【電気防食工法】とは?腐食が起きやすい塩化物濃度

診断士

電気防食工法

電気防食工法は、コンクリート表面に陽極材を設置し、かぶりコンクリートを介してコンクリート中の鋼材に直流電流を流すことにより、鋼材をカソード分極させて防食する工法である。
防食状態を判定する場合は、通電を一旦停止し、その直後から24時間後までに、貴(+)方向に100mV以上復極することを確認するのが一般的である。なお、干満帯などの湿潤な環境では、24時間後の復極量は小さくなる傾向がある。
引用元:コンクリート診断士試験2012年No.38

上記の内容を読んで理解できる方は、ここから先の記事は読む必要はありません。

そもそもなぜ鉄筋がさびるのか?

まずは、コンクリート中の鉄筋がさびない理由は、高アルカリ環境下にある鉄筋の表面には、不働態被膜が形成され、その内部の鉄筋が腐食するのを防止しているためです。本来は、鉄筋に用いる鋼材はさびやすく、水と酸素が供給されると鉄筋の腐食が進行します。

コンクリートの塩害

コンクリート中の鉄筋周辺に塩化物イオンが到達すると、高アルカリ環境下ではなく、中性環境へと変化していきます。そうすると、鉄筋内部を腐食から保護するための、表面の不働態被膜が破壊されます。不働態被膜が破壊されると、鉄筋の腐食がどんどん進行していきます。

土木学会では、不働態被膜が破壊される塩化物量の限度を1.2kg/㎥としています。(=1.2kg/㎥未満であるコンクリートは腐食しにくい)

一度アノード部分が形成されてしまうと、鉄筋の腐食した部分から健全な部分に電子が流れ、さらに腐食部の電位がプラス側となり、腐食反応が進むということになります。

鋼材をカソード分極させるとは?

鋼材をカソード分極させるとは、電極を負方向(-側)に電流を流すことを言います。同じ意味で、コンクリートをアノード分極正方向(+側)にさせているとも言えます。

鉄筋に電流を流すとどうなるか

鉄筋に電流を流すと、下図のように鉄筋の電位がマイナス側に保たれます。鉄筋の腐食は、アノード部(プラス側)で起きるため、電流を流して電位を強制的にマイナス側にすることで鉄筋の腐食反応を停止することが出来るということです。

つまり、電流を流し続けていれば、塩化物イオンの影響でコンクリートが中性化しようがアノード反応が進まないため、鉄筋はさびないということになります。

電気防食工法の種類

  • 外部電源方式
  • 流電(犠牲)陽極方式

のふたつがありますが、主流は外部電源方式です。

外部電源方式

直流電源装置(分電盤など)から電流を供給し、鋼材に防食電流を流す方式です。

流電陽極方式

鉄筋(Fe)と他の金属とのイオン化傾向の差を利用し、鉄筋に電子(e)を供給する方式です。他の金属が鉄筋の代わりにさびることで防食することから、犠牲陽極方式とも呼ばれています。

防食状態の確認

問題文にある通り、通電を一旦停止し、その直後から24時間後までに、貴(+)方向に100mV以上復極することを確認するのが一般的です。

逆を言うと、電流を流すことで卑(-)方向に100mV以上分極されるため、防食効果を得られているということになります。

おまけ(ミクロセル反応とマクロセル反応の違い)

ミクロセル反応とは、アノード反応とカソード反応は鉄筋の同じ位置で起きている反応のことを差します。

マクロセル反応は、反応がさらに離れた位置でも起きると考えられている反応のことを差します。

見えないくらい小さな反応=ミクロセル反応、大きな反応=マクロセル反応ということではありません。

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