【コンクリート主任技士過去問解説】平成30年度No1~5

主任技士過去問解説

コンクリート主任技士過去問 問題と解説

【平成30年度―問題1】

 セメントの水和反応に関する次の一般的な記述のうち、不適当なものはどれか
(1)セメントに含まれるけい酸三カルシウム(C3S)とけい酸二カルシウム(C2)は、水と反応してけい酸カルシウム水和物(C-S-H)を生成する。
(2)けい酸カルシウム水和物(C-S-H)は、硬化体をアルカリ性に保ち、ポゾランの可溶性シリカやアルミナと反応して安定な化合物を生成する。
(3)セメントの水和の進行とともに、毛細管空隙は水和物で満たされ、硬化体が緻密化し強度は増進する。
(4)アルミン酸三カルシウム(C3A)の初期の水和速度は著しく大きいが、せっこうを添加すると、C3Aの水和反応が制御されて、セメントの急結を防止することができる。
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正解(2)

(1)問題の通りです。けい酸三カルシウムとけい酸二カルシウムは、水と反応してけい酸カルシウム水和物という、強度の高い安定した物質を生成します。けい酸三カルシウムの水和熱は中程度で、28日以内の早期強度の発現性に寄与します。けい酸二カルシウムの水和熱は小さく、28日以降の長期強度の発現性に寄与します。
(2)誤りです。硬化体をアルカリ性に保ち、ポゾランの可溶性シリカや、アルミナと反応して、安定な化合物を生成するのは、けい酸カルシウム水和物ではなく、水酸化カルシウムです。
(3)問題の通りです。セメントは水和反応により、毛細管空隙が水和物で満たされ、硬化体が緻密化し、強度が増進します。シリカフュームなど、微粒な粉体を用いると、緻密化による効果が高くなります。
(4)問題の通りです。反応がきわめて速い、アルミン酸三カルシウムの水和による急結を防止するため、ポルトランドセメントには3~4%のせっこうを添加します。セメント中に、せっこうが適量存在する場合、せっこう、アルミン酸三カルシウム、けい酸三カルシウム、および、水酸化カルシウムの溶液が生成され、難溶性物質のエトリンガイトを生じます。エトリンガイトは針状の結晶構造をなし、体積が膨張します。なお、ここでの膨張は硬化前に起こるため、ひび割れなどの劣化現象は起こりません。この反応は、せっこうが消失するまで継続します。

【平成30年度―問題2】

 JIS A 1803(コンクリート生産工程管理用試験方法―粗骨材の表面水率試験方法)に従って、粗骨材の表面水率の測定を行った。湿潤状態の粗骨材3000.0gを水中に浸し、水中における見掛けの質量を測定した結果1848.0gであった。粗骨材の絶乾密度を2.62g/cm3、粗骨材の表乾密度を2.65g/cm3、水の密度を1.00g/cm3とするとき、この測定における粗骨材の表面水率として、正しいものはどれか
(1)0.38%
(2)0.62%
(3)1.08%
(4)2.24%
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正解(3)

水中での粗骨材の見掛けの密度は2.65-1.00=1.65g/m3です。

【平成30年度―問題3】

 各種混合材料に関する次の一般的な記述のうち、不適当なものはどれか
(1)高炉スラグ微粉末は、pH12以上の環境において、CaO、Al2O3、MgOが溶出し、アルミン酸三カルシウム(C3A)を生成することにより、長期強度を発現させる。
(2)フライアッシュは、可溶性のSiO2がセメントの水和で生じたCa(OH)2と反応し、長期強度を発現させる。
(3)膨張材は、エトリンガイトあるいはCa(OH)2の結晶を生じて、その結晶の成長や生成量の増加により、モルタルやコンクリートを膨張させる。
(4)アルミニウム粉末は、モルタルやコンクリート中で反応し、水素ガスを発生させることにより、フレッシュな状態におけるモルタルやコンクリートを膨張させる。
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正解(1)

