火災による劣化とは?
火災による劣化は、コンクリートが、火災による加熱を受けることでセメントペーストと骨材に、熱膨張による挙動差が生じ、コンクリートの物性値が低下することを言います。
特徴
- セメント硬化体(セメントペースト)部は収縮(約600℃まで)、骨材は膨張
- コンクリート強度の低下は300℃まではほとんどない
- 500℃を超えるとコンクリート強度が50%以下になる
- 鉄筋は500℃以上の過熱を受けると強度及び降伏点は回復しない(安全限界温度)
- 火災を受けた後のコンクリートは、強度・弾性係数が時間経過とともに回復する
圧縮強度の回復と火災時の温度の関係
加熱を受けたコンクリートは、時間が経過すると、圧縮強度が回復します。300℃未満の加熱であれば、1年後には、ほぼ100%の強度に回復します。
一方で、500℃以上の加熱を受けると、一度50%程度の強度まで低下し、1年経過後も90%以下程度までしか回復しません。これを安全限界温度と言います。
弾性係数の回復と火災時の温度の関係
加熱を受けたコンクリートの弾性係数は、圧縮強度の低下よりも大きくなります。残存弾性係数比は、元の弾性係数に対する加熱後の弾性係数です。膨張により、微細なひび割れが発生することで、300℃程度の加熱でも弾性係数は50%程度まで低下し、1年経過後も70%程度までの回復となります。500℃の加熱を受けると、1年経過後でも、回復は50%以下までとなります。
表面の変色状況と受熱温度の推定
受熱温度 | 表面の変色 |
~300℃ | すすの付着 |
300~600℃ | ピンク色 |
600~950℃ | 灰白色 |
950~1200℃ | 淡黄色 |
1200℃~ | 融解 |
加熱による反応
コンクリートが加熱されることで、コンクリート内部では、熱分解反応が生じます。温度によって熱分解反応が異なります。
水酸化カルシウムは500~580℃の加熱で熱分解し、pHの低下が起こる
Ca(OH)2→CaO+H2O
ケイ酸カルシウム水和物は600~700℃で熱分解する
ケイ酸カルシウム水和物(CーS-H)
【爆裂】とは?
火災時に生じる劣化として、「爆裂」があります。爆裂とは、過熱時の熱膨張による応力、水蒸気圧の増大によりコンクリートの剥離や飛散を生じる現象です。
爆裂の特徴
- 水セメント比が小さく水和組織が緻密化すると、爆裂を生じやすい
- コンクリートの含水率が高い状態で火災にあうと爆裂が生じやすい
- 火災時にコンクリートが過熱される速度が速いほど爆裂が生じやすい