【過去問演習No.6-10】コンクリート技士 問題と解説

技士

【No.6】

普通,早強,低熱の各ポルトランドセメント,高炉セメントB種および普通エコセメントについて, 適当なものはどれか。
(1)早強ポルトランドセメントは,普通ポルトランドセメントに比べて,けい酸三カルシウムの含有量を多くし,比表面積を大きくして早期強度の発現性(3日で普通ボルトランドセメントの7日強度に相当)を高めている。
(2)低熱ポルトランドセメントは,水和熱を下げるために普通ポルトランドセメントに比べて,けい酸三カルシウムが多くアルミン酸三カルシウムが少ない。
(3)高炉セメントB種は,水で急冷した高炉スラグでポルトランドセメントを10を超え30%以下で置換したものである。
(4)普通エコセメントは,都市ごみ焼却灰を主とし,下水汚泥などの廃棄物を従として,製品1tにつき乾燥ベースで300kg以上使用して作られるセメントで,セメント中の塩化物イオン量が0.1%以下のものをいう。
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正解は(1)

【解説】
(1)〇正しい。早強ポルトランドセメントは,普通ポルトランドセメントに比べて,けい酸三カルシウムの含有量を多くし,比表面積を大きくして早期強度の発現性(3日で普通ボルトランドセメントの7日強度に相当)を高めています。
(2)×誤り。低熱ポルトランドセメントは,水和熱を下げるために普通ポルトランドセメントに比べて,けい酸ニカルシウムが多くアルミン酸三カルシウムが少ないです。また,けい酸ニカルシウムが多いので,初期材齢での圧縮強さは小さいですが長期材齢での圧縮強さは大きいです。
(3)×誤り。高炉セメントB種は,水で急冷した高炉スラグでポルトランドセメントを30を超え60%以下で置換したものです。高炉スラグは,潜在水硬性を有し,ポルトランドセメントの水和によって生成した水酸化カルシウムの刺激により次第に硬化します。初期強度は小さいですが,長期強度は大きいです。
(4)×誤り。普通エコセメントは,都市ごみ焼却灰を主とし,下水汚泥などの廃棄物を従として,製品1tにつき乾燥ベースで500 kg以上使用して作られるセメントで,セメント中の塩化物イオン量が0.1%以下のものをいいます。凝結時間,圧縮強さともに普通ポルトランドセメントに類似する性質を有します。

【No.7】

混合セメントに関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
(1)JIS R 5211(高炉セメント)では,原料として使用する高炉スラグの塩基度の上限値を規定している。
(2)JIS R 5211 (高炉セメント)では,高炉セメントB種の高炉スラグの分量を質量で40%を超え, 50%以下と規定している。
(3)JIS R 5213 (フライアッシュセメント)では,フライアッシュセメントB種およびC種について,セメントの強熱減量の上限値を規定している。
(4)JIS R 5213 (フライアッシュセメント)では,フライアッシュセメントB種のフライアッシュの分量を質量で10%を超え, 20%以下と規定している。
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正解は(4)

【解説】
(1)×誤り。高炉セメントはポルトランドセメントを水で急冷した高炉スラグで置換したものです。高炉スラグは,潜在水硬性を有し,ポルトランドセメントの水和によって生成した水酸化カルシウムの刺激により次第に硬化します。高炉スラグの塩基度が低いと潜在水硬性も低下するので, JIS R 5211-2003(高炉セメント)では,高炉スラグの塩基度を1.4以上と下限値を規定しています。上限値は規定していません。
(2)×誤り。JIS R 5211-2003注2)では,高炉セメントの種類を高炉スラグの分量(質量%)により,A種は5を超え30以下,B種は30を超え60以下,C種は60を超え70以下と規定しています。
(3)×誤り。フライアッシュセメントはポルトランドセメントをJIS A 6201-1999 (コンクリート用フライアッシュ)に適合するフライアッシュで置換したもので, JIS R 5213-1997 (フライアッシュセメント)では,フライアッシュの分量(質量%)でA種は5を超え10以下,B種は10を超え20以下,C種は20を超え30以下と規定しています。また,強熱減量に関しては,ポルトランドセメントおよびフライアッシュの規定で上限値を規定しています。
(4)〇正しい。フライアッシュセメントB種のフライアッシュの分量は,質量で10%を超え20%以下と規定されています。

