WES試験対策(1級) 問題と解説 No.46~50
このページの問題を一問一答形式の動画としてまとめました。復習用にご活用ください。通勤中や運動中に最適です。
【No.46】 拡散性水素量
拡散性水素量に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)板厚40mmの高張力鋼を用いたアーク溶接で、拡散性水素量を低減させるために有効な対策として、ガスシールドアーク溶接の採用が挙げられる。
(2)板厚40mmの高張力鋼を用いたアーク溶接で、拡散性水素量を低減させるために有効な対策として、ソリッドワイヤの使用が挙げられる。
(3)板厚40mmの高張力鋼を用いたアーク溶接で、拡散性水素量を低減させるために有効な対策として、低水素系溶接棒の使用が挙げられる。
(4)板厚40mmの高張力鋼を用いたアーク溶接で、拡散性水素量を低減させるために有効な対策として、できるだけ溶接入熱を小さくする。
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誤っている選択肢は (4)
【解説】
(1)正しい。ガスシールドアーク溶接は、被覆アーク溶接に比べ、溶接金属中に持ち込まれる水素量が少なく、拡散性水素量を低く抑えられます。
(2)正しい。ソリッドワイヤはフラックスを含まないため、フラックス中の水分由来の水素が溶接金属に混入するリスクが低くなります。
(3)正しい。低水素系溶接棒は、被覆剤中の水分量を極力低く抑える配合になっており、溶接金属中に持ち込まれる水素量が少ないです。高張力鋼は水素割れ感受性が高いため、水素量の少ない低水素系溶接棒は特に有効です。
(4)誤り。溶接入熱を小さくすると冷却速度が速くなり、溶接金属や熱影響部(HAZ)が硬化組織になりやすくなります。冷却が速いと、溶接中に侵入した水素が溶接部から拡散・放出される時間が短くなり、結果として溶接金属中の拡散性水素量が高く残る傾向があります。
【No.47】 拡散性水素量
拡散性水素量に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)板厚40mmの高張力鋼を用いたアーク溶接で、拡散性水素量を低減させるために有効な対策として、余熱温度を高くする。
(2)板厚40mmの高張力鋼を用いたアーク溶接で、拡散性水素量を低減させるために有効な対策として、できるだけパス間温度を低くする。
(3)板厚40mmの高張力鋼を用いたアーク溶接で、拡散性水素量を低減させるために有効な対策として、直後熱の実施が挙げられる。
(4)板厚40mmの高張力鋼を用いたアーク溶接で、拡散性水素量を低減させるために有効な対策として、開先の清掃が挙げられる。
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誤っている選択肢は (2)
【解説】
(1)正しい。予熱温度を高くすると、溶接後の冷却が緩やかになり、溶接金属や熱影響部(HAZ)から水素が拡散・放出される時間が長く確保されます。
(2)誤り。板厚40mmの高張力鋼では、拡散性水素量低減のためにパス間温度は低くするのではなく、適正範囲を確保することが重要です。一般的には、予熱温度と同等かそれ以上のパス間温度を維持することが推奨されます。
(3)正しい。直後熱とは、溶接完了直後、まだ溶接部が高温のうちに追加加熱を行い、一定時間その温度を保持する処理です。直後熱で溶接部を100〜350℃程度に保持すると、水素の拡散速度が高まり、外部へ放出されやすくなります。
(4)正しい。開先や母材表面に付着した水分、油分、錆、塗膜などは、アーク熱で分解されて水素を発生させ、溶接金属に侵入します。清掃によりこれらを除去することで、水素混入を抑制できます。
【No.48】 溶接施工
溶接施工に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)マグ溶接での最大ウィービング振幅の目安はノズル口径の3倍程度である。
(2)マグ溶接でウィービング動作をウィービング端で少し止めて防止する溶接欠陥は、アンダカットである。
(3)マグ溶接中、ワイヤ突き出し長さが長くなると、溶接電流が増加する。
(4)マグ溶接中、ワイヤ突き出し長さが長くなると、溶け込みが減少する。
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誤っている選択肢は (1)、(2)、(3)
【解説】
(1)誤り。ウィービング振幅とは、溶接中にトーチや溶接棒を進行方向に対して左右(横方向)へ振る動きの幅のことです。マグ溶接での最大ウィービング振幅の目安はノズル口径の1.5倍程度です。
