【宅建過去問】権利関係ー抵当権、債権譲渡、賃借権、相殺、民法No.161-165

宅建士

【No.161】

Aが所有する甲土地上にBが乙建物を建築して所有権を登記していたところ,AがBから乙建物を買い取り,その後,Aが甲土地にCのために抵当権を設定し登記した。この場合の法定地上権に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)Aが所有する甲土地上にBが乙建物を建築して所有権を登記していたところ,AがBから乙建物を買い取り,その後,Aが甲土地にCのために抵当権を設定し登記した。Aが乙建物の登記をA名義に移転する前に甲土地に抵当権を設定登記していた場合,甲土地の抵当権が実行されたとしても,乙建物のために法定地上権は成立しない。
(2)Aが所有する甲土地上にBが乙建物を建築して所有権を登記していたところ,AがBから乙建物を買い取り,その後,Aが甲土地にCのために抵当権を設定し登記した。Aが乙建物を取り壊して更地にしてから甲土地に抵当権を設定登記し,その後にAが甲上地上に丙建物を建築していた場合,甲土地の抵当権が実行されたとしても,丙建物のために法定地上権は成立しない。
(3)Aが所有する甲土地上にBが乙建物を建築して所有権を登記していたところ,AがBから乙建物を買い取り,その後,Aが甲土地にCのために抵当権を設定し登記した。Aが甲土地に抵当権を設定登記するのと同時に乙建物にもCのために共同抵当権を設定登記した後,乙建物を取り壊して丙建物を建築し,丙建物にCのために抵当権を設定しないまま甲土地の抵当権が実行された場合,丙建物のために法定地上権は成立しない。
(4)Aが所有する甲土地上にBが乙建物を建築して所有権を登記していたところ,AがBから乙建物を買い取り,その後,Aが甲土地にCのために抵当権を設定し登記した。Aが甲土地に抵当権を設定登記した後,乙建物をDに譲渡した場合,甲土地の抵当権が実行されると,乙建物のために法定地上権が成立する。
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正解は(1)

【解説】
(1)×誤り。土地と建物の所有者が同一人だったので法定地上権が成立します。法定地上権が成立するためには,土地に関する抵当権設定当時,その土地上に建物が存在し,土地と建物の所有者が同一人であることが必要です。A所有の甲土地に抵当権を設定した時,甲土地上にある乙建物はAの所有であるので法定地上権が成立します。登記名義がAであるか否かは影響しません(。
(2)○正しい。法定地上権が成立するためには,土地に関する抵当権設定当時,その土地上に建物が存在することが必要です。更地に抵当権を設定した後に建物を建築した場合,法定地上権は成立しません。
(3)○正しい。土地と建物に共同抵当権が設定された後,建物が再築された場合,土地の抵当権者が新築建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けなければ法定地上権は成立しません。
(4)○正しい。土地に関する抵当権設定当時,その土地上に建物が存在し,土地と建物の所有者が同一人であれば,その後に建物が売却され,土地と建物の所有者が別人になっても法定地上権は成立します。

【No.162】

債権譲渡に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)譲渡禁止特約のある債権の譲渡を受けた第三者が,その特約の存在を知らなかったとしても,知らなかったことにつき重大な過失があれば,当該債権を取得することはできない。
(2)債権の譲受人が譲渡禁止特約の存在を知っていれば,さらにその債権を譲り受けた転得者がその特約の存在を知らなかったことにつき重大な過失がなかったとしても債務者はその転得者に対して,その特約の存在を対抗することができる。
(3)譲渡禁止特約に反して債権を譲渡した債権者は,債務者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかである等の事情がない限り,その特約の存在を理由に,譲渡の無効を主張することができない。
(4)譲渡禁止特約のある債権をもって質権の目的とした場合において,質権者がその特約の存在について悪意であるときは,当該質権設定は無効となる。
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正解は(2)

【解説】
(1)○正しい。譲渡禁止特約は,その特約の存在につき,善意、無重過失の第三者には対抗することができません。重過失がある第三者は債権を取得することができません。
(2)×誤り。善意・無重過失の転得者に対抗できません。譲渡禁止特約は,その特約の存在につき,善意、無重過失の第三者には対抗することができません。この「第三者」には転得者も含まれます。
(3)○正しい。譲渡禁止特約の趣旨は債務者保護にあります。譲渡禁止特約に反して債権を譲渡した債権者は,債務者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかである等の事情がない限り,譲渡の無効を主張することはできません。
(4)○正しい。譲渡禁止特約のある債権をもって質権の目的とした場合,質権者がその特約の存在について悪意であるときは,当該質権設定契約は無効となります。

【No.163】

次の1から4までの記述のうち,民法の規定及び下記判決文によれば,誤っているものはどれか。
(1)民法の規定及び下記判決文によれば,賃借物件を賃借人がどのように使用しても,賃借物件に発生する損耗による減価の回収は,賃貸人が全て賃料に含ませてその支払いを受けることにより行っている。
(2)民法の規定及び下記判決文によれば,通常損耗とは,賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する。
(3)民法の規定及び下記判決文によれば,賃借人が負担する通常損耗の範囲が賃貸借契約書に明記されておらず口頭での説明等もない場合に、賃借人に通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは,賃借人に予期しない特別の負担を課すことになる。
(4)民法の規定及び下記判決文によれば,賃貸借契約に賃借人が原状回復義務を負う旨が定められていても,それをもって,賃借人が賃料とは別に通常損耗の補修費を支払う義務があるとはいえない。
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正解は(1)

