【宅建過去問】権利関係ー根抵当権、保証債権、連帯保証No.81-85

宅建士

【No.81】

根抵当権に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。
(1)根抵当権者は,総額が極度額の範囲内であっても,被担保債権の範囲に属する利息の請求権については,その満期となった最後の2年分についてのみ,その根抵当権を行使することができる。
(2)元本の確定前に根抵当権者から,被担保債権の範囲に属する債権を取得した者は,その債権について根抵当権を行使することはできない。
(3)根抵当権設定者は,担保すべき元本の確定すべき期日の定めがないときは,一定期間が経過した後であっても,担保すべき元本の確定を請求することはできない。
(4)根抵当権設定者は,元本の確定後であっても,その根抵当権の極度額を,減額することを請求することはできない。
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正解は(2)

【解説】
(1)×誤り。利息は,満期となった最後の2年分に限られません。根抵当権者は,確定した元本ならびに利息,その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について,極度額を限度として,その根抵当権を行使することができます。総額が極度額の範囲内であれば,被担保債権の範囲に属する利息の請求権についても根抵当権を行使することができ,その満期となった最後の2年分に限られるわけではありません。
(2)○正しい。元本の確定前に根抵当権者から債権を取得した者は,その債権について根抵当権を行使することができません。元本確定前の根抵当権には,随伴性がありません。
(3)×誤り。抵当権設定者は,一定期間経過後に元本確定請求ができます。担保すべき元本の確定すべき期日の定めがない場合,根抵当権設定者は,根抵当権の設定の時から3年を経過したときは,担保すべき元本の確定を請求することができます。
(4)×誤り。元本確定後,根抵当権設定者から極度額の減額請求ができます。元本の確定後においては,根抵当権設定者は,その根抵当権の極度額を,現に存する債務の額と以後2年間に生ずべき利息,その他の定期金及び債務の不履行による損害賠償の額とを加えた額に減額することを請求することができます。

【No.82】

Aは,自己所有の甲不動産につき,B信用金庫に対し,極度額を3000万円,被担保債権の範囲を「信用金庫取引による債権」とする第1順位の根抵当権を設定し,その旨の登記をした。なお,担保すべき元本の確定期日は定めなかった。この場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)Aは,自己所有の甲不動産につき,B信用金庫に対し,極度額を3000万円,被担保債権の範囲を「信用金庫取引による債権」とする第1順位の根抵当権を設定し,その旨の登記をした。なお,担保すべき元本の確定期日は定めなかった。元本の確定前に,被担保債権の範囲を変更するには,後順位の抵当権者がいる場合は,その者の承諾を得なければならない。
(2)Aは,自己所有の甲不動産につき,B信用金庫に対し,極度額を3000万円,被担保債権の範囲を「信用金庫取引による債権」とする第1順位の根抵当権を設定し,その旨の登記をした。なお,担保すべき元本の確定期日は定めなかった。元本の確定前に,B信用金庫から,被担保債権の範囲に属する個別債権の譲渡を受けた者は,確定日付のある証書でAに対し債権譲渡通知を行っておけば,その債権について根抵当権を行使できる。
(3)Aは,自己所有の甲不動産につき,B信用金庫に対し,極度額を3000万円,被担保債権の範囲を「信用金庫取引による債権」とする第1順位の根抵当権を設定し,その旨の登記をした。なお,担保すべき元本の確定期日は定めなかった。B信用金庫は,確定した元本が極度額以下であれば,その元本に係る最後の2年分の約定金利については,極度額を超えても,根抵当権を行使できる。
(4)Aは,自己所有の甲不動産につき,B信用金庫に対し,極度額を3000万円,被担保債権の範囲を「信用金庫取引による債権」とする第1順位の根抵当権を設定し,その旨の登記をした。なお,担保すべき元本の確定期日は定めなかった。Aが友人CのためにB信用金庫との間で保証契約を締結し保証債務を負担した場合,B信用金庫のAに対するこの保証債権は,「信用金庫取引による債権」に含まれ,この根抵当権で担保される。
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正解は(4)

