【コンクリート主任技士過去問解説】平成28年度No1~5

主任技士過去問解説

コンクリート主任技士過去問 問題と解説

【平成28年度―問題1】

 下図は、セメントクリンカーの組成化合物であるけい酸三カルシウム(C3S)、けい酸二カルシウム(C2S)、アルミン酸三カルシウム(C3A)および鉄アルミン酸四カルシウム(C4AF)が、セメントの水和反応に伴い、発言する材齢28日以降の圧縮強度の一例を概念的に示している。なお、水和発熱量は、発生量の大きい方からC、A、D、Bの順である。BおよびCに当てはまるセメントクリンカーの組成化合物の組合せとして、適当なものはどれか
(1) C2S C3A
(2) C3S C3A
(3) C2S C4AF
(4) C3S C4AF
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正解(1)

 セメントクリンカーの特徴は次のとおりです。
けい酸三カルシウム(C3S):水和熱は中程度で、28日以内の早期強度発現性に寄与します。
けい酸二カルシウム(C2S):水和熱は小さく、28日以降の長期強度の発現性に寄与します。
アルミン酸三カルシウム(C3A):水和熱は大きく、1日以内の早期強度の発現性に寄与します。
鉄アルミン酸四カルシウム(C4AF):水和熱は小さく、強度発現性にはほとんど寄与しません。
 水和熱の発生量の順はC,A,D,Bです。図から、次のとおりです。
A:けい酸三カルシウム(C3S)
B:けい酸二カルシウム(C2S)
C:アルミン酸三カルシウム(C3A)
D:鉄アルミン酸四カルシウム(C4AF)

【平成28年度―問題2】

 湿潤状態の細骨材500.0gを質量200.0gのメスフラスコに入れ、十分に空気を追い出しながら、水を500mLの目盛まで満たした。このときの全質量は1000.9gであった。この細骨材の表面水率として、正しいものはどれか。ただし、細骨材の表乾密度は2.61g/cm3、水の密度は1.00g/cm3である。
(1)1.5%
(2)2.0%
(3)2.5%
(4)3.0%
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正解(3)

表面水率の問題は、次の式を覚えていれば解くことが可能です。

$$密度(g/cm^3)=\frac{質量(g)}{体積(cm^3)}$$

少し注意しなければならないのが、絶乾、表乾、湿潤状態を正しくイメージすることです。

3つの状態がイメージできれば、あとは\(密度(g/cm^3)=\frac{質量(g)}{体積(cm^3)}\)の関係式さえ覚えていれば、簡単に解けます。

図中のXとYに関する方程式が2つあります。変数が2つ、式も2つなので、XとYそれぞれの値について解くことが出来ます。また、表面水率の式から

$$表面水率(%)=\frac{X}{2.61Y}×100$$

という式が導出できるので、”質量”の方程式

$$X+2.61Y=500$$を2.61Yで割り、移項させると
$$\frac{X}{2.61Y}=\frac{500}{2.61Y}-1$$
となるので、Yに方程式の解を代入すると、表面水率が算出できます。

つまり、表面水率を算出するためには、Yの値が分かればいいということになります。

$$\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{1}
x + 2.61y = 500\\
x + y =199.1
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}$$

上の連立方程式から
Y=186.9
表面水率の計算式にY=186.9を代入します。
$${表面水率(%)}=\{\frac{500}{2.61Y}-1\}{×}100=\{\frac{500}{2.61×186.9}-1\}{×}100=2.5$$

答え(3)2.5%

【平成28年度―問題3】

 下表は、砕石Aおよび砕石Bのふるい分け試験結果を示したものである。これらの砕石を質量割合で50%ずつ混合した場合の骨材の粗粒率が6.66であるとき、空白部分の(ア)の値(%)と混合した骨材の最大寸法(mm)の組合せとして、正しいものはどれか
(1)(ア)の値:90、最大寸法:25
(2)(ア)の値:90、最大寸法:20
(3)(ア)の値:78、最大寸法:25
(4)(ア)の値:78、最大寸法:20
ふるいの呼び寸法(mm) 40 25 20 15 10 5 2.5 1.2
ふるいを通るものの質量百分率(%) 砕石A 100 100 100 95 60 12 4 0
砕石B 100 100 (ア) 12 2 0 0 0
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正解(2)

 粗粒率は、20、10、5、2.5、1.2、0.6、0.3、0.15mmの各ふるいに留まる質量百分率の総和を100で割った値です。
ふるいの呼び寸法(mm) 40 25 20 15 10 5 2.5 1.2
ふるいに留まった質量百分率(%) 砕石A 0 0 0 5 40 88 96 100
砕石B 0 0 (ア’) 88 98 100 100 100

<砕石A>
$$\frac{(5+40+88+96+100×4)}{100}=6.24$$

<砕石B>
$$\frac{({ア’}+88+98+100×6)}{100}={X}$$

50%ずつ混合すると粗粒率が6.66になることから
$$\begin{eqnarray}
6.24×0.5+{X}×0.5 &=& 6.66\\
{X} &=& 7.08\\
{ア’} &=& 10\\
{ア} &=& 100-10 =90
\end{eqnarray}$$

