WES試験対策(1級) 問題と解説 No.121~125
このページの問題を一問一答形式の動画としてまとめました。復習用にご活用ください。通勤中や運動中に最適です。
【No.121】 鋼材の種類
鋼材の種類に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)9%ニッケル鋼は、低温容器に用いられる。
(2)クロムモリブデン鋼は、低温容器に用いられる。
(3)フェライト系ステンレス鋼は、低温容器に用いられる。
(4)オーステナイト系ステンレス鋼は、低温容器に用いられる。
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誤っている選択肢は (2)、(3)
【解説】
(1)正しい。9%ニッケル鋼は、液化天然ガス(LNG)などの極低温用圧力容器に不可欠な材料であり、マイナス196℃でも靱性を維持できるため、低温容器に最適です。
(2)誤り。クロムモリブデン鋼は主に高温・高圧用の圧力容器やボイラに使われ、極低温容器には通常は用いられません。
(3)誤り。フェライト系ステンレス鋼は体心立方格子(BCC)構造を持ち、低温になると延性が急激に低下し、脆性破壊を起こしやすくなります。フェライト系ステンレス鋼は、耐食性を活かして自動車排気系部品、建材、家庭用器具などに使用されます。
(4)正しい。オーステナイト系ステンレス鋼は低温容器に広く用いられます。特に液化天然ガス(LNG)や液化酸素・窒素などの極低温環境でも靱性を維持できるため、代表的な低温材料の一つです。
【No.122】 溶接熱影響部
溶接熱影響部に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)溶接熱影響部で最もじん性が低下する領域は、粗粒域である。
(2)溶接熱影響部で最もじん性が良好な領域は、細粒域である。
(3)鋼を加熱していくと、Ac3温度でオーステナイト単相となる。
(4)Ac3温度でオーステナイト単相の成長が十分に起こらず、その状態から冷却されるとフェライトやパーライトに変態し、結晶粒は粗粒化する。
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誤っている選択肢は (3)、(4)
【解説】
(1)正しい。溶接時に母材が Ac3温度を大きく超える高温にさらされると、オーステナイト粒が著しく成長します。冷却後、旧オーステナイト粒が粗大化した組織となり、靱性が低下します。じん性低下の要因として、粒径が大きいほど破壊進展が容易になり、衝撃値が低下することが挙げられます。
(2)正しい。溶接熱影響部で最もじん性が良好な領域は、細粒域です。
(3)誤り。鋼は加熱により、Ac1でオーステナイトが生成し始め、Ac3で完全にオーステナイト単相となります。この温度以上に加熱された領域は溶接熱影響部の「完全オーステナイト域」として、組織変化やじん性低下に直結します。
(4)誤り。母材が Ac3温度直上程度に加熱されると、オーステナイト化は完了しますが、温度がそれほど高くないため旧オーステナイト粒の成長は抑えられます。結果として、微細なオーステナイト粒が形成されます。微細な旧オーステナイト粒から変態生成物(フェライト、パーライト、ベイナイトなど)が形成されるため、組織が細かく、じん性が高くなります。
【No.123】 溶接熱影響部
溶接熱影響部に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)Ac3直上で十分な粒成長が起こらないまま冷却されると、微細な変態組織が得られ、これは焼きなましと呼ばれる熱処理の組織形成機構とよく似ている。
(2)結晶粒が細粒であると、冷却中の変態の核生成サイトが増し、焼入れ性は向上する。
(3)軟鋼のマグ溶接用ソリッドワイヤの化学成分の中で、軟鋼用被覆アーク溶接棒の心線に比べて、ケイ素が多量に含有されている。
(4)軟鋼のマグ溶接用ソリッドワイヤの化学成分の中で、軟鋼用被覆アーク溶接棒の心線に比べて、クロムが多量に含有されている。