(1)高炉スラグは、アルカリ環境(pH12以上)で、固溶されていた炭酸カルシウム(CaO)、三酸化アルミニウム(Al2O3、酸化マグネシウム(MgO)などが溶出しそれらが刺激剤となって、カルシウムシリケート水和物(C-S-H)やカルシウムアルミネート水和物(C-A-H)を生成して硬化します。
(2)問題の通りです。フライアッシュの主成分は、可溶性の二酸化ケイ素(SiO2)と、三酸化アルミニウム(Al2O3)です。フライアッシュセメントを用いたコンクリートは、組織が緻密化するため、中性化の原因である、大気中の二酸化炭素を通しにくくなります。一方、コンクリートのアルカリ性を保つ、水酸化カルシウムが反応により消費されるため、中性化速度は、フライアッシュを使用していないコンクリートより、若干早くなります。
(3)問題の通りです。膨張材には、石灰系と、エトリンガイト系の2種類があります。石灰系は、酸化カルシウムと水を反応させ、水酸化カルシウムを生成させて膨張性を付与するものです。エトリンガイト系は、アルミン酸三カルシウム、硫酸イオン、および水を反応させ、エトリンガイトを生成させて、膨張性を付与するものです。
(4)問題の通りです。アルミニウム粉末が発生させるガスによるコンクリートの膨張は、石灰系やエトリンガイト系の膨張剤による体積膨張とは異なります。アルミニウム粉末を用いた膨張剤は、打ち継ぎ部などの充填性を高めるために用いられます。石灰系やエトリンガイト系の膨張剤は、ひび割れの抑制に用いられます。

【平成30年度―問題4】

 鋼材に関する次の一般的な記述のうち、適当なものはどれか
(1)異形棒鋼SD345の弾性係数(ヤング係数)は、異形棒鋼SD295Aの弾性係数(ヤング係数)よりも大きい。
(2)鉄筋の比例限界は、応力とひずみが直線関係を示す限界点であり、弾性限界よりも大きい。
(3)プレストレストコンクリートにおいて、リラクセーションの大きいPC鋼材を用いるとプレストレスの減少量は小さくなる。
(4)細経異形PC鋼棒SBPDN930/1080の体力の下限値は930N/mm2であり、この値を降伏点の代用とする。
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正解(4)

(1)誤りです。ヤング係数は同じです。
(2)誤りです。比例限界は弾性限界よりも小さいです。
(3)誤りです。PC鋼材に引張応力を与えて、一定の長さに保っておくと、時間の経過とともにその引張応力が減少します。この現象をリラクセーションといいます。リラクセーションの大きいPC鋼材は、プレストレスの減少量が大きくなります。
(4)問題の通りです。

【平成30年度―問題5】

 練混ぜ水として使用するスラッジ水に関する次の記述のうち、JIS A 5308付属書C(レディーミクストコンクリートの練混ぜに用いる水)に照らして、正しいものはどれか
(1)スラッジ固形分率を3%未満で使用する場合、スラッジ固形分を水の質量に含めてもよい。
(2)スラッジ水の管理には、バッチ濃度調整方法または連続濃度測定方法があるが、スラッジ固形分率を1%未満で使用する場合には、連続濃度測定方法で管理する。
(3)バッチ濃度調整方法によってスラッジ水の管理を行う場合、スラッジ水の濃度の測定は、少なくとも1か月に1回の頻度で行う。
(4)バッチ濃度調整方法においてスラッジ水の濃度の測定結果が6.0%であっても、スラッジ固形分率が3%であれば練混ぜ水として使用できる。
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正解(4)

(1)誤りです。スラッジ固形分率を、1 %未満で使用する場合には,スラッジ固形分を水の質量に含めてもよいとされています。3%未満は誤りです。
(2)誤りです。スラッジ固形分率を1%未満で使用する場合には、バッチ濃度調整方法を用います。
(3)誤りです。バッチ濃度調整方法を用いる場合は、スラッジ水の濃度測定は1日に1回の頻度で行います。
(4)問題の通りです。スラッジ水の濃度の測定結果が6%であっても、スラッジ固形分率が3%であれば練混ぜ水として使用できます。

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