【学習記録】令和元年 建設部門 必須科目 骨子案

令和元年 建設部門 必須科目 骨子案

令和元年 Ⅰ-1 問題

 我が国の人口は2010年頃をピークに減少に転じており,今後もその傾向の継続により働き手の減少が続くことが予想される中で,その減少を上回る生産性の向上等により,我が国の成長力を高めるとともに,新たな需要を掘り起こし,経済成長を続けていくことが求められている。
 こうした状況下で,社会資本整備における一連のプロセスを担う建設分野においても生産性の向上が必要不可欠となっていることを踏まえて,以下の問いに答えよ。
(1)建設分野における生産性の向上に関して,技術者としての立場で多面的な観点から課題を抽出し分析せよ。
(2)(1)で抽出した課題のうち最も重要と考える課題を1つ挙げ,その課題に対する複数の解決策を示せ。
(3)(2)で提示した解決策に共通して新たに生じうるリスクとそれへの対策について述べよ。
(4)(1)~(3)を業務として遂行するに当たり必要となる要件を,技術者としての倫理,社会の持続可能性の観点から述べよ。

令和元年 Ⅰ-1 骨子案

(1)建設分野における生産性向上のための課題
①ロボットの活用による自動化・省力化
 建設工事は現地における、一品生産であることから人力作業が多い。省力化の観点から、単純な繰り返し作業や、資材運搬などでロボットを活用することが課題である。
②鉄筋コンクリート部材のプレキャスト化
 現場における、鉄筋コンクリート躯体構築のための型枠・鉄筋・コンクリート打設・型枠解体工事には、多くの専門工事技術者の労働力を要する。現場作業を減らす観点から、鉄筋コンクリート部材のプレキャスト化が課題である。
③BIM/CIMによる図面の統合管理
 建築物の建設プロセスでは、設計図、施工図、仮設図など各プロセスにおいて必要な図面が異なり、それぞれの図面を作成するための労力が掛かる。図面作成手間の削減という観点から、BIM/CIMモデルを活用し、図面を統合管理することが課題である。
(2)最重要課題と解決策
最も重要な課題は「ロボットの活用による自動化・省力化」である。
①内装壁・天井ボードの施工ロボット活用
 内装壁・天井のボード運搬には、UWBの電波を活用した高精度な屋内位置測位技術を搭載した自動搬送ロボットを使用する。さらに、加速度センサーや画像処理AI技術を搭載したロボットで、ボードの取付、ビス止めを自動化する。
LGS下地の位置精度を±5mm程度以内とすることで、下地からビスが外れないようにする。
②ロボットプラットフォームの構築
 建設工事は、工事の前工程と次工程を管理する必要がある。各工事に特化したロボットの施工データを管理する「ロボットプラットフォーム」を構築することにより、ロボット施工の工程を一括管理する。
ロボット施工の労務平準化を行うために、各工事のロボットの歩掛を把握し、台数や各工程の日数を決定する。雨等による作業中断が生じないよう、ロボットには防塵・防水機能を持たせることや、仮設の屋根で風雨を遮断する工法を採用する。
③BIM/CIMデータの活用
 一品生産である建築物は、特殊な形状や複雑な形状の躯体を構築する場合がある。コンクリート用3Dプリンターに、直接BIM/CIMデータを入力することで、様々な形状の躯体コンクリートを自動で製作する。
普通コンクリートの引張強度は圧縮強度の1/10程度であるため、曲げ耐力が低い。多くの部材で使えるようにするため、高強度繊維補強をコンクリートに配合することで、引張強度を向上させ、曲げにも強いコンクリートを用いる。
(3)新たなリスクと対策
①技術者不足による品質低下
 建築物は一品生産であることから、すべての部位をロボットで施工することは困難であるため、人の手によって施工せざるを得ない部分が生じる。人の手による施工部分が少なくなると、技能者が不足し、品質低下を招くリスクがある。
遠隔操作ロボットを活用することで、技術力の高い技術者が現地へ移動しなくても施工ができる環境を構築する。5G通信やWiFi6など次世代の高速度・低遅延・工安定通信を用いることで、現地の映像を遅滞なく確認しながら施工できるようにする。
②ロボットの故障による工程遅延
 建設現場を想定し、防塵・防水・耐衝撃性能を備えたロボットを使用した場合であっても、誤作動や・動作不良といった故障が生じ、工程遅延が生じるリスクがある。
超高精度の振動センサーでロボットの振動を計測し、振動データをAIで解析することで、正常時の振動と、故障前の振動、異常時の振動を常時モニタリングする。故障・異常の前兆をとらえることで、工程遅延が生じないよう、ロボットの交換やエンジニアの派遣を行う。
③ロボットを起因とした施工中の安全災害
 施工現場向けのロボットは、対象物の大きさや、耐久性といった観点から、大型かつ重量が大きい場合が多い。ロボットの移動中・作動中に、作業員と接触し安全災害を起こすリスクがある。
ロボットに360°監視可能なカメラ搭載し、カメラの映像から人や物を検知するAIを用いる。ロボットの半径2~3m以内で作業員や物を検知した場合、警報音やランプによる注意促進を行い、更なる接近を防ぐ。半径2m以内で検知した場合は、ロボット自体の差動を停止し、接触事故を防止する。
(4)業務遂行に必要な要件
①技術者倫理綱領「公衆の利益の優先」
 施工をロボットに頼ることで、技術者自らが施工の品質を担保しているという意識の欠如が生じる可能性がある。
技術者としての倫理という観点から、各作業に対する施工ロボットの操作・使い方だけでなく、知識習得や、資格取得等による自己研鑽を継続することで、施工品質を向上させる。
②SDG’sの目標8「働きがいも経済成長も」
 ロボットの大きな役割として、重量物を運搬・揚重し省力化することが挙げられる。
社会の持続可能性というじゃん点から、ロボットの操作画面などのUIは、多言語表示とし、音声ガイダンスといった機能を搭載させることで、国内の女性や高齢者だけでなく、外国人労働者も活躍できるシステムを構築する。
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