【No.6】
Aが,Bの欺罔行為によって,A所有の建物をCに売却する契約をした場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)Aが,Bの欺罔行為によって,A所有の建物をCに売却する契約をした場合,Aは,Bが欺罔行為をしたことを,Cが知っているときでないと,売買契約の取り消しをすることができない。
(2)Aが,Bの欺罔行為によって,A所有の建物をCに売却する契約をした場合,AがCに所有権移転登記を済ませ,CがAに代金を完済した後,詐欺による有効な取り消しがなされたときには,登記の抹消と代金の返還は同時履行の関係になる。
(3)Aが,Bの欺罔行為によって,A所有の建物をCに売却する契約をした場合,Aは,詐欺に気が付いていたが,契約に基づき,異議を留めることなく所有権移転登記手続をし,代金を請求していた場合,詐欺による取り消しをすることはできない。
(4)Aが,Bの欺罔行為によって,A所有の建物をCに売却する契約をした場合,Cが当該建物を,詐欺について善意のDに転売して所有権移転登記を済ませても,Aは詐欺による取り消しをして,Dから建物の返還を求めることができる。
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正解は(4)
【解説】
(1)○正しい。AはBの欺罔行為,つまり詐欺によってCと売買契約を結んでいることから,いわゆる第三者の詐欺に該当します。そして,第三者の詐欺によって意思表示をした場合,その意思表示の相手方が,その詐欺の事実につき知らなかったときはその意思表示を取り消すことができませんが,知っていたときは取り消すことができます。
(2)○正しい。売買契約を詐欺を理由として取り消した場合,その契約は初めからなかったものとなるので,契約当事者は,互いに相手方に対して,すでに受け取った物を返還する義務を負います。この場合における,当事者の義務は,同時履行の関係にあります。
(3)○正しい。詐欺に気が付いていても,異議を留めることなく契約の全部もしくは一部の履行をし,又は相手方に履行の請求をしたときは,追認をしたものとみなされます。
(4)×誤り。詐欺による意思表示の取り消しは,善意の第三者に対抗することができません。
【No.7】
民法第95条本文は,「意思表示は,法律行為の要素に錯誤があったときは,無効とする。」と定めている。これに関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)「意思表示は,法律行為の要素に錯誤があったときは,無効とする。」と定められているが,意思表示をなすに当たり,表意者に重大な過失があったときは,表意者は,自らその無効を主張することができない。
(2)「意思表示は,法律行為の要素に錯誤があったときは,無効とする。」と定められているが,表意者自身において,その意思表示に瑕疵を認めず,民法第95条に基づく意思表示の無効を主張する意思がない場合は,第三者がその意思表示の無効を主張することはできない。
(3)「意思表示は,法律行為の要素に錯誤があったときは,無効とする。」と定められているが,意思表示をなすについての動機は,表意者が当該意思表示の内容とし,かつ,その旨を相手方に明示的に表示した場合は,法律行為の要素となる。
(4)「意思表示は,法律行為の要素に錯誤があったときは,無効とする。」と定められているが,意思表示をなすについての動機は,表意者が当該意思表示の内容としたが,その旨を相手方に黙示的に表示したにとどまる場合は,法律行為の要素とならない。
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正解は(4)
【解説】
(1)○正しい。意思表示は,法律行為の要素に錯誤があったときは無効です。しかし,その意思表示の表意者に重大な過失があったときは,表意者は,自らその無効を主張することはできません。
(2)○正しい。法律行為の要素に錯誤があった場合,表意者自身が,その意思表示の瑕疵を認めず,無効を主張する意思がないときには,原則として,表意者以外の第三者がその意思表示の無効を主張することができません。
(3)○正しい。意思表示の動機の錯誤の場合,表意者が動機について当該意思表示の内容とし,かつ,その旨を相手方に表示しているときは,法律行為の要素の錯誤となります。
(4)×誤り。動機の錯誤の表示は黙示的でも要素の錯誤となります。動機の錯誤であっても,動機を当該意思表示の内容とし,かつ,その旨を相手方に表示している場合は,法律行為の要素の錯誤となります。そして,その表示は,明示的であるか黙示的であるかを問いません。
【No.8】
未成年者に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)未成年者に関して,父母とまだ意思疎通することができない乳児は,不動産を所有することができない。
(2)未成年者に関して,営業を許可された未成年者が,その営業のための商品を仕入れる売買契約を有効に締結するには,父母双方がいる場合,父母のどちらか一方の同意が必要である。
(3)未成年者に関して,男は18歳に,女は16歳になれば婚姻することができるが,父母双方がいる場合には,必ず父母双方の同意が必要である。
(4)未成年者に関して,Aが死亡し,Aの妻Bと嫡出でない未成年の子CとDが相続人となった場合に,CとDの親権者である母EがCとDを代理してBとの間で遺産分割協議を行っても,有効な追認がない限り無効である。
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正解は(4)
