【No.151】
債権譲渡に関する次の1から4までの記述のうち、正しいものはどれか。
(1)債権譲渡禁止特約が付されている債権が債権者から第三者に対して譲渡された場合,債権者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかであるときに限り,債務者が当該譲渡は無効である旨の主張をすることは許される。
(2)債権譲渡禁止特約が付されている債権が債権者から第三者に対して譲渡された場合,債権者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかであれば,譲渡した債権者が当該譲渡は無効である旨の主張をすることは許される。
(3)債権譲渡禁止特約が付されている債権が債権者から第三者に対して譲渡された場合,債務者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかであれば,譲渡した債権者が当該譲渡は無効である旨の主張をすることは許される。
(4)債権譲渡禁止特約が付されている債権が債権者から第三者に対して譲渡された場合,債権譲渡禁止の特約は債務者の利益を保護するために付されるものであるので,債権者はいかなるときも当該譲渡が無効であることを主張することは許されない。
クリックで【No.151】の解答と解説をみる
正解は(3)
【解説】
(1)×誤り。債務者からの無効主張について判決文には記述がありません。判決文は,「債権譲渡禁止の特約は,債務者の利益を保護するために付されるもの」とし,さらに「債権者は,偵権譲渡特約の存在を理由に譲渡の無効を主張する独自の利益を有しない」としています。そして,本肢のように「債権者」に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかであるときに限り「債務者」からの無効主張が許されるという点について,判決文には記述がありません。
(2)×誤り。判決文は,「債権者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかであるとき」を基準としていません。
(3)○正しい。判決文は,債務者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかであるなどの特段の事情がない限り,譲渡禁止の特約に反して債権を譲渡した債権者は,無効を主張することは許されないとしています。したがって,債務者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかであれば,債権者が無効の主張をすることは認められます。
(4)×誤り。いかなるときも無効主張が許されないわけではありません。債務者に譲渡の無効を主張する意思があることが明らかであれば,債権者は無効主張できます。
【No.152】
所有権の移転又は取得に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)所有権の移転又は取得に関して、民法の規定及び判例によれば、Aの所有する甲土地をBが時効取得した場合,Bが甲土地の所有権を取得するのは,取得時効の完成時である。
(2)所有権の移転又は取得に関して、民法の規定及び判例によれば、Aを売主,Bを買主としてCの所有する乙建物の売買契約が締結された場合,BがAの無権利について善意無過失であれば,AB間で売買契約が成立した時点で,Bは乙建物の所有権を取得する。
(3)所有権の移転又は取得に関して、民法の規定及び判例によれば、Aを売主,Bを買主として,丙土地の売買契約が締結され,代金の完済までは丙土地の所有権は移転しないとの特約が付された場合であっても,当該売買契約締結の時点で丙土地の所有権はBに移転する。
(4)所有権の移転又は取得に関して、民法の規定及び判例によれば、AがBに丁土地を売却したが,AがBの強迫を理由に売買契約を取り消した場合,丁土地の所有権はAに復帰し,初めからBに移転しなかったことになる。
クリックで【No.152】の解答と解説をみる
正解は(4)
【解説】
(1)×誤り。時効の効力は,その起算日にさかのぼります。取得時効が完成すると起算日から権利を有していたことになるのであって,取得時効の完成時に権利を取得するわけではありません。したかって,Bが甲土地の所有権を取得するのは,Bが甲土地の占有を開始した時点であり,取得時効の完成時ではありません。
(2)×誤り。不動産には即時取得の規定は適用されません。民法192条は,「取引行為によって,平穏に,かつ,公然と動産の占有を始めた者は,善意であり,かつ,過失がないときは,即時にその動産について行使する権利を取得する。」と規定しますが,これは動産に限られています。
