【宅建過去問】権利関係ー相続、物権変動No.56-60

宅建士

【No.56】

AがBに対して1000万円の貸金債権を有していたところ,Bが相続人C及びDを残して死亡した場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)AがBに対して1000万円の貸金債権を有していたところ,Bが相続人C及びDを残して死亡した場合,Cが単純承認を希望し,Dが限定承認を希望した場合には,相続の開始を知った時から3か月以内に,Cは単純承認を,Dは限定承認をしなければならない。
(2)AがBに対して1000万円の貸金債権を有していたところ,Bが相続人C及びDを残して死亡した場合,C及びDが相続開始の事実を知りながら,Bが所有していた財産の一部を売却した場合には,C及びDは相続の単純承認をしたものとみなされる。
(3)AがBに対して1000万円の貸金債権を有していたところ,Bが相続人C及びDを残して死亡した場合,C及びDが単純承認をした場合には,法律上当然に分割されたAに対する債務を相続分に応じてそれぞれが承継する。
(4)AがBに対して1000万円の貸金債権を有していたところ,Bが相続人C及びDを残して死亡した場合,C及びDが相続放棄をした場合であっても,AはBの相続財産管理人の選任を請求することによって,Bに対する貸金債権の回収を図ることが可能となることがある。
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正解は(1)

【解説】
(1)×誤り。限定承認は,共同相続人全員が共同してしなければなりません。たとえば共同相続人が2人いる場合,一方は単純承認を,他方は限定承認をするなどということはできません。
(2)○正しい。相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときは,その相続人は単純承認をしたものとみなされます。
(3)○正しい。各共同相続人は,その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継します。また,相続財産中の可分債務である金銭債務は,相続により当然に分割され,その相続分に応じて各相続人に承継されます。
(4)○正しい。共同相続人の全員が相続放棄をした場合,その者たちは初めから相続人とならなかったものとみなされます。結果として相続人が不存在となり,相続財産法人が形成されます。その場合,被相続人の債権者等の利害関係人の請求により,裁判所は相続財産管理人を選任します。そして,その後,当該相続財産は選任された相続財産管理人が管理,清算をすることになります。

【No.57】

Aが死亡し,相続人がBとCの2名であった場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)Aが死亡し,相続人がBとCの2名であった場合,BがAの配偶者でCがAの子である場合と,BとCがいずれもAの子である場合とでは,前者のBがAの配偶者でCがAの子である場合の方がBの法定相続分は大きい。
(2)Aが死亡し,相続人がBとCの2名であった場合,Aの死亡後,いずれもAの子であるBとCとの間の遺産分割協議が成立しないうちにBが死亡したときは,Bに配偶者Dと子Eがいる場合であっても,Aの遺産分割についてはEが代襲相続人として分割協議を行う。
(3)Aが死亡し,相続人がBとCの2名であった場合,遺産分割協議が成立するまでの間に遺産である不動産から賃料債権が生じていて,BとCがその相続分に応じて当該賃料債権を分割単独債権として確定的に取得している場合,遺産分割協議で当該不動産をBが取得することになっても,Cが既に取得した賃料債権につき清算する必要はない。
(4)Aが死亡し,相続人がBとCの2名であった場合,Bが自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所に対して,相続によって得た財産の限度においてのみAの債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して相続を承認する限定承認をする旨を申述すれば,Cも限定承認をする旨を申述したとみなされる。
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正解は(3)

【解説】
(1)×誤り。被相続人の子,配偶者は,相続人となります。また,子及び配偶者が相続人であるときは,子の相続分及び配偶者の相続分は,各2分の1となります。また,子が数人あるときは,各自の相続分は等しいものとなります。
(2)×誤り。被相続人の子が,相続の開始以前に死亡したとき,その者の子がこれを代襲して相続人となります。Aが死亡した後にBが死亡していること場合,Bの子であるEに代襲相続が生じることはありません。
(3)○正しい。賃料債権は,遺産とは別個の財産であり,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得します。したがって,当該賃料債権の帰属は後にされた遺産分割の影響を受けないことから,Cが既に取得した賃料債権につき清算をする必要はありません。
(4)×誤り。相続人が数人あるときは,限定承認は,共同相続人の全員が共同してのみこれをすることができます。そして,一人が限定承認をすれば,他の相続人も限定承認をする旨を申述したとみなされるとする規定は存在しません。

【No.58】

Aの所有する土地をBが取得したが,Bはまだ所有権移転登記を受けていない。この場合,民法の規定及び判例によれば,Bが当該土地の所有権を主張できない相手は,次の記述のうちどれか。
(1)Aの所有する土地をBが取得したが,Bはまだ所有権移転登記を受けていない場合,Aから当該土地を賃借し,その上に自己名義で保存登記をした建物を所有している者に対して,Bは当該土地の所有権を主張できない。
(2)Aの所有する土地をBが取得したが,Bはまだ所有権移転登記を受けていない場合,Bが移転登記を受けていないことに乗じ,Bに高値で売りつけ不当な利益を得る目的でAをそそのかし,Aから当該土地を購入して移転登記を受けた者に対して,Bは当該土地の所有権を主張できない。
(3)Aの所有する土地をBが取得したが,Bはまだ所有権移転登記を受けていない場合,当該土地の不法占拠者に対して,Bは当該土地の所有権を主張できない。
(4)Aの所有する土地をBが取得したが,Bはまだ所有権移転登記を受けていない場合,Bが当該土地を取得した後で,移転登記を受ける前に,Aが死亡した場合におけるAの相続人に対して,Bは当該土地の所有権を主張できない。
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正解は(1)

