国交省告示第1793号では、地盤周期に応じて地盤種別を判定する方法が書かれています。
このページでは、簡易計算で地盤周期を求める2つの方法を、計算例で比較していきます
- 『2015年版建築物の構造関係技術基準解説書』に書かれている方法
- 『建築基礎構造設計指針』に書かれている方法
簡易計算方法の位置づけ
地盤周期の測定方法を以下に挙げます
- 常時微動の周期頻度曲線から求める
- 測定されたせん断波速度から求める
実務では、両方法を用いて地盤周期を推定し、その確からしさを推定しますが、今回は「測定されたせん断波速度から求める」方法についての内容を扱います。
せん断波速度測定による方法には、以下の2つが挙げられます。
重複反射理論による方法(解析的方法)
重力式による方法(簡易的方法)
このページで比較する簡易計算は、「重力式による方法」という位置づけとなります。
『2015年版建築物の構造関係技術基準解説書』
重複反射理論等による清算法によらない場合、地盤周期は次の式によって求めることが出来ます。
$$Tg=\sqrt{32\sum_{i=1}^{n}\left(\frac{\frac{h_i・(H_{i-1}+H_i{2})}{2}}{V_{Si}^2}\right)}$$
n:基盤から基盤底面までの間の層の数
Tg:地盤周期(秒)
Hi:建築物の基礎底面あるいは剛強なくいの支持層からi層下面までの深さ(m)
VSi:i層のせん断波速度(m/sec)
hi:i層の厚さ(m)
なお、土の単位体積重量は地層構成、深さによらず一定としてあります。
『建築基礎構造設計指針』
$$T_0=4\sum_{}^{}\frac{hi}{V_{Si}}$$
T0:地盤の初期固有周期(秒)
hi:i層の厚さ(m)
VSi:i層のせん断波速度(m/sec)
上式の比較をしてみました
計算で使う「層厚」「せん断波速度」のイメージ図を示します。
以下に、地層の条件を示します。
地層番号 | 深さ(m) | 地層厚さ(m) | Si(m/sec) |
1 | 1 | 1 | 100 |
2 | 3 | 2 | 60 |
3 | 5 | 2 | 60 |
4 | 6 | 1 | 70 |
5 | 9 | 3 | 70 |
6 | 10 | 1 | 70 |
7 | 15 | 5 | 140 |
8 | 9999 | 9999 | 450 |
『2015年版建築物の構造関係技術基準解説書』による方法
Tg=0.735(秒)
『建築基礎構造設計指針』による方法
T0=0.675(秒)
計算用エクセルデータのダウンロードリンクを貼り付けておきますので、参考になさってください。
地盤周期簡易算定エクセルデータ
計算結果に違いが出ました。上式2つを変形してみると
$$Tg=4\sqrt{\frac{(H_{i-i}+H_i)・hi}{Vsi^2}}$$
$$T_0=4\sqrt{\frac{hi・hi}{Vsi^2}}$$
感覚的にはTgの方が周期が長くなりそうですが、地層番号7の層厚hiが5mという部分の影響が大きく、T0>Tgという結果となりました。今後は、層厚の取り方、清算法との比較もしていきたいと思います。