(3)×誤り。売買契約締結の時点で所有権が移転するわけではありません。物権の移転は,当事者の意思表示のみによって,その効力を生じるのが原則です。ただし,特約を結ぶことによって,この効力発生時期を意思表示の時とは異なる時期にすることは可能です。したがって,本件売買契約によるBへの所有権移転時期は,代金の完済の時点であり,当該売買契約締結の時点ではありません。
(4)○正しい。取り消された行為は,初めから無効であったものとみなされます。したがって,契約を取り消せば,所有権は初めから移転しなかったことになります。したがって,Aが契約を取り消した場合,所有権はAに復帰し,初めからBに移転しなかったことになります。
【No.153】
Aは,Bに建物の建築を注文し,完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物に瑕疵があった場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)Aは,Bに建物の建築を注文し,完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物に瑕疵があった場合に関して、民法の規定及び凡例によれば、Cは,売買契約の締結の当時,本件建物に瑕疵があることを知っていた場合であっても瑕疵の存在を知ってから1年以内であれば,Aに対して売買契約に基づく瑕疵担保責任を追及することができる。
(2)Aは,Bに建物の建築を注文し,完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物に瑕疵があった場合に関して、民法の規定及び凡例によれば、Bが建物としての基本的な安全性が欠けることがないように配慮すべき義務を怠ったために本件建物に基本的な安全性を損なう瑕疵がある場合には,当該瑕疵によって損害を被ったCは,特段の事情がない限り,Bに対して不法行為責任に基づく損害賠償を請求できる。
(3)Aは,Bに建物の建築を注文し,完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物に瑕疵があった場合に関して、民法の規定及び凡例によれば、CがBに対して本件建物の瑕疵に関して不法行為責任に基づく損害賠償を請求する場合,当該請求ができる期間は,Cが瑕疵の存在に気付いてから1年以内である。
(4)Aは,Bに建物の建築を注文し,完成して引渡しを受けた建物をCに対して売却した。本件建物に瑕疵があった場合に関して、民法の規定及び凡例によれば、本件建物に存在している瑕疵のために請負契約を締結した目的を達成することができない場合,AはBとの契約を一方的に解除することができる。
クリックで【No.153】の解答と解説をみる
正解は(2)
【解説】
(1)×誤り。買主は善意、無過失である必要があります。売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは,買主は売主に対して瑕疵担保責任を追及できます。そして,売主に対して瑕疵担保責任を追及できる条件として,買主は瑕疵の存在について善意、無過失であることが必要です。したがって,瑕疵があることを知っていた買主は瑕疵担保責任を追及できません。
(2)○正しい。建物の設計者,施工者及び工事監理者は,契約関係にない居住者等に対する関係でも,建物としての基本的安全性が欠けることがないように配慮すべき注意義務を負い,この義務違反による瑕疵が原因で生命,身体又は財産を侵害された居住者等に対して,特段の事情がない限り不法行為による賠償責任を負います。
(3)×誤り。3年間又は20年間です。不法行為による損害賠償の請求権は,被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知ったときから3年間行使しないときは,時効によって消滅します。不法行為の畤から20年を経過したときも同様とします。瑕疵の存在に気付いてから1年以内ではありません。
(4)×誤り。完成後の建物については解除することはできません。請負契約において,仕事の目的物に瑕疵があり,そのために契約をした目的を達することができないときは,注文者は契約の解除をすることができます。ただし,建物その他の土地の工作物については,目的物の完成後は,契約をした目的を達することができない場合であっても契約の解除をすることはできません。
【No.154】
次の記述のうち,民法の条文に規定されているものはどれか。
(1)意思表示に法律行為の要素の錯誤があった場合は,表意者は,その意思表示を取り消すことができる旨は民法の条文に規定されている。
(2)贈与者は,贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかった場合は,その物又は権利の瑕疵又は不存在の責任を負う旨は民法の条文に規定されている。
(3)売買契約の目的物に隠れた瑕疵がある場合には,買主は,その程度に応じて代金の減額を請求することができる旨は民法の条文に規定されている。
