【宅建過去問】権利関係ー物権変動No.61-65

宅建士

【No.61】

Aの所有する土地について,AB間で,代金全額が支払われたときに所有権がAからBに移転する旨約定して締結された売買契約に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)Aの所有する土地について,AB間で,代金全額が支払われたときに所有権がAからBに移転する旨約定して締結された売買契約に関して,AからBへの所有権移転登記が完了していない場合は,BがAに代金全額を支払った後であっても,契約の定めにかかわらず,Bは,Aに対して所有権の移転を主張することができない。
(2)Aの所有する土地について,AB間で,代金全額が支払われたときに所有権がAからBに移転する旨約定して締結された売買契約に関して,BがAに代金全額を支払った後,AがBへの所有権移転登記を完了する前に死亡し,CがAを相続した場合,Bは,Cに対して所有権の移転を主張することができる。
(3)Aの所有する土地について,AB間で,代金全額が支払われたときに所有権がAからBに移転する旨約定して締結された売買契約に関して,Aが,Bとの売買契約締結前に,Dとの間で本件土地を売却する契約を締結してDから代金全額を受領していた場合,AからDへの所有権移転登記が完了していなくても,Bは,Aから所有権を取得することはできない。
(4)Aの所有する土地について,AB間で,代金全額が支払われたときに所有権がAからBに移転する旨約定して締結された売買契約に関して,EがAからこの土地を賃借して,建物を建てその登記をしている場合,BがAに代金全額を支払った後であれば,AからBへの所有権移転登記が完了していなくてもBは,Eに対して所有権の移転を主張することができる。
クリックで【No.61】の解答と解説をみる

正解は(2)

【解説】
(1)×誤り。買主Bは売主Aに登記なくして主張できます。物権変動の当事者間では,意思表示のみで物権変動を主張することができます。本肢のAとBは物権変動の当事者であり,AB間で代金全額が支払われたときに所有権が移転する旨の約定がある以上,代金全額を支払ったBは登記なくしてAに対し所有権の移転を主張することができます。
(2)○正しい。相続人は被相続人の一切の権利義務を包括的に承継します。Cは,Aから売主としての地位を承継しますが,BとCは,物権変動の当事者と同様の関係にあります。Bは,登記なくして,Cに対し所有権の移転を主張することができます。
(3)×誤り。Bは所有権を取得できます。一度譲渡された不動産は,移転登記を終えていない限り,さらに他の者に譲渡することは可能です。その場合の複数の譲受人間の優劣は登記により決められます。Aが土地を先にDに譲渡していますが,Dへの移転登記を済ませていないため,BはAから所有権を取得することは可能です。
(4)×誤り。不動産の所有権を取得した者は,移転登記をしなければ,同じ不動産につき対抗力のある賃借権を有する第三者に対して所有権の移転を主張することはできません。Bは,Aに代金全額を支払っていても,移転登記を完了していない以上,建物を建てその登記をしているEに対して所有権の移転を主張することはできません。

【No.62】

A所有の甲土地についての所有権移転登記と権利の主張に関する次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)A所有の甲土地についての所有権移転登記と権利の主張に関して,甲土地につき,時効により所有権を取得したBは,時効完成前にAから甲土地を購入して所有権移転登記を備えたCに対して,時効による所有権の取得を主張することができない。
(2)A所有の甲土地についての所有権移転登記と権利の主張に関して,甲土地の賃借人であるDが,甲上地上に登記ある建物を有する場合に,Aから甲土地を購入したEは,所有権移転登記を備えていないときであっても,Dに対して,自らが賃貸人であることを主張することができる。
(3)A所有の甲土地についての所有権移転登記と権利の主張に関して,Aが甲土地をFとGとに対して二重に譲渡してFが所有権移転登記を備えた場合に,AG間の売買契約の方がAF間の売買契約よりも先になされたことをGが立証できれば,Gは,登記がなくても,Fに対して自らが所有者であることを主張することができる。
(4)A所有の甲土地についての所有権移転登記と権利の主張に関して,Aが甲土地をHとIとに対して二重に譲渡した場合において,Hが所有権移転登記を備えない間にIが甲土地を善意のJに譲渡してJが所有権移転登記を備えたときは,Iがいわゆる背信的悪意者であってもHは,Jに対して自らが所有者であることを主張することができない。
クリックで【No.62】の解答と解説をみる

正解は(4)

