【コンクリート主任技士過去問解説】令和2年度No6~10

主任技士過去問解説

コンクリート主任技士過去問 問題と解説

【令和2年度―問題6】

 各種コンクリートの配(調)合に関する次の一般的な記述のうち、不適当なものはどれか
(1)JASS5では、海水の作用を受けるコンクリートについて、高炉セメントB種を用いる場合、水セメント比の最大値を普通ポルトランドセメントより大きくしている。
(2)土木学会示方書では、軽量骨材コンクリートの空気量は、普通骨材コンクリートより1%大きくすることを標準としている。
(3)水中不分離性コンクリートの単位水量は、材料分離を防ぐために、一般のコンクリートに比べて少なくする。
(4)一般の鋼繊維補強コンクリートにおいて、繊維の容積混入率を5%とすると、コンクリートの練混ぜや繊維の分散に支障をきたす。
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正解(3)

(1)問題のとおりです。JASS5では、海水の作用を受けるコンクリートの水セメント比を、塩害環境の区分に応じて定めています。
塩害環境の区分 水セメント比の最大値(%)
普通ポルトランドセメント 高炉セメントB種
塩害環境 45 50
準塩害環境 55 60
塩害環境の区分 飛来塩分量(NaCl) 立地
重塩害環境分 25mddを超える 汀線から20m程度
塩害環境分 13mmdを超え25mdd以下 汀線から20~70m程度
準害環境分 4mmd以上13mdd以下 汀線から70~150m程度
(2)問題のとおりです。土木学会示方書では、軽量骨材コンクリートの練混ぜ後における空気量は、耐凍害性やワーカビリティー等を考慮して、普通骨材コンクリートより1%大きくすることを標準としています。JASS5では、普通コンクリートの空気量4.5±1.5%、軽量コンクリートの空気量は5.0±1.5%を規格値としています。
(3)誤りです。水中不分離コンクリートは、薬剤を多く配合するため、単位水量が大きいことが特徴です。
(4)問題のとおりです。鋼繊維補強コンクリートは”かさばり”効果によって、コンシステンシーが著しく低下します。コンクリートのスランプによって異なりますが、鋼繊維混入率は、補強効果が十分期待できる量とされている2%程度が上限です。

【令和2年度―問題7】

 水セメント比が50.0%で、単位水量が170kg/m3、細骨材率が44.0%、空気量が4.5%の配(調)合のコンクリートの製造において、細骨材の表面水率が3.0%、粗骨材の表面水率が0.5%であったが、細骨材の表面水率を誤って0.3%として計算し、コンクリートを製造した。1m3のコンクリートを製造するための本来の計量値に対して余計に量り取った水の質量として、次に示す値のうち、適当なものはどれか。ただし、セメントの密度は3.15g/cm3、細骨材の表乾密度は2.58g/cm3、粗骨材の表乾密度は2.66g/cm3である。
(1)5~7kg
(2)10~12kg
(3)20~22kg
(4)30~32kg
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正解(3)

計算問題は、下に示すような表を作成し、空欄を穴埋めしていくと、時間をかければ確実に解けます。

表の計算順①~⑧を順番に追ってください。問題は、計画配合においても、計算配合においても、単位水量が170kgであることを前提として計算している点に注意してください。

準備する表の数値で異なるのは、細骨材の表面水率のみです。細骨材の表面水率の違いにより、計算結果が変わります。

筆者のポイントとしては、以下の3点です。

  1. 単位水量は【骨材の表面水+追加の水】
  2. 合計の容積は1m3
  3. 細骨材率は容積で計算する

【令和2年度―問題8】

 フレッシュコンクリートの試験に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか
(1)JIS A 1150(コンクリートのスランプフロー試験)は、コンクリートのコンシステンシーを評価する試験の一つであり、スランプコーンを引き上げ、コンクリートの動きが止まった後に、試料の広がりが最小と思われる直径と、その直交する方向の直径を測定するものである。
(2)JIS A 1159(コンクリートのJリングフロー試験方法)では、Jリング内でのスランプコーンを引き上げた後の、試料の直径の広がりをJリングフローとしている。
(3)JIS A 1160(増粘剤含有高性能AE減水剤を使用した高流動コンクリートのワーカビリティーの評価基準)は、JIS A 1150およびJIS A 1159の試験を実施してそれぞれの試験の結果を評価するとともに、Jリングフロー、PJ値およびブロッキング値によって間隙通過性を評価するものである。
(4)JIS A 1144(フレッシュコンクリート中の水の塩化物イオン濃度試験方法)付属書A(試料ろ液の採取が困難なフレッシュコンクリートからの試料ろ液の採取方法)は、粘性が高く試料ろ液の採取が困難なフレッシュコンクリート試料を水によって希釈し、試料ろ液を採取する方法である。
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正解(1)