(4)多数の相手方との契約の締結を予定してあらかじめ準備される契約条項の総体であって,それらの契約の内容を画一的に定めることを目的とするものを約款と定義する旨は民法の条文に規定されている。
クリックで【No.154】の解答と解説をみる
正解は(2)
【解説】
(1)×誤り。民法95条は,錯誤に基づく意思表示は無効であると定めており,取り消すことができるとは定めていません。
(2)○正しい。民法の条文に規定がある贈与者は,贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について,原則として担保責任を負いません。ただし,贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは担保責任を負います。贈与は無償契約であるから,贈与者に売買の売主と同じような担保責任を負わせるのは妥当ではありませんが,瑕疵等を知りながら告げなかった不誠実な贈与者には責任を負わせても酷とはいえないからです。
(3)×誤り。売買の目的物に隠れた瑕疵がある場合,買主は,売主に対し,損害賠償を請求することができ,また,瑕疵があるため契約目的を達成できないときは,契約を解除することができます。しかし,瑕疵担保責任においては,買主に代金減額請求権は認められていません。なお,代金減額請求権が認められているのは,権利の一部が他人に属する場合,数量不足がある場合及び物の一部が契約時に既に滅失していた場合における売主の担保責任です。
(4)×誤り。民法の条文に規定はない約款とは,ガスや電気の供給契約のように不特定多数の相手方との契約締結を予定して事前に準備される定型的な契約条項の総体をいい,契約の内容を画一的に定めることを目的とします。もっとも,民法には約款の定義規定は存在しません。
【No.155】
次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)民法の規定及び判例によれば,倒壊しそうなA所有の建物や工作物について,Aが倒壊防止の措置をとらないため,Aの隣に住むBがAのために最小限度の緊急措置をとったとしても,Aの承諾がなければ,Bはその費用をAに請求することはできない。
(2)民法の規定及び判例によれば,建物所有を目的とする借地人は,特段の事情がない限り,建物建築時に土地に石垣や擁壁の設置,盛土や杭打ち等の変形加工をするには,必ず賃貸人の承諾を得なければならない。
(3)民法の規定及び判例によれば,建物の賃貸人が必要な修繕義務を履行しない場合,賃借人は目的物の使用収益に関係なく賃料全額の支払いを拒絶することができる。
(4)民法の規定及び判例によれば,建物の賃貸人が賃貸物の保存に必要な修繕をする場合,賃借人は修繕工事のため使用収益に支障が生じても,これを拒むことはできない。
クリックで【No.155】の解答と解説をみる
正解は(4)
【解説】
(1)×誤り。事務管理者は,本人の承諾はなくとも,その費用の償還を請求できます。BがAのために倒壊しそうなA所有の建物や工作物について最小限度の緊急措置をとったことは,事務管理に該当します。事務管理者が本人のために有益な費用を支出したときは,当該事務管理について本人が承諾していなくとも,本人に対し,その費用の償還を請求することができます。したがって,事務管理者Bは,本人Aのためにとった緊急措置に支出した費用の償還をAに請求することができます。
(2)×誤り。賃貸人の承諾はなくとも,建築に必要な土地の変形加工をすることができます。建物所有を目的とする土地の賃貸借においては,賃貸借契約の内容として,建物の建築に必要な範囲で土地を変更加工することが当然に予定されていると解されます。したがって,賃借人は,賃貸人の承諾がなくとも,土地の使用収益の内容として建物建築に必要な範囲で土地を変更加工することができます。
(3)×誤り。使用収益が妨げられた割合に応じて賃料の支払いを拒絶できるのみです。建物の賃貸人が必要な修繕義務を履行しない場合,賃借人は,目的物の使用収益を妨げられた程度に関係なく賃料全額の支払いを拒絶することができるのかが問題となります。賃貸人が賃借人に対し目的物を使用収益させる義務と,賃借人が賃貸人に対し賃料を支払う義務とは,対価関係にちます。したがって,賃貸人が目的物の使用収益に必要な修繕義務を履行せず,これがため賃借人の目的物の使用収益が不能又は著しく困難になるほどの支障が生じた場合には,賃借人は賃料全額の支払いを拒絶し得ます。これに対して,目的物の使用収益が不能又は著しく困難になるほどの支障が生じない場合には,賃借人は賃料全額の支払いを拒絶することはできません。つまり,賃借人は,目的物の使用収益を妨げられた割合に応じて賃料の支払いを拒絶し得るのみです。
(4)○正しい。賃貸人は,目的物の使用収益に必要な修繕をする義務を負います。賃貸人がこの義務の履行として目的物の保存に必要な行為をしようとするときは,賃借人は,修繕工事のため使用収益に支障が生じたとしても,これを拒むことができません。