【過去問演習(3)No.86-90_施工】コンクリート技士 問題と解説

技士

【No.86】

コンクリートポンプによる圧送に関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)コンクリートの単位セメント量が少ない方が,圧送性が低下する。
(2)コンクリートの細骨材率が高い方が,圧送性が低下する。
(3)コンクリートのスランプが小さい方が,圧送性が低下する。
(4)事前吸水(プレウェッティング)を行っていない軽量骨材を用いたコンクリートは,閉塞が生じやすい。
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正解は(2)

【解説】
(1)○正しい。コンクリートは微粒分の量が増えると粘性が高くなり分離の可能性が低くなります。セメントはコンクリート中でもっとも粒径の小さい材料であり,セメント量が多いものほど分離の可能性は低くなります。
(2)×誤り。細骨材はセメントに次いで粒径の小さい材料です。細骨材率が高いと細骨材の量が増えるため分離の可能性が低下し圧送性が向上します。
(3)○正しい。単位セメントがほぼ同量のコンクリートで比較すると,スランプが大きい方が材料分離を生じやすいです。このため閉塞の可能性が高くなり,圧送性が低下します。
(4)○正しい。事前吸水(プレウェッティング)を行っていない軽量骨材を用いると圧力により骨材中の空隙に水が侵入し,コンクリートのスランプが低下し閉塞が生じやすくなります。

【No.87】

コンクリートの運搬に関する次の記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)コンクリートを下向きに圧送する方が,上向きに圧送するより配管内での閉塞が生じやすい。
(2)JISA5308(レディーミクストコンクリート)では,練り混ぜ開始から荷卸し地点に到着するまでの時間が規定されている。
(3)土木学会示方書およびJASS5では,練り混ぜから打ち込み終了までの時間が規定されている。
(4)コンクリートの圧送に先立って用いる先送りモルタルは,型枠内に打ち込むことができる。
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正解は(4)

【解説】
(1)○正しい。コンクリートを下向きに圧送する場合,圧送負荷は小さくなりますが,コンクリートが自重により落下(先走り)すると分離しやすくなり閉塞の可能性が高くなります。
(2)○正しい。JISA5308ー2014(レディーミクストコンクリート)ではコンクリートに対する責任限界点を荷卸し地点と規定しています。つまり製造から荷卸し地点までは製造者,荷卸し地点以降は施工者の責任範囲です。
(3)○正しい。施工者の守るべき事項を示した土木学会示方書およびJASS5では,制限時間内に届いたコンクリートを悪影響の生じない時間内に型枠内に打ち込むように練り混ぜから打ち込み終了までの時間が規定されています。
(4)×誤り。圧送管内が乾燥した状態で直接コンクリートを圧送すると,コンクリート中のペースト分が圧送管内に付着し,コンクリートのスランプが硬くなるなど作業性が低下します。コンクリートに先立ってモルタルを圧送する目的は,圧送用配管内面にモルタルを充分に行きわたらせるためです。したがって,圧送管先端から出てくるモルタルは,型枠内に打ち込むことはできません。

【No.88】

コンクリートの打ち込みおよび締め固めに関する次の記述のうち,適当なものはどれか。
(1)均一で密実なコンクリートにするため,同一箇所で振動機を用いてできるだけ長時間締め固めるのがよい。
(2)型枠に作用する側圧を小さくするため,打ち込み速度はできるだけ速くするのがよい。
(3)柱と梁にコンクリートを打ち込む場合,沈下ひび割れを防ぐため,連続して一度に打ち込むのがよい。
(4)壁にコンクリートを打ち込む場合,材料分離を防ぐため,振動機によるコンクリートの横移動を避けるのがよい。
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正解は(4)