(2)誤り。マグ溶接でウィービング動作をウィービング端で少し止めて防止する溶接欠陥は、オーバラップおよび融合不良です。オーバラップの原因に、溶接速度が遅すぎて溶着金属が過剰になり、母材に溶け込まずに垂れ下がる、止端部でのアーク狙い位置や角度不良があります。融合不良の原因に、入熱不足、アーク狙い位置のずれ、溶融池の端部での熱不足があります。
(3)誤り。マグ溶接ではワイヤ突き出し長さ(チップ先端から母材までの距離)が長くなると、溶接電流は減少します。ワイヤ突き出し部分はアーク熱だけでなく、ジュール加熱(電気抵抗による発熱)でも溶けます。突き出し長さが長くなると、この部分の抵抗が増えてジュール加熱が大きくなり、同じワイヤ送給速度でも必要なアーク電流が減る方向に働きます。
(4)正しい。マグ溶接機は定電圧特性の電源を使うため、突き出し長さが長くなるとワイヤの抵抗が増え、ジュール加熱が大きくなります。その結果、同じワイヤ送給速度でも溶接電流が低下します。電流低下によりアーク熱が減少し、母材への入熱量が減るため、溶け込みが浅くなります。突き出し長さが長くなるとアーク長も長くなりやすく、これも溶け込み減少の一因になります。
【No.49】 溶接施工
溶接施工に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)マグ溶接において、スパッタ低減対策として、フラックス入りワイヤからソリッドワイヤへ変更した。
(2)マグ溶接において、スパッタ低減対策として、溶接速度を増加した。
(3)マグ溶接において、スパッタ低減対策として、シールドガス流量を減少した。
(4)マグ溶接において、スパッタ低減対策として、100%炭酸ガスから80%アルゴン+20%炭酸ガスの混合ガスへ変更した。
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誤っている選択肢は (1)、(2)、(3)
【解説】
(1)誤り。フラックス入りワイヤの方がスパッタが少ない場合が多く、フラックス入りワイヤからソリッドワイヤへの変更はスパッタ低減対策としては正しくありません。
(2)誤り。溶接速度を上げるとアークが不安定になり、短絡や飛散が増えてスパッタが増加することがあります。
(3)誤り。ガス流量が減少すると、シールド性が低下し、空気が混入し、アークが不安定化することでスパッタが増加します。また、酸化による溶滴の形状変化や短絡回数増加で、スパッタの飛散が増えます。
(4)正しい。アルゴン優勢の混合によりアークが安定し、中〜高電流域ではスプレー移行が可能になってスパッタが大幅に減ります。スプレー移行とは、ワイヤ先端がアーク熱で溶けてできた溶滴が、ワイヤ径よりも小さな粒となってアーク中を連続的に飛び、母材へ移行する現象です。
【No.50】 溶接施工
溶接施工に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)低炭素鋼のマグ溶接において、ポロシティの発生を防止するため、溶接速度を速くし、溶接入熱を適正範囲内で減少させた。
(2)低炭素鋼のマグ溶接において、ポロシティの発生を防止するため、開先部の汚れを除去した。
(3)低炭素鋼のマグ溶接において、ポロシティの発生を防止するた空気を巻き込まないように、適正なアーク長、ノズル高さで施工した。
(4)低炭素鋼のマグ溶接において、ポロシティの発生を防止するため、突合せ溶接の始端および終端部にエンドタブを取り付けた。
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誤っている選択肢は (1)
【解説】
(1)誤り。ポロシティとは、溶接金属の中にできる小さな空洞のことです。低炭素鋼のマグ溶接において、ポロシティの発生を防止するため、溶接速度を遅くし、溶接入熱を適正範囲内で増大させます。入熱を適正範囲まで増やす場合、溶融池の滞留時間が長くなり、ガスが浮上・放出しやすくなるため、ポロシティが減少する傾向があります。
(2)正しい。低炭素鋼のマグ溶接において、ポロシティの発生を防止するため、開先部の汚れ(油、塗料、さび、水分など)を除去します。
(3)正しい。アーク長が長すぎる場合、アークが不安定になり、大気(酸素・窒素)が溶融池に混入しやすくなり、ポロシティが発生しやすくなります。また、ノズル高さ(ワイヤ突き出し長さ)が高すぎる場合、空気の巻き込みが増え、ポロシティが発生しやすくなります。
(4)正しい。始端部は、溶接開始直後はアークやシールドガスが安定するまでに時間がかかり、この間に空気が巻き込まれやすく、ポロシティが発生しやすいため、エンドタブ上でアークを安定させてから溶接部に入ることで、母材の始端部に欠陥を残さないことができます。終端部は、溶接終了時はクレータ(溶融池のくぼみ)ができやすく、そこにガスが閉じ込められてポロシティや割れの原因になります。エンドタブ上でアークを止めることで、本溶接部の終端にクレータや気孔を残さないことができます。