WES試験対策(1級) 問題と解説 No.61~65
このページの問題を一問一答形式の動画としてまとめました。復習用にご活用ください。通勤中や運動中に最適です。

【No 241~260】WES溶接管理技術者試験対策(基本)
WES溶接管理技術者試験勉強のための一問一答形式の音声教材です。初学者である自分向けに、音声には基本的な用語の説明も含めています。運動中や通勤中に聞き流しながら...
【No.61】 マグ溶接
マグ溶接に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)ソリッドワイヤを用いるマグ溶接は、被覆アーク溶接に比べて、風の影響を受けにくい。
(2)ソリッドワイヤを用いるマグ溶接は、被覆アーク溶接に比べて、磁気吹きが発生しにくい。
(3)ソリッドワイヤを用いるマグ溶接は、サブマージアーク溶接に比べて、大電流が使用できる。
(4)ソリッドワイヤを用いるマグ溶接は、サブマージアーク溶接に比べて、溶接姿勢の制限が少ない。
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誤っている選択肢は (1)、(2)、(3)
【解説】
(1)誤り。ソリッドワイヤを用いるマグ溶接は、被覆アーク溶接に比べて風の影響を受けやすいです。マグ溶接(メタルアクティブガス溶接)は、炭酸ガスや混合ガス(炭酸ガス+アルゴンガスなど)をシールドガスとして使用し、ソリッドワイヤを連続供給する半自動溶接法です。一方、被覆アーク溶接は、被覆された溶接棒を用いてアークを形成し、被覆材が燃焼してガスとスラグを生成し、溶融池を保護します。
(2)誤り。磁気吹きとは、溶接中にアークが意図しない方向に偏向する現象で、主に直流溶接で発生します。これは、溶接電流によって母材や治具に磁場が生じ、アークがその磁場に影響されて偏ることで起こります。マグ溶接では、連続的な電流供給と短いアーク長により、磁場の影響を受けやすく、アークが偏向しやすいです。特に突合せ溶接や開先の端部では、磁束の集中により磁気吹きが顕著になることがあります。一方、被覆アーク溶接では、アーク長がやや長く、断続的な溶接のため磁場の蓄積が少なく、磁気吹きが緩和される傾向があります。
(3)誤り。ソリッドワイヤを用いるマグ溶接は、サブマージアーク溶接に比べて大電流の使用には制限があります。サブマージアーク溶接の方がはるかに高電流での溶接が可能です。サブマージアーク溶接は、アークがフラックスで完全に覆われているため、スパッタや紫外線の影響がなく、大電流でもアークが安定しやすいです。また、自動溶接でトーチが固定されているため、高電流でも制御が容易です。
(4)正しい。マグ溶接は、トーチを手動またはロボットで自在に操作できるため、複雑な構造物や多方向の継手にも対応可能です。一方、サブマージアーク溶接は、フラックスをアーク上に敷いて溶接するため、重力でフラックスが保持される下向き以外の姿勢では使用困難です。
【No.62】 マグ溶接
マグ溶接に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)ソリッドワイヤを用いるマグ溶接で一般に使用する溶接機器について、溶接電流の変化に応じてワイヤ送給速度をフィードバック制御する。
(2)ソリッドワイヤを用いるマグ溶接で一般に使用する溶接機器について、定電流特性溶接電源の適用によりアーク長を一定に保つことができる。
(3)ソリッドワイヤを用いるマグ溶接で一般に使用する溶接機器について、インバータ制御電源はサイリスタ制御電源に比べて細かい電流制御が可能になる。
(4)ソリッドワイヤを用いるマグ溶接で一般に使用する溶接機器について、ワイヤ径1.0mm以下の細径ワイヤや軟質ワイヤではプッシュ式送給装置を用いてワイヤの座屈を防止する。
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誤っている選択肢は (1)、(2)、(4)
【解説】
(1)誤り。一般的なマグ溶接機では、溶接電流を直接検出してワイヤ送給速度をフィードバック制御する機能は搭載されていません。ワイヤ送給速度を設定することで、結果的に電流が決まるという関係です。
(2)誤り。マグ溶接は、主に定電圧特性の電源を使用することで、アーク長の自然な安定化を実現しています。電圧は一定で、アーク長が短くなると電流が増加し、ワイヤが早く溶けるため、アーク長が回復します。この電流の自己調整作用により、アーク長が自然に安定します。
(3)正しい。インバータ制御は、交流電源を一度直流に変換し、再び高周波でスイッチングして出力を制御します。この高周波スイッチングにより、電流・電圧の微細な変動に即応できます。マグ溶接では、アーク長の変化やワイヤ送給速度の変動に対して、電源が瞬時に追従し、アークの安定性が向上します。一方、サイリスタ制御は交流の波形を部分的に制御して出力を調整する方式です。制御周波数が低いため、アークの微細な変動に対する応答が遅れがちになり、特に薄板や低電流領域ではアークが不安定になりやすいです。
(4)誤り。細径ワイヤや軟質ワイヤは、ワイヤの剛性が低く座屈しやすいです。溶接機側モーターで押すプッシュ式は、座屈しやすく、細径や軟質ワイヤに不向きです。トーチ側モーターで引くプル式および、プッシュ式とプル式を合わせたプッシュプル式は、軟質・細径ワイヤでも座屈が生じにくいです。
【No.63】 マグ溶接
マグ溶接に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)ソリッドワイヤを用いるマグ溶接で、シールドガスに100%炭酸ガスを用いる場合、低電流・低電圧では短絡移行となる。