【No.8】

セメントに関する次の一般的な記述のうち,適当なものはどれか。
(1)早強ポルトランドセメントは,普通ポルトランドセメントより強度発現が速く,寒中コンクリートに適している。
(2)低熱ポルトランドセメントは,普通ポルトランドセメントより強度発現が遅く,暑中コンクリートに適している。
(3)高炉セメントB種は,普通ポルトランドセメントより初期強度は低いが,海水の作用を受けるコンクリートに適している。
(4)フライアッシュセメントは,普通ポルトランドセメントより初期強度が高く,緊急工事用コンクリートに適している。
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正解は(4)

【解説】
(1)〇正しい。早強ポルトランドセメントは,普通ポルトランドセメントに比べて,けい酸三カルシウムの含有量を多くし,比表面積を大きくして早期強度の発現性(3日で普通ボルトランドセメントの7日強度に相当)を高めています。寒中コンクリートでは,初期凍害を防止するために初期強度を確保する必要があり,早強ポルトランドセメントを使用することが多いです。
(2)〇正しい。低熱ポルトランドセメントは,水和熱を下げるために普通ポルトランドセメントに比べて,けい酸ニカルシウムが多くアルミン酸三カルシウムが少ないです。また,けい酸ニカルシウムが多いので,初期材齢での圧縮強さは小さいですが長期材齢での圧縮強さは大きいです。暑中コンクリートでは,水和熱が小さく,長期材齢での圧縮強さの大きい低熱ポルトランドセメントを用いるとよいです。
(3)〇正しい。高炉セメントは,ポルトランドセメントを水で急冷した高炉スラグで置換したものです。高炉スラグは,潜在水硬性を有し,ポルトランドセメントの水和によって生成した水酸化カルシウムの刺激により次第に硬化します。初期強度は小さいですが,長期強度は大きいです。また,多量に高炉スラグを混和すると化学抵抗性,水密性,アルカリシリカ反応抑制効果などに優れます。
(4)×誤り。フライアッシュセメントは,ポルトランドセメントを微粉炭で燃焼したとき生じるフライアッシュで置換したものです。フライアッシュは,ポゾラン反応性を有し,フライアッシュ中の活性二酸化けい素,酸化アルミニウムが水の存在下でポルトランドセメントの水和で生成された水酸化カルシウムと長時間かけて反応し,不溶性の物質を生成し,硬化します。初期強度は小さいですが,湿潤条件下で強度の伸びは大きいです。

【No.9】

セメントに関する次の記述のうち,正しいものはどれか。
(1)強熱減量は,セメントの安定性の目安である。
(2)アルミン酸三カルシウム(C3A)の水和物は,硬化後に浸透した硫酸塩と反応してエトリンガイトを生じ,体積膨張を起こす。
(3)2009年のJIS R 5210(ポルトランドセメント)の改正において,クリンカー原料としての廃棄物・副産物の使用量の増大に対応するため,普通ポルトランドセメントの塩化物イオン量の規格値が「0.035%以下」から「0.05%以下」に変更された。
(4)JIS R5210(ポルトランドセメント)に規定されている中庸熱ポルトランドセメントには,水和熱を抑制するため,けい酸ニカルシウム含有量の上限値が定められている。
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正解は(2)

