【宅建過去問】権利関係ー占有権、留置権、質権、相殺、贈与No.146-150

宅建士

【No.146】

売主A,買主B間の建物売買契約(所有権移転登記は行っていない。)が解除され,建物の所有者Aが,B居住の建物をCに売却して所有権移転登記をした場合に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)売主A,買主B間の建物売買契約が解除され,建物の所有者Aが,B居住の建物をCに売却して所有権移転登記をした場合に関し,Aが,Bに対して建物をCのために占有することを指示し,Cがそれを承諾しただけでは,AがCに建物を引き渡したことにはならない。
(2)売主A,買主B間の建物売買契約が解除され,建物の所有者Aが,B居住の建物をCに売却して所有権移転登記をした場合に関し,Bが建物占有中に,地震によって玄関のドアが大破したので修繕し,その費用を負担した場合でも,BはCに対してその負担額の償還を請求することはできない。
(3)売主A,買主B間の建物売買契約が解除され,建物の所有者Aが,B居住の建物をCに売却して所有権移転登記をした場合に関し,Aは,占有中の建物の一部をDに使用させ賃料を受領した場合,その受領額をCに償還しなければならない。
(4)Cが暴力によって,Bから建物の占有を奪った場合,BはCに占有回収の訴えを提起できるが,CはBに対抗できる所有権があるので占有回収の訴えについては敗訴することはない。
クリックで【No.146】の解答と解説をみる

正解は(3)

【解説】
(1)×誤り。指図による占有移転による引渡しが認められます。売買契約が解除されたことにより,売主の所有物を買主が代理占有している場合において,この所有者が,その占有代理人に対して,第三者のためにその物を占有すべき旨を命じ,かつ,第三者がこれを承諾したときは,その第三者に占有が移転します。
(2)×誤り。占有者BはCに必要費の償還請求をすることができます。占有者が占有物を返還する場合においては,原則としてその物の保存のために費した金額その他の必要費をその返還の相手方に償還させることができます。
(3)○正しい。悪意の占有者は,果実を所有権者に償還しなければなりません。そして,賃料は果実にあたります。したがって,Bは,Dから受領した賃料額をCに償還しなければなりません。
(4)×誤り。Cが敗訴することもあります。占有者がその占有を奪われたときは,占有回収の訴えによりその物の返還を請求することができますが,この占有回収の訴えは,所有権に関する理由に基づいて裁判をすることができません。したがって,Cが所有権を主張しても考慮されず,Cは,占有回収の訴えについて敗訴することもあり得ます。

【No.147】

留置権に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)建物の賃借人が賃貸人の承諾を得て建物に付加した造作の買取請求をした場合,賃借人は,造作買取代金の支払いを受けるまで,当該建物を留置することができる。
(2)不動産が二重に売買され,第2の買主が先に所有権移転登記を備えたため,第1の買主が所有権を取得できなくなった場合,第1の買主は,損害賠償を受けるまで当該不動産を留置することができる。
(3)建物の賃貸借契約が賃借人の債務不履行により解除された後に,賃借人が建物に関して有益費を支出した場合,賃借人は,有益費の償還を受けるまで当該建物を留置することができる。
(4)建物の賃借人が建物に関して必要費を支出した場合,賃借人は,建物所有者ではない第三者が所有する敷地を留置することはできない。
クリックで【No.147】の解答と解説をみる

正解は(4)

【解説】
(1)×誤り。造作買取代金債権を被担保債権として建物を留置することはできません。造作買取代金債権を被担保債権とする建物に関する留置権は認められるかが問題となります。造作買取代金債権は,造作に関して生じた債権であって,建物に関して生じた債権ではないので,「その物について生じた債権」に該当せず,建物に対する留置権は認められません。したがって,建物の賃借人が造作買取代金債権によりその建物を留置することはできません。
(2)×誤り。第一買主の損害賠償請求には留置権は成立しません。不動産が二重に譲渡され,第2の買主が先に所有権移転登記を備えて,第1の買主が所有権を取得できなくなった場合において,第1の買主は売主に対して取得する損害賠償請求権によって,その不動産に対する留置権が認められるかが問題となります。この場合において,その損害賠償請求権は,「その物について生じた債権」とはいえないため,留置権は成立しません。
(3)×誤り。債務不履行解除の後に支出した有益費には留置権は成立しません。建物賃貸借契約が賃借人の債務不履行により解除され,その解除後に賃借人が有益費を支出しています。そこで,占有開始時には占有権原があったが,その後に占有権原がなくなった場合に,民法295条2項が適用されて留置権を行使することができるのかが問題となります。占有開始後に占有権原を失った場合,その後の占有は不法な占有となるので,民法295条2項が類推適用されます。したがって,債務不履行による解除の場合,解除後に賃借人が占有をしている間に有益費を支出しても,民法295条2項の類推適用により,留置権は成立しません。
(4)○正しい。借地上にある建物の賃借人が有する費用償還請求権を被担保債権として,敷地を留置することができるのかが問題となります。借地上にある建物の賃借人が有する費用償還請求権は,借地に生じた債権ではないため,「その物について生じた債権」に該当せず,建物所有者でない者が所有する敷地を留置することはできません。

