WES試験対策(1級) 問題と解説 No.6~10
このページの問題を一問一答形式の動画としてまとめました。復習用にご活用ください。通勤中や運動中に最適です。
【No.6】 溶接アークの特徴
溶接アークの特徴に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)アーク電圧は、陽極前面部での陽極降下電圧、陰極前面部での陰極降下電圧およびアーク柱部分でのアーク柱降下電圧からなっている。
(2)アーク柱や溶接ワイヤ端の溶融金属に電流が流れている場合は、それらに電磁力が働いて圧縮される。このような現象を電磁的圧縮効果という。
(3)アークが周囲から強い冷却作用を受けると、見かけ上、アークの断面が収縮するように作用する。この作用は熱的ピンチ効果と呼ばれる。
(4)アルゴン気中での比較的大電流のアークでは、電極から母材への強力な気流が形成される。これを電磁的気流という。
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誤っている選択肢は (2)、(4)
【解説】
(1)正しい。アーク電圧は、アーク溶接を行う際のアークの両端間の電圧のことです。アーク空間は陰極降下領域、アーク柱領域、陽極降下領域の3つの領域で構成され、それぞれの領域には陰極降下電圧、アーク柱電圧、陽極降下電圧と呼ばれる電位差が存在し、それぞれの総和がアーク電圧として定義されます。
(2)誤り。アーク柱や溶接ワイヤ端の溶融金属に電流が流れている場合は、それらに電磁力が働いて圧縮されます。このような現象をピンチ効果といいます。比較的電流の大きなアーク溶接では、電磁力の影響が非常に大きくなります。電流を中心に円周方向に磁力線が発生し、磁力線とは直交する方向に電流を流れる導線が力を受けます。これをピンチ力といいます。また、ピンチ力とは、つかむ力という意味です。フレミングの左手の法則から、左手の人差し指を磁界の向き、中指を電流の向きに合わせると、親指の方向が導線が受ける力の向きになります。
(3)正しい。アークには冷却作用を受けると断面を収縮させ,表面積を減少させることによって熱損失を抑制しようとする作用がり,この作用は熱的ピンチ効果と呼ばれています。
(4)誤り。アーク柱には,内向きの電磁力が働き,その電磁力はアークが細いところ程強く作用するため,電極から母材へと向かう気流が発生します。この気流を一般にプラズマ気流と呼びます。プラズマ気流の流速は 10から100メートル毎秒と速く,アーク現象に様々な影響を及ぼします。アーク柱を構成するガスは,この高速気流によって母材方向に加速され,溶融池はその動圧により凹みます。この凹む力をアーク力と呼んでいます。
【No.7】 溶接アークの特徴
溶接アークの特徴に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)アーク溶接においてワイヤ端の移行液滴が飛散する現象、あるいは溶融池から溶融金属が粒子となって噴出、飛散する現象をスパッタという。
(2)溶接電流が大きく溶接速度も大きい溶接条件を採用すると、母材の溶融幅がビード幅より広くなってアンダカット及びハンピングが発生しやすい。
(3)アーク電圧と溶接速度を一定にして、溶接電流を増加させるとビード幅は増加する。
(4)溶接電流と溶接速度を一定にして、アーク電圧を高くすると溶け込み深さは増加する。
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誤っている選択肢は (4)
【解説】
(1)正しい。アーク溶接においてワイヤ端の移行液滴が飛散する現象、あるいは溶融池から溶融金属が粒子となって噴出、飛散する現象をスパッタといいます。スパッタの主な原因は、溶接プロセス中の不安定なアークや、溶接パラメータの不適切な設定にあります。 特に、電流や電圧の調整が適切でない場合や、溶接速度が不均一な場合にスパッタは発生しやすくなります。
(2)正しい。アンダカットは、溶接の止端に沿って母材が掘られて、溶着金属が満たされないで溝となって残っている部分のことで、溶接欠陥の一種です。ハンピングは、溶融池が深くなりすぎて溶解された金属が進行方向より後ろ側に追い出されたときに発生する現象で、溶接ビードが不均一となります。
(3)正しい。アーク電圧と溶接速度を一定にして、溶接電流を増加させるとビード幅は増加します。
(4)誤り。溶接電流と溶接速度を一定にして、アーク電圧を高くすると溶け込み深さは減少します。
【No.8】 溶接アークの特徴
溶接アークの特徴に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)交流アークでは、電源周波の半サイクルごとに極性が変化する。電流が0になった瞬間に、アークは消失する。
(2)交流アークでは、電源周波の半サイクルごとに極性が変化する。電流が0になった後に、次の半サイクルに移行するときに高い電圧が必要となる。この高い電圧を再点弧電圧という。
