WES試験対策(1級) 問題と解説 No.126~130

WES(溶接)

WES試験対策(1級) 問題と解説 No.126~130

 このページの問題を一問一答形式の動画としてまとめました。復習用にご活用ください。通勤中や運動中に最適です。

【No.126】 溶接部の腐食

溶接部の腐食に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)オーステナイト系ステンレス鋼の溶接部で発生する、溶融境界からやや離れた溶接熱影響部で耐食性が劣化する現象を鋭敏化と呼ぶ。
(2)オーステナイト系ステンレス鋼の溶接部で発生する、溶融境界からやや離れた溶接熱影響部で耐食性が劣化する現象をウェルドディケイと呼ぶ。
(3)オーステナイト系ステンレス鋼の溶接部で発生する、溶融境界からやや離れた溶接熱影響部で耐食性が劣化する現象を粒界腐食と呼ぶ。
(4)オーステナイト系ステンレス鋼の溶接部で発生する、鋭敏化、ウェルドディケイ、粒界腐食の発生要因として、溶接熱サイクルにより結晶粒界にニオブ炭化物が析出し、その近傍にニオブ濃度が低下した領域(ニオブ欠乏層)が形成され、母材より耐食性が劣化することが挙げられる。
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誤っている選択肢は (4)

【解説】
(1)正しい。鋭敏化は、溶接や熱処理で 600~800℃ の温度域に数十秒以上さらされると、炭素がクロムと結合して 粒界にクロム炭化物が析出し、粒界近傍のクロム濃度が低下し、耐食性が失われる「クロム欠乏層」 が形成される現象です。
(2)正しい。ウェルドディケイは、溶接熱影響部(HAZ)で鋭敏化が起こり、溶接部近傍に粒界腐食が進行する現象です。
(3)正しい。粒界腐食とは、金属材料の結晶粒界に沿って選択的に腐食が進行する現象を指します。主な原因として、粒界に析出したクロム炭化物などによる クロム欠乏層の形成が挙げられます。
(4)誤り。オーステナイト系ステンレス鋼の溶接部で発生する、鋭敏化、ウェルドディケイ、粒界腐食の発生要因として、溶接熱サイクルにより結晶粒界にニオブ炭化物が析出し、その近傍にクロム濃度が低下した領域(クロム欠乏層)が形成され、母材より耐食性が劣化することが挙げられます。

【No.127】 溶接部の腐食

溶接部の腐食に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)ウェルドディケイを防止する方法として、低炭素ステンレス鋼の使用が挙げられる。
(2)ウェルドディケイを防止する方法として、ニオブまたはチタンを添加した安定化ステンレス鋼の使用が挙げられる。
(3)ウェルドディケイを防止する方法として、鋭敏化温度域(500~800℃)の冷却速度を大きくすることが挙げられる。
(4)ウェルドディケイを防止する方法として、1000~1100℃以上の固溶化熱処理の実施が挙げられる。
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誤っている選択肢は 無し

【解説】
(1)正しい。ウェルドディケイは、溶接熱影響部で クロム炭化物が粒界に析出し、クロム欠乏層が形成されることで発生します。炭素量が多いほど炭化物が生成しやすく、鋭敏化が進みます。低炭素ステンレス鋼(炭素が0.03%程度以下)では炭素が少ないため、粒界に析出するクロム炭化物の量が減り、鋭敏化が抑制されます。
(2)正しい。ニオブやチタンを添加すると、炭素はクロムではなくニオブ炭化物やチタン炭化物として安定化され、粒界にクロム炭化物が析出しにくくなります。
(3)正しい。ウェルドディケイは、溶接熱影響部(HAZ)が 600~800℃付近に長時間滞留することで、粒界にクロム炭化物が析出し、クロム欠乏層が形成されることが原因です。冷却速度を大きくすると、この温度域に滞在する時間が短くなり、炭化物析出の進行が抑制されます。
(4)正しい。ウェルドディケイは、溶接熱影響部で 600~800℃付近に滞留した際に粒界へクロム炭化物が析出し、クロム欠乏層が形成されることで発生します。固溶化熱処理では、1000~1100℃以上に加熱して急冷することで、析出したクロム炭化物を再びオーステナイト中に固溶させます。その結果、粒界のクロム欠乏層が消失し、耐食性が回復します。