【解説】
(1)×誤り。強熱減量は, 975±25℃で強熱した時の減量で,新鮮度の目安となり,風化が進むと大きくなります。安定性は,未反応の石灰(CaO),酸化マグネシウム(MgO)が過剰に含まれていることによる硬化過程の異常膨張の有無をパット法またはルシャテリエ法で確認します。
(2)〇正しい。コンクリート中のアルミン酸三カルシウム(C3A)の水和物は,硬化後に外部環境から供給される硫酸塩と反応して膨張性化合物であるエトリンガイトを生成し,生成時の膨張圧によりコンクリートを劣化させます。
(3)×誤り。2003年11月のJISR5210(ポルトランドセメント)の改正により,セメントの原料・燃料の一部に使用されている廃棄物の使用可能量の増加に対応するため,普通ボルトランドセメントの塩化物イオン量の規格値が「0.02%以下」から[0.035%以下]に改正されました。
(4)×誤り。中庸熱ポルトランドセメントは,水和熱を低減するために,けい酸三カルシウムの含有量を少なくしたセメントで,マスコンクリートなどに使用されます。

【No.10】

セメントに関する次の記述のうち,誤っているものはどれか。
(1)JIS R 5211 (高炉セメント)に規定されている高炉セメントには,潜在水硬性を確保するために,高炉スラグの塩基度の下限値が定められている。
(2)水和熱を小さくするために,普通ポルトランドセメントを中庸熱ポルトランドセメントに変更し,コンクリートの圧縮強度の管理材齢を91日とした。
(3)中庸熱ポルトランドセメントは,水和熱を低減するために,けい酸三カルシウムの含有量を少なくしたセメントで,マスコンクリートなどに使用される。
(4)エコセメントには普通エコセメントと速硬エコセメントの2種類があり,普通エコセメントは,高強度コンクリートや高流動コンクリートに使用できる。
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正解は(4)

【解説】
(1)〇正しい。高炉セメントはポルトランドセメントを水で急冷した高炉スラグで置換したものです。高炉スラグは,潜在水硬性を有し,ポルトランドセメントの水和によって生成した水酸化カルシウムの刺激により次第に硬化します。高炉スラグの潜在水硬性に影響を及ぼす化学成分の指標としては,塩基度が用いられます。高炉スラグの塩基度が低いと潜在水硬性も低下するので, JIS R 5211では,高炉スラグの塩基度を1.4以上と下限値を規定しています。
(2)〇正しい。水和熱を小さくする方法として,普通ポルトランドセメントに比べて水和熱の小さいけい酸ニカルシウム(C2S)の含有量を多くし,水和熱の大きいアルミン酸三カルシウム(C3A)の含有量を少なくすることが挙げられます。また,中庸熱ポルトランドセメントまたは低熱ポルトランドセメントヘの変更や,配合設計において単位セメント量を低減する目的で管理材齢を28日から91日へ変更するなどの方法が有効です。
(3)〇正しい。中庸熱ポルトランドセメントは,水和熱を下げるために,水和熱の高いけい酸三カルシウムとアルミン酸三カルシウムの含有量を少なくし,水和熱の少ないけい酸二カルシウムの含有量を多くしたセメントで,ダムなどマスコンクリートに使用されます。
(4)×誤り。エコセメントは,原料に都市ごみ焼却灰を主とし必要に応じて下水汚泥などの廃棄物を従としてエコセメントクリンカーの主原料に用い,製品1トンにつきこれらの廃棄物を乾燥ベースで500 kg以上使用して作られるセメントです。エコセメントは,製造過程で脱塩素化させ,塩化物イオン量がセメント質量の0.1%以下で,普通ポルトランドセメントに類似する性質をもつ「普通エコセメント」と塩化物イオン量がセメント質量の0.5%以上1.5%以下で,塩素成分をクリンカー鉱物として固定した速硬性をもつ「速硬エコセメント」に分類されます。JIS R 5214では,エコセメントがポルトランドセメントに比べて塩化物イオン量がやや多く,使用実績が少ないことから,普通エコセメントにあっては,単位セメント量の多い高強度・高流動コンクリート,プレストレストコンクリートを除く無筋コンクリートおよび鉄筋コンクリート(コンクリート中に含まれる塩化物イオンの総量が0.30 kg/m3以下)に,速硬エコセメントにあっては,無筋コンクリートに用途を限定しています。
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