(1)誤りです。スランプフロー試験では、直径が一番大きく広がった所と、そこと直交する部分の直径を1mm単位で測定します。測定した両直径の差が50mm以上となった場合、試験をやり直します。スランプフローの結果は、両直径の平均値を5mm又は0.5cm単位に丸めて表示します。
(2)問題のとおりです。Jリングとは、鉄筋を想定とした障害物の事で、直径30cmのリングに、等間隔に16本の棒が刺さっている装置です。スランプフロー試験の際に、コンクリートが、このリングをどのくらい通過したかや、リングの内側と外側の比較によって、間隙通過性や、材料分離抵抗性を評価する試験方法です。
(3)問題のとおりです。PJ値は、Jリングフローの通過能力のことで、Jリングフロー測定後のスランプフロー中央部の高さとJリングの外側(4点の平均値)のコンクリートの高さの差で表します。ブロッキング値は、スランプフロー値とJリングフロー値の差で表します。
(4)問題のとおりです。粘性が高く試料ろ液の採取が困難なフレッシュコンクリート試料は水によって希釈し、試料ろ液を採取します。

【令和2年度―問題9】

 コンクリートの凝結に関する次の一般的な記述のうち、適当なものはどれか
(1)JIS A 1147(コンクリートの凝結時間試験方法)に規定されるコンクリートの終結時間は、練混ぜが終了した時点から、貫入抵抗値が28.0N/mm2に達するまでの経過時間のことである。
(2)JIS A 1147(コンクリートの凝結時間試験方法)によって測定されたコンクリートの始発時間は、JIS R 5201(セメントの物理試験方法)によって測定したそのコンクリートに用いたセメントの始発時間と同じである。
(3)骨材に含まれるフタル酸やタンニン酸などの有機不純物が多いと、アルカリ環境で水酸化カルシウムの生成を促進し、コンクリートの凝結が早くなる。
(4)超遅延剤はオキシカルボン酸やケイフッ化物を主成分とし、セメント粒子の表面に吸着して水とセメントとの接触を一時的に遮断することで、コンクリートの凝結を遅延させる。
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正解(4)

(1)誤りです。終結時間は、練混ぜを開始した時点から、貫入抵抗値が28.0N/mm2に達するまでの経過時間のことです。
(2)誤りです。JIS A 1147のコンクリートの凝結時間では、練混ぜを開始した時点から、貫入抵抗値が3.5N/㎜2に達した時間を始発時間とし、貫入抵抗値が28.0N/mm2に達した時間を終結時間としています。
JIS R 5201のセメントの凝結時間では、始発用標準針(直径1.13㎜)を付けて降下させ、始発針の先端がペーストの底面から1㎜のところに止まるときを始発時間とし、終結用標準針(直径1.13㎜)を付けて降下させ、針の跡は残るが、針に付属する小片環(直径3.0㎜)の跡を残さないときを終結時間としています。
(3)誤りです。骨材に含まれるフタル酸やタンニン酸などの有機不純物が多いと、コンクリートの凝結が遅くなります。フタル酸やタンニン酸は凝結遅延剤として用いられ、これらはセメントの表面に吸着することで、水和反応を遅らせると言われています。
(4)問題のとおりです。

【令和2年度―問題10】

 コンクリートの強度や変形特性に関する一般的な記述のうち、不適当なものはどれか
(1)弾性係数(ヤング係数)は、圧縮強度や単位容積質量によって異なる。
(2)コンクリートの動弾性係数は、静弾性係数よりも10~40%程度大きい値を示す。
(3)引張強度は、圧縮強度の1/10~1/13程度であるが、高強度になるほどその比率は大きくなる。
(4)鉄筋との付着強度は、鉄筋の配置方向や表面状態によって異なる。
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正解(3)

(1)問題のとおりです。コンクリートの弾性係数(ヤング係数)は、コンクリートの圧縮強度Fcと単位容積質量γにより算定できます。
(2)問題のとおりです。動弾性係数は、コンクリート供試体を振動させ,その一次共鳴振動数を測定することにより得られる弾性係数です。静弾性係数は、コンクリート供試体に静的荷重を与えた際の応力-ひずみ関係より得られる弾性係数です。コンクリートの動弾性係数は、静弾性係数よりも10~40%程度大きい値を示します。
(3)誤りです。引張強度は、圧縮強度の1/10~1/13程度で、高強度になってもその比率は変わりません。
(4)問題のとおりです。鉄筋との付着強度は、鉄筋の配置方向や表面状態によって異なります。節が高いほど、鉄筋の周長が長いほど付着強度が高くなります。

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