【凍結防止剤散布環境下における凍害】コンクリート構造物の劣化現象について(診断士試験対策)

凍結防止剤散布環境下における凍害

凍結防止剤散布環境下における凍害のポイントは、①塩害と、②凍害の複合劣化です。

塩害と凍害のメカニズム

塩害のメカニズム

塩害は、塩化物イオン(Cl)がコンクリート内部に侵入し、鉄筋表面の不働態被膜を破壊することで、内部の鉄筋がさびる現象です。塩化物イオンを、塩素イオンという場合もあります。

塩化物イオンは、コンクリートの材料を由来とする「初期塩分」と、外部環境からによる「外来塩分」があります。凍結防止剤散布によるのは、「外来塩分」です。

コンクリートの塩害

凍害のメカニズム

凍害は、コンクリート中の毛細管空隙中に侵入した水が凍結、融解を繰り返すことでコンクリートにひび割れを生じさせる現象です。

水は凍結すると、約9%体積膨張します。この凍結時の膨張により、コンクリートに微細なひび割れが生じます。その微細なひび割れに、融解した水が浸入し、繰返し凍結と膨張をすることにより、ひび割れが大きくなっていきます。

凍害には、コンクリート打設直後の硬化前に生じる「初期凍害」と、コンクリート硬化後生じる「凍害」があります。

凍結防止剤散布によるのは、コンクリート硬化後に生じる「凍害」です。

ポップアウト,スケーリング,ひび割れ

凍結防止剤と融雪剤

凍結防止剤は路面の凍結防止として使われ、融雪剤は道路に積もった雪の除雪に使われます。いずれも塩化物イオン(Cl)が含まれているため、コンクリート構造物に、塩害をもたらす可能性があります。

凍結防止剤

凍結防止剤は、塩化ナトリウムを主成分としています。塩化ナトリウムは、化学式で表すと、NaClです。

塩化ナトリウムは、いわゆる”食塩”のことです。塩化ナトリウム水溶液の凝固点は-20℃程度となり、雪が降る前に撒いておくことで、路面の凍結を防ぎます。

値段が安価であり、持続力が高いため、凍結防止剤として広く使われていますが、コンクリートの塩害をもたらす原因となります。

融雪剤

融雪剤は、塩化カルシウムを主成分としています。

塩化カルシウムは、凝固点を-50℃程度まで下げる作用があります。除雪効果が高く、数分で効果が表れることから、雪が積もった道路などに撒く用途として広く使われています。

使用上の注意点として、塩化カルシウムは水分と反応することで発熱します。素手で触ると、手の水分と発熱反応を起こしてやけどを起こす危険性があります。

凍害と塩害を防ぐための留意点

凍害と塩害を防ぐための留意点で、共通するものは、密実なコンクリートを施工するということです。

ジャンカ、コールド署員と、砂すじ、表面気泡などの施工不良は、水分や塩化物イオンがコンクリート内部に侵入する原因となります。

施工時は、コンクリートの運搬時間、打込み速度、締固め管理を適切に行うことで、コンクリートの品質確保、特に表面の品質確保を図ることが重要です。

ジャンカ断面

凍害を防ぐための留意点

凍害を防ぐためのポイントは、①毛細管空隙を小さくすること、②吸水率の小さい材料を使用することです。

毛細管空隙を小さくするためには、水セメント比の小さなコンクリートの使用が有効です。

また、AE剤の使用により、良好な気泡組織を形成すると、微細な空隙がクッションのような役割を果たし、耐凍害性が向上します。具体的には、直径が30~250μm程度で、気泡間隔係数が200~250μm以下で耐凍害性が向上します。

吸水率の小さい骨材を用いたコンクリートは、耐凍害性が向上します。一般に、粗骨材の吸水率は2%以下で、5%以上は凍害が生じやすくなります。

JISでは、骨材の耐凍害を評価するために、骨材の安定試験によって骨材の耐久性を調べます。骨材の安定性試験とは、硫酸ナトリウムによる結晶圧を利用して、凍結融解作用による骨材の耐久性を調べる試験です。

骨材の安定性試験では、骨材が膨張圧により粉砕されたあとに、ふるいを通過して「減少した質量」を元々の質量で割ることで、損失質量を求めます。膨張圧により、粉々になりにくいほど、損失質量が小さいということになります。

JISでは、コンクリートに使用する骨材は、損失質量が砂利で12%以下、砂で10%以下のものとするとしています。つまり、損失質量が小さいほうが耐凍害性が高いということになります。

塩害を防ぐための留意点

塩害を防ぐためのポイントは、①コンクリート中の塩化物イオン濃度を小さくすること、②鉄筋の腐食反応を進行させないことです。

土木学会コンクリート示方書では、鉄筋が腐食し始めるコンクリート中の塩化物イオンの量は、1.2kg/m3であるとされています。塩化物イオンの含有量が少ない材料を用いることが、塩害を防ぐために有効です。

また、凍結防止剤や除雪剤、飛沫帯など、外部からの塩化物イオンの侵入が避けられない環境では、鉄筋腐食を進行させないために、酸素、または、水分のコンクリート内部への供給を断つことが有効です。

塩害を受けた構造物の補修工法の代表的なものは、①断面修復工法、②表面被覆工法、③含浸材塗布工法、④電気防食工法、⑤脱塩工法などがあります。

鉄筋の表面にあらかじめエポキシ樹脂を塗装する方法や、ステンレス製の鉄筋を使用する場合もあります。

今回の記事は、以上です。

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