<わが国の社会資本―インフラストック>
- わが国の社会資本(インフラ)は戦後の復興、特に1960年代から1970年代前半の高度成長期に集中的に整備された。
- 戦後の復興から高度経済成長期に集中的に整備された長期供用コンクリート構造物が供用50年を迎えている。
- 現在、我が国のコンクリート構造物は、道路、ダム、港湾、空港、建築物などで約100億m3のストックがなされている。
<事故等>
- 戦後の復興~1970年代前半:コンクリート構造物は半永久構造物であるとの神話、西日本地域では骨材不足から海砂が使用されるようになった。
- 1970年代後半~1990年代前半:1984年に報道された「コンクリートクライシス」により、コンクリートの耐久性が社会問題となった。流動化剤やAE減水剤の普及と高強度化が進んだ。
- 1990年代後半以降:1995年の阪神淡路大震災によるコンクリート構造物の倒壊、2012年12月に中央自動車道笹子トンネルの天井板落下事故が発生し9名の死亡者を出す、大きな社会問題となった。国土交通省は2013年を「社会資本メンテナンス元年」と位置づけ、維持管理の重要性を明確にした。
<社会的背景>
- 巨大地震の発生予測や地球温暖化に伴う豪雨災害の発生、台風被害等、自然災害の激甚化が社会問題になっている。
- 少子高齢化による税収不足や景気悪化による財政赤字が進み、社会資本維持・整備の財源確保が難しくなっている。
- 人口減少、地方の過疎化が進み、社会資本の維持・整備を行う技術者が不足している。
- 環境負荷低減への貢献が国際的に求められており、日本は2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロを目指している。
<診断士の資質>
- コンクリート構造物を診断できる高度な技術力を要する。
- コンクリート構造物の診断における計画・調査・測定・管理・指導・判定・予測・対策を実施できる能力が求められる。
- コンクリート構造物の診断には技術力に加え、公平性・職業倫理・客観性・高いモラルが要求される。
- 施工方法・調査方法・補修材・補強材などの新たな知識を得るといった自己研鑽が必要である。
<社会的役割>
- 不具合情報は情報収集が困難であるため、不具合・設計・施工・材料の変遷などを次世代へ適切に伝承することが求められている。
- 社会資本維持・整備の財源確保が難しい中で、最適なライフサイクルコストとなる維持管理計画の提案が求められている。
<社会背景を踏まえた具体的な方策>
- 地方の過疎化:職員の数および専門知識が不足している地方自治体が80%を超えているため、簡潔な点検マニュアルの整備、データベースの作成・情報の共有と活用ができるシステムを構築する。
- 専門技術者の減少:点検、診断を地方自治体の職員および民間技術者だけではなく、地方の大学が担当するなど、産官学の連携が有効である。
- 人口減少:維持管理負担が小さく、耐久性の高い工法が望まれる。省人化を促進する工法の開発実用化が重要である。