【宅建過去問】権利関係ー相続No.51-55

宅建士

【No.51】

遺言に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。
(1)自筆証書遺言は,その内容をワープロ等で印字していても,日付と氏名を自書し,押印すれば,有効な遺言となる。
(2)疾病によって死亡の危急に迫った者が遺言する場合には,代理人が2名以上の証人と一緒に公証人役場に行けば,公正証書遺言を有効に作成することができる。
(3)未成年であっても,15歳に達した者は,有効に遺言をすることができる。
(4)夫婦又は血縁関係がある者は,同一の証書で有効に遺言をすることができる。
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正解は(3)

【解説】
(1)×誤り。自筆証書遺言は,全文を自書しなければなりません。自筆証書によって遺言をするには,遺言者が,その全文,日付及び氏名を自書し,これに印を押さなければなりません。したがって,ワープロ等で印字した場合,その遺言は無効となります。ただし,財産目録については,一部ワープロ等で記載することも認められています。
(2)×誤り。代理人によって遺言をすることはできません。疾病その他の事由によって死亡の危急に迫った者が遺言をしようとするときは,証人3人以上の立会いをもって,その1人に遺言の趣旨を口授して,することができます。また,公正証書によって遺言をするには,証人2人以上の立会いがあり,遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること等の手続きが必要です。いずれの場合でも,遺言者本人が遺言をするのであって,代理人によって遺言をすることはできません。
(3)○正しい。未成年であっても,15歳になれば,有効に遺言をすることができます。
(4)×誤り。遺言は,2人以上の者が同一の証書ですることができません。たとえ夫婦又は血縁関係がある者であっても,変わりはありません。

【No.52】

遺言及び遺留分に関する次の記述のうち,民法の規定によれば正しいものはどれか。
(1)自筆証書による遺言をする場合,証人二人以上の立会いが必要である。
(2)自筆証書による遺言書を保管している者が,相続の開始後,これを家庭裁判所に提出してその検認を経ることを怠り,そのままその遺言が執行された場合,その遺言書の効力は失われる。
(3)適法な遺言をした者が,その後更に適法な遺言をした場合,前の遺言のうち後の遺言と抵触する部分は,後の遺言により撤回したものとみなされる。
(4)法定相続人が配偶者Aと子Bだけである場合,Aに全財産を相続させるとの適法な遺言がなされた場合,Bは遺留分権利者とならない。
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正解は(3)

【解説】
(1)×誤り。自筆証書遺言の場合,証人は不要です。自筆証書遺言については,公正証書遺言などと異なり,証人の立会いという制度はありません。
(2)×誤り。検認を怠っても,遺言書の効力は失われません。検認とは,遺言書の保管者から提出された遺言書について,家庭裁判所が,偽造,変造を防ぐため,遺言書の存在及び内容について調査する手続きをいいます。そして,自筆証書遺言が検認手続きを経なかったとしても,遺言の効力が否定されるものではありません。
(3)○正しい。前の遺言が後の遺言と抵触するときは,その抵触する部分については,後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます。
(4)×誤り。子Bは,遺言書の内容に関わらず,遺留分権利者です。そして,遺留分を侵害する遺贈がなされた場合,遺留分権利者は,遺留分を保全するのに必要な限度で,遺贈の減殺を請求することができます。

