コンクリートの強度といえば”圧縮強度”のことを差すことが多いですが、今回はコンクリートの各種強度について、まとめます。
まずは圧縮強度から
圧縮強度試験
コンクリートの圧縮強度試験方法はJIS A 1108に規定されています。そこでは、以下のように供試体の形状と寸法が明記されています。
供試体は,直径の 2 倍の高さをもつ円柱形とする。その直径は,粗骨材の最大寸法の 3 倍以上かつ 100 mm以上とする。供試体の直径の標準は,100 mm,125 mm,150 mm である。
JIS A 1132:コンクリートの強度試験用の供試体の作り方
コンクリートの圧縮強度は、コンクリートプラントごとの経験から、どの配合にすればどれくらいの圧縮強度のコンクリートができるか分かっています。
コンクリートの配合は【セメント・粗骨材・細骨材・水・空気・混和剤】から成り立っていますが、圧縮強度に一番関連性があるのは【セメントと水】です。
圧縮強度とセメント水比
コンクリートの圧縮強度は、セメントペーストの接着力に支配されるため、セメントが多いコンクリートほど圧縮強度の高いコンクリートとなります。下図のように、圧縮強度とセメント水比の関係は比例関係であることが分かっています。
圧縮強度の計算式
$$f_{c}=A+B×\frac{C}{W}$$
圧縮強度:fc
セメント水比:C/W
定数:A,B
C:単位セメント量(kg/m3)
W:単位水量(kg/m3)
つぎは引張強度
コンクリートの引張強度は、一般的に圧縮強度の1/10程度といわれています。また、鉄筋コンクリート造の部材の強さを計算する場合はコンクリートの引張強度を算入しないなど、コンクリート自体に引張強度を求めることは少ないですが、ひび割れに対する性能を検証する際など、引張強度を扱う場合があります。
引張強度の試験方法
コンクリートの圧縮強度試験方法はJIS A 1113に規定されています。また、引張強度試験には直接引張試験と割裂引張試験がありますが、コンクリートの圧縮試験機をそのまま使える等の理由から、通常は割裂引張試験を行います。
左が直接引張試験、右が割裂引張試験の図です。
引張強度の計算式:圧縮試験結果(\(\sigma_{c}\))から
$$\sigma_{st}=0.33×(\sigma_{c})^{0.5}・・・日本建築学会$$
$$\sigma_{st}=0.23×(\sigma_{c})^{0.667}・・・日本土木学会$$
参考に、上の2式から計算した値をグラフ化しました。
引張強度の計算式:割裂引張試験結果(\(Pc\))から
$$\sigma_{st}=\frac{2Pc}{\pi{DL}}$$
\(\sigma_{st}\):割裂引張強度(N/mm2)
Pc:最大圧縮荷重(N)
D:供試体直径(mm)
L:供試体長さ(mm)
最後に曲げ強度
曲げ強度の試験方法
コンクリートの圧縮強度試験方法はJIS A 1106に規定されています。圧縮試験や割裂引張試験とは異なる供試体の形状と寸法が明記されています。これは、試験方法により、形状が決まっています。
供試体は,断面が正方形の角柱体とし,その一辺の長さは,粗骨材の最大寸法の 4 倍以上3)かつ 100 mm以上とし,供試体の長さは,断面の一辺の長さの 3 倍より 80 mm 以上長いものとする。供試体の標準断面寸法は,100 mm×100 mm 又は 150 mm×150 mm である。
JIS A 1132:コンクリートの強度試験用の供試体の作り方
上図は2点載荷の場合ですが、中央点載荷法によるコンクリートの曲げ強度試験方法もありますが、ここでは割愛させていただきます。
曲げ強度の計算式:曲げ試験結果(\(Pm\))から
$$\sigma_{b}=\frac{P_{b}L}{bh^2}$$
Pm:最大圧縮荷重(N)
L:引張側(下側)ローラー支承間距離(mm)
b:供試体断面の幅(mm)
h:供試体断面の高さ(mm)
以上、コンクリートの各種強度についてでした。