【せん断設計】鉄筋コンクリート梁

せん断力に対する設計方針

 せん断力に対する設計方針は、以下の3段階に分けます。
段階 想定する力 目標性能 ベースシア係数C0 せん断設計
長期荷重 使用限界以下 せん断ひび割れ発生防止
中地震 損傷限界以下 0.2 残留せん断ひび割れ幅の制御
大地震 安全限界以下 1.0 せん断破壊の防止
 一般に、部材が曲げで破壊する場合には、曲げ降伏後に塑性変形能力(靭性)を発揮するため、安全性が確保されます。
一方で、大地震時に、柱・梁にせん断破壊が生じると、破壊は脆性的であるため、最大強度に達してからの靭性が発揮されないのが普通です。
そのため、RC基準では、一般の柱・梁の大地震時の安全性確保のために、曲げ耐力を上回るせん断耐力を部材に与え、曲げで降伏するように設計することを原則としています。

【長期】せん断ひび割れ発生防止

 せん断ひび割れが発生しないように、せん断設計をするためには、コンクリートの長期許容せん断応力度fSが、長期荷重によるせん断応力よりも大きいことを確認します。

$${Q}_{AL}={bj}\alpha{f}_{S}$$
ただし、
$$\alpha=\frac{4}{\frac{M}{Qd}+1}{ かつ 1≦α≦2}$$

【記号】
b:梁の幅
j:梁の応力中心距離(7/8d)
d:梁の有効せい
fS:コンクリートの長期許容せん断応力度
α:梁のせん断スパン比(M/Qd)による割増係数
M:設計する梁の長期荷重による最大モーメント
Q:設計する梁の長期荷重による最大せん断力

【中地震】残留せん断ひび割れ幅の制御

 損傷制御のための検討は、以下の算定式を用います。

$${Q}_{AS}={bj}\left\{\frac{2}{3}\alpha{f}_{S}+0.5_{w}{f}_{t}({p}_{w}-0.002)\right\}$$
ただし、
$$\alpha=\frac{4}{\frac{M}{Qd}+1}{ かつ 1≦α≦2}$$

pwの値が1.2%を超える場合は、1.2%として許容せん断力を計算する。
【記号】
b:梁の幅
j:梁の応力中心距離(7/8d)
d:梁の有効せい
pw:梁のせん断補強筋比で、次式による
$${p}_{w}=\frac{{a}_{w}}{bx}$$
aw:1組のせん断補強筋の断面積
x:せん断補強筋の間隔
fS:コンクリートの短期許容せん断応力度
wft:せん断補強筋の短期許容引張応力度で、390N/mm2を超える場合は390N/mm2として許容せん断力を計算する。_
α:梁のせん断スパン比(M/Qd)による割増係数
M:設計する梁の長期荷重による最大モーメント
Q:設計する梁の長期荷重による最大せん断力

 中地震が起きた後、残留ひび割れ幅が、機能上・耐久性状問題とならない範囲内のせん断力を想定して設計します。
残留ひび割れ幅の具体的な値は、以下のとおりです。
建築物の箇所 ひび割れ幅
屋内 0.3~0.4mm程度
屋外 0.2~0.25mm程度

【大地震】せん断破壊の防止

 大地震動に対する安全性確保のための検討は、次式によります。

$${Q}_{A}={bj}\{\alpha{f}_{S}+0.5{}_{w}{f}_{t}({p}_{w}-0.002)\}$$
ただし、
$$\alpha=\frac{4}{\frac{M}{Qd}+1}{ かつ 1≦α≦2}$$

pwの値が1.2%を超える場合は、1.2%として許容せん断力を計算する。
【記号】
b:梁の幅
j:梁の応力中心距離(7/8d)
d:梁の有効せい
pw:梁のせん断補強筋比で、次式による
$${p}_{w}=\frac{{a}_{w}}{bx}$$
aw:1組のせん断補強筋の断面積
x:せん断補強筋の間隔
fS:コンクリートの短期許容せん断応力度
wft:せん断補強筋の短期許容引張応力度で、390N/mm2を超える場合は390N/mm2として許容せん断力を計算する。_
α:梁のせん断スパン比(M/Qd)による割増係数
M:設計する梁の長期荷重による最大モーメント
Q:設計する梁の長期荷重による最大せん断力

最後に

 このページでは、RC造梁のせん断設計の概略をご紹介しました。長期・中地震(短期)・大地震(終局)の3つ想定荷重に対して計算します。詳しくは、RC基準の15条をご参照いただければ幸いです。
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