WES試験対策(1級) 問題と解説 No.51~55

WES(溶接)

WES試験対策(1級) 問題と解説 No.51~55

 このページの問題を一問一答形式の動画としてまとめました。復習用にご活用ください。通勤中や運動中に最適です。
【No 201~220】WES溶接管理技術者試験対策(基本)
WES溶接管理技術者試験勉強のための一問一答形式の音声教材です。初学者である自分向けに、音声には基本的な用語の説明も含めています。運動中や通勤中に聞き流しながら...

【No.51】 非破壊試験

非破壊試験に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)限界ゲージは、目視試験または外観試験で使用し、目違いや余盛高さなどが基準値を満たしているかを判断する。
(2)透過度計は、放射線透過試験で使用し、透過写真の識別最小線径から像質を評価する。
(3)接触媒質は、超音波探傷試験に使用し、試験体の表面に塗布して、効率よく超音波を伝搬させる。
(4)極間式磁化器は、磁粉探傷試験で使用し、電磁石の原理で試験体に直接磁場を与えて、表面近傍に磁束を形成させる。
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誤っている選択肢は 無し

【解説】
(1)正しい。限界ゲージは、目視試験または外観試験で使用し、目違いや余盛高さなどが基準値を満たしているかを判断するものです。
(2)正しい。透過度計は、放射線透過試験で使用し、透過写真の識別最小線径から像質を評価するものです。試験体と同材質の透過度計を透過写真と一緒に撮影し、フィルム上で識別可能な最も細い線径を確認します。これが「識別最小線径」であり、像質の評価基準となります。
(3)正しい。接触媒質は、超音波探傷試験に使用し、試験体の表面に塗布して、効率よく超音波を伝搬させるものです。
(4)正しい。極間式磁化器は、磁粉探傷試験で使用し、電磁石の原理で試験体に直接磁場を与えて、表面近傍に磁束を形成させます。磁束は試験体の表面近傍に集中し、割れやピンホールなどの欠陥があると、磁束が漏れて磁粉が集まり、指示模様として現れます。

【No.52】 非破壊試験

非破壊試験に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)速乾式現像剤は、浸透探傷試験で使用し、傷の中にしみこませた浸透液を吸い出して指示模様を形成させる。
(2)プロッド法を用いた鋼溶接部の磁粉探傷試験は、極間法に比べて磁化力が小さい。
(3)プロッド法を用いた鋼溶接部の磁粉探傷試験は、接線方向のみ磁化させる。
(4)プロッド法を用いた鋼溶接部の磁粉探傷試験は、直流電源装置を用いなければならない。
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誤っている選択肢は (2)、(3)、(4)

【解説】
(1)正しい。速乾式現像剤は、きず内部に残留した浸透液を毛細管現象によって吸い出し、指示模様を形成するために使用される現像剤の一種です。
(2)誤り。プロッド法は、試験体の表面に近接した2点に電極(プロッド)を押し当てて、局部的に電流を流すことで磁化する方法です。プロッド法は電極間の距離が広がるほど磁界の強さが減少するため、広い面積の検査には不向きで、磁化力も距離に依存して変化します。
(3)誤り。プロッド法による磁化は接線方向「のみ」ではありません。実際には、プロッド間に流れる電流によって形成される磁界は、試験体の表面に対して複雑な分布を持ち、接線方向だけでなく、周囲に広がる磁束が形成されます。
(4)誤り。プロッド法は、試験体に直接電流を流して磁化する方法であり、交流でも直流でも実施可能です。ただし、直流電源を使用すると、磁束がより深部まで浸透するため、厚肉溶接部などの検査に有利です。一方、交流電源は表面きずの検出に特化しており、アークの発生リスクも比較的低いため、現場では交流が選ばれることもあります。

【No.53】 非破壊試験

非破壊試験に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)プロッド法を用いた鋼溶接部の磁粉探傷試験は、スパークにより試験体の表面を損傷する恐れがある。
(2)浸透探傷試験に用いる浸透液において、粘性が高いことが必要である。
(3)浸透探傷試験に用いる浸透液において、濡れ性があることが必要である。
(4)放射線透過試験をJIS Z 3104に従って実施したとき、透過写真上に検出されたブローホールを評価するのに用いるのは、総面積である。
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誤っている選択肢は (2)、(4)

