【過去問演習No.1-5】コンクリート技士 問題と解説

技士

【No.1】

JIS R 5210(ポルトランドセメント)の規定に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
(1)普通ポルトランドセメントでは,少量混合成分の合量の上限値が規定されている。
(2)早強ポルトランドセメントでは,材齢1日の圧縮強さの下限値が規定されている。
(3)中庸熱ポルトランドセメントでは,水和熱の上限値が規定されている。
(4)低熱ポルトランドセメントでは,けい酸ニカルシウム(C2S)の上限値が規定されている。
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正解は(4)

【解説】
(1)〇正しい。普通ポルトランドセメントの混合材の分量を5%以下と上限値を規定しています。
(2)〇正しい。早強ポルトランドセメントは,早期に大きい強度が得られます。材齢1日では,10.0N/mm2以上,3日では20.0N/mm2以上,7日では32.5N/mm2以上,28日では47.5N/mm2以上と下限値を規定しています。
(3)〇正しい。中庸熱ポルトランドセメントは,水和熱を低減するために,けい酸三カルシウム(C3S)、および、アルミン酸三カルシウム(C3A)の含有量を減らし,けい酸ニカルシウム(C2S)の含有量を多くしています。JIS R 5210では, C3Sを50%以下, C3Aを8%以下,水和熱を7日材齢で290J/g以下,28日材齢で340J/g以下と上限値を規定しています。
(4)×誤り。低熱ポルトランドセメントは,水和熱を低減するために,けい酸ニカルシウム(C2S)を中庸熱ポルトランドセメントよりもさらに多くしています。JIS R 5210では,下限値はC2Sを40%以上,上限値はC3Aを6%以下,水和熱を7日材齢で250J/g以下,28日材齢で290J/g以下と規定しています。

【No.2】

セメントに関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)風化が進むほど,強熱減量が大きくなる。
(2)比表面積が大きいほど,水和反応による発熱速度が速くなる。
(3)アルミン酸三カルシウム(C3A)の量が多いほど,水和熱が大きくなる。
(4)けい酸ニカルシウム(C2S)量が多いほど,早期の強度発現が大きくなる。
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正解は(4)

【解説】
(1)〇正しい。風化とは,セメント粒子が空気中の水分と反応して水和作用を受けることです。その水和作用で生成した水酸化カルシウム(Ca(OH)2)と二酸化炭素(C02)とが反応しセメントの硬化が阻害されます。セメントが風化すると密度が小さくなり,強熱減量が増し,凝結に異常をもたらすほか,圧縮強さが低下します。
(2)〇正しい。セメントは水と反応して凝結,硬化し強度を発現します。この水和反応は発熱反応で,この発熱を水和熱といいます。セメントの比表面積が大きいほど,水と接触するセメントの表面積が増大し,反応速度が大きくなり,強度の発現は早く,発熱速度も速くなります。
(3)〇正しい。アルミン酸三カルシウム(C3A)は,セメントクリンカーの主要化合物の一つです。C3Aは,水和反応速度が非常に速く,1日以内の早期強度に寄与します。水和熱および収縮は大きく,化学抵抗性は小さいという特性を有します。そのため,C3Aの量が多いほど水和熱は大きくなります。
(4)×誤り。けい酸ニカルシウム(C2S)は,セメントクリンカーの主要化合物の一つです。C2Sは水和反応速度が遅く,28日以後の長期強度に寄与します。水和熱および収縮は小さく,化学抵抗性は大きいという特性を有します。そのため,C2Sの量が多いほど長期強度の発現は大きくなります。

【No.3】

セメントの使用に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)工期短縮を図るために,早強ポルトランドセメントを使用した。
(2)高流動コンクリートに,低熱ポルトランドセメントを使用した。
(3)アルカリシリカ反応を抑制するために,中庸熱ポルトランドセメントを使用した。
(4)マスコンクリートの温度ひび割れを抑制するために,フライアッシュセメントB種を使用した。
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正解は(3)