【解説】
(1)×誤り。含まれているのは通常の使用によって生じた減価です。判決文では,「賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は,通常,減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払いを受けることにより行われている。」とされています。賃借人がどのように使用しても,賃借物件に発生する損耗による減価の回収は,賃貸人が全て賃料に含ませてその支払いを受けるとされています。
(2)○正しい。判決文では,通常損耗について,「賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の劣化又は価値の減少を意味する」とされています。
(3)○正しい。判決文では,「建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通常損耗についての原状回復義務を負わせるのは,賃借人に予期しない特別の負担を課すことになるから,賃借人に同義務が認められるためには,その旨の特約が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。」とされています。
(4)○正しい。判決文では,「賃借物件の損耗の発生は,賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。」とされています。また,「通常損耗に係る投下資本の減価の回収は,通常,減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払いを受けることにより行われている。」とされています。さらに,賃借人に通常損耗についての原状回復義務が認められるためには,「その旨の特約が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である。」とされています。

【No.164】

Aは,令和2年10月1日,A所有の甲土地につき,Bとの間で,代金1000万円,支払い期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。この場合の相殺に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)Aは,令和2年10月1日,A所有の甲土地につき,Bとの間で,代金1000万円,支払い期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。この場合の相殺に関し、BがAに対して同年12月31日を支払い期日とする貸金債権を有している場合には,Bは同年12月1日に売買代金債務と当該貸金債権を対当額で相殺することができる。
(2)Aは,令和2年10月1日,A所有の甲土地につき,Bとの間で,代金1000万円,支払い期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。この場合の相殺に関し、同年11月1日にAの売買代金債権がAの債権者Cにより差し押さえられても,Bは,同年11月2日から12月1日までの間にAに対する別の債権を取得した場合には,同年12月1日に売買代金債務と当該債権を対当額で相殺することができる。
(3)Aは,令和2年10月1日,A所有の甲土地につき,Bとの間で,代金1000万円,支払い期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。この場合の相殺に関し、同年10月10日,BがAの自動車事故によって被害を受け,Aに対して不法行為に基づく損害賠償偵権を取得した場合には,Bは売買代金債務と当該損害賠償債権を対当額で相殺することができる。
(4)Aは,令和2年10月1日,A所有の甲土地につき,Bとの間で,代金1000万円,支払い期日を同年12月1日とする売買契約を締結した。この場合の相殺に関し、BがAに対し同年9月30日に消滅時効の期限が到来する貸金債権を有していた場合には,Aが当該消滅時効を援用したとしても、Bは売買代金債務と当該貸金債権を対当額で相殺することができる。
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正解は(3)

【解説】
(1)×誤り。自働債権が弁済期にないので相殺できません。相殺は,自働債権が弁済期にある場合にすることができます。Bの自働債権の支払い期日は12月31日であるため,Bは12月1日に相殺をすることはできません。
(2)×誤り。差押後に取得された債権なので相殺できません。自働債権が差押前に取得されたものであれば,差押後においても相殺をすることができます。Bの自働債権はCの差押後に取得されたものであるので,Bは相殺をすることができません。
(3)○正しい。債務が不法行為によって生じたときは,その債務者は,相殺をもって債権者に対抗することができません。これは,加害者からの相殺は認めないという趣旨であり,被害者からの相殺は禁止されていません。したがって,不法行為の被害者であるBは相殺をすることができます。
(4)×誤り。時効完成前に相殺適状になっていないので相殺できません。時効消滅した債権がその時効消滅前に相殺適状になっていた場合,その債権者は,相殺をすることができます。貸金債権の時効完成時である9月30日には代金債権の弁済期は到来していないことから,時効完成前に相殺適状になっていません。したがって,Bは相殺をすることができません。

【No.165】

相続に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)無権代理人が本人に無断で本人の不動産を売却した後に,単独で本人を相続した場合,本人が自ら当該不動産を売却したのと同様な法律上の効果が生じる。
(2)相続財産に属する不動産について,遺産分割前に刺虫の所有権移転登記をした共同相続人から移転登記を受けた第三取得者に対し,他の共同相続人は,自己の持分を登記なくして対抗することができる。
(3)連帯債務者の一人が死亡し,その相続人が数人ある場合,相続人らは被相続人の債務の分割されたものを承継し,各自その承継した範囲において,本来の債務者とともに連帯債務者となる。
(4)共同相続に基づく共有物の持分価格が過半数を超える相続人は,協議なくして単独で共有物を占有する他の相続人に対して,当然にその共有物の明け渡しを請求することができる。
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正解は(4)

【解説】
(1)○正しい。無権代理人が単独で本人を相続した場合,無権代理人による追認拒絶は信義に反し許されないことから,当該無権代理行為は当然に有効となります。結果,本人が自ら売却したのと同様の法律上の効果が生じることになります。
(2)○正しい。相続財産である不動産につき,遺産分割協議前に,共同相続人の1人が,他の共同相続人の同意なく自己名義への所有権移転登記をし,これを第三者に譲渡し,所有権移転登記をしても,他の共同相続人は,自己の持分を登記なくして,その第三者に対抗することができます。
(3)○正しい。連帯債務の場合,相続人は,各相続分に応じて分割された債務を承継し,各自その範囲において,本来の連帯債務者とともに連帯債務者となります。
(4)×誤り。相続人が数人あるときは,相続財産は,その共有となります。各共有者は,共有物の全部についてその持分に応じた使用をすることができます。そして,共有持分の価格が過半数を超えるものであっても,共有物を単独で占有する他の共有者に対して当然にはその明け渡しを請求することはできません。
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