【No.53】

婚姻中の夫婦AB間には嫡出子CとDがいて,Dは既に婚姻しており嫡出子Eがいたところ,Dは令和2年10月1日に死亡した。他方,Aには離婚歴があり,前の配偶者との間の嫡出子Fがいる。AがDが死亡した翌日(令和2年10月2日)に死亡した場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)婚姻中の夫婦AB間には嫡出子CとDがいて,Dは既に婚姻しており嫡出子Eがいたところ,Dは令和2年10月1日に死亡した。他方,Aには離婚歴があり,前の配偶者との間の嫡出子Fがいる。AがDが死亡した翌日(令和2年10月2日)に死亡した場合,Aが死亡した場合の法定相続分は,Bが2分の1,Cが5分の1,Eが5分の1,Fが10分の1である。
(2)婚姻中の夫婦AB間には嫡出子CとDがいて,Dは既に婚姻しており嫡出子Eがいたところ,Dは令和2年10月1日に死亡した。他方,Aには離婚歴があり,前の配偶者との間の嫡出子Fがいる。AがDが死亡した翌日(令和2年10月2日)に死亡した場合,Aが生前,A所有の全財産のうち甲土地についてCに相続させる旨の遺言をしていた場合には,特段の事情がない限り,遺産分割の方法が指定されたものとして,Cは甲土地の所有権を取得するのが原則である。
(3)婚姻中の夫婦AB間には嫡出子CとDがいて,Dは既に婚姻しており嫡出子Eがいたところ,Dは令和2年10月1日に死亡した。他方,Aには離婚歴があり,前の配偶者との間の嫡出子Fがいる。AがDが死亡した翌日(令和2年10月2日)に死亡した場合,Aが生前,A所有の全財産についてDに相続させる旨の遺言をしていた場合には,特段の事情がない限り,Eは代襲相続により,Aの全財産について相続するのが原則である。
(4)婚姻中の夫婦AB間には嫡出子CとDがいて,Dは既に婚姻しており嫡出子Eがいたところ,Dは令和2年10月1日に死亡した。他方,Aには離婚歴があり,前の配偶者との間の嫡出子Fがいる。AがDが死亡した翌日(令和2年10月2日)に死亡した場合,Aが生前,A所有の全財産のうち甲土地についてFに遺贈する旨の意思表示をしていたとしても,Fは相続人であるので,当該遺贈は無効である。
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正解は(2)

【解説】
(1)×誤り。嫡出子と前の配偶者の嫡出子は,相続分を等しくします。被相続人Aの子Dが,相続の開始以前に死亡した場合,Dの子Eが代襲して相続人となります。そのため,本問において,相続人となるのは,配偶者B,子であるF,C,子Dを代襲したEです。そして,子及び配偶者の相続分は,配偶者が2分の1,子が2分の1であり,子が数人あるときの各自の相続分は相等しく,代襲相続人の相続分は,その直系尊属が受けるべきであったものと同じとなります。
(2)○正しい。Aが自己所有の土地をCに相続させる旨の遺言をしています。相続させる趣旨の遺言は,遺贈と解すべき特段の事情がない限り,遺産の分割の方法を定めたものであり,原則として,何らの行為を要せずして,被相続人死亡の時に,直ちにその遺産はその相続人に相続により承継されます。したがって,Cは甲土地の所有権を取得します。
(3)×誤り。当該相続人が遺言者より先に死亡した場合,遺言は原則効力を生じません。相続させる趣旨の遺言をした遺言者は,通常,遺言時における特定の推定相続人に当該遺産を取得させる意思を有するにとどまるため,遺言により遺産を相続させるものとされた推定相続人が遺言者の死亡以前に死亡した場合には,遺言者がその推定相続人の代襲者その他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情のない限り,その効力を生じません。遺言者が代襲相続人Eに全財産を相続させる意思を有していたとみるべき事実がうかがえない以上,EがAの全財産について相続するとはいえません。
(4)×誤り。相続人に対する遺贈も有効となります。Aが生前,相続人であるFに対して遺贈する旨の意思表示をしています。遺贈とは,遺言によって無償で財産的利益を他人に与える行為であり,相続人に対する遺贈を無効とする規定はないため,相続人に対する遺贈も有効です。したがって,Fに対する遺贈も有効です。

