【コンクリート主任技士過去問解説】平成29年度No11~15

主任技士過去問解説

コンクリート主任技士過去問 問題と解説

【平成29年度―問題11】

 フレッシュコンクリートの空気量に関する次の一般的な記述のうち、不適当なものはどれか
(1)JIS A 1118(フレッシュコンクリートの空気量の容積による試験方法(容積方法)は、測定時に圧力を加えないため、人工軽量骨材コンクリートのような多孔質の骨材を用いたコンクリートに対しても適用できる。
(2)JIS A 1128(フレッシュクンクリートの空利用の圧力による試験方法-空気室圧力方法)による骨材修正係数は、骨材内部の空隙が空気量に及ぼす影響を考慮したものであり、骨材の吸水率から計算により求めることができる。
(3)フライアッシュの強熱減量は未燃炭素含有量の目安となり、未燃炭素はAE剤を吸着するため、強熱減量の大きいフライアッシュを使用すると空気連行性は低下する。
(4)コンクリート中に連行される空気泡は、細骨材の粒径が0.3~0.6mmに部分が多いと連行されやすく、0.15mm以下の部分が多いと連行されにくい。
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正解(2)

(1)問題のとおりです。コンクリートの空気量を測定する方法は、質量方法、容積方法、空気室圧力方法の3種類です。一般的な方法は、空気室圧力方法ですが、多孔質の材料、例えば、人工軽量骨材などを使用した、コンクリートの空気量を測定する場合に適しています。
(2)誤りです。空気室圧力方法は、現場の受け入れ検査のときにも使われる、一般的な方法です。エアメータの読み値と骨材修正係数から、空気量を求める方法です。
(3)問題のとおりです。フライアッシュは、強熱減量が大きくなるほど、未燃炭素にAE剤が吸着するため、AE剤によるコンクリートの空気連行性が小さくなります。未燃炭素含有量とは、石炭中の炭素が完全に燃焼せずに残っている炭素の量のことを差します。つまり、燃焼しろが残っている場合には、未燃炭素含有量が大きくなり、強熱減量が大きくなります。
(4)問題のとおりです。細骨材中に0.15mm以下の粒径のものが多く含まれていると、空気が連行しにくくなり、0.3~0.6mmの粒径のものが大きと空気が連行しやすくなります。

【平成29年度―問題12】

 コンクリートの各種強度を求める方法に関する次の記述のうち、適当なものはどれか
(1)JIS A 1113(コンクリートの割裂引張強度試験方法)に規定される割裂引張強度は、円柱供試体の直径と長さおよび円周率の積で最大荷重を除して求められる。
(2)JIS A 1107(コンクリートからのコアの採取方法及び圧縮強度試験方法)に規定される圧縮強度は、供試体の高さと直径の比が1.00以上1.90未満の場合、試験で得られた圧縮強度に補正係数を乗じて低減させることにより、直径の2倍の高さをもつ供試体の強度に換算して求める。
(3)JIS A 1149(コンクリートの静弾性係数試験方法)に規定される静弾性係数は、計測したコンクリートの応力-ひずみ関係において、最大荷重の1/2に相当する応力点と原点との割線勾配として求められる。
(4)JIS A 1106(コンクリートの曲げ強度試験方法)に規定される曲げ強度は、破壊断面の幅と高さの2乗の積である断面係数で最大曲げモーメントを除して求められる。
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正解(2)

(1)誤りです。割裂引張強度は、円柱供試体の直径と長さおよび円周率の積で最大荷重の2倍を除して求められます。

$$\sigma_{st}=\frac{2P_{c}}{\pi{D}{L}}$$

σst:割裂引張強度(N/mm2)
Pc:最大圧縮荷重(N)
D:供試体直径(mm)
L:供試体長さ(mm)
(2)問題のとおりです。圧縮強度は、供試体高さと直径の比(h/d)は1.90~2.10とし、それ以外は補正係数kを強度に乗じて供試体の強度を換算して求めます。
(3)誤りです。静弾性係数は、最大荷重の1/3に相当する応力点と供試体のひずみ50×10-6のときの応力点とを結ぶ線分の勾配です。
(4)誤りです。る曲げ強度は、破壊断面の幅と高さの2乗の積である断面係数で最大圧縮荷重に支承間距離を乗じた値を除して求められます。

$$\sigma_{b}=\frac{P_{b}L}{b{h}^2}$$

Pm:最大圧縮荷重(N)
L:引張側(下側)ローラー支承間距離(mm)
b:供試体断面の幅(mm)
h:供試体断面の高さ(mm)