【No.148】

Aは,Bから建物を賃借し,Bに3000万円の敷金を預託した。その後,Aは,Bの承諾を得て,この敷金返還請求権につき,Cからの借入金債務を担保するために,Cのために適法に質権を設定した。この場合,民法の規定によれば,次の記述のうち正しいものはどれか。
(1)Aは,Bから建物を賃借し,Bに3000万円の敷金を預託した。その後,Aは,Bの承諾を得て,この敷金返還請求権につき,Cからの借入金債務を担保するために,Cのために適法に質権を設定した。Cは,Bの承諾が書面によるものであれば,確定日付を得ていなくても,この質権設定を,B以外の第三者に対しても対抗することができる。
(2)Aは,Bから建物を賃借し,Bに3000万円の敷金を預託した。その後,Aは,Bの承諾を得て,この敷金返還請求権につき,Cからの借入金債務を担保するために,Cのために適法に質権を設定した。CのAに対する利息請求権は,常に満期となった最後の2年分についてのみ,この質権の被担保債権となる。
(3)Aは,Bから建物を賃借し,Bに3000万円の敷金を預託した。その後,Aは,Bの承諾を得て,この敷金返還請求権につき,Cからの借入金債務を担保するために,Cのために適法に質権を設定した。CのAに対する債権の弁済期の前に,この敷金返還請求権の弁済期が到来した場合は,Cは,Bに対し,当該敷金を供託するよう請求できる。
(4)Aは,Bから建物を賃借し,Bに3000万円の敷金を預託した。その後,Aは,Bの承諾を得て,この敷金返還請求権につき,Cからの借入金債務を担保するために,Cのために適法に質権を設定した。CのAに対する債権の弁済期が到来した場合,Cは,Bに対し,Bがこの質権設定を承諾したことを根拠に,この敷金返還請求権の弁済期の前に,当該敷金を直ちにCに交付するよう請求できる。
クリックで【No.148】の解答と解説をみる

正解は(3)

【解説】
(1)×誤り。確定日付を得ていなければ,第三者に対抗できません。債権に対する質権の設定を受けたことを第三債務者以外の第三者に対抗するためには,第三債務者に確定日付のある証書によって通知をするか,第三債務者が確定日付のある証書によって承諾をすることが必要です。したがって,Bの承諾が確定日付を得ていないのであれば,Cは,質権を第三者に対して対抗することができません。
(2)×誤り。質権は元本の他利息等を担保しますが債権質の場合,不動産質のように,利息は最後の2年分という制限はありません。
(3)○正しい。第三債務者の債務の弁済期が,債権質権者の債権の弁済期前に到来したときは,質権者は,第三債務者にその弁済金額を供託させることができます。したがって,Cは,Bに対し,敷金を供託するよう請求することができます。
(4)×誤り。直ちに敷金を返還するようには請求できません。質権者は,質権の目的である債権を直接に取り立てることができますが,第三債務者も期限の利益を有します。したがって,Cは,Bに対し,敷金をただちに交付するよう請求することはできません。

【No.149】

Aは,B所有の建物を賃借し,毎月末日までに翌月分の賃料50万円を支払う約定をした。またAは敷金300万円をBに預託し,敷金は賃貸借終了後明け渡し完了後にBがAに支払うと約定された。AのBに対するこの賃料債務に関する相殺についての次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)Aは,B所有の建物を賃借し,毎月末日までに翌月分の賃料50万円を支払う約定をした。またAは敷金300万円をBに預託し,敷金は賃貸借終了後明け渡し完了後にBがAに支払うと約定された。AのBに対するこの賃料債務に関する相殺について,Aは,Bが支払い不能に陥った場合は,特段の合意がなくても,Bに対する敷金返還請求権を自働債権として,弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することができる。
(2)Aは,B所有の建物を賃借し,毎月末日までに翌月分の賃料50万円を支払う約定をした。またAは敷金300万円をBに預託し,敷金は賃貸借終了後明け渡し完了後にBがAに支払うと約定された。AのBに対するこの賃料債務に関する相殺について,AがBに対し不法行為に基づく損害賠償請求権を有した場合,Aは,このBに対する損害賠償請求権を自働債権として,弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することはできない。
(3)Aは,B所有の建物を賃借し,毎月末日までに翌月分の賃料50万円を支払う約定をした。またAは敷金300万円をBに預託し,敷金は賃貸借終了後明け渡し完了後にBがAに支払うと約定された。AのBに対するこの賃料債務に関する相殺について,AがBに対して商品の売買代金請求権を有しており,それが令和2年9月1日をもって時効により消滅した場合,Aは,同年9月2日に,このBに対する代金請求権を自働債権として,同年8月31日に弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することはできない。
(4)Aは,B所有の建物を賃借し,毎月末日までに翌月分の賃料50万円を支払う約定をした。またAは敷金300万円をBに預託し,敷金は賃貸借終了後明け渡し完了後にBがAに支払うと約定された。AのBに対するこの賃料債務に関する相殺について,AがBに対してこの賃貸借契約締結以前から貸付金債権を有しており,その弁済期が令和2年8月31囗に到来する場合,同年8月20日にBのAに対するこの賃料債権に対する差押があったとしても,Aは,同年8月31日に,このBに対する貸付金債権を自働債権として,弁済期が到来した賃料債務と対当額で相殺することができる。
クリックで【No.149】の解答と解説をみる