【解説】
(1)○正しい。借地上に自己名義の登記ある建物を所有している賃借人は,登記がないことを主張する正当な利益を有すするので,「第三者」にあたります。したがって,登記を有しないBは,当該土地の賃借人に対し,土地所有権を主張することができません。
(2)×誤り。第一の買主を害する目的で土地を取得した第二の買主は,登記がないことを主張する正当な利益を有しないので「第三者」にあたりません。
(3)×誤り。主張できる土地の不法占拠者は無権利者であり,登記がないことを主張する正当な利益を有しないので「第三者」にあたりません。
(4)×誤り。Aの地位を相続により包括承継した者である相続人は,当事者と同様の立場にあり,「第三者」にあたりません。

【No.59】

Aの所有する土地をBが取得した後,Bが移転登記をする前に,CがAから登記を移転した場合に関する次の記述のうち,民法及び不動産登記法の規定並びに判例によれば,BがCに対して登記がなければ土地の所有権を主張できないものはどれか。
(1)Aの所有する土地をBが取得した後,Bが移転登記をする前に,CがAから登記を移転した。BがAから購入した後,AがCに仮装譲渡し,登記をC名義に移転した場合,BがCに対して登記がなければ土地の所有権を主張できない。
(2)Aの所有する土地をBが取得した後,Bが移転登記をする前に,CがAから登記を移転した。BがAから購入した後,CがBを強迫して登記の申請を妨げ,CがAから購入して登記をC名義に移転した場合,BがCに対して登記がなければ土地の所有権を主張できない。
(3)Aの所有する土地をBが取得した後,Bが移転登記をする前に,CがAから登記を移転した。BがAから購入し,登記手続きをCに委任したところ,Cが登記をC名義に移転した,場合BがCに対して登記がなければ土地の所有権を主張できない。
(4)Aの所有する土地をBが取得した後,Bが移転登記をする前に,CがAから登記を移転した。Bの取得時効が完成した後,AがCに売却し,登記をC名義に移転した場合,BがCに対して登記がなければ土地の所有権を主張できない。
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正解は(4)

【解説】
(1)○正しい。AC間の契約は,虚偽表示によるものであり,無効であるため,Cは当該土地の所有権を取得しません。Cは無権利者であり,「第三者」に含まれません。よって,Bは登記を備えなくてもCに当該土地の所有権を主張することができます。
(2)○正しい。背信的悪意者は「第三者」に含まれません。背信的悪意者とされる例としては,第二の買主が,第一の買主が登記するのを詐欺や強迫によって妨げた場合があげられ,Cはこの例にあたります。
(3)○正しい。第一の買主から,登記移転の手続きをしてくれるように頼まれた者が,第一の買主に登記を移転せずに,自ら第二の買主となって自己に登記を移転した場合,背信的悪意者にあたります。Cはこの例にあたります。
(4)×誤り。時効によって所有権を取得した者は,登記なくしては,登記を備えた時効完成後の第三者にその権利の取得を主張することができません。前の所有者が,同一の不動産を,時効により所有権を取得した者と第三者とに二重に譲渡した場合と同様に考えられます。

【No.60】

不動産の物権変動の対抗要件に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。なお,この問において,第三者とはいわゆる背信的悪意者を含まないものとする。
(1)不動産売買契約に基づく所有権移転登記がなされた後に,売主が当該契約に係る意思表示を詐欺によるものとして適法に取り消した場合,売主は,その旨の登記をしなければ,当該取り消し後に,当該不動産を買主から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。
(2)不動産売買契約に基づく所有権移転登記がなされた後に,売主が当該契約を適法に解除した場合,売主は,その旨の登記をしなければ,当該契約の解除後に当該不動産を買主から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。
(3)甲不動産につき兄と弟が各自2分の1の共有持分で共同相続した後に,兄が弟に断ることなく単独で所有権を相続取得した旨の登記をした場合,弟は,その共同相続の登記をしなければ,共同相続後に甲不動産を兄から取得して所有権移転登記を経た第三者に自己の持分権を対抗できない。
(4)取得時効の完成により乙不動産の所有権を適法に取得した者は,その旨を登記しなければ,時効完成後に乙不動産を旧所有者から取得して所有権移転登記を経た第三者に所有権を対抗できない。
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正解は(3)

【解説】
(1)○正しい。不動産の売買契約が詐欺を理由に取り消された場合,売主がその不動産の所有権を取り消し後に利害関係を有するに至った第三者に対抗するには,登記を具備することが必要です。売主への所有権の復帰と第三者への所有権の移転は二重譲渡と同様の関係にあるからです。
(2)○正しい。解除後に登場した第三者と,契約を解除して所有権を取り戻そうとする売主とは対抗関係に立つので,先に登記を備えた者が所有権を対抗することができます。
(3)×誤り。共同相続人の1人である兄が不動産について単独で相続した旨の登記をしたうえ,これを第三者に譲渡した場合,他の共同相続人である弟は登記なくして自己の相続持分を対抗できます。兄は,弟の相続分については無権利者であり,第三者も弟の相続分について無権利者です。
(4)○正しい。時効による不動産所有権の取得について,時効完成後に当該不動産所有権を譲り受けた第三者に対抗するには,登記を具備することが必要です)。
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