【解説】
(1)正しい。プロッド法は、試験体に直接大電流を流して磁化する方法です。電極(プロッド)を試験体に押し当てて通電する際、接触不良や高電流によってアーク放電が起こることがあり、その結果、表面に微細な割れや焼損が生じる可能性があります。
(2)誤り。浸透探傷試験では、浸透液がきずの内部に入り込むために毛細管現象を利用します。低粘性であるほど、微細なきずに浸透しやすく、粘性が高すぎると、液体がきずの奥まで入り込めず、検出感度が低下します。
(3)正しい。浸透探傷試験に用いる浸透液には、ぬれ性があることが必要です。ぬれ性とは、液体が固体表面に広がる性質のことで、浸透液が試験体の表面やきず内部にしっかりと接触・浸透するための基本的な性能です。
(4)誤り。放射線透過試験をJIS Z 3104に従って実施したとき、透過写真上に検出されたブローホールを評価するのに用いるのは、点数の総和です。直径に応じて点数が決まり、その総和で評価します。

【No.54】 非破壊試験

非破壊試験に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)磁粉探傷試験は浸透探傷試験と比較して、表面近傍で非開口の傷の検出が可能な点で優れている。
(2)磁粉探傷試験は浸透探傷試験と比較して、オーステナイト系ステンレス鋼溶接部の微細なきずの検出に適している点で優れている。
(3)磁粉探傷試験は浸透探傷試験と比較して、線状きずの方向に関係なく検出可能な点で優れている。
(4)磁粉探傷試験は浸透探傷試験と比較して、高張力鋼溶接継手のジグ跡の検査に適している点で優れている。
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誤っている選択肢は (2)、(3)

【解説】
(1)正しい。磁粉探傷試験(MT)は、鉄鋼などの強磁性体を磁化し、表面や表面直下に欠陥があると磁束が乱れて漏洩する現象を利用します。この漏洩磁束に磁粉が吸着して指示模様が現れるため、表面だけでなく表面近傍の欠陥も検出できます。浸透探傷試験(PT)は、浸透液が毛細管現象で入り込むことを利用するため、表面に開口している欠陥のみが対象です。表面下に閉じた欠陥や非開口欠陥は検出できません。
(2)誤り。磁粉探傷試験は強磁性体(炭素鋼や低合金鋼など)にしか適用できません。オーステナイト系ステンレス鋼(SUS304, SUS316など)は常温で非磁性のため、通常の磁化では漏洩磁束が発生せず、磁粉が欠陥部に集まらないため、欠陥検出ができません。
(3)誤り。浸透探傷試験(PT)は、浸透液が表面に開口した欠陥に毛細管現象で入り込むため、欠陥の方向にほとんど影響されません。磁粉探傷試験(MT)は、欠陥が磁束と平行だと漏洩磁束がほとんど発生しないため、そのままでは検出できません
(4)正しい。高張力鋼溶接継手のジグ跡(アークストライク跡や一時取付治具の除去跡など)の検査においては、条件次第で磁粉探傷試験(MT)が浸透探傷試験(PT)より適している場合があります。MTは表面だけでなく表面直下の非開口欠陥も検出できるため、ジグ跡に潜む浅い内部割れの検出に有効です。

【No.55】 安全衛生

安全衛生に関する問題で、誤っているものはどれか。
(1)ヒュームの暴露防止に有効な対策として、始業・就業点検の実施が挙げられる。
(2)ヒュームの暴露防止に有効な対策として、可燃物の除去が挙げられる。
(3)ヒュームの暴露防止に有効な対策として、作業エリアの換気が挙げられる。
(4)ヒュームの暴露防止に有効な対策として、呼吸用保護具の使用が挙げられる。
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誤っている選択肢は (1)、(2)

【解説】
(1)誤り。溶接ヒュームはマンガンなど有害物質を含み、発がん性や神経障害のリスクがあるため、法令で作業環境管理や保護具の使用が義務化されています。始業・就業点検は、溶接ヒュームそのものの暴露対策とは言えません。
(2)誤り。溶接ヒューム暴露防止の目的は、空気中のヒューム濃度を下げたり、作業者が吸い込まないようにすることです。可燃物の除去は、火災・爆発防止のための安全対策であり、ヒュームの発生量や吸入量を直接減らすものではありません。
(3)正しい。ヒュームの暴露防止に有効な対策として、作業エリアの換気が挙げられます。特化則では、屋内で金属アーク溶接等を行う場合、全体換気装置や局所排気装置、プッシュプル型換気装置などによる換気措置が義務化されています。
(4)正しい。ヒュームの暴露防止に有効な対策として、呼吸用保護具の使用が挙げられます。溶接ヒュームは、マンガンなどの有害物質を含み、神経障害や呼吸器系障害、発がん性のリスクがあります。特化則では、溶接ヒューム濃度の測定結果に基づき、有効な呼吸用保護具を選定・使用させることが義務付けられています。特に金属アーク溶接等を継続して行う屋内作業場では、管理濃度(マンガンとして0.05 mg/m³)を超える場合、換気等の工学的対策に加えて、適切な防護係数を持つ呼吸用保護具の使用が必要です。
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