正解は(4)

【解説】
(1)×誤り。敷金返還請求権を自働債権として相殺することはできません。敷金返還請求権は,賃貸借契約終了後,建物の明け渡しによりはじめて発生します。したがって,建物の明け渡しがなされていない場合は,Aは,Bに対する敷金返還請求権を自働債権として,弁済期が到来した賃料債務と相殺することはできません。
(2)×誤り。債務が不法行為によって生じたときには,債務者は相殺することができません。しかし,被害者の側から,不法行為に基づく損害賠償請求権を自働債権として相殺することは認められています。したがって,被害者であるAは,Bに対する損害賠償請求権を自働債権として,弁済期が到来した賃料債務と対等額で相殺することができます。
(3)×誤り。相殺適状後に消滅した債権を自働債権として相殺することができます。自慟債権が時効によって消滅している場合も,その消滅以前に相殺適状にあったときは相殺することができます。したがって,Aは,時効消滅したBに対する代金請求権を自慟債権として,賃料債務と対等額で相殺することができます。
(4)○正しい。支払いの差止めを受けた第三債務者は,自己の債権が差し押さえ後に取得されたものでない限り,自働債権及び受働債権の弁済期の前後を問わず,相殺適状に達しさえすれば,差し押さえ後においても,これを自働債権として相殺できます。したがって,賃料債権に対する差し押さえ前に貸付金債権を有していたAは,賃料債権に対する差し押さえがあったとしても,弁済期が到来した賃料債務と対等額で相殺することができます。

【No.150】

Aは,生活の面倒をみてくれている甥のBに,自分が居住している甲建物を贈与しようと考えている。この場合に関する次の記述のうち,民法の規定によれば,正しいものはどれか。
(1)Aは,生活の面倒をみてくれている甥のBに,自分が居住している甲建物を贈与しようと考えている。AからBに対する無償かつ負担なしの甲建物の贈与契約が,書面によってなされた場合,Aはその履行前であれば贈与を撤回することができる。
(2)Aは,生活の面倒をみてくれている甥のBに,自分が居住している甲建物を贈与しようと考えている。AからBに対する無償かつ負担なしの甲建物の贈与契約が,書面によらないでなされた場合,Aが履行するのは自由であるが,その贈与契約は法的な効力を生じない。
(3)Aは,生活の面倒をみてくれている甥のBに,自分が居住している甲建物を贈与しようと考えている。Aが,Bに対し,Aの生活の面倒をみることという負担を課して,甲建物を書面によって贈与した場合,甲建物の瑕疵については,Aはその負担の限度において,売主と同じく担保責任を負う。
(4)Aは,生活の面倒をみてくれている甥のBに,自分が居住している甲建物を贈与しようと考えている。Aが,Bに対し,Aの生活の面倒をみることという負担を課して,甲建物を書面によって贈与した場合,Bがその負担をその本旨に従って履行しないときでも,Aはその贈与契約を解除することはできない。
クリックで【No.150】の解答と解説をみる

正解は(3)

【解説】
(1)×誤り。贈与契約が書面によってなされた場合,履行前であっても,贈与を撤回することはできません。なお,書面によらない贈与であれば,履行前において,各当事者は撤回することができます。
(2)×誤り。贈与契約が結ばれた以上,法的な効力を生じます。贈与は,当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し,相手方が受諾をすることによって,その効力を生じます。贈与契約がなされた以上,それが無償かつ負担なしのものであっても,法的な効力を生じることになります。
(3)○正しい。負担付贈与の場合,贈与者は,その負担の限度において,売主と同じく担保責任を負います。
(4)×誤り。Aは贈与契約を解除できます。負担付贈与の場合,贈与を受けた者である受贈者がその負担である義務の履行を怠るときは,贈与者は贈与契約を解除することができます。
タイトルとURLをコピーしました