【コンクリート主任技士過去問解説】平成28年度No11~15

主任技士過去問解説

コンクリート主任技士過去問 問題と解説

【平成28年度―問題11】

 フレッシュコンクリートの試験に関する次の一般的な記述のうち、適当なものはどれか

 

(1)JIS A 1150(コンクリートのスランプフロー試験方法)は、高流動コンクリートや水中不分離性コンクリートなど高い流動性が要求されるコンクリートのコンシステンシーを評価する試験で、スランプコーンを引き上げた後の最大と思われる直径とその直角方向の広がりを測定する。

(2)土木学会規準JSCE-F 501(舗装用コンクリートの振動台式コンシステンシー試験方法)は、RCD用コンクリートのコンシステンシーを評価する試験で、所定の振動時間で変形したコンクリートの頂点の沈下量を測定する。

(3)土木学会規準JSCE-F 502(加圧ブリーディング試験方法(案))は、コンクリートのブリーディング率を短時間で評価する試験で、フレッシュコンクリートに圧縮力を作用させ上面に強制的に発生させたブリーディング量を測定する。

(4)土木学会規準JSCE-F 511(高流動コンクリートの充填試験方法(案))は、高流動コンクリートの充填性を評価する試験で、異形棒鋼を柵状に配置した流動障害を通過して、任意に定めた流動距離までの到達時間および最終的に到達する流動距離を測定する。

 

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正解(1)

(1)問題のとおりです。コンクリートのスランプフロー試験方法は、高流動コンクリートや水中不分離性コンクリートなど高い流動性が要求されるコンクリートのコンシステンシーを評価する試験で、スランプコーンを引き上げた後の最大と思われる直径とその直角方向の広がりを測定する方法です。スランプフローは、両直径の平均値を0.5cm単位で表示します。

(2)誤りです。土木学会JSCE-F 501(舗装用コンクリートの振動台式コンシステンシー試験方法)は、舗装用コンクリートのコンシステンシーを測定するものです。試験は、容器内のコンクリートが振動によって変形し、振動開始から試験装置の円板下面全体にモルタルが接するまでに要した振動時間を測定します。
RCD用コンクリートは、ダムコンクリートです。日本で造られるダムの施工方法には主流なものとしてRCD工法(Roller Compacted Dam-Concrete)があります。この工法ではセメントの量を少なくした超硬練りのコンクリート(スランプ値が0)が使われます。面上に施工するため、大型の振動ローラー等で大量打設が可能な合理化施工法です。

(3)誤りです。加圧ブリーディング試験方法は、コンクリート試料に上面から3.5N/mm2の圧力をかけ、容器の下面で所定の時間ごとに脱水量を測定します。

(4)誤りです。高流動コンクリートの充填試験方法は、高流動コンクリートの充填性を評価する試験で、異形棒鋼を柵状に配置した流動障害を通過して、充填が停止するまでの時間と、充填コンクリート上面までの高さを測定します。

【平成28年度―問題12】

 下図のような両端を完全に固定した長さ2mの鉄筋コンクリート梁の温度が下記の条件で一様に10℃上昇した。この時、コンクリートに生じる応力に関する次の記述のうち、適当なものはどれか。(条件)
・梁にひび割れは発生していないものとする。
・コンクリートのヤング係数は2.5×104N/mm2とする。
・鉄筋とコンクリートの線膨張係数は同一とする。
・コンクリートのクリープの影響は無視する。
・温度上昇の前の初期応力は0とする。

(1)約2.5N/mm2の引張応力が発生する。

(2)約2.5N/mm2の圧縮応力が発生する。

(3)約5.0N/mm2の引張応力が発生する。

(4)約5.0N/mm2の圧縮応力が発生する。

 

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正解(2)

コンクリート主任技士試験を主催している、日本コンクリート工学会から「鉄筋とコンクリートの線膨張係数は覚えておいてね」というメッセージを感じる問題です。線膨張係数

線膨張率や熱膨張係数、体積膨張係数とも呼ばれます。ある部材が1℃の温度変化をしたときのひずみのことです。

あえて、ひずみと強調したのは、「長さ変化」と表現してしまうと混乱してしまうためです。

厳密には、温度によって線膨張係数は異なります。例えば超低温化と超高温下では線膨張係数は異なります。しかし、建築の構造分野では、常温化のある一定の線膨張率を採用することが通常です。

コンクリートと鉄筋の線膨張係数はほぼ等しく以下のようになります。

線膨張率=1.0×10-5(/℃)

この値は、覚えなければならないということです。

ひずみ(ε)

ひずみの定義を思い出してください。ある長さ(L)の部材が長さ変化(ΔL)をしたとき、ひずみ(ε)は下の式のように表します。

$$\varepsilon=\frac{\Delta{L}}{L}$$

ひずみ

ひずみ(ε)と応力(σ)の関係

応力は、単位面積当たりにかかる力(単位の例:N/mm2)のことを言います。フックの法則(ばねののびと復元力の関係)と同じように、「単位面積あたり」では下の式が成り立ちます。

$$\sigma={E}\varepsilon$$

E:ヤング係数

以上を踏まえて、問題を見ていきます。問題図には、「2m」と記載されています。この数値を見てしまうと、迷ってしまう可能性があります。無視しましょう。なぜならば、問題文には「コンクリートに生じる応力」に関して問われているからです。

自由膨張した場合、図の①から②のように、部材がのびますが、問題では③のように両側が固定されるため、部材に内部には、ひずんだ(のびた)分だけ縮めようとする応力(圧縮応力)が内部に働くことになります。