【平成29年度―問題13】

 JIS A 1157(コンクリートの圧縮クリープ試験方法)に従って、圧縮強度が30.0N/mm2であるコンクリートの円柱供試体に、載荷応力度が10.0N/mm2となるように1年間持続して載荷した。下図は、無載荷供試体のひずみ(破線)と載荷した供試体のひずみ(実線)の時間的な変化を示したものである。載荷時弾性ひずみεe=525×10-6の時、載荷期間1年におけるクリープひずみとクリープ係数の組合わせとして適当なものはどれか
クリープひずみ(×10-6) クリープ係数
(1) 1300(×10-6) 2.5
(2) 1100(×10-6) 3.4
(3) 1100(×10-6) 2.1
(4) 1300(×10-6) 4.0
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正解(3)

クリープひずみは、載荷状態の全ひずみ(εA)から、弾性ひずみ(εe)と無載荷ひずみ(ε2)を引いた値になります。

クリープひずみ:1825-525-200=1100(×10-6)

クリープ係数は、クリープひずみを、弾性ひずみ(εe)で除した値です。

クリープひずみ:1100/525=2.1

【平成29年度―問題14】

 コンクリート構造物の耐久性に関する次の一般的な記述のうち、適当なものはどれか
(1)塩化物イオンを含むコンクリートで中性化が進行すると、コンクリート中にはフリーデル氏塩が形成され、塩化物イオンはコンクリート中の中性化部分で固定化される。
(2)アルカリシリカ反応は、反応生成物の吸水膨張によるコンクリートの体積変化をもたらし、過大な膨張が起こる場合には、鉄筋の曲げ加工部で破断しやすい。
(3)凍害は、水の凍結膨張に見合う量の水分がコンクリート中を移動し、その際に生じる水圧がコンクリート組織の破壊をもたらす現象であるため、陽が当たる場所よりも日陰のような常時凍結する場所の方が被害が大きい。
(4)塩化物イオンを含む凍結防止剤を散布すると、塩化物イオンがコンクリート内部へ移動することによって塩害が引き起こされるが、凍結防止剤によって水の凝固点が低下するため凍害は受けにくくなる。
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正解(2)

(1)誤りです。コンクリートの中性化領域で、フリーデル氏塩として固化されていた塩化物イオンが分解され、細孔溶液中に溶出し、塩化物濃度が大きくなる現象を中性化フロントといいます。
(2)問題のとおりです。アルカリシリカ反応は、水酸化アルカリ(NaOH、KOH)と反応性骨材が反応することによってアルカリシリカゲルが生じ、アルカリシリカゲルが吸水膨張することによってひび割れが発生することを言います。コンクリートが過度に膨張すると、伸び能力の低い曲げ加工部や、圧接部などの箇所で鉄筋が破断する場合もあります。
(3)誤りです。水は、凍結すると約9%の体積膨張を生じます。凍害は、この凍結時の膨張と融解の 繰返しによりコンクリートが劣化する現象です。夜間凍結し、昼間は陽が当たることで融解を繰り返す箇所が凍害を受けやすくなります。
(4)誤りです。塩化物イオンを含む凍結防止剤の散布は、コンクリート内部への塩化物イオンの侵入に伴う塩害だけでなく、凍害も促進されます。

【平成29年度―問題15】

 加熱されたコンクリートの性質に関する次の一般的な記述のうち、不適当なものはどれか
(1)500℃程度の加熱を受けた直後では、脱水を伴うセメント水和物の化学的な変質や、組織のゆるみの影響などにより、弾性係数は50~60%程度まで低下し、圧縮強度はさらに大きく低下する。
(2)300℃程度の加熱を受けた後、一定期間を経たコンクリートの力学的性質は、コンクリート強度にかかわらず、回復する傾向を示す。
(3)600℃程度の加熱を受けた後のコンクリートは、水酸化カルシウムの熱分解により、アルカリ度が低下する。
(4)高強度コンクリートにおいて、ポリプロピレンなどの有機短繊維を混入することは、火災時におけるコンクリート中の自由水による水蒸気圧の増大を抑制でき、コンクリートの爆裂を防ぐのに有効である。
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正解(1)

(1)誤りです。500℃付近では、弾性係数は10~20%程度に、圧縮強度は約60%以下に低下します。
火災による強度変化弾性係数の回復
(2)問題のとおりです。500℃程度であれば、時間の経過とともに、圧縮強度、弾性係数とも徐々に回復する傾向があります。
(3)問題のとおりです。火災などでコンクリートが加熱されると、アルカリ性を保つ水酸化カルシウムが分解され、アルカリ度が低下します。
(4)問題のとおりです。高強度コンクリートは組織が緻密なため、コンクリート内部の自由水が火災による加熱で水蒸気となり、逃げ場を失うことで水蒸気圧が増大し爆裂します。その際、ポリプロピレンなどの有機短繊維が溶けて、水蒸気の通り道となり、コンクリート内部の水蒸気圧を低下させることで、爆裂を防ぎます。

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