
(4)収縮低減剤は、セメント硬化体中の毛細管空げき中の水の表面張力を低下させ、水の逸散蒸発に伴う、毛細管張力を小さくすることで、コンクリートの乾燥収縮および自己収縮を低減することができる。
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正解(1)
(1)誤りです。凝結を遅延させるのは「遅延剤」です。詳しくはこちらの記事を参照ください。高性能減水剤は、空気連行性はなく、セメント粒子の分散作用に著しく優れます。比較的、凝結遅延の程度は低いです。AE減水剤は、セメントを分散させる効果と、空気を連行する効果があります。そのため、減水率を大きくしようとして多量添加すると、空気量が増大するほか、水和反応が阻害され、凝結が遅れます。
(2)問題の通りです。高性能AE減水剤は、空気連行性能、高い減水性能と、優れたスランプ保持性能を有しており、一般の強度のコンクリートから、高強度コンクリートまで、幅広く利用されています。
(3)問題の通りです。流動化剤は、あらかじめ練り混ぜられたコンクリートに添加し、コンクリートの流動性を増大させるために用いる混和剤です。主成分は、高性能減水剤とほぼ同じです。
(4)問題の通りです。収縮低減剤を使用すると、水の表面張力が小さくなるため、引張力の発生を防止し、乾燥収縮の発生を、抑制することができます。
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