WES試験対策(1級) 問題と解説 No.66~70
このページの問題を一問一答形式の動画としてまとめました。復習用にご活用ください。通勤中や運動中に最適です。

【No 261~280】WES溶接管理技術者試験対策
WES溶接管理技術者試験勉強のための一問一答形式の音声教材です。初学者である自分向けに、音声には基本的な用語の説明も含めています。運動中や通勤中に聞き流しながら...
【No.66】 溶接アーク
溶接アークに関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)アークは、中性粒子と荷電粒子とで構成された導電性を持つプラズマである。
(2)アーク電圧は、溶極近傍での陽極降下電圧と陰極近傍での陰極降下電圧、及び中間部分でのアーク柱電圧からなっている。
(3)大電流域では溶接電流の増加に伴ってアーク電圧は降下する。
(4)アルゴンに代えて熱損出の大きいヘリウムをシールドガスに用いると、アーク電圧は大きくなる。
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誤っている選択肢は (3)
【解説】
(1)正しい。アークは、中性粒子と荷電粒子とで構成された導電性を持つプラズマです。
(2)正しい。アーク電圧は、溶極近傍での陽極降下電圧と陰極近傍での陰極降下電圧、及び中間部分でのアーク柱電圧からなっています。
(3)誤り。大電流域では溶接電流の増加に伴って、アーク柱の電位傾度増大、粒子密度増加による抵抗上昇、アーク長の増加などが主因となり、アーク電圧は増加します。
(4)正しい。ヘリウムはアルゴンよりも電離電圧が高く、アークを維持するためにより大きな電場(電位傾度)が必要になります。そのため、同じアーク長でも電圧が高くなる傾向があります。
【No.67】 溶接アーク
溶接アークに関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)アークで発生する単位時間当たりの熱エネルギー(供給電力)のうち、実際に母材へ投入されるエネルギーの比率をアークの効率という。
(2)電磁力が作用してアーク柱の断面を縮小させる。このような作用を電磁的ピンチ力という。
(3)アークは冷却作用を受けると断面を収縮させ、熱損失を抑制しようとする。このような作用を熱キープ効果という。
(4)電極近傍と母材表面とでは、電流密度の違いから大きな圧力差が生じる。この圧力差によって形成される気流をプラズマ気流という。
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誤っている選択肢は (3)
【解説】
(1)正しい。アークで発生する単位時間当たりの熱エネルギー(供給電力)のうち、実際に母材へ投入されるエネルギーの比率をアークの効率といいます。
(2)正しい。電流が流れる導体の周囲には磁界が発生し、その磁界と電流自身の相互作用によって内向きの力(電磁力)が働きます。電磁力が作用してアーク柱の断面を縮小させます。このような作用を電磁的ピンチ力といいます。
(3)誤り。アークは冷却作用を受けると断面を収縮させ、熱損失を抑制しようとする作用は 熱的ピンチ効果といいます。
(4)正しい。電極近傍と母材表面とでは、電流密度の違いから大きな圧力差が生じます。この圧力差によって形成される気流をプラズマ気流といいます。
【No.68】 溶接アーク
溶接アークに関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)母材端部等では、アークが偏向することがある。この現象をアークの磁気吹きという。
(2)アークの磁気吹きの防止対策としては、母材へのケーブル接続位置の工夫、母材やジグの脱磁処理などがある。
(3)高周波高電圧方式のティグ溶接の起動方法の短所として、強い電磁ノイズが発生し、電波障害が生じやすいことが挙げられる。
(4)高周波高電圧方式のティグ溶接の起動方法の短所として、電子機器やIT機器のノイズ対策が必要になる場合があることが挙げられる。
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誤っている選択肢は 無し
【解説】
(1)正しい。溶接電流が流れると、その周囲に磁界が発生します。母材端部や接地ケーブルの取り回しによって磁界が非対称になると、アークに働く電磁力が偏り、アークが一方向に引き寄せられます。母材端部等でアークが偏向する現象をアークの磁気吹きといいます。
(2)正しい。アークの磁気吹きの防止対策としては、母材へのケーブル接続位置の工夫、母材やジグの脱磁処理などがあります。
(3)正しい。高周波高電圧方式のティグ溶接の起動方法の長所として、非接触で起動でき、電極損耗が少ないことが挙げられますが、短所として、強い電磁ノイズが発生し、電波障害の恐れがあることが挙げられます。
(4)正しい。高周波高電圧方式のティグ溶接の起動方法の短所として、電子機器やIT機器のノイズ対策が必要になる場合があることが挙げられます。
【No.69】 ティグ溶接
ティグ溶接に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)高周波高電圧方式のティグ溶接の起動方法の短所として、ケーブル長が長くなると、高周波勢力が減衰することが挙げられる。
(2)電極接触方式のティグ溶接の起動方法の短所として、電極先端部が損傷する恐れがあることが挙げられる。
(3)電極接触方式のティグ溶接の起動方法の短所として、損傷した電極が溶接部に巻き込まれ欠陥となる恐れがあることが挙げられる。
(4)電極接触方式のティグ溶接の起動方法の短所として、スタート電流制御が必要になることが挙げられる。
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誤っている選択肢は 無し
【解説】
(1)正しい。ケーブル長が長くなると浮遊容量が増え、電極先端での高周波勢力が低下し、アークスタート性能が悪化します。
(2)正しい。電極接触方式はノイズが少ないですが、電極先端部の傷損やタングステン巻込みなどの欠陥を生じる恐れがあります。
(3)正しい。電極接触方式のティグ溶接の起動方法の短所として、損傷した電極が溶接部に巻き込まれ欠陥となる恐れがあることが挙げられます。
(4)正しい。電極を母材に接触させてから持ち上げる際、電流が大きすぎると電極先端が損傷しやすく、タングステンの巻き込み欠陥につながります。逆に、電流が小さすぎるとアークが発生せず短絡状態になり、安定したアークスタートができません。
【No.70】 ティグ溶接
ティグ溶接に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)低周波パルスティグ溶接の効果として、溶融池の形成と凝固の制御が可能であることが挙げられる。
(2)低周波パルスティグ溶接の効果として、溶接姿勢、差厚継手、裏波溶接などで適正な溶融池の形成が可能になることが挙げられる。
(3)中周波パルスティグ溶接の効果として、アークの指向性が増加することが挙げられる。
(4)中周波パルスティグ溶接の効果として、薄板の高速溶接が可能になることが挙げられる。
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誤っている選択肢は 無し
【解説】
(1)正しい。パルス電流の仕組みは、ピーク電流期間で母材に大きな入熱が加わり、溶融池が形成され、ベース電流期間に入熱が減少し、溶融池が部分的に凝固します。
(2)正しい。0.5~15Hz程度の低周波パルス電流を用いると、ピーク電流で母材が溶け、ベース電流で溶融池が一部凝固するため、溶融金属の垂れ防止や裏波形成に有効です。
(3)正しい。パルス周波数を高くするとピーク電流による電磁力(電磁的ピンチ効果)でアークの指向性が良くなります。
(4)正しい。中周波パルスではピーク電流による電磁ピンチ効果が強まり、アークが細く集中します。そのため、狭い範囲に効率よく入熱できるので、薄板でも溶け落ちを防ぎながら溶接が可能です。平均電流を下げつつピーク電流で瞬間的に溶融させるため、母材への総入熱が少なく、薄板でも焼けや歪みを抑えられます。アークが安定して集中することで、溶融池が暴れにくく、ビード形成が安定するため、通常よりも速いトーチ移動速度での溶接が可能になります。