【解説】
(1)〇正しい。早強ポルトランドセメントは,普通ポルトランドセメントに比べてけい酸三カルシウム(C3S)の割合を多くし,比表面積を大きくすることにより早期強度が得られます。早強ポルトランドセメントはプレストレストコンクリート,寒中コンクリート,工期の短縮を要する工事,工場製品などに用いられます。
(2)〇正しい。低熱ポルトランドセメントは,高流動コンクリートに求められる高い流動性と不分離性という観点にあったセメントです。
(3)×誤り。アルカリシリカ反応抑制対策の方法として①コンクリート中のアルカリ総量を3.0 kg/m3以下とする②高炉セメントB種(高炉スラグの分量は40%以上)もしくはC種,またはフライアッシュセメントB種(フライアッシュの分量は15%以上)もしくはフライアッシュセメントC種を用いる③アルカリシリカ反応性による区分Aの骨材を用いる方法があります。ここで,アルカリ総量を3.0 kg/m3以下とする方法には,全アルカリ0.6%以下のポルトランドセメント(低アルカリ形)を使用することが挙げられます。
(4)〇正しい。マスコンクリートの温度ひび割れを抑制するためには,コンクリートの温度上昇を小さくすることが重要です。低熱ポルトランドセメント,中庸熱ポルトランドセメントなどの水和熱の小さいセメントの使用は有効です。また,単位セメント量を小さくすることも有効です。フライアッシュセメントB種は,フライアッシュの混合により,水和熱が低下することで,マスコンクリートの温度ひび割れの抑制に有効です。

【No.4】

混合セメントおよびJISエコセメントに関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
(1)高炉セメントに規定されている高炉セメントA種,B種,C種のうちで,高炉スラグの分量が最も多いのはC種である。
(2)シリカセメントに規定されているシリカセメントには,二酸化けい素を60%以上含むシリカ質混合材をポルトランドセメントに混合したセメントがある。
(3)フライアッシュセメントに規定されているフライアッシュセメントB種と高炉セメントに規定されている高炉セメントB種では,フライアッシュセメントB種の方が混合材の分量が多い。
(4)エコセメントに規定されているエコセメントは,製品1トンにつき都市ごみ焼却灰や下水汚泥などの廃棄物を乾燥ベースで500 kg以上用いて作られるセメントである。
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正解は(3)

【解説】
(1)〇正しい。高炉セメントは,混合材である高炉スラグの分量(質量%)が5を超え30%以下をA種, 30を超え60%以下をB種,60を超え70%以下をC種と規定されています。
(2)〇正しい 。シリカセメントは,混合材であるシリカ質混和材料の二酸化けい素分を60%以上含むものと規定されています。
(3)×誤り。フライアッシュセメントは,混合材であるフライアッシュの分量(質量%)が5を超え10%以下をA種, 10を超え20%以下をB種, 20を超え30%以下をC種と規定されています。高炉セメントは,混合材である高炉スラグの分量(質量%)が5を超え30%以下をA種, 30を超え60%以下をB種,60を超え70%以下をC種と規定されています。
(4)〇正しい。エコセメントは,「エコセメントは,都市ごみ焼却灰を主として下水汚泥などの廃棄物を従として製品1トンにつき乾燥ベースで500 kg以上使用して作られるセメント」と定義されています。

【No.5】

JIS R 5210(ポルトランドセメント)の規定に関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
(1)材齢28日の水和熱の上限値は,低熱ポルトランドセメントより中庸熱ポルトランドセメントの方が大きい。
(2)材齢28日の圧縮強さの下限値は,低熱ポルトランドセメントより普通ポルトランドセメントの方が大きい。
(3)中庸熱ポルトランドセメントでは,けい酸三カルシウム(C3S)の下限値が規定されている。
(4)すべてのポルトランドセメントでは,全アルカリ量の上限値が規定されている。
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正解は(3)

【解説】
(1)〇正しい。中庸熱ポルトランドセメントは水和熱が大きくならないように水和熱の大きいけい酸三カルシウム(C3S)を50%以下,アルミン酸三カルシウム(C3A)を8%以下と規定し,水和熱を7日にあっては290J/g以下,28日にあっては340J/g以下と規定しています。低熱ポルトランドセメントは,さらに水和熱を下げるためにC3Aを6%以下,水和熱の小さいけい酸ニカルシウム(C2S)を40%以上と規定し,水和熱を7日にあっては250J/g以下,28日にあっては290J/g 以下と規定しています。
(2)〇正しい。低熱ポルトランドセメントは,水和熱を下げるために,普通ポルトランドセメントに比べて, C2Sが多くC3Aが少ないです。 C2Sが多いので,初期材齢での圧縮強さは小さいですが,長期材齢での圧縮強さは大きいです。JIS R 5210では,普通ポルトランドセメントの圧縮強さを,3日にあっては12.5N/mm2以上,7日にあっては22.5N/mm2以上,28日にあっては42.5N/mm2と規定し,低熱ポルトランドセメントの圧縮強さを,7日にあっては7.5N/mm2以上,28日にあっては22.5N/mm2以上,91日にあっては42.5N/mm2以上と規定されています。
(3)×誤り。中庸熱ポルトランドセメントのC3Sを50%以下と上限値を規定されています。
(4)〇正しい。すべてのポルトランドセメントの全アルカリは0.75%以下と上限値が規定されています。
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