【診断士の問題と解説】1日5問!(Vol.8)ひび割れ、中性化

コンクリート診断士 問題と解説Vol.8

音声学習用動画のご紹介

 このページの問題を一問一答形式の動画としてまとめました。復習用にご活用ください。通勤中や運動中に最適です。

【問36_ひび割れ】

 コンクリートのひび割れに関する次の記述のうち、不適当なものはどれか
(1)コンクリートの沈下によるひび割れは、コンクリートの急速な打込みによって生じやすい。
(2)自己収縮によるひび割れは、貧配(調)合の場合に生じやすい。
(3)乾燥収縮によるひび割れは、水セメント比が同じ場合では、単位水量が大きいほど生じやすい。
(4)水和熱によるひび割れは、富配(調)合の場合に生じやすい。
クリックで【問題36】の解答と解説をみる

正解(2)

(1)問題のとおりです。コンクリートの沈下によるひび割れは、コンクリートの急速な打込みによって生じやすいです。
(2)誤りです。自己収縮によるひび割れは、単位粉体量が多い、富配合のコンクリートで生じやすいです。
(3)問題のとおりです。乾燥収縮によるひび割れは、コンクリート中の自由水が乾燥する際の、毛細管張力によってコンクリートに引張応力が生じることで起こります。
(4)問題のとおりです。水和熱によるひび割れは、水和熱により、コンクリートの温度が上昇したあとに急冷するなどした際の、温度差による、温度応力によって生じます。単位粉体量が多い、富配合のコンクリートで生じやすいです。

【問37_ひび割れ】

 エトリンガイトの遅れ生成に関する次の記述(A)~(C)にあてはまる次の(1)~(4)の語句の組合せのうち、適当なものはどれか
 長期間経過したコンクリートで、エトリンガイトの遅れ生成による異常なひび割れの発生例が報告されている。エトリンガイトの遅れ生成による異常なひび割れは、(A)環境にあり、(B)を多く含有するセメントを用いた(C)に多く見られ、その対策としては高炉スラグ微粉末などの混和材の利用が提案されている。
(A) (B) (C)
(1) 水分の供給が十分な 塩化物イオン 蒸気養生したコンクリート製品
(2) 良く乾燥した アルカリ 断面の薄い現場打ちコンクリート
(3) 水分の供給が十分な アルカリ 蒸気養生したコンクリート製品
(4) 良く乾燥した 塩化物イオン 断面の薄い現場打ちコンクリート
クリックで【問題37】の解答と解説をみる

正解(2)

 コンクリートの遅れ生成は、硬化後、数年を経たコンクリートの内部組織に生じるエトリンガイトが、膨張することによって生じるひび割れです。コンクリートの遅れ生成は、工場製品のような蒸気養生したコンクリートに限り発生します。コンクリートが湿潤環境であることや、アルカリ量の多いセメントの使用により生じます。

【問38_中性化】

 コンクリートの中性化に関する次の記述のうち、不適当なものはどれか
(1)大気中の二酸化炭素がコンクリート内に侵入し、水酸化カルシウムと反応し、炭酸カルシウムが生成されることによって中性化する。
(2)湿度が高い環境ほどコンクリート中での二酸化炭素の拡散係数が大きくなり、中性化速度は速くなる。
(3)密実なコンクリートほど二酸化炭素がコンクリート内に侵入しにくく中性化の進行は遅い。
(4)中性化によるpHの低下により鋼材表面の不働態皮膜が破壊され、鋼材の腐食が進行する。
クリックで【問題38】の解答と解説をみる

正解(2)

(1)問題のとおりです。中性化は、大気中の二酸化炭素とコンクリート中の水酸化カルシウムが反応し、炭酸カルシウムが生成する過程で、コンクリートのpHが高アルカリ(pH13程度)から中性化(pH10程度)まで低下することで起こります。
(2)誤りです。湿度は50~60%で、コンクリート中での二酸化炭素の拡散係数が大きくなり、中性化速度は速くなります。
(3)問題のとおりです。密実なコンクリートほど、二酸化炭素がコンクリート内に侵入しにくく中性化の進行は遅くなります。
(4)問題のとおりです。中性化によるpHの低下により、鋼材表面の不働態皮膜が破壊され、鋼材の腐食が進行します。この不働態被膜の破壊は、pHが11以下で開始します。

