【土のφ、qu、C、Vs】N値から算定できます

建築士

地盤の力学的性質は【N値】から計算可能

 このページでは、地盤(土)の力学的性質(せん断強さ、剛性)を【N値】から計算する方法をまとめました。

N値から算定できる力学的性質

 N値から算定できる力学的性質を以下にまとめます。なぜN値からの算定が求められるかというと、N値を測定するための標準貫入試験が、他の土質試験などに比べて簡単にでき、費用が掛からないためです。
  • 内部摩擦角φ(°)
  • 1軸圧縮強度qu(kN/m2
  • 粘着力C(kN)※quから計算する
  • せん断(S)波速度VS(m/s)
 さらに、土質試験の結果から、土の単位体積重量ρが分かれば次の力学的性質が計算できます。
  • せん断弾性係数G(kN/m2
 それに加え、土のポアソン比νが分かれば次の算定ができます。
  • 粗密(P)波速度VP(m/s)
  • ヤング係数E(kN/m2
Coffee Break①
 P波はPrimary(最初の)、波S波はSecondary(第2の)波を表します。VはVelocity(速度)です。地震が起きた時、最初に突き上げられるような振動が起こり、徐々に左右に揺れる体験をしたことがありませんか?これは、P波のほうが速度が速いため、最初に感じ、その後、S波が伝わり、左右に揺れることからも名前の付け方がわかります。

N値と内部摩擦角φの関係式

$$\phi=\sqrt{{20N}}+15{°}{・・・大崎式}$$
$$\phi=\sqrt{{15N}}+15{°}{・・・道路橋示方書}$$

N値と1軸圧縮強度quの関係式

$${q}_{u}=12.5{N}{(kN/{m}^2)}{・・・Terzaghi-Peck式}$$
$${q}_{u}=40+5{N}{(kN/{m}^2)}{・・・大崎式}$$
$${q}_{u}={(25~50)}{N}{(kN/{m}^2)}{・・・港湾基準式}$$
$${q}_{u}=25{N}{(kN/{m}^2)}{・・・地盤工学会式}$$

quと粘着力Cの関係式

$${C}=\frac{1}{2}{q}_{u}{(kN/{m}^2)}$$

N値とせん断波速度VSの関係式

 N値とせん断波速度VSの関係式は、土質ごとに異なります。
今井式

$${V}_{S}=80.6{N}^{0.331}{(沖積砂質土:As)}$$
$${V}_{S}=102{N}^{0.292}{(沖積粘性土:Ac)}$$
$${V}_{S}=97.2{N}^{0.323}{(沖積粘性土:Ac)}$$
$${V}_{S}=114{N}^{0.292}{(沖積粘性土:Ac)}$$

算定式を比較した図

道路橋示方書

$${V}_{S}=80{N}^{\frac{1}{3}}{(1≦N≦50)(砂質土)}$$
$${V}_{S}=100{N}^{\frac{1}{3}}{(1≦N≦25)(粘性土)}$$

鉄道標準式

$${V}_{S}=80{N}^{\frac{1}{3}}{ (1≦N≦50) (砂質土)}$$
$${V}_{S}=100{N}^{\frac{1}{3}}{(1≦N≦25)(粘性土)}$$
$${V}_{S}=23{{q}_{u}}^{0.36}{(2<N)(粘性土)}$$

Coffee Break②
 土の力学的性質を表す関係式には「道路橋示方書」や「港湾基準式」があり、それぞれ式が同じ場合や異なる場合があります。公共の土木構造物は、国交省や地方自治体が管轄する部署(道路、港湾、河川、空港など)によって、基準書が異なるため、このように式が分かれています。
 一方で、民間の建築物は「建築基準法」に従って計算することになります。対象とする構造物によって、土の力学的性質を表す式が異なるということは、覚えておいた方が良い点だと考えます。

せん断弾性係数Gの関係式

 土質試験により、土の単位体積質量ρが分かれば、せん断波速度VSを用いてせん断弾性係数Gを算出することができます。

$${G}=\rho{{V}_{S}}^2$$

 変形すると、次のように表すことができます。

$${V}_{S}=\sqrt{\frac{{G}}{{\rho}}}$$

ヤング係数Eの関係式

 土質試験により、ポアソン比νが分かれば、せん断弾性係数Gを用いてヤング係数Eを算出することができます。

$${E}=2{G}{(1+\nu)}$$

粗密(P)波速度VPの関係式

 土の単位体積質量ρ、ポアソン比ν、ヤング係数Eを用いて粗密(P)波速度VPを算出することができます。

$${V}_{P}=\sqrt{\frac{{E(1-\nu)}}{\rho{(1+\nu)(1+2\nu)}}}$$

VPとVSの関係式

 VPとVSの関係は、ポアソン比νから求めることができます。

$$\frac{{V}_{S}}{{V}_{P}}=\sqrt{\frac{1-2\nu}{2{(1-\nu)}}}$$

 上の式を変形すると、次のように、PS検層の結果からポアソン比νを求めることができます。

$$\nu=\frac{1-2{\left(\frac{{V}_{S}}{{V}_{P}}\right)^2}}{2\{1-{\left(\frac{{V}_{S}}{{V}_{P}}\right)^2\}}}$$

以上です。今回まとめた記事が、少しでも役に立てば幸いです。

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