(3)パルスマグ溶接において、液滴移行形態に大きく影響するのは、パルス電流とパルス期間である。
(4)パルスマグ溶接において、液滴移行形態を変化させずに平均溶接電流を変化させるために用いるのは、ベース期間である。
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誤っている選択肢は 無し
【解説】
(1)正しい。交流アークでは、電源周波の半サイクルごとに極性が変化します。電流が0になった瞬間に、アークは消失します。
(2)正しい。交流アークでは、電源周波の半サイクルごとに極性が変化し、電流が0になった後に、次の半サイクルに移行するときに高い電圧が必要となります。この高い電圧を再点弧電圧といいます。
(3)正しい。パルスマグ溶接は、スパッタの低減を目的とした溶接法です。パルス波形状の溶接電流により、小~中電流域において規則的な溶滴の移行を実現します。パルスマグ溶接では、電流が大きいピーク期間と電流の小さい ベース期間 が交互に入れ替わり、それぞれの期間で異なる溶接電流をワイヤに流します。パルスマグ溶接において、液滴移行形態に大きく影響するのは、パルス電流とパルス期間です。
(4)正しい。パルスマグ溶接において、溶接電流の調整は、パルス波形状の溶接電流のうち、電流の小さいベース期間を増減させることによって行います。
【No.9】 パルスマグ溶接
パルスマグ溶接に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)パルスマグ溶接において、液滴移行形態に及ぼす影響が最も少ない因子は、ベース期間である。
(2)パルスマグ溶接において、アーク長の制御に用いられる因子は、パルス期間またはベース期間である。
(3)ガス切断は、切断する材の一部を予熱炎で加熱し、この部分の温度が燃焼温度に達したときに高圧の酸素を吹き付けて行う切断方法である。
(4)プラズマ切断は、アークをノズルで拘束して、細く絞られた高密度なアークエネルギーを利用して行う切断方法である。
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誤っている選択肢は (1)、(3)
【解説】
(1)誤り。パルスマグ溶接において、液滴移行形態に及ぼす影響が最も少ない因子は、ベース電流です。
(2)正しい。パルスマグ溶接において、アーク長の制御に用いられる因子は、パルス期間またはベース期間です。
(3)誤り。燃焼温度ではなく、発火温度です。燃焼温度は、外部から火種を近づけたときに燃え始める温度で、発火温度は、火種がなくても自然に燃え始める温度です。ガス切断は、切断する材の一部を予熱炎で加熱し、この部分の温度が発火温度に達したときに高圧の酸素を吹き付けて行う切断方法です。
(4)正しい。アークは、電流を流し、母材と溶接棒などを接触させたときに発生する、気体中の放電現象です。プラズマ切断は、このアークをノズルで拘束して、細く絞られた高密度なアークエネルギーを利用して行う切断方法です。
【No.10】 プラズマ切断
プラズマ切断に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)プラズマ切断において、作動ガスに活性ガスを使用する場合には、銅シースの先端にタングステンを埋め込んだものが電極として採用される。
(2)レーザ切断では、ファイバレーザや炭酸ガスレーザが熱源として採用される。
(3)レーザ切断におけるファイバレーザでは、ファイバ伝送方式が採用される。
(4)レーザ切断における炭酸ガスレーザでは、直接伝送方式が採用される。
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誤っている選択肢は (1)、(4)
【解説】
(1)誤り。プラズマ切断の電極には、通常はタングステン電極が用いられますが、プラズマガスとして空気や酸素などの活性ガスを利用する場合には、酸化性雰囲気でも高い融点を持つ、ハフニウムやジルコニウムを、銅シースの先端に埋め込んだ電極が使用されます。
(2)正しい。レーザ切断では、ファイバレーザや炭酸ガスレーザが熱源として採用されます。ファイバレーザは高出力で波長が短く、光束が非常に集中しているため、高い精度かつ高効率で加工することができます。炭酸レーザは、二酸化炭素ガスを使用してレーザ光を発生、照射します。炭酸ガスレーザは安価であり、加工可能な材質も多い事から様々な製造現場で採用されています。
(3)正しい。レーザ切断は、集光したレーザを試料に直接照射して溶融させ、溶融金属をレーザと同軸で流れるアシストガスで吹き飛ばすことによって切断する加工法です。ファイバレーザはファイバケーブルの内部を光が通ることで、光が加工点まで誘導されます。これをファイバ伝送方式といいます。
(4)誤り。レーザ切断は、集光したレーザを試料に直接照射して溶融させ、溶融金属をレーザと同軸で流れるアシストガスで吹き飛ばすことによって切断する加工法です。炭酸ガスレーザはミラーにより光を伝送します。これをミラー伝送方式といいます。