【宅建過去問】権利関係ー債務不履行、解除No.31-35

宅建士

【No.31】

契約の解除に関する次の記述のうち,民法の規定及び下記判決文によれば,誤っているものはどれか。
(1)同一当事者間で甲契約と乙契約がなされても,それらの契約の目的が相互に密接に関連付けられていないのであれば,甲契約上の債務の不履行を理由に甲契約と併せて乙契約をも解除できるわけではない。
(2)同一当事者間で甲契約と乙契約がなされた場合,甲契約の債務が履行されることが乙契約の目的の達成に必須であると乙契約の契約書に表示されていたときに限り,甲契約上の債務の不履行を理由に甲契約と併せて乙契約をも解除することができる。
(3)同一当事者間で甲契約と乙契約がなされ,それらの契約の目的が相互に密接に関連付けられていても,そもそも甲契約を解除することができないような付随的義務の不履行があるだけでは,乙契約も解除することはできない。
(4)同一当事者間で甲契約(スポーツクラブ会員権契約)と同時に乙契約(リゾートマンションの区分所有権の売買契約)が締結された場合に,甲契約の内容たる屋内プールの完成及び供用に遅延があると,この履行遅延を理由として乙契約を民法第541条により解除できる場合がある。
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正解は(2)

【解説】
(1)○正しい。甲契約と併せて乙契約を解除することができるのは,契約の目的が相互に密接に関連付けられている場合です。契約の目的が相互に密接に関連付けられていない場合には,甲契約上の債務の不履行を理由に,甲契約と併せて乙契約をも解除できるわけではありません。
(2)×誤り。契約の目的が相互に密接に関連付けられていて,社会通念上,甲契約又は乙契約のいずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体として達成されないと認められる場合に,甲契約と併せて乙契約をも解除することができます。乙契約の契約書に表示されているときに限定されるわけではありません。
(3)○正しい。甲契約と併せて乙契約をも解除することができるのは,甲契約上の債務不履行が認められる場合です。そもそも甲契約を解除することができないような付随的義務の不履行があるにすぎない場合には,契約の目的が相互に密接に関連付けられていても,甲契約を解除することができない以上,乙契約も解除することはできません。
(4)○正しい。契約の目的が相互に密接に関連付けられていて,社会通念上,甲契約又は乙契約のいずれかが履行されるだけでは契約を締結した目的が全体として達成されないと認められる場合に,甲契約と併せて乙契約をも解除することができます。甲契約と乙契約とがこのような関係にあれば,甲契約の履行遅延を理由に乙契約を解除することができます。

【No.32】

AはBに甲建物を売却し,AからBに対する所有権移転登記がなされた。AB間の売買契約の解除と第三者との関係に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)AはBに甲建物を売却し,AからBに対する所有権移転登記がなされた。AB間の売買契約の解除と第三者との関係に関し,BがBの債権者Cとの間で甲建物につき抵当権設定契約を締結し,その設定登記をした後,AがAB間の売買契約を適法に解除した場合,Aはその抵当権の消滅をCに主張できない。
(2)AはBに甲建物を売却し,AからBに対する所有権移転登記がなされた。AB間の売買契約の解除と第三者との関係に関し,Bが甲建物をDに賃貸し引渡しも終えた後,AがAB間の売買契約を適法に解除した場合,Aはこの賃借権の消滅をDに主張できる。
(3)AはBに甲建物を売却し,AからBに対する所有権移転登記がなされた。AB間の売買契約の解除と第三者との関係に関し,BがBの債権者Eとの間で甲建物につき抵当権設定契約を締結したが,その設定登記をする前に,AがAB間の売買契約を適法に解除し,その旨をEに通知した場合,BE間の抵当権設定契約は無効となり,Eの抵当権は消滅する。
(4)AはBに甲建物を売却し,AからBに対する所有権移転登記がなされた。AB間の売買契約の解除と第三者との関係に関し,AがAB間の売買契約を適法に解除したが,AからBに対する甲建物の所有権移転登記を抹消する前に,Bが甲建物をFに賃貸し引渡しも終えた場合,Aは,適法な解除後に設定された,この賃借権の消滅をBに主張できる。
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正解は(1)

