アルカリシリカ反応(ASR)とは?
水酸化アルカリ(NaOH、KOH)と反応性骨材が反応することによってアルカリシリカゲルが生じ、アルカリシリカゲルが吸水膨張することによってひび割れが発生することを言います。
ASR(アルカリシリカ反応)とはAlkali Silica Reactionの略称です。
コンクリートはアルカリ性です。鉄筋コンクリート造は、コンクリートのアルカリ性が、内部鉄筋を腐食(酸化)から保護しています。鉄筋が腐食すると、錆が生じ、膨張することで鉄筋周囲のコンクリートにひびが入ります。ひびが進行することで鉄筋周囲のコンクリートが剥落し、鉄筋とコンクリートが一体となって構造体を成している鉄筋コンクリート造としての役割を果たすことが出来なくなってしまいます。
鉄筋コンクリート造は、力学的には、圧縮に強いコンクリートと、引張に強い鉄筋を組み合わせることで、経済的・合理的な構造を実現しますが、アルカリ性、酸性といった、化学的な面でも優れている構造といえます。
アルカリ性であることは、鉄筋の腐食防止という観点からは非常に重要です。しかし、コンクリートの材料である骨材の中には、コンクリート中のアルカリと反応してしまう【反応性骨材】が存在します。
反応性骨材を使用したコンクリートでは、アルカリ骨材が水酸化アルカリと反応し、アルカリシリカゲルが生成され、それが吸水・膨張することで、上述した鉄筋の錆が膨張しコンクリートが剥落する一連の流れに似たような現象が起きてしまいます。
以下に、キーワードをまとめます。
特徴
- 低鉄筋比では亀甲状のひび割れ、高鉄筋比やPC部材では主筋に沿ったひび割れ
- コンクリートが多湿または湿潤状態であることが条件
- 昭和40~50年後半の建物に多くみられる
反応性骨材
- 無定型ガラス質(オパール、火山ガラスなど)
- シリカ鉱物(石英の高温結晶型)クリストバライト、トリジマイトなど
- 火山岩が起源の岩石
化学式
nSiO2+2NaOH→Na2O・nSiO2+H2O
シリカ鉱物+アルカリ→アルカリシリカゲル
Na2O・nSiO2+mH2O→Na2O・nSiO2・mH2O
アルカリシリカゲル+水→吸水膨張
ペシマム量とは
Pessimum Condition = 最悪条件
アルカリシリカ反応には反応性骨材単体で用いた場合よりも反応性骨材と非反応性骨材を混合して用いた場合に膨張量が大きくなる場合があります。
その、膨張量が最も大きくなる場合(最悪な条件)の骨材全体に含まれる反応性骨材の割合のことを言います。
※反応性骨材の量が多いほどコンクリートの膨張量が大きくなるということではないことに注意が必要です。
リチウムイオンによるASRの抑制
ASRにより劣化したコンクリート構造物の補修工法としてリチウムイオンを使用する方法があります。
リチウムイオンによるASR抑制メカニズム
リチウムイオンには、アルカリシリカ反応を抑制する効果があると言われています。
その抑制メカニズムは、アルカリシリカゲル中のNa+と添加されたLi+とのイオン交換によるゲルの非膨張化をはじめとして諸説提案されています。
国内で使用されるリチウム化合物としては亜硝酸リチウムの実績が最も多く、亜硝酸リチウムの内部圧入工法で用いられます。
過去問2018No.6
アルカリシリカ反応性を有する骨材に関する、次の記述中の(A)および(B)に当てはまる(1)~(4)の語句の組合せのうち、適当なものはどれか。
わが国における火成岩のうち、反応性を示す可能性が高いものは火山岩であり、深成岩や半深成岩では反応性はほとんど認められていない。これは、火山岩ではマグマの冷却速度が深成岩より早く、(A)などの不安定な結晶や非晶質物質が生成されやすいためである。アルカリシリカ反応性を有する代表的な火山岩には、(B)がある。
(A) | (B) | |
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(1) | カルサイト | 安山岩 |
(2) | トリディマイト | 安山岩 |
(3) | ローモンタイト | チャート |
(4) | オパール | チャート |
答え(2)
火山岩:安山岩、流紋岩、玄武岩など
堆積岩:チャート、砂岩、頁岩など
【白華】コンクリート中の水酸化カルシウムがコンクリート表面で炭酸ガスと反応し、白い析出物となったもの
特徴
- 水酸化ナトリウムは低温になるほど水に対する溶解度が大きくなる
- 析出物そのものは構造物の耐久性を損なうことはない
- 貫通ひび割れ部、コールドジョイント部で発生し易い
- 錆汁を伴う場合は内部鉄筋の腐食を示唆する
- 見た目の似た「レイタンス」とは異なる
レイタンスとは?
- 比重が小さい微粒分等が浮上して上面に形成される脆弱な層
いわゆるコンクリートノロのこと。打継ぎ部にレイタンスがある場合は、高圧洗浄等で除去してからコンクリートを打ち継ぐ必要がある。