【宅建過去問】権利関係ー借地借家法No.111-115

宅建士

【No.111】

借地借家法第38条の定期建物賃貸借に関する次の記述のうち,借地借家法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)定期建物賃貸借契約を締結するには,公正証書による等書面によらなければならない。
(2)定期建物賃貸借契約を締結するときは,期間を1年未満としても,期間の定めがない建物の賃貸借契約とはみなされない。
(3)定期建物賃貸借契約を締結するには,当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了によって終了することを,当該契約書と同じ書面内に記載して説明すれば足りる。
(4)定期建物賃貸借契約を締結しようとする場合,賃貸人が,当該契約に係る賃貸借は契約の更新がなく,期間の満了によって終了することを説明しなかったときは,契約の更新がない旨の定めは無効となる。
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正解は(3)

【解説】
(1)○正しい。定期建物賃貸借契約を締結するには公正証書による等、書面によらなければなりません。公正証書である必要はありませんが,書面は必要という趣旨です。
(2)○正しい。定期建物賃貸借契約を締結するときは,期間を1年未満とする建物の賃貸借契約が期間の定めのない賃貸借とみなすという借地借家法29条1項の規定は適用されません。したがって,たとえば10ヵ月といった1年未満の期間を定めた場合であっても,そのまま10ヵ月の定期建物賃貸借契約となります。
(3)×誤り。契約書とは別個独立の書面であることを要します。定期建物賃貸借契約を締結するときは,建物の賃貸人は,あらかじめ建物の賃借人に対し,契約の更新がなく,期間の満了により契約が終了することについてその旨を記載した書面を交付して説明しなければなりません。そして,この説明書面は,契約書とは別個独立の書面であることを要します。
(4)○正しい。建物の賃貸人が、定期建物賃貸借を締結する際の説明をしなかったときは,契約の更新がないこととする旨の定めは,無効とします。

【No.112】

Aは,A所有の甲建物につき,Bとの間で期間を10年とする借地借家法第38条第1項の定期建物賃貸借契約を締結し,Bは甲建物をさらにCに転貸した。この場合に関する次の記述のうち,民法及び借地借家法の規定並びに判例によれば,正しいものはどれか。
(1)Aは,A所有の甲建物につき,Bとの間で期間を10年とする定期建物賃貸借契約を締結し,Bは甲建物をさらにCに転貸した。BがAに無断で甲建物をCに転貸した場合には,転貸の事情のいかんにかかわらず,AはAB間の賃貸借契約を解除することができる。
(2)Aは,A所有の甲建物につき,Bとの間で期間を10年とする定期建物賃貸借契約を締結し,Bは甲建物をさらにCに転貸した。Bの債務不履行を理由にAが賃貸借契約を解除したために当該賃貸借契約が終了した場合であっても、BがAの承諾を得て甲建物をCに転貸していたときには,AはCに対して甲建物の明け渡しを請求することができない。
(3)Aは,A所有の甲建物につき,Bとの間で期間を10年とする定期建物賃貸借契約を締結し,Bは甲建物をさらにCに転貸した。AB間の賃貸借契約が期間満了で終了する場合であっても,BがAの承諾を得て甲建物をCに転貸しているときには,BのCに対する解約の申入れについて正当な事由がない限り,AはCに対して甲建物の明け渡しを請求することができない。
(4)Aは,A所有の甲建物につき,Bとの間で期間を10年とする定期建物賃貸借契約を締結し,Bは甲建物をさらにCに転貸した。AB間の賃貸借契約に賃料の改定について特約がある場合には,経済事情の変動によってBのAに対する賃料が不相当となっても、BはAに対して借地借家法第32条第1項に基づく賃料の減額請求をすることはできない。
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正解は(4)