【解説】
(1)×誤り。登記をしていなくても,Bは時効による所有権の取得を対抗できます。時効完成前に原所有者から所有権を取得し登記を備えた者に対し,その後の時効取得者は,登記を備えなくても所有権の取得を主張することができます。
(2)×誤り。登記をしていないEは,賃貸人であることを主張できません。他人に賃貸中の土地の譲受人は,所有権の移転登記を経由しなければ賃借人に所有権を対抗できず,自らが賃貸人であることも主張できません。所有権移転登記を得ていないEは,Dに対し,土地の所有権を対抗できず,賃貸人であることも主張できません。
(3)×誤り。Gは登記を備えていない以上,所有権を主張できません。不動産の二重譲渡がなされた場合,両譲受人の優劣は,登記の先後で決します。売買契約締結の先後で決するのではありません。
(4)○正しい。不動産の二重譲渡において,背信的悪意者である一方の買主から当該不動産を譲り受け,登記も具備した転得者は,自分白身がもう一方の買主との関係で背信的悪意者と評価されない限り,その不動産の取得をもう一方の買主に対抗することができます。JはHに対して自らが所有者であることを主張できますが,HはJに対して主張できません。

【No.63】

AからB,BからCに,甲地が順次売却され,AからBに対する所有権移転登記がなされた。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。
(1)AからB,BからCに,甲地が順次売却され,AからBに対する所有権移転登記がなされた。この場合,Aが甲地につき全く無権利の登記名義人であった場合,真の所有者Dが所有権登記をBから遅滞なく回復する前に,Aが無権利であることにつき善意のCがBから所有権移転登記を受けたとき,Cは甲地の所有権をDに対抗できる。
(2)AからB,BからCに,甲地が順次売却され,AからBに対する所有権移転登記がなされた。この場合,BからCへの売却後,AがAB間の契約を適法に解除して所有権を取り戻した場合,Aが解除を理由にして所有権登記をBから回復する前に,その解除につき善意のCがBから所有権移転登記を受けたときは,Cは甲地の所有権をAに対抗できる。
(3)AからB,BからCに,甲地が順次売却され,AからBに対する所有権移転登記がなされた。この場合,BからCへの売却前に,AがAB間の契約を適法に解除して所有権を取り戻した場合,Aが解除を理由にして所有権登記をBから回復する前に,その解除につき善意のCがBから甲地を購入し,かつ,所有権移転登記を受けたときは,Cは甲地の所有権をAに対抗できる。
(4)AからB,BからCに,甲地が順次売却され,AからBに対する所有権移転登記がなされた。この場合,BからCへの売却前に,取得時効の完成により甲地の所有権を取得したEがいる場合,Eがそれを理由にして所有権登記をBから取得する前に,Eの取得時効につき善意のCがBから甲地を購入し,かつ,所有権移転登記を受けたときは,Cは甲地の所有権をEに対抗できる。
クリックで【No.63】の解答と解説をみる

正解は(1)

【解説】
(1)×誤り。無権利者からの転得者Cは真の所有者に対抗できません。無権利者やその者からの譲受人,転得者は登記がなければ対抗できない第三者にあたりません。
(2)○正しい。当事者の一方がその解除権を行使した場合,各当事者は,互いに原状回復義務を負うことになりますが,第三者の権利を害することはできません。第三者が保護されるためには,第三者が対抗要件を備えていることが必要です。解除前の第三者CがBから所有権移転登記を受けていたときは,Cは,甲地の所有権をAに主張することができます。
(3)○正しい。解除後に登場した第三者と,契約を解除して所有権を取り戻そうとする者とは,対抗関係に立つので,先に登記を備えた者が所有権を対抗することができます。したがって,解除後の第三者CがBから所有権移転登記を受けたときは,Cは,甲地の所有権をAに対抗することができます。
(4)○正しい。時効によって不動産の所有権を取得した者は,登記がなければ,時効完成後の第三者にその権利の取得を対抗することができません。Cは登記を備えている以上,甲地の所有権をEに対抗することができます。