【解説】
(1)×誤り。振動機を用いて締め固める場合,同一箇所で長時間加振すると粗骨材が沈下し,微粒分および水が上昇し分離を促進することとなります。コンクリート表面にペースト分が浮き上がり,光沢が出たら加振を終了するのがよいです。
(2)×誤り。コンクリートを型枠内に打ち込む際,セメントの凝結作用により型枠に作用する惻圧は,ある値より高くならない現象があります。この時の側圧をコンクリートヘッドといいます。コンクリートヘッドを低く押えるには,打ち込み速度はできるだけ遅くするのがよいです。
(3)×誤り。柱と梁,地中梁と床など打ち込み高さに大きな差がある部材を連続して一度に打ち込むと,沈下量の違いにより,部材の境界部の表面にひび割れが生じる可能性が高いです。このため,打ち込み高さの異なる部材の境界で一度打ち込みを中止し,コンクリートの沈下が落ち着いた後に打ち込み高さの低い部材を打ち込むのがよいです。
(4)○正しい。壁状部材にコンクリートを打ち込む場合,コンクリートを横移動させると鉄筋や型枠がコンクリートの移動を阻害するため,材料分離を生じやすいです。このため振動機によるコンクリートの横移動は極力避けなければなりません。

【No.89】

コンクリートのポンプ圧送に関する次の一般的な記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)ポンプの吸込み性能は,スランプが小さくなると向上する。
(2)管内圧力損失は,スランプが小さくなると大きくなる。
(3)高所への圧送は,スクイズ式ポンプより,ピストン式ポンプの方が適している。
(4)下向き配管によるポンプ圧送は,上向き配管に比べて,配管内の閉塞が生じやすい。
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正解は(1)

【解説】
(1)×誤り。ポンプにコンクリートを吸い込む時コンクリートはせん断変形を受けます。スランプが小さいと,コンクリートの変形に要するエネルギーが大きくなり,吸い込み性能は低下します。
(2)○正しい。管内圧力損失は,①管内面とコンクリートの摩擦,②コンクリートの変形,③コンクリートの移動エネルギーにより生じます。スランプが小さいと,コンクリートの変形エネルギーが大きくなります。
(3)○正しい。スクイズ式ポンプは構造が簡単で取扱い吐出量の調整が容易な反面,大量圧送はできません。ピストン式は,高圧で押し出す形式であり高所あるいは長距離の圧送が可能です。
(4)○正しい。コンクリートを下向き配管でポンプ圧送する場合,対策を講じないと,コンクリートが縦管内を自由落下し,分離等の現象が生じやすく,上向き配管に比べて配管内の閉塞が生じやすいです。

【No.90】

コンクリートの打ち込み,締め固めおよび打ち継ぎに関する次の記述のうち,不適当なものはどれか。
(1)柱・壁にコンクリートを打ち込んだ後,ただちに梁・スラブのコンクリートを打ち込んだ。
(2)薄い壁部材において,棒形振動機が挿入できなかったので,型枠振動機を使用した。
(3)直径50mmの棒形振動機から直径40mmのものに変更したので,振動機の挿入間隔を10cm程度小さくした。
(4)コンクリート表面に凝結遅延剤を散布して,打ち込み翌日に高圧水により水平打ち継ぎ目処理を行った。
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正解は(1)

【解説】
(1)×誤り。柱・壁等の部材と,梁・スラブ等の部材を同時に打ち込むと,沈下高さの違いにより,沈下量に差が生じコンクリート上面にひび割れが生じやすくなります。このため梁・スラブ等の下面のレベルでいったんコンクリートを打ち止め,沈下終了後に梁・スラブ等の部材を打ち込みます。
(2)○正しい。薄い壁部材や複雑な断面において棒形振動機が挿入できないような場合,棒形振動機に替え,型枠振動機を使用します。
(3)○正しい。棒形振動機の性能は,振動数が同等である場合,その性能は振動部分の直径の値に比例すると考えてよいです。棒形振動機の挿入間隔は40~50cmを標準としているので直径50mmのものを直径40mmのものに変更する場合,挿入間隔は概算で50cm×(40mm/50mm)=40cmとなります。
(4)○正しい。水平打ち継ぎ目の処理は,コンクリート上面の脆弱層を除去し,健全なコンクリート面を出し,後打ちコンクリートを打ち込むために行います。コンクリート上面に凝結遅延剤を散布し,打ち込み翌日に硬化不充分な表面部分を高圧水により除去し健全部分を露出させる処理は有効です。
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