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誤っている選択肢は (1)、(2)、(4)
【解説】
(1)誤り。Ac3直上で粒成長が不十分なまま冷却されると微細組織が得られ、これは「焼きなまし」による組織形成機構とよく似ています。
(2)誤り。細粒の場合、粒界が多いため、冷却中の変態(フェライトやパーライトなど)の核生成サイトが増え、変態が起こりやすくなり、焼入れ性は低下します。
(3)正しい。マグ溶接用ソリッドワイヤ-には、ケイ素が比較的多く添加されています。主目的は脱酸作用(溶融金属中の酸素を除去すること)です。被覆アーク溶接棒の心線のケイ素含有量は比較的少なく、脱酸は主に被覆剤(フラックス)に含まれる成分によって行われます。
(4)誤り。軟鋼のマグ溶接用ソリッドワイヤの化学成分の中で、軟鋼用被覆アーク溶接棒の心線に比べて、クロムは多量に含有されていません。
【No.124】 マグ溶接
マグ溶接に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)軟鋼のマグ溶接用ソリッドワイヤの化学成分の中で、軟鋼用被覆アーク溶接棒の心線に比べて、ニッケルが多量に含有されている。
(2)軟鋼のマグ溶接用ソリッドワイヤの化学成分の中で、軟鋼用被覆アーク溶接棒の心線に比べて、マンガンが多量に含有されている。
(3)軟鋼のマグ溶接用ソリッドワイヤの化学成分の中で、軟鋼用被覆アーク溶接棒の心線に比べて、ケイ素やマンガンが多量に含有されている理由として、溶接金属中の脱酸反応を促進させ、酸素を低減することが挙げられる。
(4)溶接金属中の脱酸反応を促進させ、酸素を低減すると、溶接金属の靭性を向上させ、ポロシティ(小さな空洞)を低減させるが、炭酸ガスの発生は多くなる。
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誤っている選択肢は (1)、(4)
【解説】
(1)誤り。軟鋼のマグ溶接用ソリッドワイヤの化学成分の中で、軟鋼用被覆アーク溶接棒の心線に比べて、ニッケルは多量に含有されていません。
(2)正しい。マグ溶接用ソリッドワイヤ-には、マンガンが比較的多く添加されています。主目的は脱酸作用(溶融金属中の酸素を除去すること)です。被覆アーク溶接棒の心線のマンガン含有量は比較的少なく、脱酸は主に被覆剤(フラックス)に含まれる成分によって行われます。
(3)正しい。軟鋼のマグ溶接用ソリッドワイヤの化学成分の中で、軟鋼用被覆アーク溶接棒の心線に比べて、ケイ素やマンガンが多量に含有されている理由として、溶接金属中の脱酸反応を促進させ、酸素を低減することが挙げられます。
(4)誤り。溶接金属中の脱酸反応を促進させ、酸素を低減すると、溶接金属の靭性を向上させ、炭酸ガスの発生が抑制されることで、ポロシティ(小さな空洞)を低減させます。
【No.125】 マグ溶接
マグ溶接に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)フラックス入りワイヤはソリッドワイヤに比較して、溶接金属中の水素量は多くなる。
(2)フラックス入りワイヤはソリッドワイヤに比較して、ビード外観は美しくなる。
(3)フラックス入りワイヤはソリッドワイヤに比較して、スラグの生成量は多くなる。
(4)フラックス入りワイヤはソリッドワイヤに比較して、スパッタの発生量は多くなる。
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誤っている選択肢は (4)
【解説】
(1)正しい。フラックス入りワイヤはソリッドワイヤに比較して、溶接金属中の水素量は多くなります。フラックスは吸湿しやすく、そこに含まれる水分が溶接時に分解して水素源となり、溶接金属中の拡散性水素量が増加しやすくなります。
(2)正しい。フラックス入りワイヤはソリッドワイヤに比較して、ビード外観は美しくなります。
(3)正しい。フラックス入りワイヤは、ワイヤ内部のフラックスが溶融してスラグを形成するため、ビード表面にスラグが覆います。
(4)誤り。フラックス入りワイヤはソリッドワイヤに比較して、スパッタの発生量は少なくなります。