【解説】
(1)○正しい。正売買契約が解除された場合でも第三者は,登記などの対抗要件を備えていれば保護されます。Aは抵当権設定登記を備えたCに抵当権の消滅を主張できません。
(2)×誤り。売買契約が解除された場合でも,第三者は,登記などの対抗要件を備えていれば保護されます。そして,建物賃貸借では,建物の引渡しをもって,第三者への対抗要件となります。Aは,建物の引渡しを受けているDに賃借権の消滅を主張できません。
(3)×誤り。抵当権設定行為が無効となるわけではありません。売買契約が解除された場合でも,第三者は,登記などの対抗要件を備えていれば保護されます。
(4)×誤り。売買契約を解除した者と解除後に権利を取得した第三者とは,対抗関係に立ちます。Aは,建物の引渡しを受けているBに賃借権の消滅を主張できません。

【No.33】

Aは,Bから土地建物を購入する契約(代金5000万円,手付300万円,違約金1000万円)を,Bと締結し,手付を支払ったが,その後資金計画に支障を来し,残代金を支払うことができなくなった。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。
(1)Aは,Bから土地建物を購入する契約(代金5000万円,手付300万円,違約金1000万円)を,Bと締結し,手付を支払ったが,その後資金計画に支障を来し,残代金を支払うことができなくなった。この場合,「Aのローンが某日までに成立しないとき,契約は解除される」旨の条項がその契約にあり,ローンがその日までに成立しない場合は,Aが解除の意思表示をしなくても,契約は効力を失う。
(2)Aは,Bから土地建物を購入する契約(代金5000万円,手付300万円,違約金1000万円)を,Bと締結し,手付を支払ったが,その後資金計画に支障を来し,残代金を支払うことができなくなった。この場合,Aは,Bが履行に着手する前であれば,中間金を支払っていても,手付を放棄して契約を解除し,中間金の返還を求めることができる。
(3)Aは,Bから土地建物を購入する契約(代金5000万円,手付300万円,違約金1000万円)を,Bと締結し,手付を支払ったが,その後資金計画に支障を来し,残代金を支払うことができなくなった。この場合,Aの債務不履行を理由に契約が解除された場合,Aは,Bに対し違約金を支払わなければならないが,手付の返還を求めることはできる。
(4)Aは,Bから土地建物を購入する契約(代金5000万円,手付300万円,違約金1000万円)を,Bと締結し,手付を支払ったが,その後資金計画に支障を来し,残代金を支払うことができなくなった。この場合,Aの債務不履行を理由に契約が解除された場合,Aは,実際の損害額が違約金よりも少なければ,これを立証して,違約金の減額を求めることができる。
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正解は(4)

【解説】
(1)○正しい。Aのローンが某日までに成立しないとき,契約は解除される旨の特約を結んだ以上,ローンがその日までに成立しなければ,Aが解除の意思表示をしなくても契約は解除され,効力を失うことになります。
(2)○正しい。売買契約において手付が交付された場合,買主は,自らが契約の履行に着手していても,売主が契約の履行に着手する前であれば,手付を放棄して,契約を解除することができます。
(3)○正しい。違約金は,損害賠償額の予定と推定されます。そして,損害賠償額の予定をした場合,債務不履行があれば,債権者は,予定賠償額を請求することができるOしたがって,本肢の場合,Aは,Bに対し違約金(すなわち予定賠償額)を支払わなければなりません。また,債務不履行を理由に契約が解除された場合には,手付金は返還されます。したがって,Aは,手付金の返還を求めることができます。
(4)×誤り。違約金は損害賠償額の予定と推定。減額はできません。契約で違約金が約定された場合,違約金は損害賠償額の予定と推定されます。そして,損害賠償額の予定ということになれば,実際の損害額を立証しても,裁判所は,その額を増減することはできません。