問題では、10℃の温度上昇ですので、ひずみの計算方法は以下のようになります。

$$10×1.0×10^{-5}=1.0×10^{-4}$$

このひずみを縮めようとする応力の計算は

$$\sigma=(2.5×10^4)×(1.0×10^{-4})$$
$$\sigma=2.5

【平成28年度―問題13】

 水セメント比が50%の一般のコンクリートについて、同一バッチから採取した下表の(1)~(4)の供試体のうち、圧縮強度の試験値が3番目に大きい値となると考えられるものとして、適当なものはどれか。なお、圧縮強度試験において、上下の載荷板は鋼製とし、載荷板と供試体の端面は直接密着させるものとする。

 

供試体名 供試体形状 断面寸法
(mm)
高さ
(mm)
載荷速度
(N/mm2/秒)
(1) 円柱 φ100 200 0.5
(2) 円柱 φ100 150 0.5
(3) 立方体 100×100 100 0.5
(4) 立方体 100×100 100 1.0

 

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正解(2)

 まず、形状が同じ(3)と(4)を比較します。載荷速度が速い方が圧縮強度が高くなります。圧縮強度:(4)>(3)

次に、高さだけ異なる(1)と(2)を比較します。高さが低い方が圧縮強度が高くなります。

圧縮強度:(2)>(1)

最後は、(2)と(3)を比較します。断面の寸法は、φ100→7854m2、100×100→10000m2

断面積:(3)>(2)

また、高さからも圧縮強度:(3)>(2)

まとめると、圧縮強度は次の順序になります。

圧縮強度:(4)>(3)>(2)>(1)

【平成28年度―問題14】

 コンクリートのアルカリシリカ反応に関する次の一般的な記述のうち、適当なものはどれか

 

(1)セメント中のアルカリ量、骨材の種類が同一であれば、骨材の粒度が変わっても、反応性骨材のペシマム量は変化しない。

(2)鉄筋コンクリート柱の場合には、主(鉄)筋によって軸方向の膨張が拘束され、主(鉄)筋に直角方向のひび割れが生じやすい。

(3)湿潤状態にあるコンクリート構造物に対して、外部からの水分の侵入を防止する目的で表面被覆を行うと、内部の水分の逸散が妨げられアルカリシリカ反応がむしろ進行することがある。

(4)塩化カルシウムを主成分とする凍結防止剤が散布されて外来塩分の影響を受ける構造物の場合は、アルカリが供給されるためアルカリシリカ反応が促進される。

 

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正解(3)

(1)誤りです。アルカリシリカ反応の膨張量は、コンクリート中の反応性骨材が多いほど大きくなるわけではありません。膨張量が最も大きくなる、ペシマム量が存在します。ペシマム量は、セメント中のアルカリ量、骨材の種類や粒度によって変化します。

(2)誤りです。アルカリシリカ反応によるひび割れは、鉄筋やPC鋼材によるコンクリートの拘束状態により、変わります。無筋コンクリート構造物では亀甲状のひび割れ、鉄筋コンクリートの柱など細長い部材では、主(鉄)筋方向にひび割れが生じやすいです。

(3)問題のとおりです。湿潤状態にあるコンクリート構造物に対して、外部からの水分の侵入を防止する目的で表面被覆を行うと、内部の水分の逸散が妨げられアルカリシリカ反応がむしろ進行することがあります。
外部からの水分の侵入を防止し、内部の水分を逸散させるためには、表面含浸工法が有効です。

(4)誤りです。塩化カルシウムは、塩化物イオンにより塩害や、凍結融解作用による凍害を促進させます。塩化ナトリウムは、塩害と凍害に加え、ナトリウムイオンの侵入により、アルカリシリカ反応を助長させます。

【平成28年度―問題15】

 コンクリートの構造物の耐久性に関する一般的な記述のうち、不適当なものはどれか

 

(1)塩化物イオンを含むコンクリートの中性化が進行すると、フリーデル氏塩として固定化された塩化物イオンが遊離し、コンクリート内部へと移動して濃縮する。

(2)空気量および気泡間隔係数が同一であっても、強度の高いコンクリートのほうが密実な組織となるため耐凍害性が高い。

(3)下水に含まれる硫酸塩は硫酸塩還元細菌の作用により硫化水素となり、水酸化カルシウムおよびセメント中のアルミン酸三カルシウムと反応して、エトリンガイトを生成し、著しい膨張を生じさせる。

(4)ローモンタイトは、乾湿の繰返しによって鉱物が転移・膨張し、これを含む骨材を使用すると、コンクリート表面の乖離やポップアウトなどの原因となる。

 

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正解(3)

(1)問題のとおりです。コンクリート中の塩化物イオンは、細孔溶液中に存在し濃度勾配により容易に移動する塩化物イオンと、コンクリート硬化体中に取り込まれ通常の濃度勾配では移動しない固定化塩素に大別されます。
中性化フロントとは、コンクリートの中性化領域で、フリーデル氏塩として固化されていた塩化物イオンが分解され、塩化物濃度が大きくなる現象です。塩化物濃度が高くなると、濃度拡散により、中性化部の細孔溶液中の塩化物イオンが内部へ移動します。
その結果、鉄筋の不導体皮膜を破壊し、塩害を起こすことになります。

 

(2)問題のとおりです。空気量および気泡間隔係数が同一であっても、強度の高いコンクリートのほうが密実な組織となるため耐凍害性が高いです。

(3)誤りです。化学的浸食の過程が次のとおりになります。
1.嫌気性細菌によって硫化水素(H2S)が生成
2.好気性細菌によって硫酸(H2SO4)が生成
3.セメント水和物の水酸化カルシウムと硫酸が反応して二水せっこうが生成
4.二水せっこうが脱落

(4)問題のとおりです。ローモンタイト(濁沸石)は乾湿の繰返しにより吸水・脱水します。また、脱水時に粉化してコンクリートを劣化させます。

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