【No.54】

成年Aにはいずれも法定相続分は2分の1の,将来相続人となるB及びCがいる。Aが所有している甲土地の処分に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)成年Aにはいずれも法定相続分は2分の1の,将来相続人となるB及びCがいる。Aが所有している甲土地の処分に関し,Aが精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況になった場合,B及びCはAの法定代理人となり甲土地を第三者に売却することができる。
(2)成年Aにはいずれも法定相続分は2分の1の,将来相続人となるB及びCがいる。Aが所有している甲土地の処分に関し,Aが「相続財産全部をBに相続させる」旨の有効な遺言をして死亡した場合,BがAの配偶者で,CがAの子であるときは,Cには相続財産の4分の1の遺留分があるのに対し,B及びCがAの兄弟であるときはCには遺留分がない。
(3)成年Aにはいずれも法定相続分は2分の1の,将来相続人となるB及びCがいる。Aが所有している甲土地の処分に関し,Aが「甲土地全部をBに相続させる」旨の有効な遺言をして死亡し,甲土地以外の相続財産についての遺産分割協議の成立前にBがCの同意なく甲土地を第三者Dに売却した場合,特段の事情がない限り,CはBD間の売買契約を無権代理行為に準じて取り消すことができる。
(4)成年Aにはいずれも法定相続分は2分の1の,将来相続人となるB及びCがいる。Aが所有している甲土地の処分に関し,Aが遺言なく死亡し,B及びCの協議により甲土地をBが取得する旨の遺産分割協議を有効に成立させた場合には,後になってB及びCの合意があっても,甲土地をCが取得する旨の遺産分割協議を成立させることはできない。
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正解は(2)

【解説】
(1)×誤り。Aが精神上の障害により事理弁識能力を欠く常況になった場合でも,家庭裁判所による後見開始の審判を受けていないときは,Aは成年被後見人とはならず,成年後見人が付されることはありません。B及びCは家庭裁判所によって成年後見人に選任されない限り,Aの法定代理人とはなりません。
(2)○正しい。遺留分は,配偶者と子供が相続人々あるときは,被相続人の財産の2分の1となります。そこで,Cの遺留分は全体の遺留分に法定相続分を乗じたものとなり,本肢では2分の1×2分の1で4分の1となります。ここで,兄弟姉妹には遺留分は認められていません。
(3)×誤り。CはBD間の売買契約を取り消すことができません。遺言は,遺言者の死亡の時からその効力を生じます。そして,特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言があった場合,特段の事情のない限り,当該遺産は被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継されます。したがって,Bは甲土地を有効に売却することができるので,CはBD間の売買契約を取り消すことはできません。
(4)×誤り。B,Cは改めて遺産分割協議を成立させることができます。一度有効に成立した遺産分割協議でも,共同相続人の全員の合意により解除した上,改めて遺産分割協議を成立させることはできます。

【No.55】

遺留分に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)被相続人Aの配偶者Bと,Aの弟Cのみが相続人であり,Aが他人Dに遺産全部を遺贈したとき,Bの遺留分は遺産の8分の3,Cの遺留分は遺産の8分の1である。
(2)遺留分の減殺請求は,訴えを提起しなくても,内容証明郵便による意思表示だけでもすることができる。
(3)相続が開始して9年6ヶ月経過する日に,はじめて相続の開始と遺留分を害する遺贈のあったことを知った遺留分権利者は,6か月以内であれば,遺留分の減殺請求をすることができる。
(4)相続人Eの生前に,Eの子Fが家庭裁判所の許可を得て遺留分の放棄をした場合でも,Fは,Eが死亡したとき,その遺産を相続する権利を失わない。
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正解は(1)

【解説】
(1)×誤り。兄弟姉妹には遺留分は認められていません。弟Cについては遺留分はなく,配偶者Bのみに遺産の2分の1にである遺留分が認められます。
(2)○正しい。遺留分減殺請求権を行使するには,受贈者又は受遺者に対する意思表示によれば足り,必ずしも裁判所に訴えを提起する必要はありません。
(3)○正しい。遺留分減殺請求権は,遺留分権利者が相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間,又は相続開始の時から10年を経過することによって,時効消滅します。
(4)○正しい。遺留分の放棄は,相続人の相続分にはなんらの影響も及ぼしません。遺留分というのは,相続分とは別個のものです。
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