【平成28年度―問題4】

 各種混和剤に関する次の一般的な記述のうち、不適当なものはどれか
(1)高性能AE減水剤は、高い減水性能と優れたスランプ保持性能を有するとともに、空気連行性能を併せもつことから、JIS A 6204(コンクリート用化学混和剤)では、コンクリートの凍結融解に対する抵抗性が規定されている。
(2)流動化剤は、流動化後のコンクリートのスランプ・空気量に急激な変化があってはならないため、JIS A 6204(コンクリート用化学混和剤)では、スランプ・空気量の経時変化量が規定されている。
(3)高性能減水剤は、セメントの分散性能により高い減水効果を得ることができるが、スランプの経時低下量が大きくなるため、JIS A 6204(コンクリート用化学混和剤)では、スランプの経時変化量が規定されている。
(4)超遅延剤は、初期においては水和反応を抑制して凝結遅延効果を発揮するが、長期的な水和反応は阻害せず、コンクリートの長期強度の発現への影響はほとんどない。
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正解(3)

(1)問題のとおりです。
AE剤:Air Entraining剤の略で、コンクリート中に微細な空気を生じさせる作用があります。微細な空気により、コンクリートの流動性が高まり、充填性が向上します。

減水剤:セメント粒子表面に負の電荷を与えることで、セメント粒子同士を分散(反発)させる作用があります。これにより、コンクリートの流動性が高まり、充填性が向上します。

AE剤で連行される空気(エントレインドエア)で、直径が30~250μm程度、気泡間隔係数が200~250μm以下で耐久性が向上します。

(2)問題のとおりです。流動化剤は、流動化直後から15分後のスランプ・空気量の経時変化量が規定されています。
スランプ:4.0cm以下
空気量:±1.0%以内
土木学会によると流動化剤とは、「あらかじめ練り混ぜられたコンクリートに添加し、これを撹拌することによって、その流動性を増大させることを主たる目的とした混和剤」です。
(3)誤りです。高性能減水剤は、セメントの分散性能により高い減水効果を得ることができますが、スランプ保持性能はありません。比較がしやすいよう、一覧を示します。
種類 減水率の規定 減水性能 スランプ保持性能 空気連行性能
(耐凍結融解性など)
セメント分散性能
減水剤 4%以上
AE剤 6%以上
高性能減水剤 12%以上
高性能AE減水剤 18%以上
流動化剤 規定なし 材料による
(4)問題のとおりです。遅延剤は、グルコン酸や、クエン酸などの、オキシカルボン酸を主成分とし、セメント粒子の表面に吸着して、水とセメントの接触を一時的に遮断することによって、コンクリートの凝結を遅らせます。
長期的な水和反応は阻害せず、コンクリートの長期強度の発現への影響はほとんどありません。

【平成28年度―問題5】

 各種混和剤を用いたコンクリートの性質に関する次の一般的な記述のうち、不適当なものはどれか
(1)セメントの一部を高炉スラグ微粉末で置換したコンクリートは、高炉スラグ微粉末が水酸化カルシウムなどの刺激剤により水和物を生成して組織をち密化するため、透水係数が低減される。
(2)セメントの一部をフライアッシュで置換したコンクリートは、フライアッシュが水酸化カルシウムと反応してけい酸カルシウム水和物などを生成して組織をち密化するため、中性化速度係数が低減される。
(3)膨張材を用いたコンクリートは、膨張材がエトリンガイトや水酸化カルシウムの結晶を生成して膨張し、鉄筋コンクリート部材では乾燥収縮が拘束されることにより発生する応力が低減される。
(4)シリカフュームを用いたコンクリートは、シリカフュームが水酸化カルシウムと反応するとともにマイクロフィラー効果によって組織をち密化するため、透気係数が低減される。
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正解(2)

(1)問題のとおりです。高炉スラグは、潜在水硬性をもちます。潜在水硬性とは、単に水を混ぜただけでは水和反応を起こさないですが、刺激剤によって水和反応を起こす性質のことを差します。高炉スラグ微粉末が水酸化カルシウムなどの刺激剤により水和物を生成して組織をち密化するため、透水係数が低減されます。
(2)誤りです。フライアッシュセメントを用いたコンクリートは、組織が緻密化するため、中性化の原因である、大気中の二酸化炭素を通しにくくなります。
一方、コンクリートのアルカリ性を保つ、水酸化カルシウムが、反応により消費されるため、中性化速度は、フライアッシュを使用していないコンクリートより、同じか若干早いです。
(3)問題のとおりです。膨張材には、主に以下の2種類があります。
1.遊離石灰と反応させ、水酸化カルシウムを生成させて膨張性を付与するもの
2.エトリンガイトを生成させて膨張性を付与するもの
コンクリートの収縮を膨張させることで相殺し、ひび割れを抑制する働きを持つのが、膨張材です。
鉄筋コンクリート部材ではコンクリートの乾燥収縮が鉄筋に拘束されることにより応力が発生します。この乾燥収縮による応力を抑制するために、膨張材が使われます。
(4)問題のとおりです。透気係数は、コンクリートの透気試験によって得られるもので、空気や酸素などの透気性を評価するものです。コンクリートの毛細管空隙が多いほど、透気係数が大きくなります。
シリカフュームを用いたコンクリートは、シリカフュームが水酸化カルシウムと反応するとともにマイクロフィラー効果によって組織をち密化するため、透気係数が低減されます。
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