【解説】
(1)×誤り。被担保債権の範囲の変更には後順位抵当権者の承諾不要です。根抵当権において,元本の確定前は後順位抵当権者の承諾を得ることなく,根抵当権の担保すべき債権の範囲の変更をすることができます。
(2)×誤り。元本の確定前に,根抵当権者から債権を取得した者は,その債権について根抵当権を行使することができません。したがって,B信用金庫から,被担保債権の範囲に属する個別債権の譲渡を受けた者が,確定日付ある証書でAに対して債権譲渡通知を行っていても,根抵当権を行使することができません。
(3)×誤り。根抵当権者は,確定した元本ならびに利息その他の定期金及び債務の不履行によって生じた損害の賠償の全部について,極度額を限度として,その根抵当権を行使することができます。極度額を超えては行使できません。
(4)○正しい。根抵当権の担保すべき債権の範囲は,債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して,定めなければなりません。「信用金庫取引による債権」は一定の種類の取引に入ります。そして,「信用金庫取引による債権」として設定された根抵当権の被担保債権には,信用金庫の根抵当債務者に対する保証債権も含まれます。

【No.83】

保証に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)保証人となるべき者が,主たる債務者と連絡を取らず,同人からの委託を受けないまま債権者に対して保証したとしても,その保証契約は有効に成立する。
(2)保証人となるべき者が,口頭で明確に特定の債務につき保証する旨の意思表示を債権者に対してすれば,その保証契約は有効に成立する。
(3)連帯保証ではない場合の保証人は,債権者から債務の履行を請求されても,まず主たる債務者に催告すべき旨を債権者に請求できる。ただし,主たる債務者が破産手続き開始の決定を受けたとき,又は行方不明であるときは,この限りでない。
(4)連帯保証人が2人いる場合,連帯保証人間に連帯の特約がなくとも,連帯保証人は各自全額につき保証責任を負う。
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正解は(2)

【解説】
(1)○正しい。保証契約は,債権者と保証人との契約であるから,債権画者と保証人だけで有効に締結することができます。主たる債務者の委託の有無によって,求償の範囲が変わるだけです。したがって,主たる債務者と連絡を取らず,同人からの委託を受けないまま債権者に対して保証したとしても,保証契約は有効に成立します。
(2)×誤り。保証契約は,書面又は電磁的記録でしなければ,その効力を生じません。したがって,口頭で特定の債務につき保証する旨の意思表示を債権者に対してしたとしても,保証契約は効力を生じません。
(3)○正しい。債権者が保証人に債務の履行を請求したときは,連帯ではない保証人は,まず主たる債務者に催告すべき旨を請求することができます。ただし,主たる債務者が破産手続き開始の決定を受けたとき,又はその行方が知れないときは,この限りではありません。
(4)○正しい。保証人が数人いる場合は,原則として,四1各保証人は債務額を全保証人間にそれぞれ等しい割合でその一部を保証します。しかし,連帯保証人には分別の利益はなく,連帯保証人は各自全額につき保証責任を負うことになります。

【No.84】

AとBが1000万円の連帯債務をCに対して2分の1ずつ負っている場合と,Dが主債務者として,Eに1000万円の債務を負い,FはDから委託を受けてその債務の連帯保証人となっている場合の次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。
(1)AとBが1000万円の連帯債務をCに対して2分の1ずつ負っている場合と,Dが主債務者として,Eに1000万円の債務を負い,FはDから委託を受けてその債務の連帯保証人となっている場合,1000万円の返済期限が到来した場合,CはA又はBにそれぞれ500万円までしか請求できないが,EはDにもFにも1000万円を請求することができる。
(2)AとBが1000万円の連帯債務をCに対して2分の1ずつ負っている場合と,Dが主債務者として,Eに1000万円の債務を負い,FはDから委託を受けてその債務の連帯保証人となっている場合,CがBに対して債務の全額を免除しても,AはCに対してなお500万円の債務を負担しているが,EがFに対して連帯保証債務の全額を免除すれば,Dも債務の全額を免れる。
(3)AとBが1000万円の連帯債務をCに対して2分の1ずつ負っている場合と,Dが主債務者として,Eに1000万円の債務を負い,FはDから委託を受けてその債務の連帯保証人となっている場合,Aが1000万円を弁済した場合には,Aは500万円についてのみBに対して求償することができ,Fが1000万円を弁済した場合にも,Fは500万円についてのみDに対して求償することができる。
(4)AとBが1000万円の連帯債務をCに対して2分の1ずつ負っている場合と,Dが主債務者として,Eに1000万円の債務を負い,FはDから委託を受けてその債務の連帯保証人となっている場合,Aが債務を承認して時効が中断してもBの連帯債務の時効の進行には影響しないが,Dが債務を承認して時効が中断した場合にはFの連帯保証債務に対しても時効中断の効力を生ずる。
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正解は(1)