【解説】
(1)×誤り。無断転貸の場合に賃貸人による賃貸借契約の解除が認められるのは,無断転貸により賃貸人と賃借人との信頼関係が崩れるからです。そのため,賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして目的物を使用収益させた場合でも,その行為が賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは,解除権は発生しません。
(2)×誤り。賃貸借契約が債務不履行により適法に解除された場合,転貸借はその存立の基礎を失うので,転借人は転借権をもって賃貸人に対抗することができません。したがって,CはAに対抗できず,AはCに対して甲建物の明け渡し請求をすることができます。
(3)×誤り。建物の賃貸借が期間の満了によって終了するときは,建物の賃貸人は,建物の転借人にその旨の通知をすれば,その終了を建物の転借人に対抗することができ,その通知をした日から6ヵ月経過後に転貸借が終了します。したがって,AはCに対して期間満了による終了を通知すれば,AはCに対抗することができ,正当事由がなくても,甲建物の明け渡し請求をすることができます。
(4)○正しい。定期建物賃貸借において,借賃増減請求の改定に関する特約がある場合,賃料が不相当となっても減額請求をすることができません。AB間は定期建物賃貸借であるため,借賃の改定について特約があるときは,BはAに賃料の減額請求ができません。

【No.113】

個人である賃貸人Aと、個人である賃借人Bとの間の居住用建物の賃貸借契約に関する次の記述のうち,借地借家法の規定及び判例によれば,誤っているものはどれか。
(1)個人である賃貸人Aと、個人である賃借人Bとの間の居住用建物の賃貸借契約に関し、Bが家賃減額の請求をしたが,家賃の減額幅についてAB間に協議が調わず裁判になったときは,Aは,その裁判が確定するまでの期間は,Aが相当と認める金額の家賃を支払うようにBに請求できる。
(2)個人である賃貸人Aと、個人である賃借人Bとの間の居住用建物の賃貸借契約に関し、Bが家賃減額の請求をしたが,家賃の減額輻についてAB間に協議が調わず裁判になったときは,その請求にかかる一定額の減額を正当とする裁判が確定した時点以降分の家賃が減額される。
(3)個人である賃貸人Aと、個人である賃借人Bとの間の居住用建物の賃貸借契約に関し、家賃が,近傍同種の建物の家賃に比較して不相当に高額になったときは,契約の条件にかかわらず,Bは,将来に向かって家賃の減額を請求することができる。
(4)個人である賃貸人Aと、個人である賃借人Bとの間の居住用建物の賃貸借契約に関し、AB間で,3年間は家賃を減額しない旨特に書面で合意した場合,その特約は効力を有しない。
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正解は(2)

【解説】
(1)○正しい。建物の借賃の減額について当事者間に協議が調わない場合,その請求を受けた貸主は,減額を正当とする裁判が確定するまでは,相当と認める額の借賃の支払いを請求することができます。
(2)×誤り。借賃の減額の請求をした後,減額を正当とする裁判が確定した場合,裁判が確定した時点以降分だけでなく,減額の請求をしてから裁判が確定するまでの分の借賃も減額されます。
(3)○正しい。建物の借賃が,近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは,契約の条件にかかわらず,当事者は,将来に向かって借賃の額の増減を請求することができます。
(4)○正しい。一定の期間建物の借賃を減額しない旨の特約は,建物賃借人に不利な特約であり,効力を有しません。

【No.114】

Aが所有する甲建物をBに対して3年間賃貸する旨の契約をした場合における次の記述のうち,借地借家法の規定によれば,正しいものはどれか。
(1)AがBに対し,甲建物の賃貸借契約の期間満了の1年前に更新をない旨の通知をしていれば,AB間の賃貸借契約は期間満了によって当然に終了し,更新されない。
(2)Aが甲建物の賃貸借契約の解約の申入れをした場合には申入れ日から3月で賃貸借契約が終了する旨を定めた特約は,Bがあらかじめ同意していれば,有効となる。
(3)Cが甲建物を適法に転借している場合,AB間の賃貸借契約が期間満了によって終了するときに,Cがその旨をBから聞かされていれば,AはCに対して,賃貸借契約の期間満了による終了を対抗することができる。
(4)AE間の賃貸借契約が借地借家法第38条の定期建物賃貸借で,契約の更新がない旨を定めるものである場合,当該契約前にAがBに契約の更新がなく期間の満了により終了する旨を記載した書面を交付して説明しなければ,契約の更新がない旨の約定は無効となる。
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正解は(4)