【問39_中性化】

 コンクリートの中性化に関する次の記述のうち、正しいものはどれか
(1)水結合材比が同一であれば、セメントの一部に置き換えて使用される混和材の量は、コンクリートの中性化速度に影響を及ぼさない。
(2)フェノールフタレイン法による中性化深さの測定では、中性化していない部分は無色となる。
(3)タイル、石張りなどの仕上げは、中性化を遅らせる効果がある。
(4)コンクリートの中性化は、塩害の発生に影響を及ぼさない。
クリックで【問題39】の解答と解説をみる

正解(3)

(1)誤りです。混合セメントは混和材として、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、シリカフュームが用いられます。これらの混和材は、水酸化カルシウムと反応し、水和を起こします。そのため、水酸化カルシウムが消費されることにより、細孔溶液中のpHが低くなり、中性化の抑制に対して不利になります。一方で、混和材の水和反応により、コンクリートの組織が緻密化することで、二酸化炭素の侵入が抑制されるため、中性化進行の低減に有効となります。つまり、混和材の使用は、有利な点と不利な点を総合すると、混和材を使用していない普通セメントに比べて、中性化の進行に及ぼす影響は同等か、不利になるということになります。
(2)誤りです。フェノールフタレインはpH10程度以上で赤紫色に呈色します。中性化していない高アルカリの部分は、無色ではなく赤紫色になります。
(3)問題のとおりです。タイル、石張りなどの仕上げは、コンクリート部分への二酸化炭素の侵入を抑制します。そのため、中性化を遅らせる効果があります。
(4)誤りです。塩害環境下では、中性化フロントという現象が生じます。中性化フロントとは、コンクリートの中性化領域で、フリーデル氏塩として固化されていた塩化物イオンが分解され、塩化物濃度が高くなる現象です。塩化物濃度が高くなると、濃度拡散により、中性化部の細孔溶液中の塩化物イオンが内部へ移動します。その結果、鉄筋の不働態皮膜を破壊し、塩害を起こすことになります。

【問40_中性化】

 セメント中のアルカリ(Na2O、K2O)がコンクリートの炭酸化反応に及ぼす影響に関する記述中の(A)~(D)にあてはまる語句の組合せとして、次のうち、適当なものはどれか
 セメント硬化体中の細孔溶液に含まれるイオンの大部分は、ナトリウムイオンとカリウムイオン、およびそれらと平衡している水酸化物イオンであり、炭酸の存在下でまず炭酸アルカリが生成する。炭酸アルカリの溶解度は、炭酸カルシウムと比較して、きわめて(A)ため、セメントのアルカリ(Na2O、K2O)量が(B)ほど、水酸化カルシウムの溶解・炭酸化が(C)、コンクリートの炭酸化は(D)。
(A) (B) (C) (D)
(1) 大きい 多い 進みやすく 速くなる
(2) 小さい 少ない 進みやすく 速くなる
(3) 大きい 多い 進みにくく 遅くなる
(4) 小さい 少ない 進みにくく 遅くなる
クリックで【問題40】の解答と解説をみる

正解(1)

 水酸化カルシウムが水へ溶解し、カルシウムイオンとなることで、中性化の反応が起こりますが、カルシウムイオンの濃度が高ければ、水酸化カルシウムが溶解し、カルシウムイオンとなる余地が少なくなります。
 細孔溶液中のイオンの大部分はナトリウムイオンとカリウムイオンで、それらが多く細孔溶液中に溶解している場合に、高アルカリ環境下となります。これらのアルカリイオンも、炭酸イオンと反応して、炭酸アルカリを生成しますが、溶解度が非常に大きいため、再び細孔溶液に炭酸イオンが溶解し、溶解度の小さい炭酸カルシウムがどんどん生成されていきます。
 炭酸カルシウムがどんどん生成されていくことで、細孔溶液中のカルシウムイオン濃度が低くなり、水酸化カルシウムが溶解しやすい環境となってしまうということです。
 つまり、高アルカリ環境下では、炭酸カルシウムの生成が進み、溶液中のカルシウムイオンの消費が進むため、カルシウムイオン濃度が低くなります。カルシウムイオン濃度が低くなることで、水酸化カルシウムの溶解が起こります。溶解した水酸化カルシウムは、二酸化炭素と反応し、炭酸カルシウムを生成します。これにより、中性化が進行しやすくなります。
タイトルとURLをコピーしました