【No.34】

買主Aと売主Bとの間で建物の売買契約を締結し,AはBに手付を交付したが,その手付は解約手付である旨約定した。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。
(1)手付の額が売買代金の額に比べて僅少である場合には,本件約定は,効力を有しない。
(2)Aが,売買代金の一部を支払う等売買契約の履行に着手した場合は,Bが履行に着手していないときで糺Aは,本件約定に基づき手付を放棄して売買契約を解除することができない。
(3)Aが本件約定に基づき売買契約を解除した場合で,Aに債務不履行はなかったが,Bが手付の額を超える額の損害を受けたことを立証できるとき,Bは,その損害全部の賠償を請求することができる。
(4)Bが本件約定に基づき売買契約を解除する場合は,Bは,Aに対して,単に口頭で手付の額の倍額を償還することを告げて受領を催告するだけでは足りず,これを現実に提供しなければならない。
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正解は(4)

【解説】
(1)×誤り。手付の額が少なくても,解約手付の効力を有します。手付の額が売買代金の額に比べて僅少であっても,当事者が当該手付を解約手付と約定すれば,当該約定は有効です。
(2)×誤り。Bが履行に着手していないので,Aは手付解除できます。解約手付による解除は,自ら履行に着手している場合でも相手方が契約の履行に着手するまで認められます。
(3)×誤り。Aが手付解除したときは,Bは損害賠償請求できません。解約手付による解除は,買主は手付を放棄して,売主は手付の倍額を償還して,契約を解除するものであり,当該解除に基づいて,損害賠償の請求をすることはできません。
(4)○正しい。売主が手付の倍額を償還して売買契約を解除するためには,買主に対して現実の提供をすることを要します。

【No.35】

令和2年9月1日にA所有の甲建物につきAB間で売買契約が成立し,当該売買契約において同年9月30日をもってBの代金支払いと引換えにAは甲建物をBに引き渡す旨合意されていた。この場合に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。
(1)令和2年9月1日にA所有の甲建物につきAB間で売買契約が成立し,当該売買契約において同年9月30日をもってBの代金支払いと引換えにAは甲建物をBに引き渡す旨合意されていた場合,甲建物が同年8月31日時点でAB両者の責に帰すことができない火災により滅失していた場合,甲建物の売買契約は有効に成立するが,Aの甲建物引渡し債務も,Bの代金支払い債務も共に消滅する。
(2)令和2年9月1日にA所有の甲建物につきAB間で売買契約が成立し,当該売買契約において同年9月30日をもってBの代金支払いと引換えにAは甲建物をBに引き渡す旨合意されていた場合,甲建物が同年9月15日時点でAの責に帰すべき火災により滅失した場合,有効に成立していた売買契約は,Aの債務不履行によって無効となる。
(3)令和2年9月1日にA所有の甲建物につきAB間で売買契約が成立し,当該売買契約において同年9月30日をもってBの代金支払いと引換えにAは甲建物をBに引き渡す旨合意されていた場合,甲建物が同年9月15日時点でBの責に帰すべき火災により滅失した場合,Aの甲建物引渡し債務も,Bの代金支払い債務も共に消滅する。
(4)令和2年9月1日にA所有の甲建物につきAB間で売買契約が成立し,当該売買契約において同年9月30日をもってBの代金支払いと引換えにAは甲建物をBに引き渡す旨合意されていた場合,甲建物が同年9月15日時点で自然災害により滅失しても,AB間に「自然災害による建物滅失の危険は,建物引渡しまでは売主が負担する」との特約がある場合,Aの甲建物引渡し債務乱Bの代金支払い債務も共に消滅する。
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正解は(4)

【解説】
(1)×誤り。契約前に滅失していた以上,契約は無効です。A所有の甲建物は,売買契約成立前に滅失しています。
(2)×誤り。契約後に滅失した以上,契約は有効です。A所有の甲建物が債務者Aの責めに帰すべき火災により滅失した場合,売買契約が無効となるのではなく,債務不履行の問題となり,Bは契約の解除や損害賠償請求をすることができます。
(3)×誤り。Bに帰責事由がある以上,Bの債務は消滅しません。A所有の甲建物が買主Bの責めに憚すべき火災により滅失した場合,売主Aは,反対給付である代金支払い債権を失いません。
(4)○正しい。危険負担に関する特約は有効です。滅失の危険は売主が負担することになるので,Aの甲建物引渡債務と共にBの代金支払い債務は消滅します。
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