【解説】
(1)×誤り。建物の賃貸借について期間の定めがある場合において,当事者が期間の満了の1年前から6月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知をしなかったときは,従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなします。ただし,建物の賃貸人による通知については,正当の事由が必要です。したがって,賃貸人Aが通知をしただけで当然に終了するものではありません。
(2)×誤り。建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては,建物の賃貸借は,解約の申入れの日から6月を経過することによって終了し,これよりも建物の賃借人に不利な特約は無効となります。申入れ日から3月で終了する旨の特約は賃借人に不利なものであり無効です。Bの同意は影響しません。
(3)×誤り。建物の転貸借がされている場合において,建物の賃貸借が期間の満了によって終了するときは,建物の賃貸人は,建物の転借人にその旨の通知をしなければ,その終了を建物の転借人に対抗することができません。したがって,転借人Cが賃借人であるBから聞かされているだけでは,賃貸人AはCに対し終了を対抗できません。
(4)○正しい。定期建物賃貸借契約をしようとするときは,建物の賃貸人は,あらかじめ,建物の賃借人に対し,契約の更新がなく,期間の満了により当該建物の賃貸借は終了することについて,その旨を記載した書面を交付して説明しなければなりません。そして,賃貸人Aが賃借人Bにこの説明をしなかったときは,契約の更新がないこととする旨の定めは無効となります。

【No.115】

賃貸人と賃借人との間で,建物につき,期間5年として借地借家法第38条に定める定期借家契約を締結する場合と,期間5年として定期借家契約ではない普通借家契約を締結する場合に関する次の記述のうち,民法及び借地借家法の規定によれば,正しいものはどれか。なお,借地借家法第40条に定める一時使用目的の賃貸借契約は考慮しないものとする。
(1)賃借権の登記をしない限り賃借人は賃借権を第三者に対抗することができない旨の特約を定めた場合,定期借家契約においても,普通借家契約においても,当該特約は無効である。
(2)賃貸借契約開始から3年間は賃料を増額しない旨の特約を定めた場合,定期借家契約においても,普通借家契約においても,当該特約は無効である。
(3)期間満了により賃貸借契約が終了する際に賃借人は造作買取請求をすることができない旨の規定は,定期借家契約では有効であるが,普通借家契約では無効である。
(4)賃貸人も賃借人も契約期間中の中途解約をすることができない旨の規定は,定期借家契約では有効であるが,普通借家契約では無効である。
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正解は(1)

【解説】
(1)○正しい。建物賃貸借では引渡しも対抗要件となります。対抗要件を登記とする特約は,この規定に反する賃借人に不利な特約であるため,無効です。このことは普通建物賃貸借であっても,定期建物賃貸借であっても変わりません。
(2)×誤り。いずれの借家契約でも借賃を増額しない特約は有効です。定期建物賃貸借では借賃の改定に関する特約があれば借賃増額請求権の規定は適用されないため,3年間賃料を増額しない旨の特約は有効です。また,普通建物賃貸借でも一定の期間建物の借賃を増額しない旨の特約がある場合は,借賃増減額請求権は発生しないとされているため,本件特約は有効です。
(3)×誤り。いずれの借家契約でも造作買取請求をすることができない旨の特約は有効です。造作買取請求権を定める借地借家法33条は,強行規定とされていないため,建物賃貸借において造作買取請求権につき賃借人に不利となるような特約を結んでも,この特約は有効です。したがって,期間満了時に造作買取請求を認めない旨の特約は,いずれの建物賃貸借であっても有効です。
(4)×誤り。期間の定めのある建物賃貸借では解約権を認めない旨の特約は有効です。期間の定めのある普通借家契約では中途解約は原則として認められておらず,中途解約を認めない旨の特約は当然有効です。一方,定期借家契約では,居住用建物の賃貸借について,賃借人からの中途解約が認められる場合があり,賃借人からの中途解約を認めない特約は,これを排除することとなるので無効となります。
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