【解説】
(1)○正しい。債権者は,連帯債務者全員に対して,債務の全部又は一部の履行を請求することができます。したがって,Cは,A及びBに対してそれぞれ1000万円の請求ができます。なお,Eは主債務者Dにも連帯保証人Fにも1000万円を請求することができます。
(2)×誤り。連帯債務者の1人に対して,その債務を免除した場合,その債務者の負担部分について他の債務者も債務を免れます。しかし,連帯保証人に対して債務を免除しても,主たる債務者の債務に影響を及ぼしません。
(3)×誤り。連帯保証人Fは1000万円全額をDに求償できます。連帯債務者の1人が債務全額を弁済したときは,その債務者は,他の債務者に対して各自の負担部分について求償することができます。しかし,主たる債務者に代わって弁済した連帯保証人は,主たる債務者に対して求償権を有しますが,その求償権の範囲は負担部分に制限されません。
(4)×誤り。連帯債務者の1人が債務を承認しても,他の連帯債務者の債務に影響を及ぼしません。したがって,Aが債務を承認して時効が中断してもBの連帯偵務の時効の進行には影響しません。一方,連帯保証債務も保証債務であるため,主たる債務者について生じた事由は,原則として,連帯保証人にその効力を及ぼします。したがって,Dが債務を承認して時効が中断した場合にはFの連帯保証債務に対しても時効中断の効力が生じます。

【No.85】

AがBに1000万円を貸し付け,Cが連帯保証人となった場合に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。
(1)AがBに1000万円を貸し付け,Cが連帯保証人となった場合,Aは,自己の選択により,B及びCに対して,各別に又は同時に,1000万円の請求をすることができる。
(2)AがBに1000万円を貸し付け,Cが連帯保証人となった場合,Cは,Aからの請求に対して,自分は保証人だから,まず主たる債務者であるBに対して請求するよう主張することができる。
(3)AがBに1000万円を貸し付け,Cが連帯保証人となった場合,AがCに対して請求の訴えを提起することにより,Bに対する関係で消滅時効の中断の効力が生ずることはない。
(4)AがBに1000万円を貸し付け,Cが連帯保証人となった場合,CがAに対して全額弁済した場合に,Bに対してAが有する抵当権を代位行使するためには,Cは,Aの承諾を得る必要がある。
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正解は(1)

【解説】
(1)○正しい。連帯保証は,普通保証と異なり,補充性がありません。そこで,債権者は主たる債務者又は連帯保証人に対し,同時あるいは順次に全額の請求をすることができます。
(2)×誤り。連帯保証人Cに催告の抗弁権はありません。連帯保証人は,催告の抗弁権を有しません。
(3)×誤り。Aが連帯保証人Cに請求すれば,Bの時効は中断します。連帯保証人に対して請求の訴えを提起することにより,主債務の消滅時効は中断します。
(4)×誤り。法定代位の場合,債権者の承諾を得る必要はありません。連帯保証人は,「弁済をなすにつき正当の利益を有する者」にあたるから,保証債務を全額弁済した場合,債権者の承諾がなくても,債権者の有する抵当権を当然に代位行使できます。
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