【No.64】

AがBから甲土地を購入したところ,甲土地の所有者を名のるCがAに対して連絡してきた。この場合における次の記述のうち,民法の規定及び判例によれば,正しいものはどれか。
(1)AがBから甲土地を購入したところ,甲土地の所有者を名のるCがAに対して連絡してきた。CもBから甲土地を購入しており,その売買契約書の日付とBA間の売買契約書の日付が同じである場合,登記がなくても,契約締結の時刻が早い方が所有権を主張することができる。
(2)AがBから甲土地を購入したところ,甲土地の所有者を名のるCがAに対して連絡してきた。甲土地はCからB,BからAと売却されており,CB間の売買契約がBの強迫により締結されたことを理由として取り消された場合には,BA間の売買契約締結の時期にかかわらず,Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる。
(3)AがBから甲土地を購入したところ,甲土地の所有者を名のるCがAに対して連絡してきた。Cが時効により甲土地の所有権を取得した旨主張している場合,取得時効の進行中にBA間で売買契約及び所有権移転登記がなされ,その後に時効が完成しているときには,Cは登記がなくてもAに対して所有権を主張することができる。
(4)AがBから甲土地を購入したところ,甲土地の所有者を名のるCがAに対して連絡してきた。Cは債権者の追及を逃れるために売買契約の実態はないのに登記だけBに移し,Bがそれに乗じてAとの間で売買契約を締結した場合には,CB間の売買契約が存在しない以上,Aは所有権を主張することができない。
クリックで【No.64】の解答と解説をみる

正解は(3)

【解説】
(1)×誤り。登記を備えていなければ,第三者に所有権を主張することができません。不動産の二重譲渡では,原則として,先に登記を備えた者が第三者に所有権を主張することができます。売買契約締結の先後で決するのではありません。
(2)×誤り。取り消しの前後で異なります。強迫による意思表示は,取り消し前の第三者には,その取り消しを主張することができます。しかし,取り消し後の第三者に対しては,登記を備えなければ,自己が所有者であることを第三者に主張することができません。
(3)○正しい。時効完成前に原所有者から所有権を取得し登記を備えた者に対し,その後の時効取得者は,登記を備えなくても所有権の取得を主張することができます。当事者と同様の関係にあるからです。Cは登記を備えていなくてもAに所有権を主張することができます。
(4)×誤り。Aが善意であれば所有権を主張できます。虚偽表示による契約は,無効です。しかし,この無効は善意の第三者に主張することができません。

【No.65】

Aは,自己所有の建物をBに売却したが,Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この場合,民法の規定及び判例によれば,次の記述のうち誤っているものはどれか。
(1)Aは,自己所有の建物をBに売却したが,Bはまだ所有権移転登記を行っていない。Cが何らの権原なく,この建物を不法占有している場合,Bは,Cに対し,この建物の所有権を対抗でき,明け渡しを請求できる。
(2)Aは,自己所有の建物をBに売却したが,Bはまだ所有権移転登記を行っていない。DがAからこの建物を賃借し,引渡しを受けて適法に占有している場合,Bは,Dに対し,この建物の所有権を対抗でき,賃貸人たる地位を主張できる。
(3)Aは,自己所有の建物をBに売却したが,Bはまだ所有権移転登記を行っていない。この建物がAとEとの持分2分の1ずつの共有であり,Aが自己の持分をBに売却した場合,Bは,Eに対し,この建物の持分の取得を対抗できない。
(4)Aは,自己所有の建物をBに売却したが,Bはまだ所有権移転登記を行っていない。Aはこの建物をFから買い受け,FからAに対する所有権移転登記がまだ行われていない場合,Bは,Fに対し,この建物の所有権を対抗できる。
クリックで【No.65】の解答と解説をみる

正解は(2)

【解説】
(1)○正しい。不動産に関する物権変動は,登記がなければ「第三者」に対抗することはできません。ここでいう「第三者」とは,当事者及びその包括承継人以外の者で登記がないことを主張する正当な利益を有する者をいいます。そして,土地の不法占拠者は,登記がないことを主張する正当な利益を有しないので「第三者」にはあたりません。
(2)×誤り。登記をしていないBは,賃貸人たる地位を主張できません。賃貸された建物の所有権を譲り受けた者は,所有権の移転登記を経由しなければ賃借人に所有権を対抗できず,賃貸人たる地位を取得したことも主張できません。
(3)○正しい。不動産に関する物権変動は,登記がなければ「第三者」に対抗することはできませんが,不動産の共有者の1人が自己の持分を譲渡した場合の,他の共有者は「第三者」にあたります。
(4)○正しい。不動産に関する物権変動は,登記がなければ「第三者」に対抗することはできませんが,所有権が転々と移転した場合の前主は「第三者」にはあたりません。Bは,Fに対し,建物の所有権を対抗できます。
タイトルとURLをコピーしました