【解説】
(1)×誤り。乳児も権利能力を有しているので,不動産を所有することができます。権利能力とは権利義務の主体となり得る能力をいい,自然人の場合は出生によって権利能力を取得します。
(2)×誤り。営業の範囲内の契約を結ぶ場合,父母の同意は不要です。未成年者が法律行為をするには原則として法定代理人の同意を得なければなりませんが,営業を許可された未成年者は,その営業に関して成年者と同一の行為能力を有します。
(3)×誤り。父母の一方の同意で足りる場合があります。男は18歳に,女は16歳にならなければ,婚姻をすることができません。また,未成年の子が婚姻をするには,原則として,父母の同意を得なければなりません。ただし,父母の一方が,同意をしないとき,行方不明のとき,死亡したとき,意思を表示することができないときには,他の一方の同意だけで足ります。
(4)○正しい。親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合,その一人と他の子との利益が相反する行為について,その親権を行う者は,その一方のために特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならず,これに反する行為は無権代理行為となるため,有効な追認がない限り無効となります。そして,親権者が共同相続人である数人の子を代理して遺産分割の協議をすることは,利益相反行為に当たります。
【No.9】
意思無能力者又は制限行為能力者に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)意思無能力者又は制限行為能力者に関して,意思能力を欠いている者が土地を売却する意思表示を行った場合,その親族が当該意思表示を取り消せば,取り消しの時点から将来に向かって無効となる。
(2)意思無能力者又は制限行為能力者に関して,未成年者が土地を売却する意思表示を行った場合,その未成年者が婚姻をしていても,親権者が当該意思表示を取り消せば,意思表示の時点に遡って無効となる。
(3)意思無能力者又は制限行為能力者に関して,成年被後見人が成年後見人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合,成年後見人は,当該意思表示を取り消すことができる。
(4)意思無能力者又は制限行為能力者に関して,被保佐人が保佐人の事前の同意を得て土地を売却する意思表示を行った場合,保佐人は,当該意思表示を取り消すことができる。
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正解は(3)
【解説】
(1)×誤り。意思無能力者が結んだ契約は,取り消しできません。意思能力を欠いている者の意思表示は,無効です。意思表示の取り消しにより無効となるわけではありません。
(2)×誤り。婚姻をした者が結んだ契約は,取り消しできません。未成年者が婚姻をしたときは,その未成年者は,成年に達したものとみなされます。
(3)○正しい。成年被後見人の法律行為は,日用品の購入その他日常生活に関する行為を除き,取り消すことができます。これは,成年後見人の事前の同意を得ていた場合でも同様です。そして,この取り消しは,成年被後見人のみならず,成年後見人も行うことができます。
(4)×誤り。被保佐人が保佐人の同意を得て行った行為は,取り消すことはできません。
【No.10】
制限行為能力者に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)制限行為能力者に関して,古着の仕入販売に関する営業を許された未成年者は,成年者と同一の行為能力を有するので,法定代理人の同意を得ないで,自己が居住するために建物を第三者から購入したとしても,その法定代理人は当該売買契約を取り消すことができない。
(2)制限行為能力者に関して,被保佐人が,不動産を売却する場合には,保佐人の同意が必要であるが,贈与の申し出を拒絶する場合には,保佐人の同意は不要である。
(3)成年後見人が,成年被後見人に代わって,成年被後見人が居住している建物を売却する際,後見監督人がいる場合には,後見監督人の許可があれば足り,家庭裁判所の許可は不要である。
(4)被補助人が,補助人の同意を得なければならない行為について,同意を得ていないにもかかわらず,詐術を用いて相手方に補助人の同意を得たと信じさせていたときは,被補助人は当該行為を取り消すことができない。
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正解は(4)
【解説】
(1)×誤り。営業に関しない法律行為には,法定代理人の同意が必要です。未成年者が法律行為をするには,原則としてその法定代理人の同意を得なければなりません。もっとも,営業を許された未成年者は,その営業に関しては,成年者と同一の行為能力を有します。
(2)×誤り。贈与の申込みを拒絶するには,保佐人の同意が必要です。被保佐人が,不動産を売却する場合に,保佐人の同意が必要であると。また,被保佐人が贈与の申込みを拒絶するには,その保佐人の同意を得なければなりません。
(3)×誤り。成年後見人による居住用の建物の売却には,家庭裁判所の許可が必要です。成年後見人は,成年被後見人に代わって,その居住の用に供する建物を売却するには,家庭裁判所の許可を得なければなりません。
(4)○正しい。制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは,その行為を取り消すことができません。