(2)ソリッドワイヤを用いるマグ溶接で、シールドガスに100%炭酸ガスを用いる場合、中電流・中電圧域では、CO2の解離による発熱によりドロップ移行となる。
(3)ソリッドワイヤを用いるマグ溶接で、シールドガスに100%炭酸ガスを用いる場合、大電流・大電圧域ではスプレー移行となる。
(4)ソリッドワイヤを用いるマグ溶接で、シールドガスに100%炭酸ガスを用いる場合、大電流・大電圧域では大粒で大量のスパッタが発生しやすい。
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誤っている選択肢は (2)、(3)
【解説】
(1)正しい。短絡移行とは、溶融したワイヤ先端が溶融池に接触し、短絡状態になった後、アークの熱でワイヤ先端が切断されて金属が移行する方式です。
(2)誤り。溶接におけるドロップ移行とは、ガスシールドアーク溶接の溶滴移行形態の一つで、溶接ワイヤの先端で溶けた金属(溶滴)が、重力や強いアークの反発力などによって、不安定に大きな粒となって母材へ移行する現象のことです。解離は吸熱反応であるため、発熱しません。
(3)誤り。スプレー移行は、高電流・高電圧に加えて、アルゴン主体のシールドガスが必要です。
(4)正しい。100%炭酸ガスでは、電流を上げても液滴は大きく成長し、アーク圧力で押し上げられながら飛散するため、スパッタが多く発生します。
【No.64】 マグ溶接
マグ溶接に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)ソリッドワイヤを用いる、パルスマグ溶接では、ベース期間中に短絡移行となるようにベース電流を設定する。
(2)ソリッドワイヤを用いる、パルスマグ溶接では、1パルス1溶滴移行となるようにパルス電源とパルス期間を設定する。
(3)ソリッドワイヤを用いる、パルスマグ溶接では、溶滴移行形態はスプレー移行となる。
(4)ソリッドワイヤを用いる、シナジックパルス溶接では、パルス(ピーク)電流のみを変化させることで入熱制御が可能となる。
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誤っている選択肢は (1)、(4)
【解説】
(1)誤り。ソリッドワイヤを用いたパルスマグ溶接では、ベース期間中に短絡移行を起こさないようにベース電流を設定するのが一般的です。パルスマグ溶接は、スプレー移行(微細な液滴がアーク中を飛ぶ)を安定的に制御するためのプロセスです。ベース期間中に短絡移行が起こると、スパッタの増加、アークの不安定化、品質のばらつきが生じます。パルスマグ溶接では、電流波形が「ピーク電流」と「ベース電流」に分かれています。ベース電流はアークを維持できる最低限の電流に設定され、溶滴がワイヤ先端に留まり、母材に接触しないように調整されます。
(2)正しい。1パルス1溶滴制御は、スパッタの低減、アークの安定化、高品質なビード形成が実現するように、パルス電源の波形とパルス期間が設計・調整されます。
(3)正しい。パルスマグ溶接は、スプレー移行を低電流域でも安定して実現するための技術です。通常のスプレー移行は高電流・高電圧が必要ですが、パルス波形を用いることで、瞬間的に高電流(ピーク電流)を与え、溶滴をアーク中に飛ばすことができます。
(4)誤り。シナジックパルス溶接では、パルス(ピーク)電流のみを変化させることで、ある程度の入熱制御は可能ですが、それだけでは完全な制御とは言えません。「シナジック」とは、ワイヤ送給速度に応じて電流・電圧・パルス波形などが自動的に最適化される制御方式です。オペレーターは基本的にワイヤ送給速度を設定するだけで、溶接条件が連動して調整されます。多くのシナジックパルス電源では、ワイヤ送給速度を変えることで、ピーク電流・ベース電流・パルス周期が連動して変化します。つまり、入熱制御は「ピーク電流を含む複数のパラメータの協調制御」によって達成されます。
【No.65】 マグ溶接
マグ溶接に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)ソリッドワイヤを用いるマグ溶接のワイヤの溶融現象について、ワイヤの溶融量はアーク発熱によるものとワイヤ突き出し部での抵抗発熱によるものとの和で与えられる。
(2)ソリッドワイヤを用いるマグ溶接のワイヤの溶融現象について、アーク発熱によるワイヤ溶融量は溶接電流の二乗に比例する。
(3)ソリッドワイヤを用いるマグ溶接のワイヤの溶融現象について、抵抗発熱によるワイヤ溶融量は溶接電流に比例する。
(4)ソリッドワイヤを用いるマグ溶接のワイヤの溶融現象について、溶滴の離脱には電磁的ピンチ効果が大きく影響する。
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誤っている選択肢は (2)、(3)
【解説】
(1)正しい。ソリッドワイヤを用いるマグ溶接のワイヤの溶融現象について、ワイヤの溶融量はアーク発熱によるものとワイヤ突き出し部での抵抗発熱によるものとの和で与えられます。
(2)誤り。アーク発熱は、プラズマ中の放電現象によって発生する熱で、電流だけでなく電圧・アーク長・アーク形状・ガス種などにも依存します。
(3)誤り。抵抗発熱によるワイヤの溶融量は、溶接電流の「二乗」に比例します。
(4)正しい。電流が導体(ワイヤ)を流れると、その周囲に磁場が発生し、導体自身を内側に締め付ける力(ローレンツ力)が働きます。これが「ピンチ効果」です。電磁的ピンチ効果は特にスプレー移行領域やパルスマグ溶接で重要な役割を果たします。電流が高くなるほどピンチ力も強くなり、溶滴がワイヤ先端から母材へ向かって加速されて離脱します。