【No.128】 溶接部の腐食

溶接部の腐食に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)溶接部の孔食とは、ステンレス鋼などの溶接部において、不動態皮膜が局所的に破壊されて微小な穴(ピット)が形成され、深く進行する局部腐食現象である。
(2)溶接金属では、凝固偏析によってモリブデン濃度が低下した箇所で孔食が発生しやすい。
(3)孔食の防止対策として、1000℃以上の熱処理により耐孔食性に有効な元素の偏析を緩和することが挙げられる。
(4)孔食の防止対策として、クロムの量が多い溶接ワイヤの使用が挙げられる。
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誤っている選択肢は (2)

【解説】
(1)正しい。溶接部の孔食とは、ステンレス鋼などの溶接部において、不動態皮膜が局所的に破壊されて微小な穴(ピット)が形成され、深く進行する局部腐食現象であり、外観上は小さな点状欠陥でも、内部に向かって急速に進展し、貫通や破断に直結する危険性があります。
(2)誤り。溶接金属では、凝固偏析によってクロム濃度が低下した箇所で孔食が発生しやすい。
(3)正しい。凝固偏析とは、溶融金属が凝固する過程で、合金元素が均一に固相へ取り込まれず、デンドライト樹枝間や粒界に元素が濃縮または欠乏する現象を指します。溶接金属では凝固偏析によってクロム濃度が局所的に低下した箇所が形成され、その部分は不動態皮膜の安定性が弱くなるため、孔食(ピッティングコロージョン)が発生しやすくなります。1000℃以上の固溶化熱処理を行うと、析出した炭化物や偏析した元素が再びオーステナイト中に固溶し、組成が均一化されます。その結果、クロムやモリブデンの偏析が緩和され、不動態皮膜が安定化し、孔食耐性が向上します。
(4)正しい。孔食は、不動態皮膜(酸化クロム)が局所的に破壊されることで発生します。クロム量が多いほど、不動態皮膜の形成力・安定性が高まり、塩化物イオンなどによる局所破壊に対する抵抗性が増します。

【No.129】 溶接継手の疲労破壊

溶接継手の疲労破壊に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)溶接継手の疲労破壊の特徴として、低温で生じやすく、発生すると急速に伝播する。
(2)溶接継手の疲労破壊の特徴として、高温で長時間、一定荷重に保持された場合に発生しやすい。
(3)溶接継手の疲労破壊の特徴として、長時間の変動荷重下で発生しやすい。
(4)溶接継手の疲労破壊の特徴として、大きな塑性変形を伴う。
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誤っている選択肢は (1)、(2)、(4)

【解説】
(1)誤り。「低温で生じやすく、発生すると急速に伝播する」という特徴は、疲労破壊ではなく、ぜい性破壊の特徴です。
(2)誤り。「高温で長時間、一定荷重に保持された場合に発生しやすい」という特徴は疲労破壊ではなく、クリープ破壊の特徴です。
(3)正しい。溶接継手の疲労破壊の特徴として、長時間の変動荷重下で発生しやすいです。溶接継手では、溶接止端部や欠陥部が応力集中点となり、疲労亀裂の起点になりやすいです。
(4)誤り。溶接継手の疲労破壊は「大きな塑性変形を伴わず、繰返し荷重によって亀裂が徐々に進展する」ことが特徴です。

【No.130】 溶接継手の疲労破壊

溶接継手の疲労破壊に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)溶接継手の疲労破面の特徴として、破面は荒々しく、光沢がある。
(2)溶接継手の疲労破面の特徴として、破面は平坦で、光沢がほとんどない。
(3)溶接継手の疲労破面の特徴として、破面の変形が大きい。
(4)溶接継手の疲労破面の特徴として、破面の変形が小さい。
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誤っている選択肢は (1)、(3)

【解説】
(1)誤り。「破面が荒々しく、光沢がある」という特徴は疲労破壊ではなく、ぜい性破壊の特徴です。ぜい性破壊は、塑性変形をほとんど伴わず、破面は平坦で光沢があり、リバーパターンやシェブロンパターンが観察されます。
(2)正しい。溶接継手の疲労破面は「平坦で光沢がほとんどない」ことが特徴であり、- 亀裂進展部は比較的平坦で滑らかで、ビーチマーク(貝殻模様)やストライエーション(縞模様)が観察されます。
(3)誤り。溶接継手の疲労破面は「大きな変形を伴わず、繰返し荷重によって徐々に亀裂が進展する」ことが特徴です。
(4)正しい。疲労破壊は繰返し荷重によって徐々に亀裂が進展するため、全体として大きな塑性変形は伴いません。
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