【一軸】と【三軸】圧縮試験の違い

建築士

【一軸】と【三軸】圧縮試験の違い

土の圧縮強度を確認するときの、”一軸”圧縮強度試験と”三軸”圧縮強度試験の2通りの試験はどのように異なるのでしょうか。このページでは、これらの違いと各試験でどのようなことがわかるかについて、少し詳しくまとめています。

各試験で対象となる土

 まず、一軸圧縮試験と、三軸圧縮試験では、試験の対象となる土質が異なります。一軸圧縮試験は”粘土のみ”を対象としている試験です。一方三軸圧縮試験は”粘土と砂”どちらも対象とする試験です。
 ここで、なぜ一軸圧縮試験は”粘土のみ”を対象としているかについて説明します。下に、一軸圧縮試験での、粘土と砂のイメージ図を描きました。
 このように、粘土は容器などに入れなくても、形を保つことができます。一方で、砂は容器に入れなければ図のように形が崩れてしまって、試験を行うことができません。このため、一軸圧縮試験は”粘土のみ”を対象とした試験であることが分かります。

一軸圧縮試験

 一軸圧縮試験の”粘土”を対象とした図を再掲します。
 一軸圧縮試験は、試験体の粘土を円柱形に整形し、上部から軸圧を加え、試験体を圧縮します。試験体が破壊した時点を一軸圧縮強度とします。
 ここで、一軸圧縮強度quの単位は、応力と同じ<kN/m2>であることに注意が必要です。

一軸圧縮試験におけるモールクーロンの破壊基準

 一軸圧縮試験を行った際の、モールクーロンの破壊基準図における一軸圧縮強度qu(kN/m2)のイメージ図を下に示します。
※図は、パラパラ漫画のようにコマ送りされ、繰返し表示されます。
 一軸圧縮試験は、側圧が無い状態です。圧縮方向の応力σ1を徐々に大きくしていくと、試験体が壊れます。その壊れた点を、一軸圧縮強度quとします。
モールクーロン破壊基準図における、横軸の値がquに相当します。このquに対する、縦軸のせん断強度は、\(\frac{1}{2}{×}{qu}\)となることが分かります。(円の直径と半径の関係性から分かります。)

三軸圧縮試験

 三軸圧縮試験の”粘土および砂”を対象とした図を示します。
 三軸圧縮試験では、試験体を円柱形とし、ゴムのスリーブで試験体の周囲を覆います。試験機は、試験体に水圧をかけることができる仕組みとなっています。試験は、試験体の側方に水圧をかけながら、上部のキャップで試験体を圧縮します。水圧(σ3)と上部の圧縮(σ1)の両方をかけ、試験体が破壊した時点を三軸圧縮強度とします。
 ここで、モールの応力円(上半分の円)とクーロンの破壊線が接すると、供試体がせん断破壊するということが分かっています。
 つまり、どのような組み合わせの圧力σ1と側圧σ3で、試験体がせん断破壊したかを知ることができれば、クーロンの破壊線を求めることができます。
 三軸圧縮試験では、σ1とσ3を同じだけ作用させ、σ1だけを徐々に小さくしていくことで、破壊時の組合せを測定します。これを複数回行えば、クーロンの破壊線を求めることができます。
 さらに、クーロンの破壊線を求めることができれば、縦軸の切片から粘着力cが分かり、傾きから内部摩擦角φが分かります。モールクーロンの破壊基準図における三軸圧縮強度試験結果のイメージ図を下に示します。
※図は、パラパラ漫画のようにコマ送りされ、繰返し表示されます。
ここまでの説明は、試験体に”ゆっくりと力を加えた場合(=静的)”に成り立つという前提のもとに進めてきました。”瞬間的に力を加えた場合(=動的)”には、一般的に強度が増すことが知られています。これは、土に限らずコンクリートや鉄でも同じことで、静的な強度よりも動的な強度のほうが高いということが分かっています。
 以上により、土のせん断強度、粘着力、内部摩擦角は三軸圧縮試験により求めることができることが分かりました。下図に、モールクーロンの破壊基準図と求めることができる数値の対応関係を示します。
 今回の記事は以上です。次回は、3軸圧縮試験の種類と、地盤破壊の判断の数式についてまとめたいと思います。
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